巨匠と一発屋の間で・・・『Unbreakable』

昨年の流行語大賞の『おっはー』って何?・・・というくらい日本の事情に疎くなりつつあるデトロイト在住のmitchです。海外に住んでても日本のニュースやら雑誌は比較的簡単に手に入る世の中ですが、この手の流行語になるともういけません。完全な浦島さん状態。

それじゃ、こちらからは最新のアメリカ映画事情でも紹介して優越感に浸ってやろうってことで始めた(笑)このコラムですが、今年のホリデーシーズン作品にはいわゆる『日米同時公開作品』の多いこと!『チャーリーズエンジェル』『バーティカルリミット』『13days』に至ってはほぼタイムラグなし。1ヶ月遅れレベルでは『The Grinch』『The sixth day』・・・これじゃあこの原稿が掲載されるころには全部日本で公開中になっちゃいます。そんなわけでお約束の全米ホリデーシーズン映画の紹介はできないままに終わってしまうのか?・・・と思っていたら一本だけ残ってました。それがナイト・シャマラン監督、ブルース・ウィリス主演の『Unbreakable』です。

シャマラン監督と言えば、1999年に日本でも大ヒットを飛ばした『Sixth Sense』を抜きにしては語れません。この作品、アメリカでの興行は驚異的な持久力を見せつけました。通常、アメリカの映画は公開後の1ヶ月でほぼ客足が途絶えてしまうってくらいの短期決戦なのですが、この作品は2ヶ月以上も客足が落ちなかった珍しいタイプです。(『タイタニック』以来ですね。)

その秘密は「あっと驚くラストシーン」にあるわけですが、日本公開時は配給の東○東○さんが映画のオープニングで「この映画にはラストに秘密が隠されています。その秘密を映画を見ていない方には決してしゃべらないようにお願いします。」なんてとんでもない日本語字幕を出しちゃったもんで、感のいい観客の半分はその時点で気づいてしまった・・・という不幸にみまわれております。それでもアメリカと同様、息の長い興行が続いたあたり、タダモノではない作品でした。

ニブイ私はアメリカで公開3ヶ月後にようやく鑑賞したのですが、ラストまで全く気がつきませんでしたとさ。(「え、こんな映画だったの?」笑)ただ、映画全体として面白かったかといえば、やや疑問符がつくところです。確かに後から「あー、そうだったのか」と膝を打つような巧い演出もありましたが、カッタるい部分も多々あったです。アカデミー助演男優賞候補になった子役くんの”うますぎる”演技も一部で反感を買っていたようですし。

それから1年、この映画の監督・主演コンビの作品が再度見られるということで全米の映画ファンの間では期待はいやがうえにも高まるのでありました。(興行的にはジム・キャリーの『グリンチ』の陰に隠れて若干地味メではありましたが。)

この『Unbreakable』も『Sixth Sense』同様、ある種ラストに何が来るのか?のヒネリ(英語では"twist"って言います。)を楽しむ映画であることには間違い無いでしょう。ただし、『Sixth Sense』のように決定的なものではありません。ストーリーに関しては、予告編から予想される内容とはどんどん離れていき、途中で「本気かいな?」と思わず笑ってしまう展開になっていきます。(それはそれで監督の意図だと思われますが。)

画面構成や照明の使い方は非常に巧く、妙にテンションの高い場面が続いていくあたり、シャマラン監督の確かな技量は十分に感じられます。途中までは「まさか、これまでにないタイプの傑作の誕生なのか?」とまで思わせます。私もかなり期待したのですが・・・

今回のオチに関しては・・・アメリカでは絶賛派となんじゃこりゃ?派の真っ二つに分かれたとだけ言っておきましょう。評論家等の玄人筋には評判が高いようではありますが、大半の一般観客はボーゼンとして劇場を後にしてました。私のナナメ前に座ってたオバチャンは本気で怒ってて、エンドクレジットに入るやいなや、後ろを振り向いて「何これ?誰か説明してくれる?」という表情を見せておりました。ただ、私の同僚のフランス人などは「Great!」を連発していましたから、ハマる人にはハマるタイプの映画なのでしょう。

主演のブルース・ウィリスは近年とみに人間っぽさが無くなってきたような気がします。『Unbreakable』な理由は主人公はアンドロイドだったから・・・なんてオチも本気で心配してたんですが、さすがにそこまではやらなかったです。(笑)今回も子役君(『Gladiator』に出てた)が重要な役柄を演じておりますが、うーん、今回は適度でよかったっす。(笑)

シャマラン監督は現在念願の『インディー・ジョーンズ4』の脚本を執筆中とか。ハリウッドの期待の大きさをうかがわせますが、『スチュアート・リトル』(例のネズミ君ですね。)のような子供向き映画の脚本まで仕上げてしまうあたり、器用貧乏なんじゃないかって心配もあります。個人的にはもう1−2本付き合ってから評価したい監督です。今回の『Unbreakable』に関しては前作『Sixth Sense』をある程度引きずらざるを得ない作品ではありますので、ちょっと横に置いといて、次回作ではtwistもブルース・ウィリスもないところでじっくりと作品を準備してもらいたいもんです。巨匠になりうる器を持っているのかそれとも単なる一発屋か?その時にハッキリと判ることでしょう。

・・・あー、それにしてもストーリーを語らずに評論するのは骨が折れるわい。

え、いつもより短めだって?まあクリスマス休暇ってことでお許しください。(爆)

<次回予告> 新年特別企画!mitch、一時帰国した日本にて『ゴジラ』新作を鑑賞する・・・の巻。モズ中野さんにも決死の取材敢行!モズさんの怒りは収まることはないのか!?(いつものように内容は変更の予定大です。)


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