Author Interview
インタビュアー:[雀部]
『未来製作所』
  • 幻冬舎
  • Kindle版1123円
  • 2018.6.20発行

収録作:

田丸雅智「Prologue」

田丸雅智「ワンルーマー」

小狐裕介「dogcom.」

北野勇作「工場散歩」

松崎有理「山へ帰る日」

北野勇作「鞍の上で」

松崎有理「天文学者の受難」

太田忠司「ラプラスの兄妹」

小狐裕介「砂漠の機械工」

田丸雅智「ドルフィンスーツ」

太田忠司「つなげる思い」

『架空論文投稿計画』
  • 松崎有理著
  • 光文社
  • Kindle版1080円
  • 2017.10.20発行

蛸足大学の助教・ユーリー小松崎は、ある事件がきっかけで学問世界の危機を痛感。それを実証しようと、駆け出し作家の松崎有理と、内容でたらめ、嘘八百の論文をでっちあげ、学術誌に投稿する実験を計画! しかし、正義を振りかざし、不埒な研究者を取り締まる、と自称する謎の機関「論文警察」の魔手が彼らに迫る!? 抱腹絶倒の架空論文満載でおくる、著者ならではのサイエンス・ユーモア・サスペンス!

『Genesis 一万年の午後』
創元日本SFアンソロジー
  • 東京創元社
  • Kindle版1599円
  • 2018.12.21発行

収録作:

久永実木彦「一万年の午後」

高山羽根子「ビースト・ストランディング」

宮内悠介「ホテル・アースポート」

加藤直之 エッセイ「SFと絵」

秋永真琴「ブラッド・ナイト・ノワール」

松崎有理「イヴの末裔たちの明日」

吉田隆一 エッセイ「SFと音楽」

倉田タカシ「生首」

宮澤伊織「草原のサンタ・ムエルテ」

堀晃「10月2日を過ぎても」

『代書屋ミクラ すごろく巡礼』
  • 松崎有理著/丹地陽子装画
  • 光文社
  • 1300円
  • 2016.7.20発行

北の街にすむ学術論文執筆代行業者「代書屋」ミクラは、ひそかに想いを寄せる若い助教の研究室を訪ねる。しかし彼女は消えていた。すわ失踪、と思うもじつは、研究の詰めの調査のために南の巡礼の島・辺路島に向かったらしい。はかなげでほうっておけない、だから愛しい助教。彼女の研究はしあわせの正体を心理学的に解明すること。手がかりは助教の残した意味不明の走り書きのみ。ミクラは愛車・彗星号を質入れした旅費で辺路島へ向かった。島では優勝者がしあわせになれるという春祭り、別名・すごろく祭りがはじまる。果たしてミクラにできるのか、全島を舞台とした巨大すごろくに、人間駒となって参加して、助教を探しだすことが――しあわせになることが。

『年間日本SF傑作選 プロジェクト:シャーロック』
  • 大森望・日下三蔵 編/加藤直之装画
  • 創元SF文庫
  • 1300円
  • 2018.6.29発行

収録作:

我孫子武丸「プロジェクト:シャーロック」

彩瀬まる「山の同窓会」

新井素子「階段落ち人生」

上田早夕里「ルーシィ、月、星、太陽」

円城塔「Shadow.net」

小川哲「最後の不良」

小田雅久仁「髪禍」

加藤元浩「鉱区A-11」

筒井康隆「漸然山脈」

酉島伝法「彗星狩り」

伴名練「ホーリーアイアンメイデン」

松崎有理「惑星Xの憂鬱」

眉村卓「逃亡老人」

宮内悠介「ディレイ・エフェクト」

八島游舷「天駆せよ法勝寺」

山尾悠子「親水性について」

横田順彌「東京タワーの潜水夫」

『5まで数える』
  • 松崎有理著/上田よう線画
  • 筑摩書房
  • 1600円
  • 2017.6.10発行

「5まで数えられないと天国へ行けない」という伝承に怯える少年を描く表題作ほか、ホラーとSFの融合がテーマの奇妙な6つの物語。

収録作:

「たとえわれ命死ぬとも」

「やつはアル・クシガイだ――疑似科学バスターズ」

「バスターズ・ライジング」

「砂漠」

「5まで数える」

「超耐水性日焼け止め開発の顛末」

『算数の天才なのに計算ができない男の子のはなし』
  • バーバラ・エシャム著/マイク&カール・ゴードン絵/品川裕香訳
  • 岩崎書店
  • 1600円
  • 2013.7.1発行

