雀部
たいへん期間が空いてしまいましたが、SFファングループ探訪は、
前回に引き続き関東の老舗中の老舗「SFM同好会/宇宙気流」の創世記からのメンバーであられる林芳隆さんです。よろしくお願いいたします。
林
発足の1年半後からの加入なので、創世期の事情はあまり詳しくないです。
宇宙気流や宇宙塵の記事が、たよりです。
雀部
林
SFマガジンが創刊してから2年後に、初代会長の志摩四朗さんが、SFMのテレポート欄に載っていた人たちにファンクラブを作る呼びかけをしたようです。
(当時の雑誌のお便り欄には住所氏名が載っていました)
1962年2月18日(日)に「SFマガジン友の会」の発起人会。志摩四朗、佐藤俊(SRの会、紀田順一郎)、柴野拓美、伊藤典夫ほかの人が集まる。
早川書房には連絡していなかったので、翌日、柴野さんが森優(南山宏)さんに電話。
同4月末、SFマガジン30号(6月号)に「SFマガジン同好会」の呼びかけを掲載。
同5月27日、SFマガジン同好会発会式を宇宙塵5周年記念大会と兼ねて開催。第1回日本SF大会とする(MEGCON)。
参加180名前後。会誌「宇宙気流」創刊号発行。
6月からは月例会(50名くらい参加)を開催。
7月からは豊田有恒さんの発案で一の日会を開始。
会誌(志摩さんがガリ切り)は月刊で発行していましたが、年末に志摩さんがご病気でリタイア。編集は牧村光夫さんが引き継ぎました。
翌年5月に一周年記念大会(約60名)
10月に毎日ホールで第2回日本SF大会(約300名)。この時、林は同好会に入会した(高1)。
雀部
ありがとうございます。助かりました。
林さんはどういう経緯で入会されたのでしょうか?
林
中学生の頃SFマガジンを発見して、定期購読していました。なぜかジュブナイルSFは読みませんでした。
高校生の頃、神保町の東京堂で宇宙塵が販売されていて、毎月買っていました。
初めてSF大会(毎日ホールのTOKON1)に参加したとき、会員募集をしていたので、SFM同好会(宇宙気流)に入会しました。
日曜昼の月例会に参加するようになり、そのうち夜の一の日会にも行くようになりました。
宇宙塵は入会していましたが、宇宙塵の例会に参加したことはありません。
雀部
林さんが、
前回登場頂いた際に、”1967年に出るはずだった「宇宙気流」50号の原稿をまとめる作業をしています。”とおうかがいしたのですが……もう10年以上前になるんですね。
林
1967年に「宇宙気流」の編集を岡田英夫と一緒に、牧村光夫さんから引き継いたときに、50号は牧村さんが出すということなので、51号から始めました。50号はなかなか出ずに、けっきょく欠番になりました。
50号のことはずっと気になっていたのですが、牧村さんが50号の原稿をずっと保管していると聞いていました。
2010年の TOKON10 が20年ぶりのTOKONで、昔のことを振り返る企画があり、記念に出そうということになりました。今にして思えば、牧村さんがご存命中に発行できて、良かったです。
ブラザーのA3プリンタが自動両面印刷が出来て、比較的安く売っていたので、やってみようという気になったのです。
雀部
それは良い企画、素晴らしい仕事となりましたね。
牧村さんは、亀和田武さんの『60年代ポップ少年』によると、“牧村光夫と柴野拓美に育てられて、いまの私があるんだよ。”とか“捕物帖とノストラダムスの正体も牧村さんが教えてくれた。”とか書かれていて、硬軟取り混ぜてなんでも読んで知っている趣味人として登場してますが、近寄りがたい存在ではなかったんですね。
林
グジャグジャおじさんです。
ミステリーにもすごく詳しかったです。
飲み会では餃子がないとご不満でした。
雀部
なるほど、餃子も大好きだったと(笑)
83号(1973/10/1)から84号(2012/6/23)までが、39年も間隔が空いてますが、この突然の再開には何か理由があったのでしょうか。
林
50号が好評で残金も残り、2012年はちょうど会の50周年の年でもあったので、記念号として出すことになりました。
いつか84号を出したいとは、個人的にずっと思っていました。50号を出した勢いです。その後もなんとか続いています。最近は追悼特集ばかりですが
雀部
それはちと寂しいですね。>最近は追悼特集ばかり
送っていただいた84号(SFM同好会創立50周年記念、2012/7月)を拝見すると、この頃はまだ皆さんお元気なようで、紙面も充実してますね。思い出話も多いので昔の雰囲気が良くわかって、初めて読む読者にはうれしかったりします。
お便り欄に、
長山靖生さんインタビューの際にお世話になった大先輩の山本菊男さんの名前もあり、こちらでも活躍されていたんだなあと……(ハードSF研公報でも活躍されてました)
林
山本菊男さんは「宇宙気流」で1965~1968年に、アナログ誌最新号の紹介をしてくださっています。
いまでもワインボウムの長編を古賀英二訳(山本さんと石原藤夫さんの共同ペンネーム)で連載させていただいています。
雀部
え、共同ペンネームだとは知りませんでした。そうだったんだ(汗;)
84号以降は、林さんお一人で編集作業をされていらっしゃるのでしょうか。
林
OCRは岡田さんにお願いしていますが、編集はこのために買った「一太郎」を使って、一人でやっています。印刷、製本、発送も一人でやっています。趣味です。
雀部
印刷、製本、発送も全部お一人とは大変ですね。
関係ないですが、私も「一太郎」使ってます。日本製のワープロソフトというと「一太郎」しか無かった時代からですが。ワードより一太郎とATOKです(笑)
まあ、趣味でやらなければ続けられない仕事であるというのは良くわかります(汗;)
モチベーションはどうやって保っておられるのでしょう?
