魔法の力が“魔砲”として銃に封印され、その力が各国で暗躍する世界。最強の魔砲使い・麗美武洋は、これまでは犯罪者をまったりと駆逐しながら最愛の妹・奈緒美を一方的に想い続けていた。奈緒美から魔砲使いになりたいとねだられた武洋は、ダメ元で形だけでも―と、一般人の奈緒美には扱えない魔砲をレクチャーするのだが…なぜか習得できてしまう!?聞くと、厨二病をこじらせたクラスメイトのあらぬ入れ知恵が効果的だったようで(笑)
ソロアイドルの大月みくりは自分のファンたちのあまりの粗暴ぶりに心を痛め、悩んでいた。天才的なロボット工学の知識を持つ彼女は、ある夜インスピレーションに導かれ、“推しの三原則”を思いつき、礼儀正しく清潔感のある「AIヲタク」を開発する。
そして、どのアイドルの現場も「AIヲタク」で埋めつくされるようになってゆく……。
今月の著者インタビューは、第3回ゲンロンSF新人賞大森望賞を「推しの三原則」で受賞された進藤尚典先生です。
進藤先生、初めまして。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
進藤先生は、2014年に『俺の妹を世界一の魔法使いにする方法』で、第27回ファンタジア大賞銀賞を受賞されているんですね。それが『俺の妹を世界一の魔砲神姫にする方法』と改題して出版されたと思うのですが、内容も相当改稿されたのでしょうか。
編集さんからのオーダーでめちゃくちゃ変わりました。主人公側の組織の仲間たちや敵の組織の設定から、銃を使うというギミックまで、かなり様変わりしてます。期間が短い中でかなりの分量書き直したので、あの忙しい日々はいまでもトラウマになっていますね。
ありゃま。出版前の改稿はだいたいあるようですね。
可愛くて真っ直ぐで健気でしかも強い奈緒美ちゃん、よいですねぇ。まあ年齢的には私の孫と近いけど(汗;)
それよりも強くて悪くてドSな三ツ俣オグマ嬢、好きです。SFファンは、だいたい強くてSっぽい美人には弱いです(笑)
あと、キャラ間の掛け合いも漫才みたいで面白かった。
ラストを読むと、続編がありそうな気配もするのですが……
売り上げが芳しくなかったので、あえなく打ち切りとなってしまいました……。じつは続きというか、ラストの展開まで考えていたので、もし、つづきを書かせていただけるのならいつでも書きたいですね。
サブストーリーとして、オグマ嬢のお兄さんも、可愛い妹を世界一の魔砲神姫にしようとして主人公とバトルをするが、実は裏ではシスコン同士で妙に気があって妹たちの戦いを止めさせようとするとかの展開も希望です(笑)
オグマの兄もシスコン(笑)。その発想はなかったです。すごくいい設定なので、ぜひ続編を書くとしたらいただかせていただきます(笑)
それはぜひに(笑)
「クアトロプリンセス」も、まさに王道ファンタジー路線で面白かったです。現在ゲームに夢中な小二の孫娘が機嫌が良いときに読んで聞かせています。まだ始めたばかりなのですが、「プリキュア」が大好きなので、なんとか読書にも興味を持ってくれれば良いのだけれど(汗;)
想定年齢層はどのくらいなのでしょうか。
お孫さんに!?ほんとうにうれしい。ありがとうございます。
実は「クアトロプリンセス」は自分がいままで書いた作品の中で最も好きな作品です。
アイドル声優たちを主人公にして、平成ライダー的な戦闘ギミックをつぎこみ、ストーリーは「負け犬たちのワンスアゲイン」(注;RHYMESTERの宇多丸さんが映画評でよく使う、ダメダメな登場人物たちが一念発起して大一番の勝負に臨む「ロッキー」のようなストーリーのこと)と、自分の大好きなものをこれでもかと注ぎ込んだ作品なので。
ゆえに「年齢層」というより「俺」が読んでて最高に面白いものを書いた感じです。
子供向けというより、子供が読んでも面白い作品ということですね。
さて、もうお一人ゲストの作家さんにもご登場願いましょう。「枝角の冠」で、第3回ゲンロンSF新人賞を受賞された琴柱遥先生です。
琴柱遥先生、初めまして。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
「ゲンロン 大森望 SF創作講座」では各回テーマが決まっているので、バラエティに富んだ作品を読むことが出来るのも楽しいですね。掲載の短編(実作)で、これは大推薦できるとか、私はこれが一番好きだという短編があれば教えて下さいませ。
イトウモ(伊藤元晴)さんの「イキワカレノイモウト」です。
