初収録作品多数、日本SFの巨匠の知られざるショートショート傑作集
大きな戦争が起きて、どうやら世界は終わるらしい。しかし、そんなニュースは流れない。戦争の噂はデマだったのだろうか……。
不気味な“日常”を描いた表題作ほか、ムダをはぶき効率化を突きつめた企業の行く末「ムダを消せ!」、クイズ番組に人生を賭けるクイズのプロたちの熱き戦い「テレビの人気者・クイズマン(人間百科事典)」等、未収録作品と未文庫化作品を多数収録。実は眉村先生は、あの星先生の二倍以上の作品数を書かれてます。
現代日本SF第一世代作家6人の傑作選を日下三蔵の編集により刊行するシリーズ。第3弾はアイデアSFの名手、眉村卓。SFコンテスト佳作のデビュー作「下級アイデアマン」、醜い宇宙人をめぐり美醜の基準を問う「わがパキーネ」ほか“異種生命SF”13篇を第一部に、人間とそっくりなロボットが共存する社会の陥穽「準B級市民」、ジュヴナイル中篇「産業士官候補生」ほか、組織と個人の相克を描く“インサイダーSF”9篇を第二部に収録する初期傑作選。
スマホ等で書影・粗筋が表示されない方は、こちらを見て下さい。
昨年7月にブックレビューさせて頂いた『眉村卓の異世界通信』に続いて、オンデマンド出版された『眉村卓の異世界物語 トリビュート作品集』が今年の10月に出たので、またブックレビューをさせて頂くことになりました。
編集の岡本俊弥さんと刊行委員会の大熊さん、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
眉村さんの教え子(生徒)さんの文章を集めることは、この企画で私がぜひやりたかったことなので、満足しています。
カルチャーセンター関係は私が担当しました。しかし生徒さんに直接の知合いはいません。眉村さんの教室を新しい講師の方が引き継がれている場合は、その方にとりまとめをお願いできましたが、引き継ぎ手がなくて教室自体がなくなってしまったセンターもあります。
カルチャーセンターに問い合わせましたが、すでに一年以上経過しており記録が残っていないとのつれない返事。まあ個人情報ですからね。
最近は個人情報保護法がありますからね(汗;)
そこで村上知子さんのお手をわずらわし、お通夜とお葬式の芳名帳から、〇〇センター生徒といった添え書きのある方をピックアップ、それらの方の住所に寄稿依頼状を送っていただきました。追悼文は私宛にメールしていただいたのですが、この方たちは、眉村さんが亡くなって教室がなくなってからもグループを作ってつながっておられました。
そんなわけで、お葬式には所要があっていけなかった仲間がいるのですが。どうぞどうぞ。ということで、ずいぶんな人数になりました。それらの追悼文は(雀部さんもお読みになられたように)本当に心がこもっており、且つ、全部読みますと、眉村さんがいったいどのような講義をなさっていたか、どのように生徒さんと心を通わせておられたか(講義後も含めて)が、一枚の絵のように合成されてきまして、なかなか大変ではありましたが、ああこれぞ編集冥利だなあと感激したことでした。
確かに。執筆に七転八倒する様が目に浮かぶようでした(笑)
小説と追悼文(エッセイ)という違いはあります。前回は一般の書き手が多く、各担当者(制作委員)は集めるのが大変でした。今回は執筆者が限られましたので、とりまとめの苦労は逆に少なかったかも知れませんね。編者としては、どう並べれば印象が高まるかを主に考えました。
その印象が高まる並び方のご苦労とは、どんなところなのでしょうか?
音楽家(歌手)がアルバムを製作する際の、楽曲の順番的なところなのですか。
音楽プロデューサではないので良くは分りませんが、そういうことなのでしょうね。ばらばらだと思われたのなら失敗ですが、読まれてみてどうお感じになりましたか?
どの作品からも眉村先生のミームを感ずることができるという統一感はあります。
最初は、異世界への門が開いて、段々と異世界(異境)に連れ出され、また現実世界へと誘われるという構成かとも思ったのですが違いますね(汗;)
音楽プロデューサーとか編曲家の本を読むと、CDアルバムだと冒頭はこういう曲で、締めはこういう曲でというのがあるし、4曲目にはヒット曲を入れてその次に自信作を入れるとか(LP時代はまた違う)
まあ音楽畑と比べてもしょうがないのですけど、アンソロジーなんかにも順番の法則があったら知りたいなと思いまして……
《司政官》は(『引き潮のとき』を除けば)、眉村さんの作家歴からすると中期ですからね。今回の書き手の皆さんの年代とずれるのでしょう。本当は宇宙SF枠の作品も欲しかったのですが、内容をあらかじめ規定したわけではないので、結果的にこうなったというわけです。
宇宙SF枠となると、コアSFの薫り高い岡本さんの「時の養成所」も少し外れますか。
記憶を呼び起こすために昨年出たショートショート集『静かな終末』と、今年出た短編集『仕事ください』を読み返してみました。
なるほど。
どの物語にも眉村卓先生のミーム(脳内の複製可能な情報)が確かに息づいてます。
そう言えば、『眉村卓の異世界物語』の扉に“その返信は時を超え過去に遡り、われわれの遺伝子配列に書き込まれていたのです。”とあり、これは至言だなぁと感じ入りました。
巻末の堀晃先生による「インサイダーSFはいかに生まれたか」を除外すると、15作品が収録されています。
私の独断と偏見でサブジャンル分けをしてみると、うち10作品が私ファンタジー(妻ファンタジー含む)、SFが2作品(過去の音源含む)、インサイダーSFが3作品、ホラーが2作品、ハチャハチャ系が2作品(マンガを含む)。15作品を超えているのは重複ありだからです(汗;)
私ファンタジー系の作品が多い気がしました。
読み返して以下に簡単にまとめてみました。
『眉村卓の異世界物語』関連本
こうやってみると、確かに眉村先生のトリビュート作品集になってますね。
各作者の年齢層が比較的近いのも我々の世代には取っつきやすい印象です。
『眉村卓の異世界物語』を出された目的というか意義を想像してみたのですが、追悼という意味合いは当然として、我々はこういう形で眉村先生のミームを継承していますという決意のようなものが感じられました。