SFファンクラブ探訪記
インタビュアー:[雀部]
『Anchor KLL No.1』
  • 神戸文芸ラボ
  • Amazonオンデマンド
  • 1760円(税込)
  • 2024.6.3発行
  • 故眉村卓先生が開催されていた「物語・エッセイ講座」の受講生が、講座修了後も自発的に集まり文芸同好会として立ち上げた「神戸文芸ラボ(KLL)」の初作品集。
  •   

【収録作】

◆作者:まつもとみか 「スルーのない彼」

平凡な家庭の主婦が刺激を求めて始めたアルバイトは、AIの話し相手になる事だった

◆作者:渡邊純代 エッセイ「京都鉄道博物館」「魔改造の夜」、短編「僕は騎士」「マッチングアプリ」「アフタークリスマス」「春の訪れ」

男女の心情をリアルに描く小編の数々。読めば、あなたは我が心を振り返りたくなる

◆作者:東野尚子 「聞かせて付喪神」「ささやき女将バージョン2.0」

普段の日常が、ちょっと不思議な世界に変わる

◆作者:山崎好志子 「寄り道しよう」

ちょっとお出かけの時に、たまにはホテルのバーに足を運びませんか?

◆作者:高鍋学 「一人歩き旅『沖縄トコトコ道中記』」「一人歩き旅の身体のトラブル」

日本全国どこでも一人で歩いた作者と一緒に旅しませんか?

◆作者:石坪光司 「時の崖」

宇宙開闢以来のあらゆる情報が波動として量子的に閉じ込められ時空波解析すれば過去が蘇る。実験に臨んだ主人公が体験したものは……

◆作者:堀晃 「大阪SF八景―SF的想像力を刺激する大阪の景観―」

日本ハードSFのレジェンドが、大阪にまつわるSF作家と作品を紹介しつつ書かれた地域を散歩する

◆作者:上坂京子 「戯曲 たねのあかし」

食の支配を目論む軍と多国籍企業に狙われた種苗家一族。近づく謎の女の正体。かつて「日本」と呼ばれた国で起きた「種」をめぐる戦い

◆作者:木下昭南 『長編 草物語 ―野犬連合盟主「虎」―』

大正期に日本一の商社になった鈴木商店大番頭金子直吉の伝記に着想を得た、犬を主人公にした波乱万象の物語

『Anchor KLL No.1』を手に取られた方がこの記事を読まれると、更に面白く感じられることを願っています!

雀部  >

故眉村卓先生が開催されていた「物語・エッセイ講座」の元受講生の皆さんが、同人誌を初めて出されたということで、お話しをうかがってみようという企画です。

皆さん初めまして、よろしくお願いします。

あ、石坪さんと堀先生には度々お世話になってます(汗;)

堀先生のエッセイに関しては、SFがらみということで別枠で詳しくうかがうことになりました。

まず執筆された作品について掲載順でうかがわせてください。


雀部  >

まつもとみかさんにうかがってみたいこと

「スルーのない彼」という題名からも、奥さんの話をスルーしちゃう旦那ってのは良くないことがわかります。いや分かっていてもままスルーしちゃう事が多いんですけどもね(滝汗;)

たぶん現在の技術で製造できる会話するAIでも、私を含めた大半の男性諸氏より雑談能力は高いと思いますね(笑)

「スルーのない彼」ではこういう結果になってしまいましたが、アイ君がどこにも行かずそのままの関係が続いていたら、どんな結末が待っていたのでしょうか?

まつもと>

家族を放っておいて、アイくんと会話しまくるという結末になっていたと思います。

いろいろイケナイ会話もしちゃったりして(笑)。

雀部  >

それはそれで面白かったかも(笑)


雀部  >

渡邊純代さんにうかがってみたいこと

「京都鉄道博物館」と「魔改造の夜」はどちらも機械(技術)に関連したエッセイですが、機械(又はそれを作った技術者)に興味を持つようになったきっかけは?