計算できなくても、その子をよく観察し、「すばらしい才能がある! 」と適切な指導をしていくというアメリカの教育の深さを感じさせる内容。計算ができないから、と諦めている日本の子どもや教師に「算数障害(ディスカリキュア・LDの一種)」という言葉や実態を知らしめたい。(コメントは筑波大学の熊谷恵子先生。)

雀部 >

さてさて、今回の著者インタビューは久方ぶりの松崎有理先生です。

すいません、前回の『代書屋ミクラ』 『洞窟で待っていた』インタビューは、もう5年以上前になるんですね。

松崎 >

5年って長いですよねえ。さっき駅におりたったとき、天満屋岡山駅前店が11階建てで燦然とそびえたってて度肝を抜かれましたもん。前回きたときそんなものなかったですからね。すごいですね設計が安藤忠雄さんですってね、そういえば高梁市の美術館も手がけてましたっけ。岡山には縁があるんですね。

雀部 >

え、ちょっと岡山駅に行かない間に天満屋が出来ていたとは(驚愕)

松崎 >

読者のみなさんのために追記しておきますね。「天満屋岡山駅前店」はフィクションですよ。

雀部 >

「天満屋倉敷駅前店」はありますですよ(笑)

安藤先生の設計は、“高梁市成羽美術館”ですね。小ぶりだけど、“おかやま信用金庫内山下支店”も地元では有名。

そういえば、安藤先生設計の“TOTOシーウィンド淡路”というところに泊まりましたよ。斜面に建てられていて、宿泊棟から食堂に行くときは外の空中廊下(屋根無し)を通るという変態設計(笑)

それはそうと、建築にも興味がおありだったとは!

松崎 >

すてきですねえおかやま信用金庫。建物めあてで口座つくっちゃいそう。

ええ建築だいすきなんですけれど、どんどん脱線しそうなのでこのへんで本題へ入りましょうか。

雀部 >

安藤先生は、なんか他とは違った建造物にしてやろう感があって好きです(笑)

前回うかがった作家としての「短期目標/中期目標/長期目標」計画で言うと、年数的にはもう長期目標に入ったと思うのですが……

松崎 >

そうですもうじきデビュー10年目になるのですよ。細々ながらよく続いています。自分でも驚いています。

長期目標については、前回のインタビューでは「大胆な内容なので、ないしょです」なーんていってましたが、いまにして思えば隠すこともないので公開しましょう。   

順不同で:

・酒飲み書店員大賞

・日本タイトルだけ大賞

・青春アドベンチャーでラジオドラマ化

です。やっぱり大胆ですね。かすりもしません。『5まで数える』は自分でもいいタイトルだと思っていたのですけど。

雀部 >

ん〜「酒飲み書店員大賞」受賞されてませんでしたっけ??

松崎 >

そんなイメージがあるようですけど、世の中そう甘くないのです。

雀部 >

そうでしたか。なんか残念。

『5まで数える』は、私も良いタイトルだと思いますが、英題が"I can't count Five."って書いてありますから「5まで数えられない」が正しいのかな?

松崎 >

英語タイトルは筑摩の担当編集者のアイデアです。

ちょっとネタバレですが、表題作は「5まで数えられない」話なので、英題はこのようにしましょう、と。

雀部 >

なるほど。

数が数えられない「失算症」って本当にあるんですね(驚)

松崎 >

こんな絵本も翻訳出版されましたし、もっと知名度が上がってくれればいいなと思います。

『算数の天才なのに計算ができない男の子のはなし』

雀部 >

この子は素早い計算と短期記憶が怪しいのかな。症例的にはちょっと似てますね。

『5まで数える』の帯に「新感覚の理系ホラー誕生」と書いてあるのですが、数学者の幽霊は出てくるけど優しくて全然怖くない。数学嫌いの子どもにはぜひ読ませたい。(笑)

松崎 >

そういっていただけると作家冥利につきます。

「シビアな話が続くので、ラストだけはほんわかテイストにしましょう」(大意)と担当編集者が提案してきまして。「へむ」(『あがり』収録)みたいな感じにしたかったようです。だからあえて激似なシーンを入れました。

