貴方は映画が大好きである。
今日は金曜日。
以前から観に行きたいと思っていた作品が今日までのようだ。
定時で帰ると月曜日嫌味を言われるのは確実だが(宴会なら全員定時で
出てもOKなのにねえ)、このまま見逃してビデオリリースを待つなんて
ぜったいにイヤだ。
「なんといっても映画は映画館で観るもの」
というわけで職場の刺すような視線を背中に感じながらも
いそいそと劇場へ。
案の定、最終日は混雑している。飲食禁止のスカした館なので、
食事は調達していない。腹ごしらえをする時間もなかった。
空腹で機嫌が悪くなる上に、並ばされたロビーは満員電車状態(「もう一歩
お詰め合わせください」:まだ言うか!)なのに空調は効いていない。
湿度急上昇で気持ちが悪くなってくる。
なんでこんなにいらいらしなければいけないのか。
だって「映画は映画館で観るものだから」
席は確保できたがかなり前方、それも端の方である。これでは画面は
歪む、首は疲れる、音響はバランス悪い、スピーカーに近過ぎて耳は
キンキンしてくる、最低の席である。
本編が始まっても、後ろのカップルはいちゃいちゃをやめない。
隣に座った外人は、そりゃ自分はギャグがわかるよな、大笑いである。
このような状況の上に、貴方は腹が減っていつグウと鳴るか気になるし
で映画に集中できない。
何故こんな目に合ってまで映画を見続ける必要がある?
だって「映画は映画館で観るものだから」??
かようにして貴方は、映画は大好きだからこそベストのコンディションで
観たいがゆえに、逆に映画館から遠ざかってしまう。不幸なことである。
我々ニッポンの勤め人は会社帰りに無理に映画館に行くべきではない。
気分を害する上に結果的に不利である。
残業せずに映画に行くのは怠け者だ。和と努力と忍耐を美徳とするこの国
においてはそのようなコンセンサスが既に成立しているのだから。
週末に観ればよい?それはもっと難しいのでは?我々は良き職業人
であるとともに良き家庭人でもあるはずだ。週末はもっと忙しいよね。
日本の映画館動員数が減少の一途だそうである。当然である。
しかしあきらめられない。アメリカ映画最新作をある程度のクオリティで楽しみたい。
そのためのソリューションが、これから述べていく「R1DVDを核にした6畳間
マイルームシアター構築」なのです。
はっきり言ってしまおう。「映画は家で観よう」
日本でのロードショー新作だけではなく、mitchさんがレポートして下さ
るような、ひょっとしたら日本未公開に終わってしまうかもしれない佳作が、
少なくとも音響面については劇場以上のクオリティ(と私は満足している)で
楽しめる。先日もmitchさんおすすめのスポ根もの、Bring It Onを観ましたが、
とてもハッピーな気持ちになれる映画でした。
カウチポテトという言葉で想起される、サンダル履きでレンタル屋に行き適当に数本
見繕ってデッキにポン、などという安易な暇つぶしとは一線を画する、真剣に映画と
向き合うチャレンジなのだということが、おわかりかと思う。
「レンタルでもいいか」ではなく「DVDでちゃんと観よう」なのだ。
もっと言うと、映画が大好きな自分を取り戻すという自己回復への意志であり、
顧客無視の映画館への復讐であり、消費者をナメきったアンビリな価格設定を
良しとする国内流通システムへの異議申し立てなのであり、と、まあそんなに
肩に力を入れるのはやめましょう。
で、マイルームシアター構築に必要な材料は・・・・
・6畳間
是非とも「自分が自由にできる空間として」6畳間を確保していただきたい。
TVが既にあるからといって、リビングに目を向けるとコンセプトが
異なってくる。リビングもしくはお茶の間シアターはあくまで家族団らん
の延長であり、個人の趣味の追求とは相容れない面もあるだろう。
ソフトの選択や視聴時間、はたまた今後ハマっていくだろう機器のセッティング
や調整等について、リビングだと自己以外の意志が入り込んでくる要素が
多く、これはこれでけっこうフラストレーションになるからだ。
なぜ6畳間か。それ以上なら8畳でも10畳ならもっと自由度は高まるが
最低6畳は欲しい、という意味。それより狭いと実現できる画面の大きさを
縮小せざるをえないのが苦しい。
逆にあまり広いと、その広い空間をコントロールするため、機器への投資額が
跳ね上がってしまい、その意味からも6畳間がとりあえず手頃。
6畳間で画面80インチというのが好バランスで後々不満を感じない水準だと
思う。
かつ、その6畳間の短辺側壁一面をスクリーンにできるくらい空けることが
できるか、反対面からプロジェクターで投影するわけだが、当然その間にモノ
を置いていないか、などと部屋全体のレイアウトを見直す必要も出てくる。
マイルームだから、オーディオ以外にもPCに本棚に机にと、先住者が多い
ので、部屋の中心軸をプロジェクターの光線軸に合わせ、それと干渉しないよ
うに家具たちを再配置していく。
偶然にもHIVI今月号が、6畳間での実践を特集しているので、参照されたい。
・プロジェクター
自室に映画館を作るのであるから、ブラウン管モニターもしくはでかい筐体
のリアプロジェクションは選択肢からはずそう。小型軽量の液晶プロジェクターで
スクリーンに投射する、これでキマリ。
カタログを入手して、じっくり画面サイズと投射距離の関係をチェックしてください。
3メートル(6畳の縦の長さ)で80インチが可能な機種とそうでないのとがあるので、
要注意。100インチも可能な機種があるが、両端にスピーカーを置くことを忘れない
ように。
購入だが、他の機器と異なり、これだけは中古やネットオークションは避けた方が
良い。経年劣化が液晶パネルやランプに及ぶと、視聴時一番気になるし修理代も
かさむからだ。
あとの条件としては、
・DVDのスクイーズ再生に対応しているか
・プログレッシブ再生に対応しているか
いずれもいかに映画を映画らしく見せるかという課題に不可欠な機能なので、
これを省くと後々悔しい思いをする。
本体を冷却するためのファンノイズのうるささも、ショップでは「何とかなる」と
思っても自宅では相当「うるさく感じる」と考えていい。
てな調子で次回はDVDプレイヤーのお話をします。
本連載のコンセプトは「小遣いの範囲でできるホームシアター」。
今後ともどうぞよろしく。
<今月のおすすめDVD> Stir of Echoes
5/29米国発売の「未知との遭遇」が届けば早速レポートしようと思って
いましたが、間に合わなかったので来月じっくりやります(乞うご期待)。
Stir of Echoesは、リチャードマシスン原作の日本未公開ホラー。
おふざけで参加した降霊会以来、本当に「見える」ようになってしまった
ケビンベーコン。自宅でかつて何かがあったようだ・・・取り憑かれたように
庭を掘り起こす姿は、「未知との遭遇」のロイ・ニアリーを思い起こさせます。
日本ではレンタルビデオで出ていますが、是非リージョン1のDVDを入手して
ドルビーデジタルで観て聴いてください。何が怖いって、幽霊とチャネリングして
体験してしまう「殺される瞬間」そのもの。息苦しくなります 。
英字幕すらありませんが(たまにこういうのにも出くわす)心配は無用。分からない
台詞はやり過ごしても、話の流れは見えますから・・・
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