最近の「魔改造の夜」では、ワニの水鉄砲を改造してましたね(笑)

渡邊  >

技術の発展をすごいなと思うからで、昔からそういう世界にリスペクトを感じていました。自分にないものを崇める感じでしょうか。

雀部  >

なるほど、男のメカフェチとは違うのですね。

今回、短編を四作寄稿されてますが、創作のアイデアはどこから得られているのでしょうか。

渡邊  >

創作のアイデアなどありません。何も持たずに例会に参加するのが辛いので取り合えず思いついたことを書いています。


雀部  >

東野尚子さんにうかがってみたいこと

「聞かせて付喪神」は、こういうラストですが、他のオチは考えられてましたか?

東野  >

蔵が焼け落ちた後、傷心の主人公が西洋アンティークを求めてヨーロッパに旅立つ決心をする。

雀部  >

それは主人公、あんまり懲りてない気が(笑)

「ささやき女将バージョン2.0」では、チャットGPTネタが使われてますが(「スルーのない彼」は機械学習ネタ)、こういう技術的なアイデアがメンバー内で話題になることはあるのでしょうか。

東野  >

ありますね。堀晃先生と石坪さんの専門分野ですので、色々とアドバイスをいただけて勉強になります。

雀部  >

確かにそれは色んなメンバーが集まってる利点ですね。


雀部  >

山崎 好志子さんにうかがってみたいこと

「寄り道しよう」では、大阪のリーガロイヤルホテルが舞台ですが、私は行ったことがありません(汗;)

山崎  >

話の流れで何度も利用していると思われたなら、おお違いです。

付き添いという仕事のお陰で、普段なら経験出来ない様なこともいろいろ味わうことか出来て有り難いことでした。

雀部  >

なるほど。舞台となった「リーチバー」は魅力的なので、一度は行ってみたいです。


雀部  >

高鍋 学さんにうかがってみたいこと

「一人歩き旅『沖縄トコトコ道中記』」と「一人歩き旅の身体のトラブル」を読ませて頂いて、私も学生の頃はしょっちゅう下痢していて、正露丸が欠かせ無かったのを思い出しました(汗;)お腹が冷えると良くないというので寝るときは腹巻き必須(笑)40過ぎてから、体質が変わったのかあまり下痢しなくなり、最近は便秘することが多いです。ピロリ菌は居ません。

大いなる共感を持って読ませて頂いたのですが、足の痛みや朝起き上がれないほどの腰痛があったりしたにもかかわらず続けられている「歩き旅」の魅力は何でしょうか?

高鍋  >

まずは歩くよろこびです。雨上がりの朝、歩き始める時のすがすがしさ。風雨の中を行く時の必死さ。それらが楽しい。

また、日常から別世界に行ける。通勤通学、田畑の作業、町や村の生活の営み、人の暮らしが新鮮に感じられる。

そして出会い。道では滅多に人に会うことはなく、一言の挨拶が大きなよろこびになる。

雀部  >

交通量のある道を歩かれることも多いそうですが、怪我にも気をつけて頂き、さらなる「一人歩き旅」を読ませて下さいませ。


雀部  >

石坪さんの作品は宇宙を舞台(対象)としたコアSF(ハードSF)が多いと思いますが、何か理由があるのでしょうか。設定とか考察とかに苦労されませんか?

石坪  >

私的にSFの三大テーマは、宇宙、時間、生命と思っているので、そのためでしょうね。ただ、星群本誌や今回のAnchorKLLに掲載した作品は、コアSFを中心にしていますが、全てがそうでもありません。

ビジネス系でAIやロボットネタを使うとか、不思議なものに遭遇するとか、伝奇SFやたまにはホラー的なものも書いて比率的には半分以下かな。

雀部  >

半々くらいだったのですね。なんかハードSFのイメージが強くて(汗;)

