レビュアー:[雀部]&[稲葉]
- E・E・スミス著、川口正吉訳
- グーテンベルグ21
- 2013.3.29発行、Kindle版
ほぼ絶版状態。グーテンベルグ21から出ているKindle版が唯一みたいです。左の書影は、岩崎書店から出ていた冒険ファンタジー名作選シリーズの一冊。アニメ調は珍しいかも。全4巻。初めて太陽系外に冒険の場が広がった記念すべき作品。
- E・E・スミス著、小隅黎訳
- 東京創元社
- Kindle版、644円
- Kindle版は、冒頭の試し読みが出来ます。
痺れる書影は創元社版。最初は真鍋博画伯でしたなぁ……。全7巻。正義のアリシア人→レンズマン・銀河パトロール隊vs絶対悪のエッドール人→ボスコーンの対決が、段々エスカレートするわくわく感たるや。
- 『サンダーバード』-サンダーバード-ARE-GO』スペシャルプライスセット
- 12枚+14枚組のDVD-BOX
- 17,017円
- 1964年・2015年
西暦2065年。ジェフ・トレーシーは私財を投げ打ち、秘密組織“国際救助隊”を設立。5人の息子(スコット、バージル、アラン、ゴードン、ジョン)を中心とするメンバーと共に最新鋭のスーパーメカ“サンダーバード”を駆使し、世界各地の事故・災害現場での救助活動に乗り出す。
- K・H・シェール他著、松谷健二訳
- 早川書房、Kindle版
- 合本1(1~10の全10巻)、5831円
- 2017.7.21、Kindle版発行
1961年ドイツの週刊誌に連載されてスタートした世界最長最大のSFスペース・オペラ。この調子の翻訳ペースだと、私も含めて存命中に追いつけない読者が多々(汗;)ということで、途中で挫折しました(汗;;)
雀部
今回のブックレビューは、「アニマ・ソラリス」で、『ようこそ大宇宙へ!超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く』を連載掲載させていただいている稲葉小僧さんをお迎えして、ご自作とスペオペについて語ってもらおうという企画です(笑)
稲葉さん、お久しぶりです。よろしくお願いします。
稲葉
「どうも、稲葉小僧こと後藤です」
ということで、久々の銀河通信ネタやってみました(あのころ、"銀河通信”での文章の書き出しを、全て「どうも、稲葉小僧こと後藤です」でやってました)
「今現在は、三重県桑名市という、妖刀で有名な村正の故郷の地で、農家と携帯電話基地局工事のアルバイト、そしてパソコンのトラブルレスキューをボランティアでやってます」
を入れてください(内輪受けで、すいません)
雀部
どもども《おきゃ~ま》でございます(同じく"銀河通信”でのハンドル)
そもそも、『ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く』を書かれることになったきっかけはなんでしょうか?
稲葉
オジサン(もう、63歳だから、オジイサン?(笑))ですからねぇ、「自分の読みたかったスペースオペラが無いのなら、自分が書けば良いのだ!」と気づいて十年近くなってますなぁ(笑)
雀部
そうなんですね(笑)
読ませて頂いているとE・E・スミス氏あたりとは親和性が高そうですけど(笑)
稲葉
さすが、銀河通信時代からの知り合いです、私の好みをよく分かってらっしゃる(笑)
スミスも好きですし、クトゥルーものも大好きです。
とはいうものの、今、欧米で出版されているスペースオペラのニューエイジものが好きかと言うと……あまり、好みじゃないですねぇ……
雀部
私も最近のスペオペはほとんど読んでません。まあロイス・マクマスター・ビジョルド女史の《ヴォルコシガン》シリーズあたりは好きですが。まあスペオペというよりミリタリーSFでしょうけど。
稲葉
ええ、特にアメリカのミリタリーSF(スペースオペラとは言い難い)は、やはり好きになれません。
昔のスペオペの悪役は、悪いけど魅力があった、だけどミリタリーSFの敵は、殲滅すべき邪悪そのものなんで。
雀部
スカイラークで言うと、"デュケーン博士”とか、「宇宙家族ロビンソン」のスミス博士とか(笑)
どういったところを読んでらっしゃったのでしょうか?
