河野咲子先生関連本

河野咲子先生の作品・活動記録は、ご自身の「note」にまとめられてます。
ここを見れば、見落とすことはないので便利です。
ということで、各作品へのリンクは、「note」を参照下さい。
「水溶性のダンス」書影「水溶性のダンス」河野咲子著
2023.2.10、(株)ゲンロン、Kindle版385円
第5回ゲンロンSF新人賞受賞作品
からくり仕掛けの骨格に、パルプ鉱でできた肉をまとった人びとが暮らす街。
ある雨夜、からだの修復を行う「人体師」のわたしは、
体内に「強い言葉」を持つ踊り子に出逢う──。
敢えて分類するとすればハイ・ファンタジー。水分に弱いからだを纏う人形たちの生命活動はどうなっているのだろうかとか、タバコを吸う行為はいかにしてなしうるのかとか、そこらあたりの末梢はどうでもよく、作者の描く不可思議な世界にどっぷりとはままり、紡ぎだされたイメージが予想外に絡み合い展開していく様に身を任せる心地よさ。
ことさらシンボリックな意味合いを考えなくても十分に楽しめる物語の強度を持った作品だと思います。


『SCI-FIRE 2022』『SCI-FIRE 2022』特集:インフレーション/陰謀論
【創作:陰謀論編】
「安らかなる彗星」河野咲子著
 宇宙空間で死を迎えることを望んだ乗客だけが乗り組んだ宇宙船<彗星>での物語。
 主人公は乗客の中ではひときわ若い年齢の女性なのですが、右上の奥歯のあたりに欠落の感覚があり、いつもそこを舌でまさぐるのが癖になっています。その感覚と居たのか居なかったのか定かではなくなっていく夫の存在との対比が面白い。歯が欠落した後、喪失感というかぽっかり穴の空いた感覚が長い間残っていて慣れるのに時間がかかるというのは比較的よくみられる症状なのですが、口腔内の空間が記憶(実際は舌と頬の内側でしょうが)しているような感じがあります。著者は、この感覚を突き詰めていくことによって元の存在がどうであれ、喪失の記憶を緊密に積み上げることによってそこにあった(あるべきな)姿形を構築でき、それはかつて実際にあったものとして認識できるのではないかという問いかけを呈示しています。これは凄い。こんな風に考えたことはなかった……


第5期生卒業文集
★座談会『SF創作講座黄金世代のつどい』河野咲子×新川帆立×竹田人造×田場狩
うかがいたいことは大体出てきているような気がしてます(汗;)
河野さんと新川帆立さんが同じ大学出身ということは、お二人とも東大なんですね。ご専攻がどういう分野だったのかがちょっと気になります。
★テーマ短編 : チャレンジ編
★テーマ短編:リベンジ編
★フリー短編
「みそかあめのよ」河野咲子
冒頭“年にいちどの真夏の夜、谷におしゃべりな雨が降る”ということで、比喩的表現ではなく、喋る雨が降る里のお話しです。SFぼい設定だと、今年一年のスマホでのすべての人間のすべての会話が渾然一体となってスピーカーから聞こえてくる感じということになるのだろうか。
もちろん河野さんはそういう野暮な設定にはせず、「みそか雨」という詩的な現象を紡ぎ出してくる。そういう不思議な自然現象に身を任せて溺れていく心地よさがあります。


『文藝 90th』『文藝 90th』2023年春期号
創刊90周年記念号「文学の最前線がここにある」
「【連載】文芸季評『たったひとり、私だけの部屋で』2021年10月~2022年11月 問いかけと文学(水上文著)」のなかで、「水溶性のダンス」と「秘伝隠岐七番歌合」について言及があります。


小説すばる2022年10月号『小説すばる』2022年10月号
【コラム】のりがたり「エイになった男の子」河野咲子著
同級生の弟が、どうしても水族館に行きたくてとった行動が……


ユリイカ2012年12月号ユリイカ 2021年12月号
特集=フレデリック・ワイズマン
◆われ発見せり(奥付の上2/3。編集後記と同居)
「棒読みの愉悦をたどる」河野咲子著


ユリイカ 2022年6月号ユリイカ 2022年6月号
特集=ゲルハルト・リヒター ―生誕90年記念特集―
◆散文 「硝子絵画の居住者たち」河野咲子著
ゲルハルト・リヒター《カードの家(5枚)にて》
「ゲルハルト・リヒター 14枚のガラス/豊島」、ここは、ご近所なんですが不定期開催ということで未見。
ガラスというと、空間は物理的に隔てるのだけれど、視覚的には角度により透明から全反射(不透明)まで変化するので素材としては面白いです。「富山ガラス美術館」には行ったことがあるのですが、透明ガラスを使った展示があったかどうかは忘れました(汗;) うちのカミさんが近づきすぎて「お手を触れないで下さい」と言われていたのは覚えている(汗;)


「セリーヌ・シアマと時間SFと余命とゴダールの死を思う河野咲子と近況話す」(ポッドキャスト「みなみしまと雑談と」)
 『秘密の森の、その向こう』の粗筋読んだけど、時間SFなの?と思いwowowオンデマンドで見たら、なるほどそういう時間SFなんだと(汗;)wowowに加入している人は、ログインすると見ることが出来ます。


『ポッドキャスト「羽化とマカロニRADIO」』:「生にとって言語表現とはなにか」を読む:
6. 「歯」のフィクションと語る=噛む身体、あるいは恋愛相談?
“「歯」のフィクション”って何のこと??
対談の中で度々出てくる「無断と土」なんですが、聞いたことあると思ったら、二回は読んでいたのに忘れていた(汗;)一回目は、SFマガジン「異常論文」、それとアンソロジーの『異常論文』と『ベストSF2022』に収録されてました。


「雨カズラの生長」河野咲子著、小説アンソロジー『FFEEN vol.1』収録(https://note.com/ffeen_pub/m/m31e94e586f42)
常に雨が降りどこもかしこも水浸しで、人々は巨大な船で今まで通りの生活をしていくか、高いビルに逃げ込み部屋の中まで入り込んでくる雨雲と共生して生活する人々に別れている。
河野さんの持ち味が良く出たデカダンな香りのするファンタジー。オールドSFファンとしては、バラードの破滅世界三部作の中の一冊『沈んだ世界』を思いおこします。←全世界が水に沈んでしまった世界。
天へと昇ろうとする強い意志を持った雨カズラと、雨雲や雨カズラと同化して、ただたゆたゆと生きていく主人公の対比が面白いです。雨にまみれて膨潤して何も考えずに生きていくのも悪くは無いかなと思わせるのが、河野さんのうまさでしょうね。

雀部 陽一郎 の紹介

SF関係では、東野司さん、橋元淳一郎さん、久美沙織さん、平谷美樹さん、石黒達昌さん、上杉那郎さん、伊藤致雄さんのオンライン・ファンクラブ管理人してます。どうぞ、よろしく。また、懐かしいSFについて語ろうというメーリング・リストも主宰してます。昔は良くSFを読んだが、最近はさっぱりという方は、ぜひどうぞ!(笑) http://www.sasabe.com/SF/
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