今年一番不幸な映画・・・『Monkeybone』

今年ももう四分の一が終わったワケですが、どうもいけません。面白い映画に出会わないのです。1ヶ月に7本程度、3ヵ月で合計20本ほど見たのですが・・・うーむ。まだ4つ星大絶賛・・・という作品は出てきません。3つ星レベルすら数えるほど。話題の『Hannibal』に至っては笑えないブラックコメディで終わってしまいましたし、本来コメディであるべき作品がほとんど笑えない状況・・・。

そんな中で、ブレンダン・フレイザー(『ハムナプトラ』シリーズ)主演のファンタジー作品の予告編が目に止まり、藁にもすがる想い(笑)で鑑賞することとしました。そのタイトルは・・・『Monkeybone』

マンガ作家であるブレンダン君の『Monkeybone』というサルのキャラクタ作品のアニメ化が決定。プレビューも大絶賛で、商品化も着々と進行中・・・順調に進んでいたかと思われた彼の人生ですが、プレビューパーティ直後の突然の交通事故で彼は意識不明の重態になってしまいます。恋人(ブリジット・フォンダ!)の必死の看護にも関らず、彼の意識は数ヶ月間元に戻ることはありませんでした・・・

さて、そんな中、彼の意識は全くの別世界で活動しつづけていたのであります。そこは、彼自身が創造したこの世とあの世の中継地点。不気味な雰囲気の中で奇妙な住人が跋扈しているその世界で自分の置かれた立場(死にかけていること)が今一つ理解できないブレンダン君は、立ち寄った酒場で自らが作り出した架空のキャラクタ『Monkeybone』の実物に出会うことになります。ようやく自分が死にかけていることに気づいたブレンダン君、この自分の分身とも言える『Monkeybone』とともに、この世界を抜け出すことが出来るゴールデンチケットを盗み出すことを決意します。・・・しかし、そこには思わぬ障害が・・・

というのがストーリーの始まり。おもしろそうでしょ?いや、実際のハナシ、私的には今年見た作品の中でTOP3に入れてもいいくらい笑える作品でした。前半部分の異世界やそこに住むキャラクタたちを描写するSFXも水準以上でしたし、後半、現実世界に戻ってからはスラップスティックの度合いもエスカレート。ギャグ全般として洗練されていないという欠点はあるのですが、映画代金は十分に取り戻せる出来です。ブレンダン・フレイザーのクレイジーぶりや、ブリジット・フォンダのこの作品とは全く相容れない『2枚目演技』のばかばかしさ、異世界の管理人として登場するウーピー・ゴールドバーグ等、役者の演技もなかなかの見物です。

しかし、この映画、公開最初の週末では興行収入がTOP10圏外、公開2週でほぼ全劇場から消えてしまったのです。

ここまで伏せてきましたが、この映画の監督は『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』『ジャイアント・ピーチ』のヘンリー・セレック。監督・主演から考えれば、いくらなんでも、この興行成績は不思議以外のナニモノでもありません。予算的にも75万ドルといいますから、通常のハリウッド大作並にかかっているのですが、製作費の10%も回収できないまま公開を終了してしまいました。

この作品がここまで不遇をかこった原因は、製作配給会社(20世紀FOX)のトップがこの作品製作中に交替してしまって、上層部の腰が引けてしまったこと(無理解ともいう)にあるようです。

1)そもそもダーク・ファンタジー系統は『売りにくい』作品
2)上記ストーリーが観客にアピールするとは思えない

と考えるFOX上層部の横槍で、製作中からトラブル続出。最初のプレビューでその出来に不満だった上層部は監督からこの作品を奪い取って、製作総指揮のクリス・コロンバス(!)に編集をさせたのですが、紆余曲折を経て監督自身が最終的に完成させたようです。

とにもかくにも数々のトラブルを乗り越えて完成したこの作品、公開そのものも当初予定されていた昨年10月から大幅に延期。(考えてみてください。この作品の雰囲気ならハロウィーンにぴったりではありませんか?)なぜか、今年の2月という『興行の谷間』の時期にひっそりと公開されるに至ったわけです。

評論家諸氏もこの作品には冷たく、好意的な評価を下したのは老舗『エンターテインメント・ウィークリー』(B−)だけ。(しかし、逆に壊滅的なF評価もなかったのですが。)これで、まず興行的に成功する芽を摘み取られてしまいます。

さらにこの作品をもうひとつの不幸が襲います。公開時期が決定した時点で、もう2週間しか時間が残っていませんでした。しかも、FOXはなけなしの宣伝費でこの作品を『子供向け』として売ってしまうのです。(『Monkeybone』のキャラクタが子供向けだと判断した?)これは完全な間違いでした。公開2日目に私が鑑賞した際も、数十人いた観客の半数が小学校高学年。彼らにはこのダーク・ファンタジーと大人向けのダーティギャグを理解するにはちょっと厳しかったようです。ほとんど固まってしまった彼らを横目に、場内には引率の大人たちの笑い声がむなしくこだまするのでありました・・・(涙)

ホリデーシーズンには配給・製作会社キモ入りの『超大作』『超娯楽作』が多数公開されて、たくさんのお客さんが劇場に詰め掛けるわけですが、この『Monkeybone』、個人的にはそれらの作品と比較しても見劣りしないだけの内容があったと思います。会社上層部の頭の硬い人たちの無理解がこの悲惨な結果を招いてしまったわけですね。観客の方も、批評が芳しくなく、宣伝で目に付かない作品には見向きもしない・・・これは観客側にしてみれば当然ではありますが。

商業映画を作ることの難しさを改めて感じさせてくれた作品です。同じ時期にはもっと箸にも棒にも引っかからない作品(ケビン・コスナーの強盗モノとか。)が公開されて、それなりにヒットしていたのでしたがね。

こういった状況からは、この『Monkeybone』、日本では劇場公開はほぼ100%無いと推測します。ただ、ビデオに関しては若干はリリースの可能性があるのではないでしょうか?この監督の作品がお好きな方は、是非ともご覧ください。十分に楽しめるはずです。DVDがリリースされたら買ってしまいそう・・・

<次回予告>
次回はアクション映画2本だて!DVDでリリースされた『Roughnecks』という『スターシップ・トゥルーパーズ』のCGアニメバージョンとロバート・デ・ニーロの新作刑事アクション『15minutes』を紹介しましょう。(予定)夏のブロックバスター作品までやっぱ地味な日々が続きます・・・


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