石坪  >

設定や考察は書きながら詰めています。最初からある程度作ってしまうと、それで終わった気になるので、アウトラインが出来た段階で書き始め徐々に作り上げています。絵を描く時に簡単なラフスケッチから色を重ねていく感じですね。なので全体の整合性を取るのが難しいですね。部分的にうまく行ったと思っても、その前で、矛盾が起こったり、それを修正すると後続が変になったり。結局最初から書き直す事も多いです。それとネタ元の情報がインターネットに溢れているので、真贋の見極めと取捨選択に時間を取られますね。

雀部  >

確かにインターネットは情報の宝庫ですが、ゴミもなにもかも一緒くただから。

「時の崖」の冒頭、月と地球のラグランジュ・ポイントで過去の情報を収集する時空波センサーが開いていくシーン、良いです!

野田先生ではないのですが、「SFは絵だ!」

石坪  >

ありがとうございます。そのシーンは確かに絵になるようなイメージで書きました。

雀部  >

“時空波は、宇宙開闢以来のあらゆる物体や生物の情報が、時系列かつ重層的に重なり「ひも理論」で言う余剰次元に圧縮され層を成しているものだ。”,“それを地層に見立てて模式的に表したものが時空波断面図”とあり、「時間遡行機(レトログラード)は、その層「時の崖」を、化石を掘り出すように過去へ進むという説明だけで、なんかタイムマシンが可能に思えてきます。ここらのアイデアはどういうところから思いついたのでしょうか。

石坪  >

これはZPF(Zero Point Field)と言う量子真空に関する理論を、誰かが援用して「この宇宙のすべての場所に存在するエネルギーの場であり、この宇宙の過去・現在・未来のすべての情報が記録されているという仮説」に仕立てたものを使っています。

作中に(アメリカの科学ジャーナリストが出版した「生命・意識・時間・宇宙」にヒントを得た。)と書いているのは、「フィールド響き合う生命・意識・宇宙」リン・マクタガート著, 野中浩一訳 出版年 2004.11 出版者  東京 インターシフト 出版者   東京 河出書房新社(発売)が元ネタです。この仮説は、日本では田坂広志氏の著作によく出て来ます。しかし真贋は不明です。

最終稿ではカットしましたが、地球から宇宙望遠鏡で大宇宙を見ると過去を見ている事になりますね。一日経つと、その一日後が見える。これを細かく秒単位に切って延々と続け記録すると、その時の状況が連続して再現できる事になりますね。地球に向かって宇宙の全方向から来るあらゆる波長の光には全ての過去が含まれているという事が言えるのではないか。それが発想の原点でZPFは理論づけです。

雀部  >

ほぉ、そんな仮説があるんですね。

堀先生の“宇宙空間をメモリーとして使用するというアイデア”(情報サイボーグ・シリーズ)にも共通する考え方ですね。

続いて“人は、五感から得た情報を電気信号に変換し脳内で情報処理をして三次元世界を意識している。同じことを、時空波に織り込まれた情報を直接脳に送り込むことによって実現しているのだ”とあり、おぉ来た来たと(笑)

タイムマシンとこの考え方を結びつけるのは新しいアイデアのような気がしますがどうなんでしょう。まあ諸刃の剣的なところはありますが。

石坪  >

そうですね。人は、五感から得た情報を電気信号に変換し脳内で情報処理をして三次元世界を意識している。と言うのは定説のようです。

故に、脳内に五感からの情報(信号)と同じものを入力すれば世界が認識出来る事になります。この時、過去の情報をそっくり送り込めば、脳は過去世界を認識するのではないか、と言う事ですね。

タイムマシンで過去に遡行したとしても、トラベラー自身は未来に向かって移動している事になりますね。

“「過去に1年滞在したら1年分老いる。若返りはしない」と言う事は、過去の情報の中に没入しているだけではないのか。”と言う理屈で使っています。時間遡行と言うより、一種の高精度なVRと言えるかも知れませんが、そうなると話しはややこしくなるので触れていません。(汗;)

雀部  >

やはり、そこが諸刃の剣状態ですよね(笑)

「時の崖」はこういう結末でしたが、石坪さんは人生を賭けて改変したい過去の出来事があるのでしょうか?(私は無さそう(汗;))

