門田充宏先生著者インタビュー関連本

《記憶翻訳者》シリーズの粗筋は、最初から順番に読んで頂くと分かりやすいと思います。
粗筋は、ネタバレも考慮して、門田充宏先生の「公式サイト」「WORKS」から大幅に引用してます。雑誌掲載短編、Web掲載短編の粗筋も、公式サイトの「WORKS」にあります。
「風牙」書影「風牙」門田充宏著
2014.8.8、東京創元社、Kindle版、220円
第5回創元SF短編賞受賞作
主人公の珊瑚は過剰共感能力者で、彼らは他人の感情に共感しすぎてしまう特異な体質のために、社会生活に支障をきたしてしまっている。珊瑚は、他人の感情と自分の感情を区別できないレベルの能力者故に、過剰共感能力を抑制するインプラントの助けを借りるまで、自我を発達させることが出来なかった過去を持っていた。生きづらさを抱える彼らの共感能力を生かし、本来はその持ち主にしか理解できない記憶を第三者にも分かるようにする“記憶翻訳”の技術を開発したのが九龍という企業だった。珊瑚はその中でもトップクラスの実力を持つ記憶翻訳者に育った。


『風牙』書
『風牙』門田充宏著、しおんカバーイラスト
2018.10.31、創元日本SF叢書、2200円、Kindle版1935円
収録作:「風牙」「閉鎖回廊」「みなもとに還る」「虚ろの座」
この『風牙』は、以下の二冊に、改題・分冊・増補されて文庫版になっています。
『記憶翻訳者 いつか光になる』は、「風牙」「閉鎖回廊」+「いつか光になる」「嵐の夜に」
『記憶翻訳者 みなもとに還る』は、「みなもとに還る」「虚ろの座」+「流水に刻む」「秋晴れの日に」


「記憶翻訳者」1『記憶翻訳者 いつか光になる』門田充宏著、日田慶治装画
2020.10.23、創元SF文庫、Kindle版、920円
「風牙」
インタープリタとは、個人個人によって独自のものである人の心から抽出した記憶データを“翻訳”し、他者に理解可能なよう立体的に再構築する技能者である。業界トップレベルの女性インタープリタである珊瑚が受けた仕事は前例のないものだった。”潜行”する先は、彼女自身の会社の社長の記憶。しかし珊瑚に先立って送り込まれたインタープリタ3人が、何れも社長の記憶の中で正体不明の存在に襲撃され病院送りとなっていた。社長の記憶世界でいったい何が起こったというのか。珊瑚は”統合サポートシステム”の孫子と共に、社長の記憶世界にアクセスする……
「閉鎖回廊」
珊瑚のもとに、かつて共にインタープリタの導入研修を受け、今はトップクリエイタとなっている由鶴から奇妙なメッセージが届く。「お願い、今すぐ〈閉鎖回廊〉を止めて」。自分が作成した、疑験都市〈九龍〉で最大の人気を誇るコンテンツ、〈閉鎖回廊〉を由鶴は何故止めろと言ってきたのか? 連絡が取れない由鶴の事務所を訪れた珊瑚は、主のいない開発室で、由鶴の過去を巡る九つの記憶が保存されたモジュールを発見する。
「いつか光になる」
九龍の新しい事業、プロモーション用記憶翻訳。その提案者でもあり、記憶データ提供者でもあるハルには人生を賭けた密かな目的があった。ハルと共に新規事業に取り組む珊瑚は、その過程でハルと人生の一部を共有していく。ハルが目指していたものは、そしてその結末は……
「嵐の夜に」
台風で電車が止まってしまった夜、珊瑚はハルと共にオフィスに泊まることになってしまった。嵐の中、少しだけぎくしゃくしていた二人に訪れる、静かで暖かな時間が……

「記憶翻訳者」2『記憶翻訳者 みなもとに還る』門田充宏著、日田慶治装画
2021.2.12、創元SF文庫、Kindle版、950円
「流水に刻む」
疑験都市〈九龍〉の第二階層、二狐。ファンタジイ世界を再現したこの階層に、本来登場しないはずの人間ー少年のNPCが出没する。少年は九龍側の制御を受け付けず、自由に二狐内を行動していた。珊瑚はプレイヤーのひとりとして光の妖精となり、同じくミノタウロスとなった上司の眞角と共に、少年を捕らえるために全力で鬼ごっこを繰り広げることに。果たして少年の正体、そしてその目的は。
「みなもとに還る」
レビューを依頼された疑験都市コンテンツの中で、珊瑚はうなじからどこまでも長く伸びる〈結びの緒〉を生やした子供、マヒロに導かれ、母と名乗る存在と出会う。もういないと聞かされていた母の存在に動揺した珊瑚は、導かれるように〈仮集殿〉と呼ばれる場所へと赴く。そこは、過剰共感能力者たちが肩を寄せ合って暮らす、〈みなもと〉という名の組織の本拠だった……
「虚ろの座」
探偵の調査結果に従い、私は共感能力を礼賛する新興宗教団体、〈みなもと〉へと入信する。それがただひとつ、失った妻と子へと繋がる道だと信じて。だがそこで私を待っていたのは、考えてもいなかった出来事だった。
「秋晴れの日に」
珊瑚は二ヶ月ぶりに〈みなもと〉の仮集殿を訪れ、都や真尋と再会する。珊瑚には密かに心に決めた、小さな目的があった。
(著者談:こちらは「みなもとに還る」の後日談であり、珊瑚の決心の物語でもあります。)

『追憶の社』書影『追憶の社』門田充宏著
2019.5.11、創元日本SF叢書、2585円、Kindle版1834円
収録作品:
「六花の標」
珊瑚が翻訳した記憶データが、ネット上に無制限に公開され始める。急死した料理研究家・雪肌女の最後の日々と、彼女と一緒に暮らしていた少年・仁紀の記憶――それが雪肌女の遺志だからと、仁紀は自分にとって大切な日々の記憶を公開し続ける。その結果、他人の記憶を覗き見ることを楽しむ人間が多く出る一方、記憶データの翻訳自体や、サービス提供元である企業・九龍に対する批判までが起こるようになってしまう。珊瑚は九龍と仁紀を護るため、雪肌女の本当の意図を探ろうするが……
「銀糸の先」
記憶データのレコーディングを実施中のユーザが殺害され、記憶データが持ち去られるという事件が連続して発生する。記憶データはレコーディングされただけの状態では他者は理解できないため、翻訳のためにそのデータは九龍に持ち込まれたのではないかとの推測が流布するが、捜査中であるため九龍はノーコメントを貫いている。そのことが疑念を呼び、また仁紀の事件のあとであったこともあり、九龍に対しての批判が巻き起こる。その対応のため、九龍は自社の仕事を理解して貰うため、若手ジャーナリスト・香月に珊瑚へのインタビュー実施を許可する。あわよくば殺人事件の手がかりを入手しようと考えていた香月だったが、インタビューセッションは彼の予期しない方向に動き出す。
「追憶の杜」
統合サポートシステム<孫子>が作り出した疑験コンテンツのレビュー中、珊瑚は存在するはずのない動的要素を見てしまう。孫子にも、モニタしているエンジニアにも上司にも見えないその存在は、まるで珊瑚を導くかのように姿を見せつつ進んでいく。珊瑚が辿り着いた先には、あり得ないはずの空間と、あり得ないはずの経験が待っていた。


『時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー』東京創元社編集部編、瀬戸羽方装画
2019.10.31、株式会社東京創元社、Kindle 版、855円
収録作:
「未来への脱獄」松崎有理
「終景累ヶ辻」空木春宵
「時は矢のように」八島游舷
「ABC巡礼」石川宗生
「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」久永実木彦
「ゴーストキャンディカテゴリー」高島雄哉
「Too Short Notice」門田充宏



『Genesis 白昼夢通信』創元日本SFアンソロジー Kindle版、2019.12.20、1980円
【収録作】
高島雄哉「配信世界のイデアたち」
石川宗生「モンステリウム」
空木春宵「地獄を縫い取る」
中村融〔エッセイ〕「アンソロジーの極意」
川野芽生「白昼夢通信」
門田充宏「コーラルとロータス」
西崎憲〔エッセイ〕「アンソロジストの個人的事情」
松崎有理「痩せたくないひとは読まないでください。」
水見稜「調律師」