田舎町に移り住んだ主人公のもとにアニメやゲームに出てくるような理想の妹を擬態した生物が現れて共生をはじめるという話なんですが、実はもともとこの話の梗概は自分のものなのです。イトウモさんとあるとき、お互いの梗概を交換して実作を書こうという話になって、自分が過去に書いた「イキワカレノイモウト」の梗概を使ってイトウモさんが実作を書いたんです。自分が書いた「イキワカレノイモウト」はコテコテの萌えコメディなんですが、イトウモさんの「イキワカレノイモウト」は田舎町の閉そく感とそこに住む人々の危うさを表した純文学になっています。何より「妹」がすさまじく官能的に書かれていて、ヤバいものになっていました(笑)。ぜひ自分のものと見比べて読んでいただきたいです。
どちらも面白かったです!この二作品の根底に流れる前提は、モテない若い男にとって、自分にすり寄ってくる容姿言動が可愛い女性(としか見えないモノ)には滅法弱いということですね。そしてそれは何時の世にも真理です!(笑)
私は四期だと藍銅ツバメさんに注目しています。SFというよりも怪奇小説を書かれる方なのですが、どれも何とも言えないぬめりとした恐さがあって良い。「ぬっぺっぽうに愛をこめて」は妖怪モノとしての恐さの他に、子どもという大人とは異質な生き物の気味の悪さのようなものがよく表現されていて感服しました。
ひぇ~っ。こ、これは、怖いですね。おぞましいモノに対する恐さというか、この先どうなるか分からない怖さというか。主人公の女の子は、娘であると同時に母親でもあるような気がしました。そう考えると実は女性の強さを描いた作品なのかも。
琴柱先生は、進藤先生の作品の魅力はどこにあるとお考えでしょうか。
独特の軽みや明るさが進藤さんの作品の良さだと思います。
登場人物がバラエティに富んでいて、様々な個性が書き分けられているにも関わらず、読んでいて『嫌なヤツだなあ』と思う人がいない。『推しの三原則』にも色々な困ったオタクの人々が出てくるのですけれども、最終的には皆に思い入れをしてしまって、その最期にはホロリと来てしまう。普通の人が書けば人間の生臭さが出て嫌な話になってしまいそうな作品でも、進藤さんが書くとかろやかな読み口に仕上がっている。
第3回提出作品の「イキワカレノイモウト」は特にその部分が生きていると思っています。
おっと、さきほどのお話しで出た伊藤元晴先生の「イキワカレノイモウト」と同じ梗概(進藤先生作)で書かれた進藤先生ご自身の作品ですね。
ありがとうございます。自分自身、軽妙なコメディが好きなので、そういう作品を書けていると言っていただけるのは本当にうれしいです。
琴柱先生ありがとうございました。あらためての著者インタビューの際にはよろしくお願いいたします。
最初、進藤先生の「推しの三原則」を読んで、これは大森先生からヒントを得て書かれたのかなと思ったのは内緒です(汗;)
「note」で書かれている「今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その1〜」を読むと、元々AIが社会とどう関わっていくかに興味を持たれていたんですね。
AIと社会の関わりというより「なるべく人に迷惑をかけないようにしよう」という風潮が強い昨今で、それがさらに強まっていくと社会はどうなるんだろうという疑問から書いたのが『推しの三原則』です。
自分自身が実際に出会った、多少人に迷惑はかけるけど愛らしく面白いアイドルヲタクの皆は、そういう社会ではどうなっていくんだろうと思いながら書きました。ゲンロンSF創作講座に入って最初に購入した参考資料が『50代からのアイドル入門』なので、それはそれは大森さんには大きな影響を受けてますね(笑)
私も読ませて頂きました。大森先生とは若干世代が違う(笑)んですけど、アイドルヲタクって楽しそうと感じたのは事実ですが、地方在住ということもあって実行にはうつせません(汗;)
私もヲタクではあるんですが、狭く深くタイプで、某歌手(「池上線」の西島三重子さん)のファン歴40年です。ちょっと出遅れでファンになったのとコンサートとかには行ったことがなかったんで、ファンクラブに入りたくて当時のレコードを監修していたディレクターの人に手紙を書いて、ファンクラブを紹介して貰いました。それがこうじてファンサイト(ご本人のHPが出来たので放置プレイ中)作ったりライブに行ったりと(汗;)年齢層もあり、ファンの皆さんいい人ばかりです。
そんなこんなで『50代からのアイドル入門』は、非常に共感できる部分もあるけど、えっそうなんだという部分も(汗;)
ひとつうかがいたかったのは、題名の「推しの三原則」は「ロボット三原則」のパロディ(オマージュ)ですよね?
