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カテゴリー別アーカイブ: アンソロジー
『大阪SFアンソロジー』『京都SFアンソロジー』
『大阪SFアンソロジー OSAKA2045』正井編、谷脇栗太装画・装幀 2023.8.31、社会評論社、1500円(税別) 収録作: 「バンパクの思い出」北野勇作 「みおつくしの人形遣いたち」玖馬巌 「アリビーナに曰く」青島もうじき 「チルドボックス」玄月 「Think of All the Great Things」中山奈々 「秋の夜長に赤福を供える」宗方涼 「復讐は何も生まない」牧野修 「みほちゃんを見に行く」正井 「かつて公園と呼ばれたサウダーヂ」藤崎ほつま 「アンダンテ」紅坂紫 『京都SFアンソロジー ここに浮かぶ 景色』正井編、谷脇栗太装画・装幀 2023.8.31、社会評論社、1500円(税別) 収録作: 「京都は存在しない」千葉集 「ピアニスト」暴力と破滅の運び手 「聖地と呼ばれる町で」鈴木無音 「おしゃべりな池」野崎タラ 「第二回京都西陣エクストリーム軒先駐車大会」溝渕久美子 「立看の儀」麦原遼 「シダーローズの時間」藤田雅矢 「春と灰」織戸久貴
カテゴリー: FC探訪用, アンソロジー, 著者インタビュー関連書籍
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超短編アンソロジー
『七角錐結晶体』編集・発行:松岡永子 ミズタニカエコさんのペン画に、それを見て七人の作家が書いた超短編集。(7の作家だから7角錐:柴田友美、タカスギシンタロ、タキガワ、たなかなつみ、春名トモコ、松岡永子、松本楽志) 先にイラストが出来ていて、それを読んで短編を書くというのは、『逆想のコンチェルト』などでもお馴染みの技なのですが、それを超短編で試みた一冊です。 「アニマ・ソラリス」でもお馴染みの、たなかさんに送って頂きました。 たなかさんの「円環夢」は、イラストを見ながらなるほど・そっかそうきたかと、うなずきながら楽しく読みました。で、読み終えてから気が付いたのですが、先にイラストだけ見て、色々想像をめぐらし(自分ならこういう風なショートショートを書くとか)、それから超短編を読むと二度美味しい(笑) 編者の松永さんのブログはこちら 超短編フリーペーパー『コトリの宮殿 7号』 発行日:2013年5月24日(金) 『コトリの宮殿』ホームページで、全文が読めます。 たなかさんは、「いつかどこかのものがたり」を連載されてます。深井悠さんは、岡山出身の方なんだろうかと、ふと疑問が…… 超短編に興味のある方も無い方もぜひ読んで下さいませ~。
『原色の想像力 2』大森望・日下三蔵・堀晃編
大森望・日下三蔵・堀晃編 岩郷重力+WONDER WORKZ装幀 2012.3.23発行 東京創元社 980円 ISBN-13: 978-4488739027 収録作: ○空木春宵「繭の見る夢」(第2回創元SF短編賞 佳作) 堤中納言物語の「虫愛づる姫君」へのオマージュと思いきや、意外な展開に――まあ創元SF短篇賞応募作ですから(笑)カミさんが国文科卒なので、ちょっと読ませてみたら、雰囲気は非常に出ているそうな。SFは読まない人なので、どういう展開なのかはさっぱりわからなかったようですが。SF界隈でも、笑犬楼さまをはじめとし、いとうせいこう氏や笙野頼子女史、飛浩隆氏など「ことば」そのものが題材の作品が生み出されているし、この展開はありかなと。雅なことばで紡ぎだされるイメージは華麗で、小説世界を堪能できました。なおBLなところもあり、思わぬ事にちょっとドキッとするところも(汗;) ラストの進行そのものは、時代絵巻というよりなんか電脳世界を思わせますね。平安時代の電脳世界、東野司さんが国文科卒だったら……(笑) ○わかつきひかる「ニートな彼とキュートな彼女」 ホームネットワークサーバー機能がついた独身者専用公団アパート。巷では、そこにはいると引きこもりになってしまうと敬遠されていた…… ちょっと洒落たレトロな味の短編。筒井先生の展開は違うけど「お紺昇天」のアパート版といったところかな。こんな気の利いた機能のついたアパート、みんな入りたいと思うけど、更にニート化は進むよ(笑) ○オキシタケヒコ「What We Want」 SFファンには一押し作品。たった一人生き残った大阪弁をしゃべるアメリカ人の女性船長と雇われた異星人の珍道中。