文芸ラジオ7月号「文芸ラジオ7号」、2021.6.1、メタブレーン、1100円
〇Guest Talk 伊藤美来「あまり飾らないで、背伸びをしすぎず、自然体で表現する」
〇特集 陰キャのすすめ
〇特集 虚構旅行 行ったことのない場所に行ったつもりで紀行文を書いてみた
〇小説・散文 門田充宏「社会的舞踏(ソシアル・ダンス)」櫻木みわ「セヴンデイズ」
〇Book in Book 再録 文芸ラジオPetit Vol.03


『蒼衣の末姫』書影『蒼衣の末姫』門田充宏著、シライシユウコ
2021.9.24、創元推理文庫、968円、Kindle版855円
地を這い空を飛び、甲殻で身を固め無数の脚で爪でひとを屠る巨大な怪物、冥凮(みょうふ)が跋扈する世界。翻弄されるだけだった人類は壁を築き堀を巡らせた城塞都市〈宮〉を造り、宮ごとに防衛、工業、商業などと機能を特化することで冥凮の脅威に抗っていた。
十六歳の少女キサは、ひとを圧倒する冥凮を滅ぼすことができる能力を有する蒼衣(そうい)の血を引きながら、僅かな力しか持たないため、冥凮を集めるためだけに、囮として最前線に連れ出されていた。だがある日、冥凮の前例のない攻勢によって作戦は失敗に終わり、キサは人類と冥凮に有毒である水の流れる川へと落下してしまう。
そのキサを救ったのは、生(いくる)という十五歳の少年だった。棄錆(きせい)として大人たちから切り捨てられた生も、命を危険に晒す仕事を毎日続け、懸命に生きてきた存在だった。
自分の命を捨ててでも、ひとという種を繋ぐことを考えねばならない世界で、囮の姫と見棄てられた少年は手を取りあい、蔑まれてきた力と心とを振り絞って、襲い来る脅威、そして課せられた運命に立ち向かう。


『2084年のSF』日本SF作家クラブ編
2022.5.25、ハヤカワ文庫JA、Kindle版、1188円
収録作品:池澤春菜「まえがき」
【仮想】福田和代「タイスケヒトリソラノナカ」、青木和「Alisa」、三方行成「自分の墓で泣いてください」
【社会】逢坂冬馬「目覚めよ、眠れ」、久永実木彦「男性撤廃」、空木春宵「R__ R__」
【認知】門田充宏「情動の棺」、麦原遼「カーテン」、竹田人造「見守りカメラ is watching you」、安野貴博「フリーフォール」
【環境】櫻木みわ「春、マザーレイクで」、揚羽はな「The Plastic World」、池澤春菜「祖母の揺籠」
【記憶】粕谷知世「黄金のさくらんぼ」、十三不塔「至聖所」、坂永雄一「移動遊園地の幽霊たち」、斜線堂有紀「BTTF葬送」
【宇宙】高野史緒「未来への言葉」、吉田親司「上弦の中獄」、人間六度「星の恋バナ」
【火星】草野原々「かえるのからだのかたち」、春暮康一「混沌を掻き回す」、倉田タカシ「火星のザッカーバーグ」
榎木洋子「SF大賞の夜」

小説すばる2019_3『小説すばる』2019年3月号
●私的偉人伝「心のノート」門田充宏作


清水建設×日本SF作家クラブ【建設的な未来】
第2話「理想の小説家」門田充宏作
第18話「恋する海中都市」門田充宏作
●SF Prologue wave
「ミーティエイター」門田充宏作
●日本SF作家クラブ
『楽日』(前編)門田充宏作
●シミルボン
門田充宏先生インタビュー「そもそもSFはあまり読んでいなかった」
●Web東京創元社マガジン
門田充宏『蒼衣の末姫』(創元推理文庫)ここだけのあとがき

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『セックスロボットと人造肉』(「ラブライフ(仮))関連

セックスドールと人造肉『セックスロボットと人造肉』ジェニー・クリーマン著、安藤貴子訳
2022.8.28、双葉社、2500円
「テクノロジーは性、食、死を“征服”できるか」と銘打たれた本書のテーマは、「性愛」「肉食」「生殖」「自死」、それはテクノロジーの、最後のフロンティア。
高性能AIを搭載し、あなたの欲望をすべて叶えるロボットは「完璧な伴侶」になりうるか? 人工で培養した肉は動物たちの権利を守り、気候変動を防ぎ、地球を救うだろうか?
妊娠も出産も、代理母すら必要ない人工子宮による生殖は本当に女性たちを社会的に救うのか?
人間にとって「満たされた、完璧な死」とは何なのか……?

イギリスのジャーナリストが、様々なインタビューを通して見通す未来観を期待して読み始めたのだけど、たぶんSFファン向けではないかも。真面目に取材してあって、そこは好感が持て、現在どういうところまで実現できているかとその問題点をつまびらかにしてあるのだけど、その後への考察が足らない。まあ、それを考えるのがSFだろ?という指摘には同意します(笑)
文中にある“自分を女性とは呼びたくない「彼女(she/her)」という言葉を使って自らを表されるのも嫌だと主張する人物が、まさか、女性の情愛をこれほどまでに誠実に、感動的な言葉で説明できるなんて、こう言うと私自身の予断を白状してしまうことになるが、子どものいないトランスジェンダーの人がここまでみごとに母というものを表現するとは思ってみなかった”とありました。私は、ほとんどわかってないぞと、最初の理解はしましたが(汗;)

科学と倫理の境界でゆらぐ、21世紀の性、食、生、死。生命倫理、暴走する資本主義、ジェンダーとフェミニズム、気候変動、管理社会、ウェルビーイング……様々な命題が複雑に絡み合う最新技術開発の最前線で、気鋭のジャーナリストがその進歩や課題、あるいは華やかなシリコンバレーの起業家たちをはじめとしたプレイヤーの虚実を5年にわたって現場取材し、21世紀の「人間性」のゆくえを考察した、グレーな近未来ガイド。

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「たなかなつみ自作を語る」関連本

夢見る人形の王国『夢見る人形の王国』たなかなつみ著、坂上誠表紙
うのけブックス、480円、2017.9.18、Kindle版
収録作:
1:お祖父さんの昔話/箱のいる風景/記憶のスープ/甘い甘い果実の王国/落ちるための橋/穴売り/あの音/あれは扉である/罰/美しい街/いつもと同じ日々/お誕生日/ひとりぼっちのディングディングドン/顔のない者/名前ありき/逃亡者/風の舞い/氷猫
2:夢見る人形の王国/そこは夢の国/足跡は遠く遠くまで続いている/穴のハンラン/春の鼻を咲かせましょう/あなたとわたしの秘密/幸せな暮らし/孤独な走者の幸せなリレー/過去の堆積は未来へ託される/ごみになる/淀まない水/今日も凍てつく水の中を/夜釣り/一本糸の国/お喋りな街/サミシイ夜の生き物/ヒト型/汗っかきな夫/飴細工の最期/幸せをうる仕事/最後の仕事/蛍光灯/視線/万華鏡幻夢/幕間狂言
3:狩り/穴を掘る/砂人形/虫から魔法を授かった男の話/時を刻む時計/遊び/病院に行きたい病/溺レル夜/酩酊/姉さんの紅/妹/七千の彼女の物語/曖昧村/音の響く街/冬の花園/炎花/手の先/恋ワズライ/欲/十字路/うちの婆/上演


「たまゆらのこえ」『たまゆらのこえ: 超短編小説アンソロジーvol.2』
紅坂紫監修、佳嶋装画、2022.4.2、Kindle版、100円
収録作家:
青島もうじき/朝川葵/阿下潮/いかずち木の実/一寸たす/伊島糸雨/糸川乃衣/稲田一声/入谷匙/鵜川龍史/エリック・フォムリー/大木芙沙子/岸辺路久/きょむ太郎/鞍馬アリス/紅坂紫/小梅田せら/児島成/佐伯真洋/さかな/里崎/猿場つかさ/茶山因/城築月/セシリア・ブルズ(吉田育未)/瀬戸千歳/高橋祐太/たなかなつみ/十佐間つくお/トシヤ・カメイ/中臣モカマタリ/野咲タラ/羽暮/薄荷みんと/化野夕陽/針乃夢史郎/晴/萬朶維基/星詠/堀部未知/御神楽/緑わかめゼリー/森看板/山口静花/山崎朝日/ヨアヒム・ヘイジンダーマンズ/渡邉清文 / 勝山海百合(翻訳)