林
ワープロソフトはワードパーフェクト(コーレル)とワードプロ(ロータス)をずっと使っていました。
更新がなくなって、マイクロソフト製品は使いたくなかったので、気流の編集を始めるときに、日本語縦書きのために一太郎になりました。
昔の宇宙気流は月刊でしたので、歴代の編集長はだいたい2年くらいすると限界が来て、出せなくなって交代しました。
ずっと月刊を続けていた宇宙塵の柴野拓美さんは超人だったと思います。
僕は無理をしないでのんびり出しているので、間隔は開きますが、続けていられるようです。
まだ原稿を書いてくれる人もいますし、復刻もありますから。
雀部
確かに月刊はしんどいこともありますね。「アニマ・ソラリス」も最初は月間をうたっていたのですが、一時期相当恥ずかしい状態になって以来、不定期発行ということにしています。(滝汗;;)
林さんは、SF大会に40回出席されていて、最多出席で柴野拓実賞を受賞されているんですね。で、どうなんでしょう、SF大会の昔と現在とで違うところ、同じ所がありましたら教えて下さい。
林
初期の頃と違うのは、まず人数ですね。100~300人位だと、小さめのホールの1舞台で済みますので、分科会が出来ません。
その後、大小ホール2会場同時進行から、多数の小会議室に分かれるワールドコン方式になっていきました。
小会議室も備えた施設が増えてきましたね。
雀部
私が何回か参加したSF大会は、小会議室に分かれてましたから、人数が多かったんでしょうね。
ところで、柴野章の選考委員長をされているみたいですが、受賞者をまとめたサイトとかがあるのでしょうか?(見つからなかったので^^;)
林
サイトは無いと思います。
第1 回 2015 (米魂) 加藤勝幸
第2 回 2016 (伊勢志摩コン) 竹内伸介
第3 回 2017 (ドンブラコンLL) 立花眞奈美
第4 回 2018 (juracon) 佐々木秀美
第5 回 2019 (sci-con) 三浦範久、中谷育子
2020 2021 (SF60) 桐山芳男、牧紀子、石原藤夫、小谷眞理、故 青山智樹
高松では2年分なので人数が増えています。
2022 (F-CON) 森下一仁、平井博英
2023 (Scicon2023)松岡秀治、熊倉晃生
雀部
名簿ありがとうございます。
柴野拓美記念・日本SFファンダム賞は、略称が
柴野章となってますが、何故「章」なのでしょうか。
林
「柴野拓美賞を踏襲して、表彰状は発行しないが、賞の受賞者には、柴野拓美氏の肖像を埋め込んだ文鎮(柴野拓美章) を贈呈する.」
ということのようです。
雀部
そういう謂われがあっての章(文鎮)というネーミングだったんですね。
林
初期の時刊新聞を主催されていた御前憲廣さんが、暗黒星雲賞の加藤勝幸さんを表彰したいということで「ファンダム賞」の復活を発案したのですが、宇宙塵の残金を管理されていた山岡謙さんが合流して、「柴野拓美章」を贈呈する流れになりました。
林は名前貸し委員長のようなもので。
雀部
名前貸しでも有名だから祭り上げられるわけで(笑)
欠品中だった92号のご送付ありがとうございました。楽しく読ませて頂きました。
今年受賞された、松岡秀治先生(岡山SFFC会員で、内科医)が喜んでおられました。
そういえば、林さんは「イスカーチェリ」誌で、フランスSFの翻訳もされていらっしゃいましたが、最近もフランスSFは読まれているのですか。
林
なかなか読めるようにならず、本を買い集める資金も不足し、だいぶ前に断念しました。
サンリオで一冊だけ文庫解説をさせていただきましたが、SF文庫も無くなりました。
実力不足でした。
雀部