雀部 >

あ、なるほど。シビアな話というか「たとえわれ命死ぬとも」は、松崎さんお得意の“実験医にとってのホラー話”だし。ま、人類全体にとってもホラーかもですが、話が大きくてやはりホラーというよりはSFですよね。

松崎 >

ええ、担当者からのリクエストどおりホラーを書いたつもりでも、やはり根底にあるのはSFマインドのようで。

なおこの“自分の体で実験する医師たちの話”と、つぎの疑似科学バスターズものはデビュー当時からあたためていたネタでございました。ようやく作品化できてほんとにうれしいです。

雀部 >

主人公達は、大槻教授!よりはメディア向けかも(笑)

「やつはアル・クシガイだ」は、例によって最初気がつかなくて(鈍い^^;)、これって“アカラさま”。

松崎 >

いえいえ、ギャルゲマニアのじいちゃんが解説するまで気づかないひと多かったみたいですよ。

雀部 >

そうなんですか。自分だけじゃ無いのは、何かほっとします(汗;)

素敵なユーモアSFでした。話がどんどんエスカレートするのも松崎SFの特徴の一つではありますね。

松崎 >

エスカレートしてラストは世界滅亡までいってしまう、という構造はデビュー短編「あがり」とおなじです。編集者が拙著『あがり』をいたく気に入ってくれていたので、「あの本のようだが、ちがうもの」をつくったつもり。

「やつはアル・クシガイだ」は筑摩書房のサイトで全文無料公開しています。松崎有理の作品を読んだことのないかたはぜひどうぞ。

そうだ舞台裏をちょこっと。あの作品を執筆したのは現大統領が決定する前だったのです。出版のさい、「いまにしてみればこのラスト、予言的ですよねえ」(大意)と編集者がいっておりましたっけ。

雀部 >

そう言えば、確かにキャラが被ってますねえ(笑)

ほんわかテイストといえば『すごろく巡礼 代書屋ミクラ』もいい味でてました。

いつも報われないミクラ君。途中でミクラ君の幸せが何なのかわかってしまったので、納得のラストでした。あ〜ミクラ君、君は望み通り幸せなんだよ(笑)

松崎 >

あの作品はわたしの「幸せとはなんぞや研究」の集大成みたいなものです。もっともあれはミクラにとっての答えで、みなさんにとってはそれぞれちがった答えがあると思います。

雀部 >

幸せは読んだ人の数だけありそうですね。これは前回のインタビューでも取り上げさせていただいた『代書屋ミクラ』の続編(第二弾という位置づけかな?)ですが、代書屋さんというと、『架空論文投稿計画 あらゆる意味ででっちあげられた数章』も背景で代書屋さんが出てきてますね。“架空論文”でっち上げるの中々大変そうですが、楽しんでらっしゃる感も出ていて、読者としても楽しかったです(笑)

松崎 >

ええ、嘘論文執筆はあんまり楽しかったのでいまでもときどき新作を書いているくらい。

「研究者心理におけるパーキンソンの法則――締切の延長にともない仕事量が増加することの数学的証明」

お察しのとおり舞台裏は大変で、あの架空論文一本書くためには原著論文を数十本読んでいました。しかしどんな仕事でも大変なのはあたりまえですから、「楽しい」が伝わってくれればそれでいいと思っています。

雀部 >

はい、十分伝わっております。

松崎さんのHPを拝見するとスイーツに関する記事も多いのですが、小説中にもヘンテコな食べ物をさりげなく登場させてますよね。こういうのを思いつくのもお得意そうですね。今回のインタビューではまだ出てきてませんが(笑)

松崎 >

あっすみません。毎回岡山名物でいじりたおすのもどうかと思いましたのでこのたびは自粛させていただきました。

作中にはなるだけ飲食物を出すように心がけています。まず自分が好きですし、読者のみなさんも好きなかたが多いだろうと信じているので。

うーんでも「ヘンテコ」と形容されるのは心外だなあ。できるだけ「うわあおいしそう」「どんな料理なんだろ」と、プラスな気持ちを抱いていただけるよう気をつけているはずなのですけど。

なお、作中の料理やお菓子や名産品は、まずモデルがあってそれにひとひねりした名前をでっちあげることが多いのです。典型例は「ふんわりまるまる、萩饅頭」ですね。

雀部 >

ヘンテコさも、十分伝わっております(笑)