超短編の世界3『超短編の世界〈vol.3〉』タカスギシンタロ・松本楽志・たなかなつみ編
西岡千晶カバーイラスト、2011.2.7、創英社、1400円
 短編より、短い! 短編より、面白い!
 想像力をかきたてる、新しい文学体験!
「恋」をテーマに500文字以内で描かれた「ものがたり」を集めました。小説のような、詩のような、俳句のような……不思議な「超短編」の世界へようこそ。


「物語のルミナリエ」『物語のルミナリエ』井上雅彦監修、2011.12.20、光文社、895円
「再生」(たなかなつみ作)収録、巻末に監修者による“たなかなつみ”さんの紹介あり。


未来妖怪『未来妖怪』井上雅彦監修、天野行雄オブジェ
2008.7.20、光文社、971円
“未来妖怪燐寸匣(マッチばこ)超短編作家19人集”として、「コノ奥ニアナタノ未来ガ見エマス」(たなかなつみ作)が収録

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藍銅ツバメ先生著者インタビュー関連

『鯉姫婚姻譚』藍銅ツバメ著、Minoru装画
2022.6.30、新潮社、Kindle版1584円
若隠居した大店の跡取り息子・孫一郎は、人魚のおたつに求婚されてしまう。諦めさせるためにも、おたつにねだられるままに御伽話を語る孫一郎だったが、次第にその心は変化していく。人魚と人間が夫婦として暮らせる未来はやってくるのだろうか……。
目次:
一、猿婿
二、八百比丘尼
三、つらら女
四、蛇女房
五、馬婿
六、鯉姫


ソフトカバー書影
『鯉姫婚姻譚』ソフトカバー、藍銅ツバメ著、Minoru装画・挿絵
2022.6.30、新潮社、1600円
ソフトカバー版の書影と、中扉の挿絵(下の方に次の頁の鯉の影が透けて見えてます)、表紙の鱗を模した装幀を並べてみました。


小説新潮2021年12月号小説新潮2021年12月号、特集:ファンタジー
日本ファンタジーノベル大賞2021決定発表:『鯉姫婚姻譚』(抄)藍銅ツバメ
選評:恩田陸、森見登美彦、ヤマザキマリ


『SCI-FIRE 2021』特集:アルコール
【目次】
★ゲンロンSF新人賞正賞 全作家の書下し
高木ケイ「進化し損ねた猿たち」
天沢時生「ナキオ」
琴柱遥「悪魔から盗んだ女」
榛見あきる「大学六年生。密造酒、泥酔オセロ、」
田場狩「酩酊」
河野咲子「みそかごとめく」
★謎のマイクロノベル「食パン小説」
食パンにかな文字をスタンプする―― 雑誌『小学一年生』ふろく「ドラえもんアンキパンメーカー」で、食パンが小説になった!?
北野勇作・飛浩隆・久永実木彦
★書き下ろしアルコール小説・酩酊編
佐川恭一「職、絶ゆ」、今野明広「恋愛レボリューション12」
★書き下ろしアルコール小説・酒怪編
久永実木彦「ガラス人間の恐怖」、吉羽善「或ルチュパカブラ」、
藍銅ツバメ「蛇酒なんて置いてかないで」
★書き下ろしアルコール小説・無重力
谷田貝和男「星を飲んだ話」、中野伶理「金魚酒」、揚羽はな「Pity is akin to Love」
★書き下ろしアルコール小説・禁酒法
進藤尚典「お酒かな」、常森裕介「酔いどれ探偵vs泥酔した容疑者たちvsアルコール検知器」、遠野よあけ「しゅ」
★書き下ろしアルコール小説・壺中天
井上宮「魔法博士と弟子」、稲田一声「掌の怨念」、名倉編「酒売りの少女(ディオニュソス・ガール)」、櫻木みわ「ジョッキー」
★高丘哲次「実録ゴッドガンレディオ VS. サイファイア抗争史」
遠野よあけ「ぼくがダールグレンラジオで果たしたこと」



「小説すばる」2022年4月号、873円
特集「メタバース最前線」
対談:藤井大洋×加藤直人
読切:麦原遼、吉羽善、
「Niraya」藍銅ツバメ
自らの身が焼け、激しい痛みに駆られても、彼は声を発しない。罪人・嵯城はその刑期の中で、〈メタバースの地獄〉での校正プログラムを受けていた。
中国の伝奇小説でもある「杜子春」をベースにしたと作者が語る独自のメタバースSF。


『小説新潮』2022.6月号
特集:オンラインゲーム『文豪とアルケミスト』の世界。2021年に生まれた作家たち。
座談会:新人作家、はじめまして(君嶋彼方、京橋史織、佐原ひかり、波木銅、新名智、藍銅ツバメ)
「春荒襖絡繰」(はるあれふすまからくり)藍銅ツバメ著
双子の姉弟が次々と切り替わる襖絡繰の世界に迷い込むホラーファンタジー


【リンク集】
note藍銅ツバメ
「春荒襖絡繰」2022.5.20日記
日本ファンタジーノベル大賞2021を頂く前後のなんやかんや 1
レビュー
「異類婚姻譚史上、最高の恋 藍銅ツバメ『鯉姫婚姻譚』」大森望
「若旦那と人魚、尋常ならざる愛を描く異類婚姻譚」牧眞司
インタビュー
「昔話や浮世絵がインスピレーションの源?日本ファンタジーノベル大賞受賞作家・藍銅ツバメさんインタビュー」中野昭子
「襖から異界へ!徳島出身の作家・藍銅ツバメさんが語る『襖からくり』の魅力」中野昭子
その他関連リンク
「【アトリエ談義】(3)浮世絵師・月岡芳年:国芳一門の出世頭」悳俊彦
櫻木みわ×新川帆立×藍銅ツバメ「生きる、戦う、書く——SF創作講座卒業生3人が語る新人作家のリアリティ」
榛見あきる先生とコラボしたラジオのタイトルとロゴ【Radio Moonside】(ラジオムーンサイド)(https://www.youtube.com/watch?v=IudmJ6dGhG0)
日本SF作家クラブ【新入会員紹介】藍銅ツバメ


《ゲンロンSF創作講座》関連リンク
第一回:【100年後の未来】の物語
「水色ちょうちょストラテキラテス」宇宙を渡る蝶 キメラの話

第二回:読んでいて“あつい”と感じるお話
「蛇女の舌の熱さを」安珍清姫伝説をモチーフ

第四回:何かを育てる物語
「ぬっぺっぽうに愛をこめて」(22点で一位)
ぬっぺっぽうを育てて食べる話。お父さんの病気が治る。

第五回:シーンの切れ目に仕掛けのあるSF
「枕返し・枕返し・兄弟喧嘩」夢の中でしか実現できないもの。

第六回:長距離を移動し続けるお話
「彼らが焦がれ描いた仙境」
少年の頃に神隠しに遭った若い美術家。幻聴・幻覚。

第十一回:最終課題及び【第4回ゲンロンSF新人賞 優秀賞】
「めめ」藍銅ツバメ
今回の題材は、盗みを働いた分だけ腕に目が浮き出る百々目鬼という女の妖怪。目の神社がモチーフに兄弟愛を。

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「小林ひろき自作を語る」関連

「小林ひろき自作を語る」で、
“ご指摘は本当に勉強になるので、私が火だるま(笑)になっているところをSF関係で知人になった人たちやTwitterのフォロワーに見せたいですね。きっと初めてSFを書き始めた人の参考になると思います。”
とのことで、SF的な設定に対する突っ込みをぜひ公開して欲しいとの要望がありましたので、以下に公開しておきます。リンクの無い短編も、公開され次第順次リンクを張っていく予定です。
私からの指摘は、良くあるアイデアで古びていると言えば確かに使い古されているパターンなのでちとあれなのですが(汗;)
それを踏まえて、さらにひねった構成・展開が欲しいところではあります。

「SFの小箱(1)テラフォーミング」

冒頭で“土の下には石灰石が埋まっていた”という記述があるので、SFファンだと、ここはかつて海が有りCaを含有した骨格をもった有機生命体が豊富にいてその残骸が石灰石になったんだなと考えます。←読む上での前提条件ですね。
石灰岩があればその成り立ちから、水棲のCaの外骨格を持つ生命体が大量に棲息していたと推測されるという話です。海中で二酸化炭素と結合した古代生物の遺骸の集積物ですから。大理石もその仲間です。玄武岩などは火成岩なのでCaCO3成分は無いはずです。石灰岩は、半分以上がCaCO3。
でもその後「石灰石を燃やす炉」というのが出てきて、石灰石は既に酸素を含んでいるので燃えないぞ!(一酸化炭素は燃えますが(笑))、それは何だと思うんです。まあ何かを燃やす時に石灰石を混ぜて二酸化炭素を出す装置かなとは想像しますが。
かようにSFファンは面倒くさいところに拘っちゃう(笑)

