現実原則

めいにち

 大きな螺旋を移動しているのだがそれが何処に続いているかが判らない。取り合えずその螺旋は二重ないしそれ以上の多重構造でありその絡まりが何を意味するかも不明である。↑に向かっているのか↓に向かっているのか。はたまた螺旋というのだから円を描き、↑に向かっているかと思えばすぐさま→そして↓へ移行し←を経て↑方向へ戻るのかも知れない。また螺旋はその構造上ある程度の平行性を保っており、ここからではどちらが終点だかはわからないしもともとそんなものは用意されていない可能性の方が高い。
 ふと考える。用意されている、なんて受動的な考え方を変えてみようと思う。出来るだけ近くの他の螺旋に自ら飛び移ってはどうだろうか。しかしそんなことは誰もが考える事なのであった。そして大抵は飛び移れない。抑止力が働くのだが抑止力は当人の中にあり具現の存在ではない。
 抑止力を振り切り飛び移るものもいる。失敗して↓に落ちた者がどうなるかは沓として知れないが成功した者が居ない訳ではない。しかしその大抵は自分にとっては新しい螺旋が以前と何ら変わらぬものと気付くのだった。

(了)


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