石坪  >

現時点では、特段ありませんが、しいて言えばSFMのコンテストの最終候補作に残った頃の時代ですかね。あの時、酷評された事もあり巻き返しをしませんでしたが、まさに人生を賭けていたら、どうなっていたか。

今と同じかも知れないし、違う事をしていたかも知れない。とは思う時があります……

雀部  >

ひょっとしたら、ハードSF作家になっていたりして……

確かに、人生は数多くの"if"で成り立っていますね。


雀部  >

上坂京子さんにうかがってみたいこと

「戯曲 たねのあかし」の登場人物の「女」は、『リボルバー・リリー』の綾瀬はるかさんをイメージして読んでました。←違うか(汗;)

上坂  >

ありがとうございます。『リボルバー・リリー』TV宣伝の映像しか観てなくてよくわからないのですが、美しく、意志のある女性をイメージしていただけると嬉しいです。

雀部  >

それならぴったりです。

戯曲と小説とでは執筆方法が違うのでしょうか。

上坂  >

はい。違います。小説の場合、会話はもちろん情景描写も重要で、作品に彩りや深みを足すことができますね。

戯曲には、セリフとト書きというものがあって。ト書は、舞台上の設定や演出上のメモとして機能しているだけのもので、人物像を立ち上がらせるのも、展開させるのもすべてセリフで表現しなければなりません。

雀部  >

なるほど、戯曲はまず科白ありきだと。

一番気をつけて書かれたことは何でしょうか。

上坂  >

自然な口語表現。

演者の肉体を通すことを考えてできるだけ簡潔に。説明し過ぎず、余白をもたせたセリフを書くことを心掛けています。

雀部  >

それは二律背反というか、中々難しいことなのかな。役者さんと原作者のすり合わせも必要なのでしょうか。

上坂  >

劇団とか、フリーランスでも作・演出両方やられる方は直接役者とやりとりするのでしょうが、基本的には、テキスト(台本)をお渡した後は演出家の領域になってくるので、(個別に意見を聞いてくださる機会がった時はお答えしますが)そちらに委ねます。


雀部  >

木下昭南さんにうかがってみたいこと

『長編 草物語 ―野犬連合盟主「虎」―』

堀先生の紹介にもありますが、元になった作品よりどれくらい長くなったのでしょう?

木下  >

今回の「虎」は130ページ近い文章ですが、元になった記述は1ページほどでした。

雀部  >

『金子直吉傳』の中の「金子翁の趣味」の章、愛犬家としての金子直吉の部分がベースになっていてその部分が1ページということですね。

木下  >

全体で倍くらいと言うのは、当初は半分ぐらいでしたが、眉村先生に「倍の長さにしなさい」との忠告があったからです。

雀部  >

長さを感じさせない木下さんの話術を見抜かれていたんですね。

ギャグというかユーモアのセンスも素晴らしいと思います。影響を受けた作品とかがあったら教えてください。

(犬が主人公の昔のマンガというと『のらくろ』が有名ですね。私は世代的には『ロボット三等兵』あたり。『銀牙 ―流れ星 銀―』(1983-87)という熊犬が主人公のマンガ・アニメもありましたが)

木下  >

「のらくろ」は読んだ事はありましたが、「のらくろ」が兵士になってしまったので、読まなくなりました。

『ロボット三等兵』、『銀牙 ―流れ星 銀―』などの存在は知りません。

雀部  >

すみません、マンガ世代だもんで(汗;) 手塚治虫先生のマンガを読んで育った世代でもあります。

木下  >

「このように書きたい」のは村上元三の『田沼意次』(昭和60年"1985年"、毎日新聞社刊)のようなものです。

雀部  >

村上先生は、大河ドラマ『源義経』の原作と脚本を担当されていた方なんですね。

『長編 草物語 ―野犬連合盟主「虎」―』を読むと、某全国紙の誹謗中傷で鈴木商店は大迷惑を被ったんですね。これはどういう意図で行われたことなのでしょうか。

木下  >

小生は京都育ちで、神戸に住むようになったので神戸市民の気質は理解出来ていませんが、鈴木商店の大番頭の金子直吉と台湾総督府府民局長の後藤新平と仲良しになり、後藤がどんどん出世して、朝鮮総統時代新聞を圧迫した寺内正毅が首相になり、その内閣を支えたのが後藤新平だったから、朝日新聞は後藤を排除させたいために、仲良しの鈴木商店を攻撃目的にしたから、一般市民を煽動させたのでした。

