ちょいとそこ行くお兄さん、そうそうあんただ、損はさせないからまあこちらへおいで。こいつはDAIGOといってな、超最高級のバイオクリーナーだ。こいつをほんのひとたらし、頭のてっぺんに振り掛けるよ。するとまもなく、表面張力ゼロの摩訶不思議な液体がとろーりとろりと流れ出す。まずは髪の毛全体に沁み込んで汚れを落とし、ふさふさのつやつやにしてくれる。それから毛穴を通り頭蓋骨も通り抜け、なんとまあこいつは脳味噌にしみとおってな、しわの一本いっぽんにこびりついた記憶のヤニや雑念をきれいさっぱり洗い流してくれる。それだけじゃあ終わらない。頭の洗濯を終えたら首から胸、腹から足へと順に沁み込んでは汚れを吸い取ってくれるんだからありがたいじゃないか。百と八つの煩悩を洗い拭うってえ寸法よ。さあもうおまえさんの足元まで流れ落ちてきた。え、なにも見えないって? おまえさんの足元にあるその黒い影、そらその影法師、それがDAIGOのなれの果てさね。いよっ、一丁あがりぃ!
男がぽんと手を叩くと若者はでく人形のように地面に転がった。血色を失いのっぺらぼうになった若者をひょいと肩に担ぎ、男はどこへともなく立ち去っていった。
(了)
「本作品はASAHIネットの超々短編広場