SFの小箱(2)重力制御
宇宙で波乗りというと、久美沙織先生(「マザー」のノベライズで有名)の出した短編集「星のキスメット」(宇宙船の廃棄エネルギー流に乗って遊ぶサーファーというサイケなやつが主人公)を思い出した(笑)(http://sasabe.com/SF/news/kumi6.shtml)
“重力波は光速で伝播する波であるから、その曲面を滑っていくことは可能”ということなんですが、冒頭にこの文章が出てくるから「ああ、そういう雰囲気の話なのね」と思いました(笑)
ただ、同じく光速で伝播する波である電波の曲面を滑ることが可能かというと?(笑)
重力波観測所LIGO、Virgo、KAGRA等の名前を出しているので、あまりファンタジー寄りにするのは無しにすると、無難なのは「先生は、自らを情報としてデジタル化し(城ごと?)、その情報で変調をかけた重力波となり、他の重力波に波乗りする」とかなんとか(笑)

SFの小箱(3)タイムトラベル
タイムトラベラーの“トロッコ問題”。9.11を予知できたら防ぐかどうか。それが本来の歴史ならやむなきの立場を取るかどうか、難しい問題です。
著者インタビューの久永実木彦先生は、一人でも死亡者が出たら、それは歴史改変の対象になる世界を描いて(なんと人手不足で担当者は非正規職員)怖かった。
同じく著者インタビューの岡本俊弥先生は、「時の養成所」で、人類が滅んだ時間線を守るタイムパトロールの人間を描きます(遠い未来では異生命体が地球を支配している。で、件のタイムパトロールは、その異生命体が養成している)
どちらも、そりゃ職員は病みますわ(そういうタイムパトロールに私はなりたくない^^;)

SFの小箱(4)タイムパラドックス
これがちと分かりづらいかも。
進行順なのですが、/1→/2→/3……と考えると
【/1】では、主人公の息子である大海が未来からやってくる。ここでの大海は19歳、主人公は16歳。ううむ、息子が年上というのは変な気分ですね(汗;)
【/2】で、「一回だけ、過去に戻れるのか」は勇輝の言葉みたいですね。とすると過去に戻った勇輝は、どこかの時点の自分を励ましに過去に戻るのかなと考えられます。
【/3】だと、“大海の頬のほくろが僕と全く同じ場所にある”となっているので、ここでの“大海”は未来から来た勇輝なんですね。主人公が勘違いしているだけで。
【/4】で、母親=彩が登場。「ふたりの大海がいてくれた」とあるので、未来から大海がやってきたことによって改変された過去においても、勇輝が二人いてそれぞれの時間線の未来に二人の大海が居たことが示唆されている。
【/5】では、彼女=彩だとして、人生の終わりを迎えた夫婦が居る。幸せだったんだろうという暗示がある。


「SFの小箱(5)質量保存の法則」

「冷たい方程式」で扱った密航者の質量がそのまま効いてくる燃料問題とは異なって、新生児の酸素必要量はそれほど増加しないと考えられます(重量もそうですが)。妊婦さんの子宮にいる状態で、母親から酸素と栄養をもらっているわけですから(元々母親の消費が胎児の分増大している)。
あと搭乗者が全部で16人いたら、赤ん坊ひとり分の酸素くらいどうにでもなりそうです。
みんな強制的に眠らせておくとか(笑)やるなら夫婦二人くらいの搭乗者にして、緊迫性を増すのが良いと思います。
「彼女が生きるために、この宇宙船は引き返す判断をした。」のところも、その判断の根拠を描いて頂く方が面白いと思います。酸素消費量という時間的なものと、引き返すという今までの運動エネルギーを無駄にする行為(燃料消費倍増)ですね。それを入れるとソーラーセイルの必然性(?)が生きてくると思います。
引き返すということは得られた速度をなくしてさらに反対方向へ加速しないといけないので、燃料消費はかなり増えると思われます。
普通というか経済的な燃料使用を追求すると、最初は加速してその推進方法で得られる最高速度に達したら、エンジンを止めて等速度運動に移行、目的地に近づいたら逆推進で減速という行程になると思います(行程の半分に来たときに最大速度に達してない場合はこの限りにはあらず)。まあ相手が惑星の場合、公転しているわけで、出発時点でどの位置に居て、到着時点ではどの位置に来ているかも加味するともっとそれらしくなります(笑)
「SFの小箱(6)エントロピーの増大」
これ、面白いです。
ただ、主人公の形態がよく分からないのが難点かなと思います。大きさも不明だし。
読み取れるところからは、どうも宇宙空間に漂うガス状生命体の様に思えますが、それにしては固い交接器官があるようだし、雄雌の別もあるようだし。
あと、題名との乖離があるように思います。エントロピーの増大をうたうからには、それについての記述がもっと欲しいところです(落ちをエントロピー絡みにするとかも)
例えば、ガス状生物なので、エントロピーの法則に従ってガスが混ざり合うのをどうやって防いでいるかとかとか(全体が均質になると生命維持は不可能と思われます)、周辺部からガスが漏れ出し薄くなるのを防ぐ生体反応はどうなっているとかです。
神を持ち出すのであれば、ガス生命体ならではの神の形態・能力の描写があるとうれしいです。まあ、ラストで「なんだ俺は神のようなものじゃないか」と悟るという落ちはありそうですが(笑)
異生命体を描写する際、人間に理解不能の存在として描く場合と、人間に模して理解しやすく描くやり方がありますが、この作品は後者だと思います。そうであれば、この存在が神を夢想し出すに至った原因を描くとか、母親もいるようなので祖先からの伝承であれば、それを描くともっとそれらしくなりませんか?
「SFの小箱(7)反物質」
ちょっと詰め込みすぎな気もしますがそれは置いといて。
粒子加速器を使った反物質生成には、対消失で得られるエネルギー以上の電力を必要とするので、エネルギー事情からいうと当然マイナスです。ただ、宇宙空間で太陽エネルギーによって反物質生成して、それを地球に持ってくるアイデアは良いのでは。
あと、反物質があれば何でもできる感じに描かれてますが、現在の技術では対消失は、核分裂以上に制御が難しいと思います。制御技術をすっ飛ばして宇宙船のエンジンに利用するのも飛躍しすぎな感があります。
あと、惑星開発がどんどん進んで帝国が出来るように描かれてますが、どうも前提に超光速航行が前提にありませんか?それなら、そこについての説明も欲しいところ。例えば
「ヨーロッパのCERNで対消滅による事故が起こり、スイスのジュネーブとフランスの一部が消失した。」→
「ヨーロッパのCERNで対消滅による事故が起こり、スイスのジュネーブとフランスの一部が消失した。しかし悲劇だけではなかった。事故の際の巨大エネルギー集中による時空の破れが観測され、それにより超光速航行の道が開けたのだ」
と入れておくと、超光速航行が出来るようになった設定なんだなと読者が思います。
「1マイクログラムの反物質をお茶漬けに注ぎ、飲み干して、」とありますが、これは書かない方が(笑)お茶漬けに入れた時点で大爆発でしょう(笑)
石原藤夫先生の短編に、ブラックホールのお茶漬けは出てきましたが(爆笑)

「SFの小箱(8)バイオテクノロジー」
本題に関係ないのですが、「各星系から送られてくるウィルスや細菌の分析を三日三晩続けて、対処法やワクチンのデータを送信していた。」とあるので、超光速通信が実用化されているんでしょうね。さらっとでも良いからその記述が欲しいところです。
最初の患者であるジョミィの店のお客は、閉店時には死んでいたのに、ジョミィは二日後に死んでいるのが見つかるということはたぶん潜伏期間に差があるということで、その原因を追及する流れになるのかと思いきや(笑)
巣→ウィルス→巣、という人間が媒介するアイデアは面白いです。とくに破綻は無いような気がします。
ただジョミィとエドの感染が唐突に終わるのがもったいないです。あるウィルスの感染がエドの鉱物化の原因で、それは人間の新たなステージ(人間と巣と鉱物のハイブリッド)への進化の前触れとなったとかなんとか。そういう理屈を付けて、全人類が鉱物人間になっていくパンデミックを描くとかはどうでしょうか?