雀部  >

やはり政治がらみの話だったのですね。


雀部  >

かまわなければ皆様の生年をお教え下さい。

まつもと>

昭和レトロな世界観が割になつかしい世代です。

東野  >

ファーストGUNDAM世代です。

山崎  >

1945年生れのかろうじて戦中派

高鍋  >

昭和21年(1946年)生まれです

木下  >

1942年(昭和17年)2月18日です。

その日は、太平洋戦争の初期でして、日本軍が英国の領土であったシンガポールを陥落させて(日本名 昭南島と改名しまして)2日後に提灯行列で祝いの日だったので昭南と名づけられました。


雀部  >

眉村先生以外でお好きな作家・作品(小説・TVドラマ・マンガ・アニメ・映画等々)。もしくは興味を持ってらっしゃる事柄など。推し活してるとか(笑)

まつもと>

好きな映画 「ラストエンペラー」「アラビアのロレンス」。 もう20回は観ました。二作品とも映画館で観られて良かった! という作品です。

好きな漫画「うる星やつら」「めぞん一刻」「タイムパトロールぼん」「ドラえもん」「AKIRA」。「AKIRA」と「うる星やつら」はアニメ版も好きです。

好きなアニメ 「機動戦士Zガンダム」。初代「ガンダム」より、こちらが好きなのはリアルタイムで観たからです。ラストシーンが衝撃でした。

好きなテレビドラマ あんまりドラマは観ないのですが、最近だったら「不適切にもほどがある」です。阿部サダヲの演技と昭和ネタが最高でした。

好きな作家  椎名誠 佐藤愛子 田辺聖子 星新一

好きなバンド  YMO

幼少期に「ライディーン」に衝撃を受けました。再結成された時、ライブにも行きましたよ。リズムの効いた曲が大好きです。

渡邊  >

好きな作家はフランシス・アイルズです。「レディに捧げる殺人物語」がすごいです。コミカライズがきっかけで読みました。

アガサ・クリスティーの「春にして君を離れ」を眉村先生が取り上げられたことがありましたが、この作品もすごいと思います。

東野  >

好きな作家 「アルジャーノンに花束を」のダニエル・キースや、「氷と炎の歌」シリーズのジョージ・R・R・マーティン、「翡翠城市」のフォンダ・リーなど。

好きな映画 スターウォーズシリーズ

推し活 BTSのアーミーです。

山崎  >

若い頃は山本周五郎、図書館で片っ端から借りてたぶん読破したはずだが、覚えていない! 生き方にはかなり影響を受けたはず。

あとは手当たり次第。眉村先生もその流れ。大阪環状線で偶然乗り合わせ、ちょうど講座の案内を新聞で目にしたので申し込んだ。

声をかけたわけでもないが、これがご縁につながった。

高鍋  >

司馬遼太郎、藤沢周平、いしいひさいち「四コマまんが類」、土屋賢二「エッセイ類」、塩野七生、映画「ナバロンの要塞」辺りですね。

上坂  >

眉村先生以外で好きな作家第1号は、高校生の頃授業を通じて知った芥川龍之介。

文章のリズム、頭の中に映像が浮かんでくるような描写が気に入って、繰り返し読んでました。

その流れで黒沢明監督の映画を観たり、有名な『羅生門』は『藪の中』がベースだと知って驚いたり。

小説と映像の表現の違いについて考え始めたり。小説に限らず、映像、舞台、アート、音楽等、ジャンル問わず唯一無二の表現をすることに憧れを持つようになったのもその頃からです。

