ブックレビュー


『ハリーポッターと賢者の石』

J.K.ローリング作 松岡佑子訳
レビュー:[雀部]&[LUNE]

静山社   '99/12/8
あらすじ:
 二歳の時に両親が自動車事故で死亡したと聞かされ、伯父のダーズリー家で十一歳まで育てられたハリー・ポッター。部屋としてあてがわれている階段の下の物置には慣れたけれど、デブで嫌味な従兄弟のダドリーの意地悪とそれを放置し、更にけしかけることもある伯父夫婦には、ほとほと困り果てる毎日であった。
 ハリーが中学に進級する時期が近づいてきた時、どこからともなく手紙が舞い込むようになる。その手紙は伯父が取り上げ、ハリーは見せて貰えなかった。その手紙を避けるように、見知らぬ土地まで旅行にやってきた伯父一家とハリーだが、そこにも大量の手紙が届いていた。なんとそれはハリーのホグワーツ魔法学校入学許可の手紙であった。

独断と偏見のお薦め度:☆☆☆☆☆
 実は、ハリーの両親は、邪悪な魔法使いヴォルデモートに殺され、ハリーも同じく殺されかけたが、何故か九死に一生を得ていたという出だしです。
 全七巻で完結予定で、最初十一歳の魔法使いハリーは、一巻毎にひとつ歳を取っていくという設定。英国では昨年六月に第四巻が発刊され、来年は映画化の予定。「ポッター」はテレビゲーム世代を読書の世界に引き戻したと評価され、ローリング女史は「私が信じている魔法は、読者の想像力と作家の想像力が合致すること。これこそ素晴らしい魔法」と語っています。



[雀部]  一読して、こりゃ面白いし、安心して子供に読ませられる本だなぁって思いました。大人が読んでも楽しめるジュヴナイルですね。
[LUNE]  児童文学になるのでしょうけど、ナルニアやその他のファンタジーとは一味違った楽しくて面白い世界があります。お説教くさいこともないし、一気に読めます。
 本屋で立ち読みしてた時は、「なんだー。ただの子供の学校ものかー」とか思っていたのですが、魔法学校だったんですねー。しかも独自のゲームとかあるし、うーん。なかなか・・・・
 楽しんで読める本です!
[雀部]  この作品が全世界でベストセラーになった魅力の源は何なんでしょうね。
 それと、主人公のハリーは、途中まで本人は知らないけれど、両親とも偉大な魔法使いという設定ですよね。こういった設定と、例えば普通の子供が努力して偉大な魔法使いになるというお話とは、どちらが子供に受け入れやすいんでしょう。
[LUNE]  今世界中でハリポタ旋風が巻き起こっているそうですが、確かに面白いFTでした。この本の特徴は、「魔法」と「学校」そしてハリーの「謎の生い立ち」の部分が魅力ではないかと思います。
 「ゲド戦記」のようなローク島の学院よりも、別世界感は少なく現代の学校とほぼ同じ(イギリスの学校のように寮もあって、寮同士で競ったり)。普通の世界と行き来が出きるような狭間の世界に魔法の学校があるという点が多くの子供にも親近感を抱かせるのでしょう。ましてや学んでいるのは、「魔法」であるから、勉強よりよっぽど面白そうだし。
 主人公のハリーについては、ごく普通の男の子ですが、普通の世界ではいじめられて育ったけれど、魔法の世界では、生まれ持っての魔法の才能で学校のヒーローになってしまう。これも読む子供達に「違う世界ではヒーローにもなれるんだ」という夢を与えるいい主人公だなあと思いますねー。
 あとハリーと友達の友情も、この本を心温まるものにしているいいところです。
[雀部]  なるほど「今は誰からも注目されてないけど、実は僕は**なんだぞ!」というあたりも子供たちに受けたのでしょうね。
[LUNE]  一言で言うと「夢があって、心が温まる学校ファンタジー」でしょうね。面白かったです。7作あるという次回作以降が、ハリーの成長を描いた本格ファンタジーになっていくのか、この雰囲気のままいくのか興味深い所です。(但し、この世界の魔法はビビデ・バビデ・ブー的なイメージの魔法だから本格的になるのか疑問?)
[雀部]  お手軽魔法ってことですか?魔法の源が、物語の設定と不可分に結びついていたりするとハイファンタジーになりうるのかな。
[LUNE]  基本的に全くの別世界構築されているハイ・ファンタジーではないでしょうね。現実世界に作用する方のロー・ファンタジーになると思います。
 ハリーポッターの世界の魔法というのは、今のところ決まった掟というものがない様に見えます。呪文を唱えれば、ケーキが現れるといったような何でもアリなような感じの昔の御伽噺の魔法的な感じですねー
 例えばゲド戦記は、真の名を知ることで相手を支配するほど「名前」というものに力を与えています(ケルト文化式?)し、ベルガリオン物語も、魔法でできることと出来ないこと(出来ないことには神々が関与)が定められており、勿論魔法を使えば体力を消耗する、周りに騒音を引き起こす等の弊害までも規定しています。
 そういう意味で、今のところハリーポッターには、個人の能力差で差は出るけれども、出てくる魔法は火をつけたり、薬草を研究?したり、箒にのったりといった割と古風な魔法が主なよう?な感じがします。
[雀部]  そういう古風な魔法の方が、子ども達にも受け入れやすいのかも知れませんね。私はさっそく我が家の子供にも読ませました。高三ですが、面白かったと言っています。(^o^)/
[雀部]
48歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員
ホームページは、http://www.sasabe.com

[LUNE]
職業:OLでもって企画職
趣味:海外遺跡旅行・読書・映画・アウトドア
ジャンル:ファンタジー一徹!(最近ちょっとSFも・・・)
好きな作家:アーシュラ・K・ル・グイン
最近凝ってるコト:映画鑑賞(月3本ぐらいかな?)とエコツアー(カヌーとか登山ね)
ホームページは、http://www.eonet.ne.jp/‾voyage/

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