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『大いなる旅立ち』
デイヴィッド・ファインタック著 野田昌宏訳、1996/12/31刊
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ハヤカワ文庫SF | 各680円 | |||
粗筋:
2194年、N波駆動の国連所属の宇宙軍軍艦<ハイバーニア>は、惑星ホープ・ネーションに向け地球を飛びたった。それに乗り組んでいた17歳の士官候補生のシーフォートにとっては、最初の航天であるとともに、先任士官候補生として他の士官候補生を統率する立場にあった。 だが順調に進むと思えた航天も、通常空間で行う最初の航法チェックポイントでトラブルが発生し、艦長が死亡してしまう。はてさて、暗雲漂う初航天をシーフォートは上手く乗り切れるのであろうか・・・ |
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独断と偏見のお薦め度:☆☆☆☆
主人公は規則一点張りの石部金吉で、脇役陣もおよそ類型的なパターン。でもってストーリー展開がこれまた極めつけのご都合主義ときている。しかるにこれがすごく面白いから不思議なんだなあヽ(^o^;)丿これは著者にストーリーテリングの才能が溢れているに違いない :-) これを読んで、やはり私も英国海軍を描いた《ホーンブロワー》を思い浮かべました。 |
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『チャレンジャーの死闘』
デイヴィッド・ファインタック著 野田昌宏訳、1997/7/31刊
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ハヤカワ文庫SF | 各700円 | |||
粗筋:
最年少艦長として国連宇宙軍救援艦隊に参加したシーフォート宙尉だが、のっけから船隊司令官に自分の艦を召し上げられてしまう。どうやら提督はシーフォートを露払いにして、旗艦の安全を計るつもりらしい。もちろん抗議出来るはずもなく、シーフォートは元旗艦に乗船する。しかしそこに待ち受けていたのは定員以上の乗客、しかもニューヨークのストリートキッズ達を同船させろという命令だった。 |
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独断と偏見のお薦め度:☆☆☆☆
例によってシーフォート宙尉を襲う事件と不運と幸運の大群 :-) 確かに面白く、一気に読める(読みたくなる)本なんですけど、帯には、翻訳された野田昌宏さんが「展開の厚み、奇怪な他星系生物、人物彫琢と主人公の苦悩において<ホーンブロワー>より一桁上の作品だ」と書かれています。う〜む。 面白さでは負けているかも知れませんが、同じような設定だと、私はチャンドラー氏の《銀河辺境》シリーズの方がずっと好きです。もしこういう設定のSFがお好きでしたら、古本屋で見かけた際にはぜひご購入を。こちらはなんとなくのんびりしてて、主人公も暖かいしほっとできます。 |
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『激闘ホープ・ネーション!』
デイヴィッド・ファインタック著 野田昌宏訳、1999/1/31刊
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ハヤカワ文庫SF | 各840円 | |||
粗筋:
地球から36光年離れたところに位置する惑星ホープ・ネーションは、その生産の大半を地球に輸出している農業惑星だ。今、この惑星を異星生命体"魚"の襲撃から守るために国連宇宙軍艦艇が集結していた。そこに地球から宇宙艦<ハイバーニア> が到着する。艦長はシーフォート、かつてN波空間航行の出来なくなった宇宙艦<チャレンジャー>と共に、彼らを置き去りにしたトレメイン提督の罷免のメッセージを携えてやってきたのだ。 |
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独断と偏見のお薦め度:☆☆☆1/2
行くところ行くところで、騒ぎを巻き起こすシーフォート宙佐。今回も名誉を賭けた決闘をやってのけたり、上官の不正を暴いたり、"魚"相手に大立ち回りを演じたりで忙しいことこの上なし。科学考証もへったくれもないご都合主義的なストーリー展開なんですけど、なぜか一気呵成に読ませる面白さがあるんです。 でも、「SFファンは本当はこんな程度のドラマで満足しちゃいけないぞ」と誰かが囁くんだなぁ^^; |
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『決戦!太陽系戦域』
デイヴィッド・ファインタック著 野田昌宏訳、1999/8/31刊
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ハヤカワ文庫SF | 上860円・下820円 | |||
粗筋:
核爆発物の使用という禁忌を破りながらも、多数の<魚>を退治したシーフォートは、またも英雄に祭り上げられる。宇宙軍上層部は、ヒーローである彼に再び艦隊勤務に就くことを懇願するが、多くの戦友を結果的に死なせてしまったことを悔やむ彼は、それを固持していた。 そんな彼に上層部は一転して、宇宙士官学校の校長としての任務を命ずる。自分が卒業した学校の校長となったシーフォートだが、持ち前の石部金吉ぶりが災いして運営に支障を来す羽目に。 そんなある日、またもや<魚>の大群が太陽系を襲ってきた。艦隊司令部は破壊され、その矛先は地球そのものに向けられた。この未曾有の危機に、士官学校の幼い生徒とともにシーフォートが取った最後の手段とは・・・ |
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独断と偏見のお薦め度:☆☆☆☆
相変わらずの確信犯ぶりを発揮して、シーフォートをいじめ抜くファインタック氏。シーフォートに幸せの訪れる日はあるのか。 もはや論理もへったくれもない軍規一点張りのシーフォート。彼が自暴自棄になるほど、戦果が上がり(大勢の犠牲者は出るが)巡り巡って更なる自己嫌悪に陥るという悪循環もここに極まれりといった感あり。お話自体は面白いし、展開もスリリングなんだけど、もうちょっと優しくしてやって欲しいぞ(爆) |
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『突入!炎の叛乱地帯』
デイヴィッド・ファインタック著 野田昌宏訳、2000/2/29刊
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ハヤカワ文庫SF | 各880円 | |||
粗筋:
前作で太陽系の危機を救うためとはいえ、人間として許されがたい行為を犯したシーフォート。その贖罪のため修道院入りするが、10年後、荒廃したマンハッタン地区に住む住所不定民トランスポップ達を救うために政界入りし国連事務総長までも務めるものの、今は引退して家族と共に隠遁生活を送っている。妻をめとったのは、政界入りしてからで、彼女は宇宙軍の士官で、見習生のときにはシーフォートの寝台仲間だった。国連事務総長になったシーフォートだが、妥協を知らない頑迷さは相変わらずで、そのために政界を追われる羽目になってしまったのだった。 時折乱されるものの概ね平穏な生活が続くと思われていたが、側近のアダム・テネアの息子ジャリッドが、シーフォート邸での大物政治家の会話を盗聴してから、事件が始まる。そのネタをマスコミに売ろうとジャリッドは家出を敢行、それに責任を感じたシーフォートの息子フィリップも、友人を助けるべく家出してしまう。彼ら二人が、無法地帯であるマンハッタンで消息を絶ったことを知ったシーフォートは、危険を省みず自らトランスポップたちが跋扈する街に潜入する。 |
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独断と偏見のお薦め度:☆☆☆☆
今回の見所は、マンハッタンを再開発したい政治家グループと、そこに住むトランスポップに肩入れするシーフォートとの対立の構図でしょうか。マンハッタンは、二番目の妻の出身地でもあるし、彼がエディに請われて政界入りする契機となった地区でもあります。息子の潜入をきっかけとして再びトランスポップたちのために立ち上がるシーフォート。彼に本当の安息の日々は訪れるのでありましょうか(笑) |
[雀部]
48歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員 ホームページは、http://www.sasabe.com |