「SFの小箱(9)生命倫理」
「SFの小箱」シリーズではもっとも好きな作品で、完成度も高いと思います。
特に、ノビェ・イエ全住民にシャーマンの能力を持たせるという発想の転換が面白かったです。ただ、その理由付けが弱いような。このままでは、ノビェ・イエ住民が嵐を予知する能力を持った代わりに全員深刻な頭痛持ちになったようにも読めるので(汗;)
ここは、「シャーマン一族は尊敬し恐れられているが、一般の民とは距離を置いた関係で恋愛・婚姻も一族同士に限られていた(差別されていた)」とかの理由のほうが良くありませんか?

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久永実木彦先生著者インタビュー関連その2(ネタバレ注意!)

久永実木彦先生著作の粗筋等、ネタバレしてますので未読の方は読まないで下さい!
書影と書籍情報はこちらに
「帳尻が合う」(『ウカイロ9』収録)
ふと自殺衝動に駆られた男。彼の元に訪れた真っ赤なポンチョを着た子供に「帳尻が合わないから止めろ」と言われる。なんでも男は前世で五人殺しているから、現世で五人助けないと帳尻が合わないと。思わず引き込まれる展開から壮大なラストに続く語りが見事な一編。


「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」(『時を歩く』所載)
時間旅行が可能になり、大規模災害時の災害犠牲者を無くすから観点から始まった救済処置は、単なる事故であっても死亡者がいれば一律〈 改変法〉が適用され、<声かけ>たちが犠牲者を救うようになったために、慢性的な人員部作に陥り今では経験の無い非正規職員がその任務を担当するようになっていた。
バイト感覚で、過去に干渉するというのはなんともシュールな世界ですね(汗;)
そもそも総てが、光速度は一定で何者も光速を超えることが出来ないという大前提から導きだされているのは、ご存じの通り。
有名な「E=mc^2」という公式から導き出されたものがミンコフスキー空間(相対論的空間)というもので、実際には三次元ですが便宜上左のような二次元の図として書くことも出来ます(図は橋元淳一郎先生の著書より引用)
図中の「非因果領域」というのは、光速度を超える世界線が含まれる領域です。人類には知覚できない領域ですが、存在するのは確かだと言われています。光速を超えると過去への時間旅行が出来るかも知れないというのは、この図の非因果領域の話なんですが、もし非因果領域が人間に知覚できても、因果関係が目茶苦茶(結果の後に原因が来る)になるので、人間の脳に凄まじい負担を強いるのではなかろうかというのが、私の以前からの疑問でした。それに答えてくれたのが「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」というわけです。主人公が段々と倫理観を喪失し静かに狂っていく様は圧巻です。


「ガラス人間の恐怖」(『SCI-FIRE 2021』所載)
ある日突然、宇宙人の仕業で全人類の皮膚がガラスに置き換わり、骨も消えてしまうという事案が発生。ガラスに覆われた体内には、臓器が浮いている状態でなんとか生命は維持できているが、ガラスの関節は動きにくく、転んでガラスが割れれば一巻の終わり。
ガラスに覆われた陰茎が勃起するとどうなるか(笑)まあ、骨がなくなれば筋肉も動きようがないし、ガラスの胸郭では呼吸も難しいとは思うんですが(笑)
むき出しの歯とガラスの中に透けて見える眼球と脳と内臓という状態の女性に対して勃起しちゃうという、悲しい男の性(さが)を描いた作品。久永先生は男性の性衝動に関して、一体全体どう考えておられるのか(大爆笑)


「男性撤廃」(『2084年のSF』)
すべての男性が冷凍保存され、女性だけになった世界。男性の「解凍」を主張する集団と、男性の「殺処分」を主張する集団が存在する未来。男性を知らない世代の主人公は、男性冷凍保存庫のシステムを監視する仕事に携わっていた。ある日そこで障害が発生し、一人の男性が解凍されて目覚める……

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平谷美樹著《貸し物屋お庸》シリーズ関連本

『貸し物屋お庸 謎解き帖 桜と長持』平谷美樹著、丹地陽子装画 2022.5.15、だいわ文庫(大和書房)、858円、(Kindle版)815円 江戸っ子の暮らしを支えるレンタルショップをめぐる悲喜交々を描く
収録作:
「桜と長持」同業者から貸した長持が湿っていて変なことに使われたのではとの相談が
「遠眼鏡の向こう」鳥を見るからと遠眼鏡を借りに来た呉服屋の若旦那。いやな感じがするのだが
「小猿の面」座興に使うからと猿の面を借りに来た番頭。延長もあるということは?
「つぐらの損料」赤子の寝床としてもつかわれる藁製のつぐら。捨て子を救おうと蔭間の面々は
「ちびた下駄」芝居に使うからと歯がすり減った下駄を借りにきた自称旅芸人。調べてみると……
「大歳の客」橋の袂にいた少女から湊屋で膳を借りて息子を訪ねろと言われてやってきた老人は……


◆人物紹介◆
【お庸】「無い物はない」と評判の江戸で一、二を争 う貸し物屋・湊 屋両国出店店主。口は悪いが気風のよさと心根の優しさ、行動力で多くの味方を得、持ち前の機知でお客にまつわる難事や謎を見抜いて解決する美形の江戸娘。
【幸太郎】庸の弟。両親の死後、数寄屋大工の名棟梁だった仁座右衛門の後見を得て大工の修業に励んでいる。
【りょう】生まれず亡くなった庸の姉。童女姿の霊となって庸の実家に棲み、家神になるための修行をしている。
【湊屋清五郎】浅草新鳥越町に店を構える貸し物屋・湊屋本店の若き主。「三倉の苗字と帯刀を許されており、初代が将軍の御落胤であったという噂もある。
【松之助】湊屋本店の手代。湊屋で十年以上働いており、両国出店に手伝いに来ることも多い。
【半蔵】清五郎の手下。浪人風、四十絡みの男。
【瑞雲】浅草藪之内の東方寺住職。物の怪を払う力を持つ。
【熊野五郎左衛門】北町奉行所同心。三十路を過ぎた独り者。庸からは「熊五郎」と呼ばれている。


『貸し物屋お庸 江戸娘、店主となる』平谷美樹著、げみ装画
2015.1.10、招き猫文庫(白泉社)、690円
収録作:(元禄時代の江戸が舞台。お庸は、賊が押し入る前に清五郎と出会い、一目惚れしている)
「一難去って」大工の娘・庸は“棟梁のお嬢さん”だが自分を「おいら」と呼ぶほどの男勝り。不自由ない生活を送っていたが、ある夜、家に賊が押し入り両親を殺害されたことで生活が一変した。
「初仕事」回転前日のバタバタしているときに、中間が、お殿様が飾る雛人形をとやってくる。
「桜の茅屋」どこかの店の番頭風の男が、古びた笊を借りに来た。
「盂蘭盆会」藪入り前、お庸の家にお化けが出て悪戯をするという。 


『貸し物屋お庸 娘店主、奔走する』平谷美樹著、げみ装画
2015.5.10、招き猫文庫(白泉社)、640円
収録作:
「紙三味線」大店の若旦那が借りに来た三味線の銘器を巡る大騒動。
「からくり箪笥」大工が引き取ってくれと持ち込んできたタンスには仕掛けがあった。
「俎の下」畳ほどもある大きなまな板を借りに来た男が。
「貸し母」幼い頃に自分を捨てた母親の代わりを貸して欲しいという依頼が。


『貸し物屋お庸 娘店主、捕物に出張る』平谷美樹著、げみ装画
2016.1.10、招き猫文庫(白泉社)、690円
「行李」行李を借りにきた侍の態度を不審に思い、持ち前の好奇心とおせっかいで世話を焼く。そして陸奥国神坂家との因縁が始まる……
「拐かし」知り合いの大工の息子が誘拐されたと聞き、知恵を働かせて解決に走る
「貸し猫探し」蔵に鼠が増えたので猫を借りたいと。しかしその大店には飼い猫がいる
「亡魂の家」化け物よけのお札。産後の肥立ちが悪く亡くなった初七日過ぎから怪異が


『貸し物屋お庸 娘店主、想いを秘める』平谷美樹著、げみ装画
2016.9.10、招き猫文庫(白泉社)、640円
「萱草の簪」簪を借りにきた美しい、しかし訳あり顔の女。清五郎となにやら関係?
「六文銭の夜」雨の夜に現れた裸の子どもと男女十人の亡魂。銭は何のために?
「秋時雨の矢立」手代の松之助に忍び寄る影、隠された過去がお庸を巻き込む
「人形」“おりょう”の手引きで瑞雲の元を訪れた出自を語る人形たちは……
「初雪」若君つきの女中にと、お庸を借りに来たという年配の侍の真意は……