空想好きだった子供時代。私だったらこうするのにと演出家のような気持ちで本を読んだり、結末を予想しながらテレビドラマや映画を観たり。それらすべてが、劇作の道に進んだ今に繋がる経験だったと思っています。

木下  >

初期の頃は海音寺潮五郎や司馬遼太郎でしたが、司馬さんは時々間違えた史実を書かれたから信用しなくなりました。

それ以降、堺屋太一を好きになりました。眉村先生の教室に入ってから、先生の在籍高校の一年後輩で同クラブで多々逆ろうたのが堺屋太一だったそうです。


雀部  >

創作を続ける原動力についてうかがってもよいでしょうか。

まつもと>

きらきらした世界を作り上げてみたいから、とお答えしておきましょう。

それ以外にもいろいろあります。

東野  >

KLLのメンバーが、それぞれにより良い作品作りをめざして、奮闘されている様子に刺激を貰って、何とか書き続けております。

高鍋  >

所属する神戸男声合唱団の「かわらばん」に17年ほど毎月エッセイを投稿しており、習慣になってしまっている。

その原動力は、色々なことに興味があって、浅いなりに何か言いたいのでしょう。

雀部  >

いえいえ、含蓄の深い考察もあって、このレベルで17年も続けられていらっしゃるのは凄いと思います。

上坂  >

家庭の都合で仕事と介護と育児などで、身動き取れない時期を長く過ごしてきました。 大変でしたが、書物や、たまに観る舞台や映画によって息継ぎすることが出来、自分を保ってこれました。

感謝しています。次は私がと思い、見知らぬ誰かに届くことを夢見て、恩返しのつもりで創作を続けています。


雀部  >

ご自分の掲載作についての掲載後の感想をお聞かせ下さい。

まつもと>

作品集に載せてみたら、意外に少ないページ数だったので驚きました。四百字詰め原稿用紙換算で約四十枚の作品だったので、当たり前といえば当たり前ですが。

次回はもっとたくさん載せちゃおうかな。

雀部  >

次回作はもうできたのでしょうか?

まつもと>

日常にひそむいろいろなことを描いた長編小説を一本仕上げました。現在、伝奇小説を執筆中。あやかしと少女のロマンスものです。

渡邊  >

何を載せてほしいか選べなかったのでうっかり多めに出してしまったことを後悔しています。一つだけにしておけば良かったと思います。

雀部  >

いえいえ、バラエティに富んでいて楽しく読ませて頂きました。

次回は、どの路線の作品にされるのでしょうか。

渡邊  >

今は前回提出した作品の父親の立場の人の気持ちを中心にした短編を書こうとしています。

これまでずっと、長い作品を一度に書くのが難しいので結果、短編ばかりを出しているのですが、一つの家族の一人一人をそれぞれ独立した短編の主人公にしながら、結果として家族全体の話を描いていくという形なら長編としても成立させられるのでやってみてはどうかと堀先生がおっしゃったので、チャレンジ中です。

でも、壮年の男性の気持ちがよくわからないので苦労しています。

東野  >

何とも至らぬ点ばかりが目につき、次回作では頭の中にあるアイディアを、もう少し上手く表現出来るようになりたいと思いました。

ただ、出来上がった本を手に取った時の嬉しさは格別で、また頑張って書こうという気持ちになりました。

雀部  >

今回はどちらもバッドエンドの短編でしたが、次回作はハッピーエンドはどうでしょうか?

