著者インタビュー


カバー写真 『鍋が笑う』

岡本賢一著
イラストレーション=加藤洋之+後藤啓介

ISBN4-257-79035-0 C0093

インタビュアー:[雀部]

朝日ソノラマ 1700円 '98/12/24
「鍋の季節におくる、三つの寓話集」
  他に、「背中の女」「リアの森」収録。
 表題作が事実上のデビュー作
 第13回**ファンジン大賞受賞!(「宇宙塵」掲載) (**は、適当な文字を入れること。と、後書きに書いてある。
  **と銘打って出すと、売れないんだそうです。悲しい。)
表題作粗筋:
 株式会社オガミのアズマ係長代理は、ある日旧タイプの植民惑星に輸出された自社の鍋を回収することを命ぜられる。なんとその原因は、鍋が笑うからというのだ。仔細を知らされず惑星に赴いたアズマは、そこで鍋たちが、住民を助け彼らにとってなくてはならない存在になっていることに気づいていく。


 ディッシュの『いさましいちびのトースター』と似た趣のある寓話小説。
 銀河冒険紀とは又ちがった著者の一面がのぞけるハートウォーミングな中編集に仕上がっております。



 
[雀部]  今回のインタビューは、この四月に『ゴーストエリアQ』を出されて益々絶好調の岡本賢一さんです。
 さて、岡本さん、岡本さんが最初に読まれたSF本は、何でしょうか?
[岡本]  絵本で「三匹の子ブタ」を幼稚園の頃に読んだように記憶しております。
 もしくは小学校の頃に読んだ「宇宙戦争」
[雀部]  SFを書いてみようと思ったのは、いつ頃からでしょうか?
[岡本]  「SF」、意識しながら書いたことはありません。
 異形の「月の物語」で井上さんに「SFを書いてください」とあらためて言われて、「SFってなに?」って悩んで書けなくなり、ホラーを書きました。小説を書きだしたのは、小学校の終わりくらいからです。スペオペ。
[雀部]  ホントですか!?『月の物語』に収録された岡本さんの短編とは「月夢」ですね。あれはSFだと思って読んだのですが。
[岡本] SFというジャンルは僕の中では拡散浸透のすえ雲散霧消しています。
作品を料理で例えると、SFは塩のような存在なんです。塩の料理をというオーダーは困ります。ですので、いつもの中華(ホラー)に、荒塩を少しかけました。
[雀部]  影響を受けた作家がありましたら、お教え下さい。
[岡本]  おもしろいと思った作品および作家すべてから影響を受けています。しいてあげるなら、アクション物の筒井康隆、フィリップKディックの短編、阿佐田哲也、山本周五郎、向田邦子、等々。しかるに、小説より映画やアニメの影響が強いです。 
[雀部] 『宇宙塵』に「鍋が笑う」が掲載されたとき、お仲間の反応はどうだったんでしょう?
[岡本]  同人誌というところは、他人の作品のアラばかりをつついて、ほめることなどめったにないのが一般的だと認知しております。
 ただ、塵にはプロや目のある方が多く、指摘箇所は的確です。なりよりも、柴野先生の添削は僕にとって誠に得難い修行となりました。塵の宣伝になりますが、本気でプロの小説家をめざしている方は、ぜひ宇宙塵へ入会し、投稿してください。詳しくは青山さんのホームページにある案内をご覧ください。
[雀部]  「鍋が笑う」は、雰囲気的にはディッシュの『いさましいちぴのトースター』に近しいものがあると思うのですが、岡本さんは、こういうほのぼの系の作品と、ツイン・ヒート・シリーズや最近作の『ゴーストエリアQ』のようなアクションものだとどちらが書きやすいのでしょう?
[岡本]  特に差はありません。どちらも書き続けて行くつもりです。
[雀部]  映画やアニメですか。主人公が次々と鍋を集めてまわるシーンが好きなんですが、 ひょっとすると、あれは「七人の侍」とか?
[岡本]  七人の侍」は好きな作品で、いろいろと影響も多いはずです。
 でも、人や物を集めてゆくのは「ももたろう」の頃からの定石ですので、どこで影響を受けたのかよくおぼえていません。
[雀部]  今回のインタビューとは直接関係ないのですが、私は『タイム・クラッシュ』が とても好きなのですが、今後ああいう傾向の作品を書くご予定はありますか?
[岡本]  傾向が近いかどうかはよくわかりませんが、秋に出るハルキ文庫の『ワイルド・レイン(全三巻)』1はわりと普通ですが、2がキてて、3がだいぶいっちゃってます。
[雀部]  最近読んだロボット(人工知能)ものでは、篠田節子さんの「操作手」(『青らむ空のうつろのなかに』所載)に感動したのですが、岡本さんの『鍋が笑う』も、筒井康隆さんの「お紺昇天」を嚆矢とする、ちょっとセンチな日本のロボットもの系譜を極めた素晴らしい作品だと思います。
 うちの子供にも早速読ませました。こういう素敵な物語は、子供の時に読んだほうが、印象に残りますよね。全ての子供が小さい時にこういう本を読んで(読んでもらって)育てば、成長して「切れる」子供も減ると思うのですが。これからもこういうタイプの作品を書かれていく予定はおありでしょうか?
[岡本]  とりあえず異形コレクションの「ロボットの夜」に、鍋系の短編を考えていますが、どうなるか、まだわかりません。
 鍋系の長編企画は今のところありませんが、ネタが出れば発表してゆくつもりでいます。
[雀部]  長編、楽しみに待っております。
 本日は、どうもありがとうございました。 
[岡本賢一]
'64年生。'94年に『宇宙塵』に掲載の「鍋が笑う」で、第13回SFファンジン大賞を受賞し、『ディアスの少女』にてデビュー。'96年『父の背中』で第三回パスカル短編文学新人賞を受賞。著書多数。ホームページは、http://www.jali.or.jp/club/okamoto/
[雀部]
48歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員。ホームページは、http://www.sasabe.com


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