映画版を超えたTVシリーズ?!・・・『Roughnecks』

皆さんすでにご存知のようにもう一本のコラムを担当されているモズ中野さんが今月号の原稿を最後にしばらくこのウェブマガジンからお別れとなります。(涙・・・でも、すぐ復帰するハズです。・・・キッパリ断言。)そこで、モズさんに敬意を表して、今回は私もDVDネタでまいりましょう!(単にネタがなかっただけ・・・っじゃないっすよ!)

さて、本題。ポール・バーホーベンはお好きでしょうか?代表作だけでも『ロボコップ』『ショーガール』『インビジブル』・・・と変態好きにはたまらない作品が簡単にリストアップできますね。私のベストは昆虫(バグ)エイリアンと地球人の死闘を描いた『スターシップ・トルーパーズ』ということになりますでしょうか。『宇宙を舞台にしたメルローズ・プレース(注1)』ともいうべきSF戦争映画に似合わないそのストーリーにハインラインになる原作ファンの方は激怒されたことと推察いたします。しかしながら、ゲテ好きの私にしてみればお楽しみの玉手箱のような作品で、劇場公開時にはゲラゲラ笑わせていただき、バーホーベン先生の偉大さにひれ伏した次第であります。

でまあ、私のような一部変態筋(爆)以外からは総スカンを食った雰囲気すらあるこの作品ですが、実はTVシリーズが製作されていたということをご存知でしょうか?その名も『Roughnecks - Starship Troopers Chronicle』・・・長い。映画の勢いで製作総指揮にバーホーベンを据えたこのシリーズ、どこでどう間違えたのか、1999年にアメリカ一部地域で子供向きのチャンネル(おいおい)で早朝に放映され、当然ながらほとんどのガキには見向きもされずにその短い命を終えてしまったのでした。しかしながら、その作品の出来から一部ファンの間ではカルト的な輝きを放っていたのです。(実は私もTVでは一回だけ見たことがあります。)

そんな伝説的なこのシリーズの初期5話、『プルート会戦』を描いたエピソードが今年の3月に、なんとDVDとしてリリースされましたので、早速鑑賞してみました。

多少は原作に忠実になっているかと思いきや、人物やその関係については映画の雰囲気をそのまま引きずってます。(例の兵士募集のCMも登場!)しかしながら、間断無く続けられる戦闘そのものを中心に描いているため、メロドラマの大半は消えてなくなって、ハードな戦記ものを思わせる仕上がりになっています。

ストーリーはRoughnecks小隊に随行するTV局カメラマンの目を通じて、ドキュメンタリーっぽく進行していきます。バグエイリアンたちとの初の本格的な戦闘にあたるこの『プルート会戦』では、正体不明の敵に立ち向かう兵士たちの不安もそれなりに描かれており、映画で感じられたノーテンキさは微塵もありません。すっげーハードです。地球人も映画の時よりはかなり戦略面で進化したらしく(爆)、バグとも互角に戦えるようになりました。

おっと、肝心なことを言うのを忘れてました。この作品、実はフルCGアニメなのでございます。『スタートレック』のTV版のようなチープな雰囲気にせず、低予算でこの世界を作り上げるためには当然の選択であったと考えます。しかしながら、TV作品でなおかつ1998年頃に製作された・・・という面から、そのクオリティには若干ツライところが。例えば
・宇宙船に重量感が全く無い
・戦闘服を着ていない通常の人間の描写が安手のTVゲームキャラにしか見えず、表情がぎこちない。
・ヒロインが可愛くない(爆)
等の問題点があります。

しかし、それでも各エピソードには「おおっ」と感嘆する映像が必ず含まれていますので、これらの欠点をいつの間にか許している自分に気づくはずです。個人的には銃弾の航跡の描写にしびれました。はい。しかも、DVD化に際して、ドルビーデジタル5.1chまでフィーチャーしてくれてますので、ホームシアターで鑑賞すれば、こんな欠点は吹っ飛んじゃうでしょう。

さてストーリーに戻りましょう。基本的にはカメラマンの視点で主人公Ricoの戦士としての成長ぶりを描きながら、エイリアンバグの謎や生態を徐々に明らかにしていきます。Ricoとヒロイン二人の色恋沙汰も描かれてはいますが、映画とは異なり非常に影が薄いです。映画ではマイケル・アイアンサイドが演じた小隊長も性格はそのままでますます渋く描かれております。そして、数々の戦闘を乗り越えて、この初戦『プルート会戦』に勝利したかに思えた地球側小隊の前に現れたのは・・・ってことで、シリーズものなので中途半端なところで終わってしまったのが残念ではありますが、このラストシーンを見た瞬間に「続きが見たい!今すぐ!」と思ったのも事実です。

TVシリーズ5話分をそのまま100分にまとめてあるため、各エピソードでストーリー構成と画質の仕上がりにバラツキがあります。また、音楽にかける予算があまり無かったのか、音楽そのものはちょっとショボイ感じも否めません。しかし、TVシリーズとしてこれだけの作品を仕上げたことは賞賛に値します。「TVショーとしては空前の出来」と絶賛するファンの声もあながち大げさとは言い切れないものを感じました。私自身も是非続編が見たいので・・・皆さん買ってやってください。(笑)

あ、もう一点映画版との違いが。このTVシリーズでは映画には一切登場しなかったモビル・スーツ・・・もとい!パワード・スーツが登場いたします。この辺の描写もSFファンの心をくすぐってくれます。映画版が嫌いじゃない人は是非ともアメリカから仕入れましょう!(日本語版の発売はあるとは思えませんし。)

うーむ、今回はロバート・デニーロの新作刑事モノ『15minutes』も紹介したかったんですが、この『Roughnecks』だけで紙数が尽きてしまいました。『15minutes』は夏には日本で公開されるはずですね。アイデアは重要なファクターだけれども、それだけでは映画は成立しないってことを如実に示す作品であります。重大な欠点はありますが、それなりには面白いので是非ともこちらもチェックしてください。

さて、次回はいよいよブロックバスターの夏が到来します。今月だけでも『ハムナプトラ2』『パールハーバー』『シュレック』等、アメリカの劇場は話題作ラッシュです。これらの作品の中から、1−2本選んで速報体制でお届いたします!それでは!

(注1)『メルローズ・プレイス』・・・アメリカで人気だったトレンディドラマです。(WOWOWでも放映されてました。)開始直後はとあるアパートで繰り広げられる普通のラブストーリーだったのが、いつのまにか路線変更。陰謀と愛欲が渦巻くギトギトしたサスペンス風展開に。最後の方ではこのアパート自体をふっ飛ばしたとか、ふっ飛ばさなかったとか。(爆)


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