『霊は語りかける 実録怪談集』平谷美樹・岡本美月共著
2022.6.18、ハルキ文庫・Kindle版、597円、(2012.7.18発行の第一刷を底本とした電子版)
ある峠で起きた恐怖の出来事、船旅での怪事件、古いマンションに棲みついていた見えないモノ、どこかで聞こえる不思議な足音……「百物語」を上梓してきた著者のもとに集まってきた、奇妙で恐ろしい話の数々。全三十三篇を収録した、新たなる怪談集
東日本大震災に関連した話や釣り人の話が多数収録されています。UFOの話もあります。
 そういえば、最近の日歯公報に「優しくて心に残る『稲川怪談』第二回」(怪談師:稲川淳二)が掲載されてました。
 稲川さんの怪談は、普段から集めている各地の怪談や不思議な話に関して土地柄や歴史・状況・文化・心理などを綿密に調べ、断片的な話のかけらをまとめて一つの作品に練り上げるそうです。ここらあたりは、平谷先生の怪談話と共通してますが、稲川さんの怪談はその性格上どうしても「怪談」にしなくては受けないので、平谷先生の淡々と聞いたことを記述したものとは違います。
 あと、“怪談で一番大事なのは、心に残る話である。怪談には何かしら人生の教えが含まれていた。気持ち悪くて、後味が悪いのは怪談はないんです。”ともあって、ここらは平谷先生の『霊は語りかける 実録怪談集』に通ずるものがありますね。

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久永実木彦先生著者インタビュー関連本


『七十四秒の旋律と孤独』久永実木彦著、最上さちこ装画
2020.12.25、東京創元社、1800円、1710円(Kindle版)
収録作:
「七十四秒の旋律と孤独」
以下《マ・フ クロニクル》シリーズ
「一万年の午後」「口風琴」「恵まれ号 Ⅰ」「恵まれ号 Ⅱ」「巡礼の終わりに」
第八回創元SF短編賞受賞作「七十四秒の旋律と孤独」をはじめ、人類が滅亡したあとの宇宙で、ヒトの遺した教えと掟に従って宇宙を観測し続けるロボットたちの日々を綴る連作〈マフ クロニクル〉の全六編を収録。永遠の時を生きる美しいロボットたちと、創造主である人間をめぐる新たな神話がここに。


「七十四秒の旋律と孤独」久永実木彦著、加藤直之イラスト
第8回創元SF短編賞受賞作
2017.7.28、東京創元社、kindle版、198円〈空間めくり(リーフ・スルー)〉と呼ばれる時空転移技術が開発され、宇宙交易が活発になった未来。
紅葉は宇宙貨物船グルトップ号に搭載された朱鷺型のAIを搭載された人型戦闘兵器。 〈空間めくり〉の際の人間が認識できない七十四秒の閉じられた時間、貨物船を襲撃から守っている。しかし、運行開始から一度も襲撃を受けたことのないグルトップ号の乗組員たちは、紅葉のことを“空焚きのポット”と揶揄し、その存在をほとんど無視していた。自らの存在意義に疑問を持つ紅葉だったが、あるときグルトップ号が〈空間めくり〉中に海賊に襲われた。
加藤画伯による、表紙画がなんとも格好良いですね。この戦闘タイプのロボットと、短編集の書影(最上さちこ装画)からうかがえる可愛らしいロボットとの対比が内容にどう関係しているかも読みどころの一つです。


「第42回日本SF大賞: 選評冊子」日本SF作家クラブ編
2022.4.17、日本SF作家クラブ出版、Kindle版、500円
目次
第四十二回日本SF大賞『大奥』
第四十二回日本SF大賞 最終候補作品(作品名五十音順)
『暗闇にレンズ』高山羽根子(東京創元社)
『ゴジラS.P〈シンギュラポイント〉』TVアニメ・高橋敦史監督(東宝)
『七十四秒の旋律と孤独』久永実木彦(東京創元社)
『ポストコロナのSF』日本SF作家クラブ編(早川書房)
『まぜるな危険』高野史緒(早川書房)
「第四十二回 日本SF大賞」選評
草上仁、小谷真理、白井弓子、三雲岳斗



『ウカイロ9「THE END IS THE BEGINNING IS THE END」』
2019.8.11、スミダカズキ、2000円
収録作:
菅野ぽんた「illustration」、おがわさとし「It is no use crying over spilt softcream.」、樋口恭介「円柱」、牧野修「ウロボロス的言葉尻尻取り法」、理山貞一「ノーモア・ノーマンズランド」、okama「かっこいい人」(2号より再録)、司淳「司淳のスキスキ大好き」(1号より再録)、さくらい「イエス、マイロード」、
久永実木彦「帳尻が合う」
YOUCHAN「クルトさん」、栗原ちひろ「ハッピーエンドは間に合った」、西崎憲一「ことわざ戦争」、青木俊直「pass」、飛 浩隆「洋服2」、吉田隆一「物語に都合なんてあるものか『リズと青い鳥』についての結論なき所感」 、茂十郎「聞かぬが仏 言わぬは、」、阿部洋一「兆し」、秋永真琴「MI ~古本屋の少女~」、葉野宗介「真実のかくれんぼ」、日高トモキチ「クリストファーロビンの破壊と創造」、田中啓文「ねずみ盗人」、U10「illustration」、田中哲弥「シアトル」、岡崎二郎「私は如何にして心配するのを止めてパソコンを愛するようになったか」、ミヤザワタケシ「晩餐」、北野勇作「オリンピック防衛隊 第零話【生きる?】」、ナンバタカヒロ「一つのメルヘン」、しま「One and Enough」



『時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー』東京創元社編集部編、瀬戸羽方装画
2019.10.31、株式会社東京創元社、Kindle 版、855円
収録作:
「未来への脱獄」松崎有理
「終景累ヶ辻」空木春宵
「時は矢のように」八島游舷
「ABC巡礼」石川宗生
「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」久永実木彦
「ゴーストキャンディカテゴリー」高島雄哉
「Too Short Notice」門田充宏


『SCI-FIRE 2021』特集:アルコール
【目次】
★ゲンロンSF新人賞正賞 全作家の書下し
高木ケイ「進化し損ねた猿たち」
天沢時生「ナキオ」
琴柱遥「悪魔から盗んだ女」
榛見あきる「大学六年生。密造酒、泥酔オセロ、」
田場狩「酩酊」
河野咲子「みそかごとめく」
★謎のマイクロノベル「食パン小説」
食パンにかな文字をスタンプする―― 雑誌『小学一年生』ふろく「ドラえもんアンキパンメーカー」で、食パンが小説になった!?
北野勇作・飛浩隆・久永実木彦
★書き下ろしアルコール小説・酩酊編
佐川恭一「職、絶ゆ」、今野明広「恋愛レボリューション12」
★書き下ろしアルコール小説・酒怪編
久永実木彦「ガラス人間の恐怖」
吉羽善「或ルチュパカブラ」、藍銅ツバメ「蛇酒なんて置いてかないで」
★書き下ろしアルコール小説・無重力
谷田貝和男「星を飲んだ話」、中野伶理「金魚酒」、揚羽はな「Pity is akin to Love」
★書き下ろしアルコール小説・禁酒法
進藤尚典「お酒かな」、常森裕介「酔いどれ探偵vs泥酔した容疑者たちvsアルコール検知器」、遠野よあけ「しゅ」
★書き下ろしアルコール小説・壺中天
井上宮「魔法博士と弟子」、稲田一声「掌の怨念」、名倉編「酒売りの少女(ディオニュソス・ガール)」、櫻木みわ「ジョッキー」
★高丘哲次「実録ゴッドガンレディオ VS. サイファイア抗争史」
遠野よあけ「ぼくがダールグレンラジオで果たしたこと」



『10文字ホラー 1』氏田雄介編
2021.9.1、星海社 e-FICTIONS、Kindle版、1416円
Twitterで話題沸騰の10文字ホラーが待望の書籍化!
たちまち集まった10万作から精選した極上ホラーアンソロジー第一弾。
「無口で冷たい君が好き」久永実木彦