もちろんそうです。「ロボット三原則」を扱ったSF作品が好きなんです。「ロボット三原則」という絶対的なルールを、解釈を読みかえたり、隙間をついたりしてロジカルにそのルールを破ってくれる快感があるので。特に『イヴの時間』というアニメで「ロボット三原則」を本当に上手く使って、面白いコメディをつくりあげているのを見て、「ロボット三原則」を使った作品は前から書いてみたいなと思っていたんです。
王道の少年漫画が好きです。特に好きなのは『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』や『うしおととら』、『からくりサーカス』です。
岡山は人生で一度しか行ったことがないですね。そのとき岡山駅前の華やかさや街ゆく人たちのオシャレさに驚き、また再訪したいと常々思っていますが。
あの舞台設定は、瀬戸内海の岡山あたりは無人島がいくつかあることを知っていて、昔「電波少年」というテレビ番組で芸人さんが無人島を自力で脱出する企画で使われたのも瀬戸内海の離島と聞いていたので、その設定になりました。
ありがとうございます。「接近」から「接触」にタイトルを変えたのは、前述した『50代からのアイドル入門』ではアイドルと接することを、自分が通っていたアイドル界隈でよく使われていた「接近」ではなく「接触」と記していたので、それに沿って変えただけなのですが、よりSFらしさが増していたのならよかったです(笑)
実はイキワカレノイモウトが雄という設定は琴柱さんが考えてくれたものです。梗概を出した時点で琴柱さんがTwitterで「イキワカレノイモウトが雄だと面白いかも」とつぶやいてくれていて、自分もそれが面白いと思ったのでいただいてしまいました。
「今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その4〜」で、伊藤元晴先生が、「10文字以内」という梗概で書きたいと言われたのを必死で止めていたのもおかしかったです(笑)
第五回課題作品は「宇宙駆ける釣りケーキ」で、題名から??なんですが、子供の秘密基地とつりの話(笑)これは小学5年の孫(男)に読んでやると、けっこう受けてました。トイレの話のところに勝手にウンチのエピソード(トイレから逆流してきたモノがどうたらかんたら)を付け加えちゃいました。すみません。←孫がウンチの話が大好き(汗;)
秘密基地は少年の夢ですから。自分も子供のころよく秘密基地を作っていたのですが、トイレのたびにそこから出なくてはならなくて、ここにトイレがあればいいのに!!と思っていました。ですのでそのころの自分の要望を叶えるため、秘密基地には無理やりトイレをつけました。
この、秘密基地にはトイレが必要論、意外と創作講座の皆にも賛同もらえたので嬉しかったです。
ウンチ逆流エピソード面白いなあ(笑)。宇宙でそれが起きるの完全に地獄絵図ですけど。
いやはや、確かにそうだったらnoteも読んでなかったかもです(汗;)
「今こそ進藤尚典先生のゲンロンSF創作講座の作品をふり返ろう(自分で)〜その4〜」では、第8回「恒久永年女皇伝エイガ」と第9回「劇団ふたり」の二つの作品。
「恒久永年女皇伝エイガ」は梗概のみで、進藤先生初めての実作無し。「劇団ふたり」は宇宙に浮かぶ小劇場の話で、二人の出演者がなんとも可愛い。やはり好きなことがテーマだと面白い、もう少し劇団のことを詳しく知りたいものです。
また、演劇がらみでは、実在する「読み合わせカフェ」の存在を知らしめる創作「読み、合わせる」も面白かったです。
次はいよいよ最終実作の執筆なのですが、進藤先生のモチベーションはどうしたら上がるのか(笑)
最終実作は絶対選出されたかったのでモチベーションアゲアゲで頑張りましたよ。
お酒飲みに行く回数も減らしましたし(笑)
ありがとうございます。ヲタクでよかった(笑) そして、なんというかSFというジャンルの懐の深さにつねに助けられている感じですね。自分も読者としては「これはSFじゃない」と読んでいるものに対して思うことはなくて「これもSF!」とSFのフィールドを拡張していつも楽しんでいるので。