黄金の龍

めいにち

 ある古代のビール好きの王、ジョッキを片手に上機嫌でもって、神より授かった地位にあり全てを統べる自分ではあるけれどビールの前にはひれ伏してしまう、という意味のアレクサンドランを即興で作り悦に浸る。突然柱の影から黒装束の男が匕首を構え躍りかかってきた。するとジョッキから黄金の龍が飛び出しその刺客を噛み殺した。
 本を読んでいる子供がいる。自分も、こうして守ってもらえたらなあ、と願う。本に影が差し顔を上げる。彼はいじめられっ子だ、つまりいじめっ子が見下ろしている。ああ、ただ本を読んでいるだけなのにどうして。言いがかりをつけるリーダー格の少年をべージの隙間から飛びだしてきた黄金の龍が噛み殺した。
 これをいろいろな合成技術を使って映像化した映画を見ている。カルトっぽい雰囲気だしアナクロでもあるけれど嫌いじゃない。だが平日の昼間とあって客は殆どいない。ま、話題にすらなってねえし。ジュースに手をやると後ろからいきなり口を押さえつけられ咽喉にはナイフ。後ろの男が小声で囁く。すると銀幕からは黄金の龍、後ろの男を噛み殺した。
 すべてはPCのモニタに映されている。

(了)


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