東野  >

今執筆中の作品は、バッドエンドともハッピーエンドともいえない微妙なオチになる予定です。

この先、ハッピーな終わり方をする作品も書いてみたいとは思っていますが、私にも分かりません。

今は書けるものを書いている状態なので。今後作品の幅が拡がる事を期待して書き続けようと思います。

山崎  >

あまりそういう機会がなかったので、素直に嬉しい

高鍋  >

誰でもが自分の作品(本に限らず)を世の中に発信できるようになってしまった。

良いことか悪いことか判らないが大変な時代になったと思った。

しかし、自分の拙文も本にしてもらったのは嬉しい。取りあえず、親戚・知人に送って自慢するつもりです。

雀部  >

旅行記はけっこう需要があると思うので、またご当地の食べ物を交えたエッセイを読ませて下さい。美味しそうなものは食べに行きますので(笑)

高鍋  >

胃が弱く、グルメではないので食べ物のレポートが書けなくて残念です。ただ、毎日10時間ほど歩くので食べ物はみな美味しいのです。

上坂  >

形にしていただけて嬉しいです。ありがとうございます。

戯曲って、演者の肉体を通して発語されてようやく完成するものなので、いつか生の舞台で観ていただきたいです。

雀部  >

舞台、ぜひ拝見したいです。神戸ならなんとか観劇に行けますので。

上坂  >

嬉しいお言葉、励みになります。これからも、よろしくお願いします。

木下  >

時代背景は正確で「虎」が東京の豊島区から兵庫県武庫郡須磨町一の谷まで帰って来たのは事実でしたが、道中も一の谷でのやった事などは事実でなかったので、よう嘘八百書いたものだと、我ながら呆れかえっております。

雀部  >

当該部分、事実だけではあの面白さは出せないと思うのでとても良かったと思います。 木下さんは歴史上の人物にも造詣が深そうなので、埋もれた偉人伝なども読ませて頂きたいものです。

お好きな偉人のつまびらかにされてないエピソード等でも良いですが。

木下  >

歴史上の人物に造詣が深そうなので、とおっしゃっておられますが、大した事は余りしりません。

好きな歴史上の人物は平清盛、足利尊氏、織田信長、徳川慶喜で、中間的な人物は徳川家康ただ一人。

嫌いな人物は、後醍醐天皇、豊臣秀吉、武田信玄、昭和天皇です。

本当に好きな人物は実業家です。宝酒造の大宮寅吉さんで、その弟子の協和発酵の加藤弁三郎さん、京都セラミックの稲盛和夫さんで、大嫌いな実業家は松下幸之助ですが、彼の罪悪は松下産業の下請け中小業者をすべて破産させたからです。

大嫌いな実業家は松下幸之助ですが、彼の罪悪は松下産業の下請け中小業者をすべて破産させたからです。

雀部  >
 その宝酒造の大宮寅吉氏について書かれた「二人の紳士」(木下昭南著)という一文を拝読させていただきましたが、確かにまれに見る傑物であられたようですね。
 ロダンの「考える人」が二十数体も造られた話とか、それを大宮氏が購入された経緯とか、初めて知る話ばかりでとても面白かったです。相場師の松浦卓氏(と父親の丹平氏)も、なかなかなひとかどの人物と感心しました。最近の大金持ちは、そういう貢献には興味が無いのかしら。
 まつもとみか様、渡邊純代さま、東野尚子さま、山崎好志子さま、高鍋学さま、石坪光司さま、上坂京子さま、木下昭南さま、今回は色々インタビューにお答えいただきありがとうございました。
 皆様のさらなるご活躍に期待し、『Anchor KLL No.2』を、お待ちしております。
[神戸文芸ラボ(KLL)]
 神戸文芸ラボ(Kobe Literature Lab:略称KLL)は、2019年に逝去された眉村卓先生が開催されていた 「物語・エッセイ講座」の受講生が講座終了後も自発的に集まり文芸同好会として立ち上げたものです。 メンバーが「眉村卓の異世界通信」「眉村卓の異世界物語」の編集に関わった縁で堀晃さんも一緒に参加され活動を行っております。
[雀部]
 アマチュアインタビュアー。堀先生主宰の「ソリトン」元同人。インタビューでの至らぬ点はすべて私の責任ですが、今回の執筆者の方々とは年齢も近いこともあり、非常に親近感を持てたところは良かったです。(汗;)。
anchorALL