この船長はんのキャラが強烈で、可哀想な異星人ちゃんは度重なるストレスで……。ラリイ・ニーヴンの《ノウン・スペース》に出てくる宇宙人も、いい加減地球人にカモられている気がしますが、さらに悲惨かも(笑) ジョン・ヴァーリイ描くところの宇宙人に支配された《八世界》を舞台に、野田昌宏大元帥の描くところの銀河乞食軍団的な柄の悪さ(まあ、こちらは”べらんめえ”口調ですけど)をつけ加えた感じと言えば、あながち間違いではないような(笑) それにしてもオキシさん、「地底種族ゾッドゥリードが通商網に加入した経緯」物語、ぜひ読ませて下さいよ!! ○亘星恵風「プラナリアン」 『原色の想像力 1』に掲載された「ママはユビキタス」の作者、亘星恵風さんの第二弾。ちょっと芸風が違う(?)かな。前作は精神的な愛で、今回は肉体的な愛がテーマと考えるのはちと穿ちすぎか(笑) 設定部分で、傷の治りの早い人間同士を交配して、究極の兵士を創り出す実験というのが出てきますが、これがなかなか考えられて面白い。《リングワールド》シリーズの、幸運の遺伝子を持つ者同士の交配実験に比べれば、まだしも納得できる。ま、ネタとしての面白さでは負けますけど、SFの範疇でしょう(笑)で、傷の治りは段々早くなるのだけど、癌に罹りやすくなり子供が出来る年齢まで生きられなくなってくるというもの着想がいいですねえ。たぶん、癌細胞の旺盛な再生力(生命力)からの連想なのでしょうが、説得力がありますよね。 ○片瀬二郎「花と少年」(第2回創元SF短編賞 大森望賞) 今回一番の異色作。突然頭のてっぺんに花が生えてきた少年と、何もない空中から迫り来る怪獣の話なんですが、この二つが結びつきそうで結びつかないという。 大森望さんが選評で、「選ばれし者、特殊な能力を持って生まれてきた人間が未知の敵と戦う」という図式へのアンチテーゼであると言われてますが、まさにその通りですね。ま、SFとして読むと、真面目なSFファンは怒るかも(笑) 作者も、一般的な超能力じゃなくて、“頭のてっぺんに生えた花”を持ってくることで、“違うのよ”と言ってるような気がします。それともこれは、NHKアニメの「はなかっぱ」からの連想?。ま、どちらにしても脱力系か(爆) ○志保龍彦「Kudanの瞳」(第2回創元SF短編賞 日下三蔵賞) おどろおどろしい超能力(予知)もの。作者の名前は、澁澤龍彦先生へのオマージュなのかなあ。渋澤先生が書いたSFと言われても納得しそう。主人公のKudan(未来予知のために人工的に創り出された人間もどき)へのほのかな慕情がけっこう好みでした。 ○忍澤 勉「ものみな憩える」(第2回創元SF短編賞 堀晃賞) 前半の導入部の自然さというか巧さは特筆モノ。現実からいつのまにか自分の覚えている過去にもぐり込んでいくという趣向では、重松さんとか平谷さんの作品を思い出しますが、忍澤さんも上手いなあ。で、そのままと思いきやパッと視界が開けるようなラストも良くできてます。小松左京先生が「こういう宇宙」で書かれた鮮やかな場面転換を見るようでした。 ○酉島伝法「洞(うつお)の街」(第2回創元SF短編賞 受賞後第1作) つまるところ異様な世界でうごめく異様な生命体の話。椎名誠さんのSF三部作でやったグロテスクな異世界の更に上を行く異様さが読みどころ。梗概には、恒星船が舞台だと書かれているそうなので、それをふまえて読むとさらに面白く読めます。 短篇賞受賞作の「皆勤の徒」の選評で、分かりにくいとか、読者がどこへ連れて行かれるか不安であるという意見が出ていたのが理由かどうかはわかりませんが、「洞(うつお)の街」は、ちょっと人間に近づいてきた感じもありますね(笑) … 続きを読む
『原色の想像力』大森望・日下三蔵・山田正紀編集
岩郷重力+WONDER WORKZ装幀 2010.12.24発行 東京創元社 1100円 ISBN-13: 978-4488739010 収録作: ○高山羽根子「うどん キツネつきの」(第1回創元SF短編賞 佳作) 変な小説です。生まれたてのヘンテコな仔犬を拾った三人姉妹の日常を描いた作品。題名もヘンテコですが、読み終えると正に題名通りの短編だったことに驚くという……(笑)読み返さないとわからない伏線が多々あるので、二度読みは必須です。 昔のニューウェーブ作品で、パミラ・ゾリーンの「宇宙の熱死」という短編がありまして、上下二段組みで、片方に熱力学法則を、もう片方に普通のオバサンの日常生活が書いてあって、その対比というか相関具合が格好良かった。 