ゴーレム

めいにち

 土に還る、という言葉がありそれは得てして死を暗示させるのだがその解釈は果たして間違いではないか。最早体の殆どを土に替えてしまった彼は無意識でそれを感じる。これは死という終わりではなく一粒々々が誕生なのだ。自分は幾億にも分かれ生き続ける。全ては繋がっているのだ。彼は死んだ。
 聖水で浸した泥を七人の僧侶が三日三晩不眠不休のまま形を作っていた。完成の後に貼る呪符はもう用意してある。祈り。うつらうつらとしながら同じ夢を見る。
 ゴーレムの巨大な土塊の拳が敵を殴りつける。左側頭部が左肩に一瞬で押し付けられ顎から下は首の付け根部分より食い込み見えない。まだ息のあるその兵士をゴーレムは成長した雄々しい虎の体躯程の腕を二つ、それでもって持ち上げ自分の胸へ取り込み始める。その際に体中の骨が砕ける事になるのであった。
 自然と共に暮らしてきた我等だ。祖先の心が眠るこの地を離れる訳にいかない。老人と子供は殺され男は強制的な労働の為連れていかれ女は犯され続ける。しかも夷狄としてだ。今こそ迫害に向わなければならないし、せめてこの教会は守らねばならない。
 空き地の一角に少し盛り上がった場所がある。そこに芽が生えている。

(了)


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