架空というか嘘話という繋がりだと、『嘘つき就職相談員とヘンクツ理系女子』も楽しかったです。

松崎 >

さっそく「萩饅頭」の登場する作品へ振っていただいて、ありがとうございます。

雀部 >

あ、そう言えば(笑)

後のほうに『就職相談員蛇足軒の生活と意見』を改題、加筆・修正を行ったものですとありましたが、あまり印象としては変わってなかったので、どこが変わったのかは追求せずじまいです(汗;)

松崎 >

いやいや、わからないくらいでいいんですよ。プロはこっそり汗をかくのです。

とはいえ、どんな修正作業であったのかの片鱗は公式サイトでみることができます。

「ゲラ作業を楽にしたい――ゲラ完全ペーパーレス化への長い道のり」

雀部 >

読みました。なるほど。「アニマ・ソラリス」は、著者校をテキストでお願いしているのでゲラ作業は無い(笑) まあ短いですし、後で訂正も出来るし。

松崎 >

ええ、同様にウェブ掲載の仕事はとてもらくです。紙がいっさい入ってこないので。いったい自分どんだけ紙を恐れているのか。

雀部 >

紙の本にこだわっている作家の方もいらっしゃいますけどね。

巻末の新井素子先生の解説読んで、う〜ん世間一般の博士号に対する認識はこんなのかと驚きました。うちの息子二人も修士でして、敢えて博士号は取らないのだと言ってましたから。

松崎 >

これですね。

博士が冷遇されるのは日本独自の新卒一括採用システムのせいだと思っています。もっとも博士の就職難は日本にかぎった話ではないのですけど。

だから雀部さんの息子さんたちのような選択をするひとは多いのですよ。

雀部 >

(以下ネタバレにつきフォントで隠します)『5まで数える』の巻末の「超耐水性日焼け止め開発の顛末」は、吸血鬼ネタですが、なるほど確かにでした。(ここまで)

『嘘つき就職相談員とヘンクツ理系女子』にも吸血鬼の就職相談が載っているんですが、吸血鬼がお好きでなのでしょうか。中里先生の小説で“女性の吸血鬼が使う鏡は、姿が映るように狼の網膜を貼り付けて造る”というのがあって、ははーと感心したことがあります。ま、人間の網膜も使えそうですが。(ネタにしやすい?女性は吸血鬼に憧れている?(笑))

松崎 >

よくぞきいてくださいました。

じつは、興味あるのはいわゆるハリウッド型吸血鬼ではなくて、オリジナル東欧土俗吸血鬼のほうです。

栗原成郎さんの『スラヴ吸血鬼伝説考』と平賀英一郎さんの『吸血鬼伝承』、この二冊は東欧土着妖怪としての吸血鬼を知ることができるひじょうに希有な本、そして良書です。超おすすめ、っていったいだれにおすすめしてるんでしょう。すごく需要が少なそう。

これらの本によると典型的吸血鬼像とは黒マント姿の美青年ではなくスラブの農民の死体です。どっちかといえばゾンビに近い。「血を吸う」という特徴さえ必須ではないようです。

ただこのテーマはひじょうに作品化しにくくて、いまも手をつけられていません。やっぱりエンタメ作品に落としこむならハリウッド型のほうがスムーズですね。あれだけ量産されているのも納得です。

なお平賀さんの本によれば、東欧では「吸血鬼の定説である鏡に映らない、という特徴はみいだすことができなかった。姿がうつるほどのおおきな姿見を所有するのはブルジョワでなくてはありえないから」(大意)とのことでした。徹頭徹尾、農民の伝承なのですよ。

雀部 >

東欧土俗吸血鬼は、ゾンビ系で吸血もしないとなると何と呼べば良いのやら(笑)

松崎 >

それこそ「アル・クシガイ」ではいかがでしょう。

雀部 >

あ、言われてしまった(汗;)

中里先生のインタビューでも、“暖かくて明るい環境の西方キリスト教文化圏では、死んだはずの人間が生き返れば、使徒とか聖人であるが、暗くて寒い気候の東方正教では、死んだはずの人間が生き返ってくれば吸血鬼となる。”というアイデアが披露されていてなるほどと感心したんですよ。

松崎 >

ふふふふふ。またまた平賀さんによれば、「日本人は日本で死ぬと幽霊になるが、東欧で客死すると東欧土俗吸血鬼になってしまう。つまり、襲われる人間側がなにを信じているかによる」(大意)なのだそうです。おもしろいでしょ。