稲葉
そうですね……
最も古い思い出は、兄の本棚にあった、E・E・スミスのスカイラークシリーズでしょうか。
それまで、少年少女向けのSF(そういうものが、昔は発行されていました。大きなフォントで印刷された、読みやすい中編くらいの長さの物語を一冊にまとめたものを、10冊ほどまとめた少年少女向けSF文庫なんて名称がついてました)のもので、ハミルトンとかレム、ベリャーエフ、ブラッドベリ系統は読んでいたのですが、スペースオペラは、このスカイラークシリーズ(創元版)が初めて!
いやー、引き込まれましたねぇ、夕食も風呂もそこそこに、人生初の徹夜してまで、ちょっと難しい訳語の創元版スカイラークシリーズを読破!
で、読み終わったら、その横に並んでいたのが、予想されるでしょうが(笑)レンズマンシリーズでした。
これも読みふけったなぁ(笑)以上、小学生までの記憶から(笑)
雀部
私は、小学生の頃はジュヴナイルしか読んでなかったです。
《スカイラーク》シリーズは、銀背だったんですよ。《レンズマン》シリーズは創元社だったですが。
私も《レンズマン》は夜を徹して読んだ口です(笑)
未知なる異星人(異文明)との出会いと悪との闘いにわくわくしました。
この感覚は、『ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く』とも共通していると感じたのです。
稲葉
未知なる異星人(異文明、異生命も含めて)との遭遇と戦い、というのが今までのスペースオペラの常道(王道?)でしたが、私は、そこに違和感を感じました。
ストーリーや異世界(銀河系どころか、次元すらぶっ飛んでいる世界)の描写に不満を覚えたわけじゃありません。
そこで、中学生以降になりますが、その頃、すでに10冊(20話)ばかし発刊されてました、ドイツ(その頃は西ドイツ)が故郷のアメリカンスペースオペラ(笑)「ローダンシリーズ」でした。
これは惹かれましたねぇ……
戦いはあるのですが、だんだんと地球人類そのものが成長していき、戦いなど不要なもの、平和な星間国家同士のつきあいが一番なんだ!
ってのは痛快でしたね。
ローダンは最終的に1000話(テラナー)を少し過ぎたところまで読みましたが、さすがにそれ以上は(笑)
個人の寿命より長いスペースオペラは、ついていくのも命がけですね(笑)
雀部
私も追い切れてません(汗;)
今ググると最新刊は『ハイブリッド植物強奪』(エルンスト・ヴルチェク & K・H・シェール:2022/05/24 [ローダン・シリーズ665])みたいですね。
稲葉
で、どうなったかというと・・・
ここから、年月飛ばして、40代後半・・・
(30代は、銀河通信に代表されるパソコン通信にハマってました。その時に、ものを書くという喜びに目覚めたのかも知れませんね)
雀部
私は同じ頃「日経MIX」からパソコン通信にハマって、「銀河通信」で稲葉さんに出逢いましたね(笑)
稲葉
ローダンを止めた頃から、しばらくして、創作意欲が湧き上がります。
そのころ、本屋に、名前も聞いたことのない作家先生の小説(異世界物が大半でしたが)大きなコーナーを持つようになり、それまでSF一辺倒だった読書人生に転機が訪れました。
ちょいと立ち読みしたら、これが面白い!(全てじゃありませんでしたが(笑))
異世界へ転生したり、召喚されたり、大きな門が開いて異世界の軍隊が地球に攻め込んできたり・・・
なんで、こんなにおもしろい作品を書く作家たちが野に埋もれていたのだろうか?
と思えば、インターネットには、これらも一欠片と思うような、プロからアマチュアまで許容する小説家のサイトがあると言うじゃないですか!
雀部
そこらへんの事情はよく分かりません(汗;)
今も読んでいる長男のほうが詳しい(笑)
稲葉
ここで、どんな作品が載っているのかと興味が湧き、3つ4つの小説サイトを覗いてみました。
いやー、あるもんですなぁ、玉石混交(笑)
期待してたSF(スペースオペラ)非常に少なくてガッカリしましたが、それでも「この人がアマチュア?今すぐにでもプロになったほうが良い!」と思うような作品も多かったのです。
もしかして、ひょっとして、俺も書ける?
