2001年夏・ブロックバスター速報・・・
『ハムナプトラ2』『シュレック』『パールハーバー』

アメリカの映画興行界は今が一年でもっとも忙しい時期です。5月上旬から7月下旬にかけては学生の夏休みやホリデーシーズンに合わせて、大作映画・・・いわゆるブロックバスターが毎週のように公開されます。今年も5月だけで『ハムナプトラ2』『シュレック』『パールハーバー』の3つの超大作が公開され、どれも記録的なヒットになっています。今回は速報版として、これら3本のレビューを一挙お届けしましょう!

■ハムナプトラ2・黄金のピラミッド(原題:The Mummy Returns)
監督をはじめ、主演陣のほとんどすべてが前作からキャリー・オーバー。新たなキャストと言えば、主役二人の間に出来た子供ともう一人(秘密)くらいでしょうか。したがってストーリーも前作の因縁をそのまま引き継いだ形になっていますので、前作を見てからの鑑賞をオススメします。

作品の出来自体は良くも悪くも『ブロックバスター作品』を超えられませんでした。それなりに予算を投入して見せ場はたくさん用意されているのですが、全部が全部効果的なわけでなく、何となく見終わった後に満足感に欠ける・・・という印象です。

音響・音楽面では今年ダントツの一本であるのは間違いないのですが、VFXが予想以上に出来が悪いです。お定まりの群集シーンや街を走るミイラ(爆)のCGなどは水準かと思うのですが、物語のカギとも言える乗り物と最後のクリーチャー(これは秘密)にリアル感が全く感じられないのが最大の欠点でしょう。特に最後のクリーチャー全部をCGIで準備したためにその存在自体がペラペラになってしまいました。ILMはこの点では反省が必要かと思います。実写合成→デジタル処理すれば良かったのに。それと、相変わらず水の表現がヘタクソです。スターウォーズのエピソード2の準備でスタッフ不足なのか?

とはいえ、2時間10分の長尺をそれなりに見せきってはくれたのでまずは合格。★★★☆をあげておきましょう。なんか雰囲気はどんどんインディー・ジョーンズに近づいていってますけれど。

アメリカの観客の反応は好意的でラスト近くでは何度も拍手が起こっていましたが、私には拍手するほどのもんか?って感じでした。

■『シュレック』(原題:Shrek)
『パールハーバー』が公開されても客足が落ちない、脅威の粘り腰を見せているファミリー向けの一編、ドリームワークス製作のフルCGIアニメです。シュレックという名の緑色のクリーチャーとプリンセスの恋物語を数々の童話と映画のパロディに載せて描きます。

声優陣にマイク・マイヤーズ、エディ・マーフィ、キャメロン・ディアズ、ジョン・リスゴーとまあ個性的な面々を配して、それだけでも期待させます。

冒頭、『オースティン・パワーズ』を彷彿とさせるバッチいシーンが続いたのでどうなるのか?・・・とヤキモキしましたが、後半は美しい画面が続いてまずは一安心。声優の布陣からして、もう少しダーティでアダルト向けかな?と考えていたのですが、いくつかのパロディシーンやミュージカルシーンを除いては、ごくごく普通の子供向け童話風。(多少の残酷さも童話ならでは。)大人もそこそこ楽しめるとはいうものの、これではほとんどディズニー作品で、ドリームワークスのアイデンティティはどこにあるのでしょう?

CG面ではいわゆるクリーチャーたちは十分なめらかな動きをしているのですが、人間になると違和感が。もちろん、リアルな動きを追求しなきゃならないという作風でもありませんので、許容範囲ではあります。(意図的かもしれませんし。)

それぞれのキャラクタは声優を意識した面構えになっているようですね。特にプリンセス(キャメロン・ディアズ)と王子様(ジョン・リスゴー!)は雰囲気そのまま。エディ・マーフィのロバさえ彼に似たところが感じられます。

音響面はその場の雰囲気(環境音)を再現することを重視した作りになっていて、好感がもてました。牧歌的で静かなシーンが多いのでこれは非常に効果的だったようです。冒頭の音楽が『久石・Mononoke・ジョー』風だったのはご愛嬌。(笑)

大人の方には食い足りない面もありますが、安心して子供さんにも見ていただける良質の作品に仕上がりました。上映時間も90分以内。お子さんが飽きる前に終わってくれるので、その意味からもファミリー向け。評価は★★★☆!

