寒い寒い、と口癖のように歌うわたし。
不思議そうに小首を傾げるのは、ずっと子どもだったセミ熊。
何故なら彼は、長い冬眠から目覚めて間もなかったから。
「心が寒いのよ。わたしは大人だから」
教えてあげるとクマは少し考え、
「こし餡と粒餡、好きなのどっち?」
そう訊ねてきた。
「こし餡だけど」
「じゃあ、あげるのコレ」
クマがわたしに差し出したのは、冬ごもり前に「ボクの湯たんぽなの」と話していた瓶だった。
「いいの?」
「ウンウンいいの。あったまれるの」
わたしはクマに教えられたとおり、葉っぱの布団にくるまり、こし餡を抱えて眠った。
それ以来、寒いときには柏餅になって暖をとり、わたしは子どもの日の夢を見る。
(了)