と、身に余る大欲を抱いてしまった中年は、
小説家になろう、というサイトを訪問して、勉強にと、異世界転生もののファンタジーを、ぼつぼつと書き始めましたと(笑)
で、そのファンタジーも30話を超え、そろそろ盛り上げ!という最悪のタイミングで、SFの神様より啓示が(笑)
そうだ!俺が今まで不満だと思ってたスペースオペラの欠点をすべて消して、行動するのも銀河なんて狭すぎる!銀河団までは行かないと!
キャラクターは・・・未来のブラック企業に勤める中年男にしちゃおう!
それをサポートする機械知性、精神生命体、そして何にでも変形しちゃうロ○ムのような生命体が・・・
と、これが2日ほどで脳内決定(笑)
あまりの嬉しさと書きたさに、それまでの習作ファンタジーを中断して、最初の話(貧相なサラリーマンが、火星の過酷な仕事から帰ってきたら、すぐに木星へ行けと言われてため息付くが、それでも個人用宇宙ヨットで木星まで行けないかと考えるところ)を一気(たしか2時間かかってなかったと思います)に書き上げて、小説家になろうサイトへアップして・・・
それから、約7年か(笑)
現在、アニマ・ソラリスさんには、細かく一話づつではなく、大きな括りで一つの任務(おせっかい?(笑))ごとの話を載せてます(大半は一つの銀河で一話分にしてます。例外は、太陽系と銀河系での話)
銀河団までは普通に科学考証も(少しは)やってましたが、超銀河団を越える話で、それまでの制約を全て取っ払いました(笑)
ちなみに、ところどころで「銀河のプロムナード」という小話のような短編が出てきますが、これに関しては、短編で、本編に関係ない話、ということでやってます。
小説家になろう、では、ようやく読者1万人に達したところ。
長かったけど、得るものも多く、まだまだ書いていきますよ!
雀部
乞うご期待ですね!
SF名作ご当地廻りシリーズとかも読んでみたいですね。
ニーヴンの『インテグラル・ツリー』『スモークリング』のような世界とか、宇宙空間が岩石で出来ている世界(生命体は岩石中の空洞に存在している)とか、「ソラリス」には行きましたっけ?
稲葉
宇宙が岩石で出来ているという話は無いですね。
ソラリスは、いつかは本編で実現したいのですが……今は作者としての技量が足りず、書けません。
ニーヴンやレムの世界……そこへ行くガルガンチュアは、いつか書いてみたいですねぇ……
まあ、それよりも前に、予定よりも遅れた、ガルガンチュア6隻合体版(一応、これが当初より考えてた完全合体版の宇宙船ガルガンチュア)の話を出したいのと、過去にガルガンチュアクルーにする予定だった予知能力者のマリーさん。あの人を再度、ガルガンチュアへ招聘する話も予定してます
雀部
お待ちしております!
『宇宙船ビーグル号の冒険』に登場の、M33銀河全体を支配下に置いているアナビスのような生命体とも対戦して欲しいです(笑)
ガルガンチュアは、6隻合体版になるんですか。今でも十分すぎるような(笑)
予知能力者のマリーさんも期待大ですね。
もう一つ、アニメの影響はどうでしょうか。私らの世代は「鉄腕アトム」とともに成長した世代で、手塚治虫先生から一番影響を受けました。「ヤマト」とかは大学生の頃でしたから、面白くは観ていたのですが人生に影響を与えるほどでは無かった(笑)
稲葉
アニメの影響は大きいですよ。アニマ・ソラリスさんの215号に掲載いただいたお話にしてもネタはサンライズアニメ(ガンダムの前2つってのがマニアックでしょ?(笑))ですし、アトムなどは初回も最終話もネタにしてますし。鉄人28号はネタにしようとしたんですが、自律思考しないロボットは、私の話には出てこないんで泣く泣くあきらめました(笑)
ということで、これからもアニメネタはいっぱい出てくると思います……でも、私の印象に残るアニメなんで、お若い読者の方々には分からないかも知れませんね。まあ、アトムにしてもモノクロアニメがネタになってるから40代以前の方には全く分からないだろうなぁ(笑)
雀部
実際に観てみないと、モノクロアニメとか実写版のアトム(笑)とか想像もつかないのでは。
稲葉
さっき言いました予定の話が、アニマ・ソラリスさんに掲載されるのは、いつ頃になるのやら(今号の話で、原作の340話付近です。原作の最新作は734話になります)・・・
とりあえずの目標は、原作で900話、そして元々の目標、1000話が到達目標です。
それまで、我が寿命が続くかどうか(笑)
雀部
執筆が遥かに先行しているというのは、ローダンシリーズに似てますね(笑)
稲葉
あとは、自分の中にネタが残ってるかどうかでしょうね(笑)
今は、まだまだ書き足りない、書いてないネタがいっぱいありますので、途中で絶筆はないと思いますけど。
雀部
さらにぶっ飛んだ展開をお待ちしております。
ふとこれまでの展開を思い出して気がついたのですが、「サンダーバード」の影響はどうでしょうか?