すみませんすっかり脱線しましたね。戻りましょうか。

雀部 >

日本だと仏教だから幽霊なのかな。ちょっと保留(笑)

『嘘つき就職相談員とヘンクツ理系女子』の電子版には、特典として「惑星Xの憂鬱」が収録されてますが、これは『年間日本SF傑作選 プロジェクト:シャーロック』にも収録されてますよね。

松崎 >

「惑星X」は自信作だったので、角川書店にはかなり無理いって押しこんでもらいました。さいわい選者の日下三蔵さんの目にとまって、『年間日本SF傑作選』にも入れてもらえました。

ぜひ、多くのひとに読んでいただきたい作品です。泣けたり感動したり、はないでしょうが、「あははーこんなあほなこと考えてるひとがいるんだ」と、人生前向きになれるのではないかと。

雀部 >

いやぁ、あほだけど良かったです(笑)

しかし、冥王星探査船が可愛いぞ。こういう探査艇を可愛いとか健気だと思うのは日本人だからでしょうか?

松崎 >

あれのモデルはNASAのニューホライズンズなんですけど、ミッションチームはぜったいこの探査機を「かわいい」と思っていたでしょうね。公式サイトやブログをみてると愛が伝わってきますもん。

探査機SFといえば小川一水先生の「青い星まで飛んでいけ」や円城塔先生の「バナナ剥きには最適の日々」など名作が多いので、似た雰囲気にならないよう細心の注意を払いました。たぶんぜんぜん似てないと思います。

雀部 >

似てません(笑)

松崎 >

ならば大成功でございます。それにこの作品は探査機ものというより、冥王星に独○○家をつくる(ネタバレにより伏せ字)というぶっとびアイデアのほうがメインですしね。

とにかく、いままで宇宙ものって苦手意識があったのですけど、この仕事のおかげで払拭されました。だからつづいて、『未来製作所』でも宇宙ものを書かせていただきました。

雀部 >

その天文話、「天文学者の受難」(『未来製作所』所載)も、学究肌の主人公がトラブルに巻き込まれる話ですが、これは上っ面だけ取り上げるメディアも悪いですよねぇ。

松崎 >

いきなりメディアで騒がれなきゃ主人公ものんびり地味に天体観測人生を続けていられたんですけどね。

なお本作はショートショートですので、星新一先生をリスペクトした一行をこっそりまぎれこませております。お時間のあるときにでも探してみてくださいませ。

雀部 >

最後に、「イヴの末裔たちの明日」(『Genesis 一万年の午後 創元日本SFアンソロジー』所載)はひねりが効いた短編で、薬ネタだし、星新一先生もあっと驚く結末で楽しめましたよ。現代の日本でも応用が利くかな? 政府主導で秘密裏にやって欲しい(笑)

松崎 >
えっもう最後ですか。いやあ、星先生に驚いていただけるかどうかはわかりませんが、オチにはかなり苦心いたしました。複数のバージョンを考えて、いちばんいいものを採用したつもりです。
雀部 >

ひねりが見事でした。専門分野だから、ああいう発想は出やすいんでしょうか?

松崎 >
あの作品の発想は、じつは『未来製作所』執筆時の取材で産業用ロボットをまぢかにみた体験からです。スマートで力づよくてかっこいいな、と。でもそういうタイプのロボットが出てくる作品ってあんまりない気がして。『わたしは真悟』くらいかな。本作登場の「ニワカ」のモデルは「ソーヤー」という人間といっしょに働ける産業ロボットです。顔がついててキュートなんですよ。
雀部 >

ほんとだ、顔が付いているところが日本的。ちょっとだけ人間ぽくなりますね。絵的には業田良家さんの『機械仕掛けの愛』を連想したりしてたんですよ。

星新一先生をリスペクトした一行は、再読したけれど分からずじまい。次回までには見つけたいなあ(汗;)

今回はお忙しい中ありがとうございました。続編・新刊が順調に出るのを楽しみに待っています。

[松崎有理]]
1972年茨城県生まれ。東北大学理学部卒。2008年、長編『イデアル』が第20回日本ファンタジーノベル大賞最終候補に。2010年、短編「あがり」で第1回創元SF短編賞を受賞しデビュー。近著はインタビューのとおりです。
公式サイト
[雀部]
理系の部分はしっかりおさえつつも、ホンワカした小説を読ませて下さる松崎さん。
なかなか無い組み合わせですよね。