『2084年のSF』日本SF作家クラブ編
2022.5.25、ハヤカワ文庫JA、Kindle版、1188円
収録作品:
池澤春菜「まえがき」
【仮想】
福田和代「タイスケヒトリソラノナカ」、青木和「Alisa」、三方行成「自分の墓で泣いてください」
【社会】
逢坂冬馬「目覚めよ、眠れ」
久永実木彦「男性撤廃」
空木春宵「R__ R__」
【認知】
門田充宏「情動の棺」、麦原遼「カーテン」、竹田人造「見守りカメラ is watching you」、安野貴博「フリーフォール」
【環境】
櫻木みわ「春、マザーレイクで」、揚羽はな「The Plastic World」、池澤春菜「祖母の揺籠」
【記憶】
粕谷知世「黄金のさくらんぼ」、十三不塔「至聖所」、坂永雄一「移動遊園地の幽霊たち」、斜線堂有紀「BTTF葬送」
【宇宙】
高野史緒「未来への言葉」、吉田親司「上弦の中獄」、人間六度「星の恋バナ」
【火星】
草野原々「かえるのからだのかたち」、春暮康一「混沌を掻き回す」、倉田タカシ「火星のザッカーバーグ」
榎木洋子「SF大賞の夜」



「小説すばる」2021年4月号、873円
【コラム】
「私的偉人伝」久永実木彦


【第1回】「読んで実木彦」(ゲスト:アマサワトキオ先生)
https://www.youtube.com/watch?v=QRv2Y7UQz
一番新しいのは【第18回】
【第19回】https://www.youtube.com/watch?v=L8ujhQMTmEs

【第20回】が追加されました。https://www.youtube.com/watch?v=u7t1ZJp2E9M

note 久永実木彦 「宇宙の果てのソファ」
https://note.com/10tombs/

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杉村修先生著者インタビュー関連(年代順)


『注文の多いカウンセラー』杉村修著
2016.12.16、北の杜編集工房、556円
宮沢賢治のような童話作家になりたかった引きこもりの主人公の成長譚。佐藤司、27 歳の前に突然可憐な美少女が現れた。彼女は「ひきこもりカウンセラー」を名乗り、司にあれこれと注文をつけ始める。彼女の注文に嫌々ながらも応じていくうちに、司の生活に変化が訪れていく。



『イーハトーブの風の音に』杉村修著
2028.4.10、北の杜編集工房、556円
収録作:
「坂口書店」童話作家を目指す若き書店の店主と彼をめぐる二人の少女のお話。
「僕は知らない」ある国からやってきたハーフの少女と出会った少年の学校生活と『星の王子さま』。
「イーハトーブの風の音に」イーハトーブ行きの列車で不思議な出来事に苦悩する青年の姿を描く。



『神話世界のプロローグ』杉村修著、ノブメイラスト
2019.3.13、マイナビ出版、Kindle版、550円
これは神話世界、『最後』で『最初』の物語……。
堕天使として地上へと下ったルシフェル=式部蓮の任務は、神に逆らった「落」を狩ることだった。
VRヘッドセット型の宝具を携え、リリスやベルゼブルと共に世界の敵アイオーンと戦い続ける。
「さあ、始めよう」
蓮が勢いよく剣を振ると、大気がはじけた。



『Jigsaw』岩手文芸サークル「一本桜の会」同人誌
2019.6.11、(有)ツーワンライフ、1000円
収録作:
「始まりは雪のように」杉村修
「心臓の寝坊」藍沢篠
「シンガー」今和立
「はじまりの壁ー坂本麗介」琴葉
「レンタル後輩」下ヶ谷ひろし


『始まりのフェルメイユ』杉村修著、岩村月子イラスト
2020.8.7、ボイジャープレス、Kindle版、275円
人間とアンドロイドの戦争が終わり、気の遠くなるほどの時間が経った世界。
カメラマンのドレ・リクサーはフェルメイユ行きの汽車に乗り、千年の旅を続けてきた。
戦争を終わらせた街『フェルメイユ』まであと少し。
ドレは人間とは何かアンドロイドとは何かについて考える。
しかし、そんな考えを揺するような事件が幾度となく彼に襲いかかる。




『雫町ジュークボックス』杉村修著
2020.20.1、ツーワンライフ出版、450円
収録作:「ベッドタウン」SF-天才研究者と彼女の作ったアンドロイド
「雫町ジュークボックス」プロローグ
「過去日記」恋愛-“想い”を過去に飛ばす過去日記
「始まりは雪のように」青春-想うひと、想われるひと
「水龍伝説」ライトミステリー先輩とめぐる水龍伝説の地
「色づく人生をもう一度」現代ドラマ-受賞後ぱっとしない僕の元にやってきた天使(笑)
「僕の星、どうだろう」SF童話-突然壊された自分の星を後にして僕は星廻りの旅に出る
「じゃがたくら伝説」民話・原文のまま-食い意地が張ったため大蛇になった男
「雫町ジュークボックス」エピローグ



『あの綺麗な花のように~震災~』杉村修著、おさかべ翻訳
2022.2.4、ボイジャープレス、Kindle版、275円
日本語・英語版
未来へと向かう列車に乗る僕とカンパネラ。よそに移ることを余儀なくされた人々が再び集う所。そこにも日は昇り、花は咲くだろう。




『幻想とクトゥルフの雫』杉村修著
2022.3.5、ツーワンライフ出版、500円
「クトゥルフ」震災と神話と
「黒雪」真っ白ではなく、黒い雪
「障がい者が障がい者として生きられる町」住民の1/3が障がい者の街
「あの時みた雪の輝き」テケリ・リ。テケリ・リ。降り積もる雪と幻想カメラ
「私は見ている」永く人々を見守る存在があった。
「春夏秋冬」暑いし寒いし、春はどこへいった。
「とある国で」オーストラリアでは何でもデカい
「そして僕はあの星になった」突然ロケットのように飛び出した六畳間
「ロスト・ブルースフィア」地球に付いたカビ、人類が受けている試練の果て。
「アマノガワ」天の川から生まれた石は「意志」だった。
「特別な体」筋ジストロフィーの僕が学校に通う方法
「今日は特別な日だ」ボイスレコーダーに入っていた謎の声の秘密
「死ぬ火星」マイクロチップを埋め込まれた選ばれた火星の天才児たちと、「星」を見つけ出す任務



『詩集「いわて震災詩歌2017』平成29年2月刊、いわてアートサポートセンター発行
優秀作6作、入選作14作掲載。入選作に上記「一本桜の会」の藍沢篠さんのお名前があります。
個人的には、優秀作の「野あざみの花が咲いていた」が一番好き。



『いわて震災小説2020』令和2年2月刊、いわてアートサポートセンター発行
最優秀賞「片寄波」(本堂裕美子)、優秀賞4作、入選9作、佳作4作掲載
入選に「一本桜の会」の藍沢篠さんの名前と杉村修さんの名前があります。



「いわて震災児童文学2022」令和4年2月刊、いわてアートサポートセンター発行
最優秀賞「ぼくの修学旅行」(神久保敬里)、優秀賞4作、入選4作掲載



『SFG 2020 Vol.03』特集:アジア
インタビュー SFの流儀:小川哲
特集インタビュー・中国のサイバーパンクSF『荒潮』作者・陳楸帆
特集インタビュー・日本における中華圏SF普及の立役者・立原透耶
『バベルの子ら』ピーター・トライアス
『南方蜃気楼水族館』唐澄暐
『常夜の国』坂崎かおる
杉村修氏は、「アジアSFカタログ」等でSF本の紹介を担当されてます。

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 『夏の丘 ロケットの空』岡本俊弥著


『夏の丘 ロケットの空』岡本俊弥著
表紙: Photo: iStock by Getty Images/ Deklofenak
2022.3.28、スモールベアプレス、Kindle版、380円
収録作:
「子どもの時間」「銀色の魚」「空襲」「ネームレス」「パラドクス」「ソーシャルネットワーク」
「インターセクション」「さまよえる都」「スクライブ」「夏の丘ロケットの空」
以下、ネタバレを含む理系ネタをくだくだと書いてますので苦手な方はパスして下さい(汗;)
あと、粗筋等はあまり書いてません。あくまで読了後の感想と独断と偏見の解説に特化してます。岡本先生とは歳が近いしSFファンということでの共通体験もあるので、それによって想起される思い出話が多いです。すみません(汗;)
岡本俊弥先生著者インタビュー、前編はこちら後編はこちら