持っているサンリオSF文庫、ざっとチェックしたらフランス作家のものは、『妖精物語からSFへ』(ロジェ・カイヨワ)、『愛しき人類』(フィリップ・キュルヴァル)、『馬的思考』(アルフレッド・ジャリ)がありました。どうもこの中には無いようです。
あと、確か買って読んだ記憶がある『不安定な時間』(ミシェル・ジュリ)は、どこにいったのやら(汗;)
サンリオじゃないのですが、一番好きなフランスSFは、『禁断のクローン人間』(ジャン=ミッシェル・トリュオン)なのですけど。←アメリカSFぽいかも。
林
『着飾った捕食者たち』(ピエール・クリスタン)です。この人の小説が好きで、イスカーチェリに訳そうとしたのですが、うまく訳せないところで引っかかって、失敗しました。
当時人気のあったジュリやキュルヴァルは難しかったし、あまり好きでもなかったです。
雀部
ネットの感想を見るとディストピア小説で、今読んでも面白そうですね。
今後の「宇宙気流」誌のご予定がありましたら、うかがわせて下さい。
林
100号までは出すようにと言われています。今のペースで年1~2冊出していくことになると思います。
原稿は不足ですが、復刻と年表とワインボウム連載でページはなんとかうまります。
昔の連載をまとめた別冊も出したいと思ってます。
雀部
先日、「宇宙気流」No.95を拝受いたしました。
横順先生の(復刻)「黄金の天馬」、読ませますね。駄洒落、あんまり無いけど(笑)
「(復刻)KYUCON特集(第8回SF大会)」は、特に面白かったです。プロの方々、BNFの方たちも皆さん若くて熱気に溢れていた様子がよくわかります。「小松左京答える」も、小松先生のコメントが面白くて(笑)
「(評論)『火星年代記』再び」も良かったです。初めて読んだときの感慨を思い出しました。
「星群」誌は、今年からアマゾンのオンデマンド出版になりましたねえ。
「宇宙気流」誌もオンデマンドにすると製本・配布の手間が一挙に減るとは思いますが……
林
「気流」の読者は高齢者が多いし、著作権処理がグレーやブラックなものもあるので、アマゾンはハードルが高いです。
96号は8月の彩コン2に発行予定ですが、今のところまだ手付かずです。間に合うのかな?
雀部
なかなかモチベーション維持が大変でしょうがよろしくお願いします。
林
先月やっとヤマトに96号を持っていったら、DM便の契約が切れていて、再登録の手続き
に手間取り、本日ようやく発送できました。今週中には届くと思います。
夏が暑すぎたせいか、気力が出ませんでした。
雀部
本日、
96号拝受いたしました。お疲れのところ、編集・発送作業ご苦労様です。
(復刻)は当時の雰囲気がうかがえて面白いけど、こうやってコメント付けても横田順彌さんや加藤義行さんには届かないと思うと切ないですね。御前さんのエッセイも面白かった。禿げの定義から、機械学習の話になるとは思わなかった(笑)
中川さんの評論「『バーミアン』 の後に来るもの」も面白いというか中東情勢への理解が深まった気がします。
私が言うのも変なのですが、「宇宙気流」誌の編集・配布、大変でしょうが引き続きよろしくお願いします。昔のファンダムを知ることの出来る貴重な情報源だと思いますので。
[林芳隆]
古いSFファンです。1963年に高1の時、初めてSF大会(TOKON1)に出てから36回出席してます。95年には最多出席で柴野拓美賞を貰いました。
フランスSFを買い集めていましたが、あまり読んでいません。
ペリーローダンとディスクワールドが好きです。
いまはあまりSFは読んでなくて、昔のイギリスのミステリをおもに読んでいます。
TOKON10で、TOKONの歴史パネルに出ました。
「宇宙気流」の編集をしています。
[雀部]
1951年岡山県生まれ。アマチュアインタビュアー。岡山SFFC会員。コマケン所員。
ハードSF研(幽霊)所員(汗;)