稲葉
サンダーバードの影響は強いですよ(だいたい、元々のお話そのものが、銀河単位のトラブル解決やレスキューが目的のスペオペって基本原理ですから(笑)
サンダーバードDVDボックス!
欲しかったなぁ、ホント(笑)
雀部
やっぱり。買いましょうよ(笑)
ところで、「小説家になろう」で掲載されている「太陽系 裏歴史」は、続編はあるのでしょうか?
稲葉
「太陽系 裏歴史」のほうは、ようこそ大宇宙へ!・・・のほうが荒唐無稽になりすぎてしまい、自分の中でバランス取るために書き出した作品です。
こっちは物理を無視した超光速は出てきませんので(笑)
ただし、リアルな宇宙開発史ということで、相当に血なまぐさいシーンも登場する予定(まあ、一話目から身体が潰れる描写ありですが)
雀部
ちょっとシリアス路線がお好きな方には、こちらもお薦めですね。
稲葉
「太陽系 裏歴史」は、今は止まってます(最新作で4話、正確には第一話は、第0話なので、正式な話は3話です) 書く予定はありますが、小説家になろうのサイトのみで発表しているだけで、まだまだ各方面へ公開するまでの話数が蓄積されていませんので(汗) 自分の中で、このブッ飛んだ「ようこそ大宇宙へ!・・・」シリーズに飽きた時に気分転換に書いてるものですので、続きの予定は未定ですね(笑)
雀部
稲葉
短いホラーものも数編書いてたりしますが、これも、ようこそ大宇宙へ!・・・本編と比べると、まだまだの出来ですね。よかったら、小説家になろうのサイトへ来てみてください。アニマ・ソラリスの読者の方々のようなSFファンには食い足りない作品が多いかも知れませんが(笑)それでも、毎年、すごい数の新人作家たちが、出版というゴールに到達しています。なろうで知り合った方の中にはプロ作家の方もおられますし、実はハードSF研究会の会員の先生もいたりします(ビックリでした)玉石混交ですが、失望させることはないと思ってます。ようこそ大宇宙へ!・・・の最新作も、なろうで読めますので、ご一読いただいて、そして感想などいただければ望外の喜びです(笑)
雀部
ハードSF研所員の作家、公報で紹介があったので読んでみました。あの方ですね(笑)
最後に、読者の皆様に一言お願いします。
稲葉
拙いアマチュア作家ですが、物書き始めて約10年。そこそこ読者もついてくれて、まだまだ道は遠しというところ。
様々なところで紹介もされ始めて、名が売れるにつれて自分の文章力の拙さも分かってきました。ファンジンでも有名所のアニマ・ソラリスで自作が連載されるなど、夢にも思っていませんでしたので、今でも戸惑っているのは正直なところ。
これからも、読んでもらって面白いと言われる作品を書き続けたいと思っております。
今回の機会をいただき、ありがとうございました
[稲葉小僧]
1958年生。今現在は、三重県桑名市という、妖刀で有名な村正の故郷の地で、農家と携帯電話基地局工事のアルバイト、そしてパソコンのトラブルレスキューをボランティアでやってます。
「小説家になろう」稲葉小僧コーナー
[雀部]
1951年生。スペオペ好きです。チャンドラー氏の《銀河辺境》シリーズも好きだった。