この「うどん キツネつきの」は、その片方(日常生活部分)だけを取り出した短編だと考えると、我々オールドファンにはわかりやすい(笑) つまり、二度目は解説部分を補完しながら読むんですな。うどんと名付けられた仔犬の出自とか、どうやって地球にやってきたか、どういう生命体がどんな文明を持っているかとか、どこに説明を持ってくるかも考えながら読むとまた面白いですね。 基本的には『スター・トレック モーション・ピクチャー』のボイジャーを送り返してきた機械生命体が、何年後かに地球を訪れるみたいな話という理解で良いのかな?(笑) ○端江田仗「猫のチュトラリー」 人間を介護するロボットに猫の鳴き声を日本語に翻訳するソフトを入れたら、ロボットが捨て猫を拾ってきて、あまつさえその猫を人間扱いするようになった……。人工知能におけるコミュニケーション問題を、最愛の妻を亡くした男性と亡き妻の母親のコミュニケーションに投影した洒落た短編。まさに、古い酒を新しい革袋に入れたような。 ○永山驢馬「時計じかけの天使」 「いじめ」問題解消のために文科省が法案化したのは、「いじめ対象型アンドロイド」の導入だった。ということで、いじめにあっている堂島百合の通っている学校に、転校生がやってきた。作者が頭の中で何度もシミュレーションして書いたと思われる、そのアンドロイドと思われる転校生が来てからの学校生活の描写が面白い。周りの人間が人間だと思えば、それは人間であるということを、作者はいじめ問題を通して書きたかったような気がしました。 ○笛地静恵「人魚の海」 光砂により巨大化する瓢箪島の女達を巡る冒険譚←じゃなくて、巨大女性に対する憧れを描いた短編ですよね。で、この巨大女性ってのは、幼稚園とか小学校低学年のころに、女先生に対する憧れを抱くことがあるじゃないですか、母親以外の女性を初めて異性として意識する頃が。幼稚園児にとって先生というのはとても大きい存在じゃないですか。その感性を大人になっても持ち続けられている作家の方なのかなと思い読み直すと、面白かった。本当のところはよく分からないけど(笑) ○おおむら しんいち「かな式 まちかど」 ひらがなが一個ずつ自意識を持った世界の話(二次元の世界)。字面を見た印象だけで性格付けしてあり、これが爆笑もの。まあ読んで納得のこの性格設定だけでも傑作です(笑)こじつけもあるけど、なるほどそう来たかとニヤリ。かんべむさしさんが昔書いた傑作と言われたら信用しちゃうな。←あ、お名前がひらがなだ(笑) ○亘星恵風「ママはユビキタス」 唯一の宇宙(?)SF。実質的な登場人物は世代型宇宙船に一人だけ生き残った少女の話なので、「リスの檻」的小説といっていいかも。広く薄く遍在するママのイメージに、ちょっと頭がクラクラした。元々の設定は、『ヴァレンティーナ』とか『そして人類は沈黙する』とかのWeb上に遍在するAIなんだけど、それとママと「彼」の愛、主人公と「母さん」の親子愛を結びつけたところが非常に上手く書けてる。また、脳をシミュレートすると一万年かけて、やっと一時間を生きた気がするというところも、SFファンにはたまりませんなぁ(笑) ○山下 敬「土の塵」(第1回創元SF短編賞 日下三蔵賞) ひょっとして作者は理系版「たんぽぽ娘」を書こうとしたのかな。切ない恋心は良く出ているんで、タイムスリップ・ロマンスがお好きな方にはお薦め。タイムトラベルに関するところは色々工夫されていて面白いんだけど本当に、書きたかったのは主人公と“まりあ”のロマンスなんじゃないかなぁ。 ○宮内悠介「盤上の夜」(第1回創元SF短編賞 山田正紀賞) インタビューがあるんで、よろしくお願いします。 SFファンには、囲碁版『歌う船』と説明しておこう(笑) http://www.sf-fantasy.com/magazine/interview/120801.shtml http://www.sf-fantasy.com/magazine/interview/120901.shtml ○坂永雄一「さえずりの宇宙」(第1回創元SF短編賞 大森望賞) エッジの効いたカッコイイ作品。よく分からないけど、なんか凄い(笑)円城塔さんの短編に似た雰囲気のものがあった。オールドファンには、石原博士の『宇宙船オロモルフ号の冒険』の、よく分からないけどなんか凄い闘いが行われている感を思い出していただければ、あながち外れてはいないと思います(笑) ○松崎有理「ぼくの手のなかでしずかに」(第1回創元SF短編賞 受賞後第1作) こちらもインタビューがあるので、よろしくです。 … 続きを読む