■パール・ハーバー
アメリカに住む日本人・日系人に『ジャパン・バッシング再燃か?』と危機感を抱かせた問題作・・・ってなそんな高級な作品ではありません。単に『アルマゲドン』『タイタニック』『キャストアウェイ』を3で割って真珠湾奇襲でごまかしたストーリー。(爆)

とにかくヒドイ映画です。(笑)ここまでヒドイとは思いませんでした。
ホントに考えて書いたのか?と思われるステレオタイプの脚本。タイタニックを意識したシーン。ポイントをハズしたストーリー構成。いまどきこの描き方をするのか?というような日本の描写。もう、ワザとですね、きっと。ここまでくると。さらにはルーズベルト大統領(ジョン・ボイト)の繰り返される『国威発揚発言』(激爆)等、枚挙に暇がないとはこのことです。

しかし、3時間の長丁場、私は大いにこの映画、堪能してしまいました。これで8ドル50セントは安い!2年前のアメリカでのスターウォーズ体験がぶっ飛んでしまうほどでした・・・いろんな意味で。

冒頭、延々と青春ラブコメが続き、どうなるかと思いきや、主役のベン・アフレックはヨーロッパ戦線へ。ここでの独空軍との戦闘シーンはまあ小手調べ。それでも、ドッグファイトはやっぱりプロペラ機に限るなあ・・・と思わせるに十分です。

その後、「いまさらこれやるか?」という内容のありきたりの単調な物語が続いたあと、いよいよ真珠湾攻撃。その間、日本側連合艦隊の司令部がちょくちょく出てきますが、日系のアメリカ人(山本長官を演じる長老マコ岩松とハリウッド映画で良く見かけるTagawaさん等)しか登場しないもんで、日本語がヘン。(笑)『シン・レッド・ライン』の日本人はちゃんとしゃべってたよなあ・・・と思うほど。劇中に登場する小物の漢字は間違いだらけだし。誰もチェックせんのか?『破環』って一体何よ?

真珠湾攻撃のSFX映像と音響はかなりの迫力であります。これだけでもこの作品の存在価値はあるのかな?と思いますね。で、このあたりから一部アメリカ人観客の反応がスゴクなってきます。ゼロ戦の攻撃になすすべも無くやられていくアメリカ人に何となく観客の怒りのオーラが感じられる前半。うってかわって主人公たちの反撃によりゼロ戦が叩き落とされるたびに拍手が起こる後半。ただし、全員がそうなるわけではなくて、半数以上の観客には「拍手するのもなあ・・・」という戸惑いがアリアリと見て取れます。劇場はこれまでに体験したことのない微妙な雰囲気に包まれていきます。

ところが、この後がいけません。「やられたらやりかえせ」ってのは如何にもアメリカらしくていいんですが、日本への報復攻撃の準備を一から描くもので、冗長なこと。その間、ジョン・ボイトが煽る、煽る。そのくせ肝心の日本攻撃は一体何をしに行ったのか、よく判らない。映像的にも真珠湾攻撃よりはかなり地味で見劣り。(それでもSFX的にはスゴイのですが)そこへまた、お涙頂戴のストーリーが加わってきて、ほとんどドッチラケ。アメリカ人も失笑。完全に物語はポイントを見失ってしまいます。・・・しかし、これでもアメリカ人の女性は泣くんですわ。横のおばちゃんのすすり泣きがウルサイ、ウルサイ。

ラスト、ある意味で落ちつくところへ落ちついていくのですが、約3割の観客からは拍手が沸きました。残りのアメリカ人は「うーむ」といった感じ。結局『アルマゲドンinハワイ』で終わってしまったのが如何にもマイケル・ベイ監督作品。面白い映画を撮る人ですが、最近はどんどんストーリーに工夫が無くなってきて、今回は大味を通り越してます。エンド・クレジットが始まった段階で思わずつぶやいてしまいました。「ひっでー映画。」・・・ハリウッドにもう一度奇襲をかけてやろうかとまで思いました。

しかし、この雰囲気が体験できたのはやはりアメリカで見たからこそ。日本では、観客は一体どんな反応を示すのか、興味津々であります。失笑の嵐の可能性もありますねー。日本人にはある種『国辱映画』に近いものがありますので。日本公開版は日本人の心情を考慮してかなり内容が変更されるとのことですが、そんなことしたら、この映画の日本側を描いたシーン、全部カットしなくちゃならなくなります。・・・その分、短くなっていいか。

日米開戦の真相は!?といったような内容をウンヌンするのでなく、完全なイベント・ムービーと化してしまったのはやや残念ですが、いろんな意味でノーテンキで私には楽しい映画ではありました。反日感情を懸念する向きもありましたが、この単純な内容なら心配無いような気がします。はい。

評価は音響・音楽・SFXは★★★★。脚本・構成は星半分。一見の価値はありますので、友人・ご家族とお出かけください。次の日の朝まで話題が尽きることはないでしょう。(笑)

さて、駆け足でお届けしてきましたが、アメリカの夏はこれから。『エボリューション』『トゥーム・レイダー』『ファイナル・ファンタジー』『猿の惑星』とSFファンなら無視できない大作群が次々とやってきます。次回も速報版でこれらの作品から何本か紹介します!


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