癖は本能時にあり しょの12
軽茶一 成助
続編 三篇予告
「順逆二門に無し 大道心源に徹す 五十五年の夢 覚め来れば 一元に帰す
心しらぬ 人は何とも言はばいへ 身をも惜まじ 名をも惜まじ」
西暦1500年代のある夏のこと
或る場所でひとりの男が崖っぷちにいた
人生の旅の途中で 本当の道を踏み外してしまった彼が気がついたとき そこは暗く深い森の中であった
すべては復活祭の聖金曜日に始まる
見渡せば暗き森深く 道らしき道のひとつすらなく 何が起こったのかを理解できない彼は暗闇の中を進み 途方に暮れていた あるところで時間が止まる 急に目の前が開けたのだ
なだらかな丘の麓に彼はたたずんでいて 遠くに見える山の稜線の向こうに朝焼けの光が見えた
「この光が導いてくれるなら 前に進もう」
そこへ三匹の獣が続けざまに現れた
豹 獅子 狼
迫りくる猛獣に絶体絶命かと思ったとき さらにひとりの男が現れる
その男は言う
「この荒れ地を抜け出すには別の道を行く方が良い 案内しよう 但しそこは死後の世界なのだが」
「ぜひ連れていってください 例えそれが地獄でも」
「覚悟はあるのか 地獄を抜けられたら その先には煉獄があり そしてその上には」
「その上とは?」
「それは天国だ もしそこまで行きたければ 私はそこへは行けないので 別の人物に案内をお願いしよう 実は私はその女性に頼まれてここへ来たのだ」
「女性?」
「貴君のよく知っている人だ」
「それはまさか?」
!
以下次回