「子どもの時間」
最近地元でロケハン(二回見に行きました。遠くから(笑))した映画『とんび』が話題になってますが、原作者の重松清先生は岡山県出身。重松先生の話題作でドラマ化された作品に『流星ワゴン』というタイムスリップ物があります。「子どもの時間」は、テイストとしては似ているのですけれど、最新の時空理論(量子力学も)が併記されることによって、一挙にSF的様相を呈してきます。その意味では、エントロピーとは関係ないけれど、岡本版の「宇宙の熱死」(パミラ・ゾリーン)とも言えると思います。
時間と空間の関係については、橋元先生からも“誤解を恐れずに言えば、時間が虚数になるということは、基本的には時間が空間に変わると言うことである”とうかがっているので納得できるところではありました。
しかし、岡本先生が書かれているストーリーの裏には、文化人類学者の野村直樹先生の提唱されている、マクタガードの時間系列を敷衍したE系列時間があるのではないでしょうか。なぜかというと、物理的な時間がどうであれ、社会的動物である人間には、他者との関わりのある生きた時間こそが必要だと思うからです。(例えるならオーケストラの演奏会において、指揮者と演奏者と聴衆のそれぞれ時間、参加者全員に共通する客観的時間、共通の楽譜、演奏者・聴衆・楽器・まわりの空気まで調和し、同調した生きた時間がある)



作中では、時間とは絶対的な物ではないことが例を挙げて説明されてますが、実は空間の方が絶対的ではないという説もあるわけです。そもそも総てが、光速度は一定で何者も光速を超えることが出来ないという大前提から導きだされているのは、ご存じの通り。
有名な「E=mc^2」という公式は、エネルギーがジュール、質量がkg、光速度がkm/sと様々な単位が一つの式に詰め込まれたもので、こんな式を書くと小学校の先生には怒られます(笑)
この式から導き出されたものがミンコフスキー空間(相対論的空間)というもので、実際には三次元ですが便宜上左のような二次元の図として書くことも出来ます(図は橋元淳一郎先生の著書より引用)
図中の「非因果領域」というのは、光速度を超える世界線が含まれる領域です。人類には知覚できない領域ですね。←「あの世」?



左の図が意味しているところは、光の時間線の長さが”0″になるとしたら、時間か空間かどちらかが「虚数」にならないといけないことを現しています(図は橋元淳一郎先生の著書より引用)
どちらを虚数として扱っても良いということですけど、詳しくは橋元淳一郎先生の著者インタビューを参照して下さい。
そういう意味では、カントが『純粋理性批判』で“時間と空間は感性による直感(ア・プリオリ)に過ぎない”としたのはさすがですね。
本文中に出てくる「ループ量子重力理論」はここが上手くまとめられていると思います。
上記、「E系列の時間」に関してはここから。


「銀色の魚」
ある日突然全人類が失読失書になってしまう。いかに現代文明が文字(記号も含む)に依存しているかが、これでもかという具体例と共に描かれます。文字が失われた世界で口承によって知識を伝えようとするくだりは、「華氏451度」を彷彿とさせますが、さらに深刻な事態ですね。蔵書を誇るSFファンなんかは、もう死にたくなるでしょう←私もですが(汗;)

「空襲」
ある日、旧式(第二次世界大戦当時)の爆撃機が日本上空に現れ市街地を爆撃する事件が勃発する。どうもそれは大戦当時に海軍が採用していた九十六式陸攻ではないかと判明する。
岡本先生の「二〇三八年から来た兵士」は、言ってみれば未来に復讐される話でしたが、こちらは過去に復讐される話と言えます。残留思念のなせるワザだとしたら怖い。
爆撃機はそれほどでもないですが、戦闘機は小学生時代に読んでいた少年誌によく特集されてました。零戦、隼、マイナーどころでは鍾馗・桜花とか。もちろん米国機とか欧州機も。マンガ「紫電改のタカ」とかやたら格好良かった。零戦は今でも描ける。上空の零戦を見上げたアングルが好き(笑)

「ネームレス」
“日本空飛ぶ円盤研究会”の集まりを皮切りに、様々なSF関係の会合や大阪万博のパーティーの写真にまで写る一人の女性。誰ともわからないその謎の女性は、歳もとらないようだった。コンベンションとか例会の熱気は、参加した者にしか分かち合えないというのはよく分かります。もう一つの短編「インターセクション」を読んだ時にも強く感じたのですが、その頃の仲間の記憶はいったん失われてしまうと永久に不明になってしまいます。その昔「日経MIX」という商用BBSに参加していて途中からsf会議の議長役を引き継いだのですが、そのオフミでメンバーのgakio_01(なかじまたかお)さんとタクシーが一緒になりました。車中の会話が小松左京論から高橋和巳に飛び、なぜかゲーデルの「不完全性定理」の話になりました。この時からgakio_01さんは、私の中では「ゲーデルを語る銀行員」として印象づけられたのです。しかし独居生活で闘病中だった彼は、昨年故人となってしまいました。ゲーデルを語る銀行員だったことを知る人間は私ひとりになったかも知れません。
それと、関西・関東の老舗ファンクラブの会員のかたにインタビューさせてもらう機会があったのですが、創立当時のことは詳しく覚えてないとか。他の古株の会員の方に聞いて頂いてもやはり同じで、この短編を読んでいて切なくなってしまいました(私自身は学生時代のファン活動は皆無なのですが)

「パラドクス」
タキオンによる未来からの通信というと『タイムスケープ』(グレゴリイ・ベンフォード)がありましたが、困るのは情報の質を確認しようが無いと言うこと。本当に未来からの通信かどうかもわからないし。本文中にもそれらしき言及がありますが、その時点で最善と思われることをやるしかないですねえ(汗;)

「ソーシャルネットワーク」
岡本先生による大阪的SNS考察(笑) 金星人とか火星人が出てくるというと『美しい星』(三島由紀夫)がありますが、シュールでなおかつ世俗的なところは「宇宙パトロール・シゲマ」(大友克洋)を思いおこさせます。違うのはリアルではなくてネットから得られる情報だけというところ。岡本先生の持ち味が良く出ていて、ちょっと不気味でもあります。

「インターセクション」
“INTERSECTION”というと、我々の世代では真っ先に『アインシュタイン交点』(サミュエル・R・ディレイニー)を思い出します。題名の意味としては「アインシュタイン曲線とゲーデル曲線の交わる一点」と作中で説明されています。そして「その二つの曲線が交差したとき、人類は既知の宇宙の限界まで行き着くことができるようになった。」とあります。まあ、ちんぷんかんぷんだとは思います、私もですが(笑)
「ボルツマン・インターセクション」は、先年急逝した盟友高木淳さんの『アインシュタイン交点』に対する回答といった意味合いの作品です。なぜ「交点」にこだわるかというと、「流れついたガラス」という短編を書かれた岡本先生が、「インターセクション」という題名で無関係な話を書くわけがないと思ったからです(汗;)
クレハ、クサト、クトニ、クニカの名前に「ク=苦」が付いているのも象徴的ですし、四人の人生が重なる時、人生の様は異なれど“変わらない「いま」は続いていき、「いま」の中で生活を送っていくのだ。”との共通認識の元に溶けていくラストはビターな諦観が見てとれます。

「さまよえる都」
「銀色の魚」は、人間が文字を失った後の世界を描いてましたが、こちらはヒトならざるものが言語を獲得したその後を描いてます。人間の使う言語とか文字も“神”が実験のために付与したプログラムだとしたら、我々の歴史とか人生に対する認識に変化は出るのでしょうか。

「スクライブ」
言葉遊びというか筒井康隆先生ばりの実験小説。各要素を取り出せば意味がある文章になるかと思いサッカー関連のところだけ抜き出してみたが、さっぱりわからない(汗;)目茶苦茶に見えて、ひょっとして何か意味があるのではないかと思わせる絶妙のずらし具合が凄い。

「夏の丘 ロケットの空」
題名からしてブラッドベリの「ロケットの夏」(『火星年代記』の第一章)を連想。小学校の頃、ディーラーがスバル360に乗ってきて、買ってくれないかと。うちはだれも免許を持ってなかったんですけど(笑)新しいメカに対する憧れはその時から生じたような気がします。排気ガスとガソリンの臭いもわりと好きだった。
宇宙とロケットに憧れるひとりの少女の成長譚。辛いことも悲しいことも起こるが少女の気持ちが途切れることは無い。これは、岡本先生のSFに対する気持ちと同じなのではないか。実は私も同じ想いを抱いているのですが。→若干恥ずかしくないことも無い(汗;)

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