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「えっ? 何ごと?」
 なかば腰を浮かせてカシルは夫をふりむいた。
「これって、――地震?」
「いやちがうようだ……なにがが『ハルバン』を揺らしているんだ!」
 妻の背後で懸命にモニター画面の数値を読み取りつつウィリアム・セイジが叫んだ。ふたりがいるのは星系内クルーザー『サガ』のコントロール・ルーム。そこにずらり並んだ探査機『ハルバン』からの映像を映しだしているモニター画面がいっせいに揺れ動きはじめたのだった。
「プローブをこんなに揺り動かすんだからそうとうでかい何かだぞ!」
「……何かって? いったいなに? さっき周りを調べたときには周囲何キロって彼方まで何もいなかったはずでしょ?――」
「そうだったんだが――たぶん掘削作業に気をとられているうちにカメラアイの死角から近づいてきたんだろう。薄暗くなったので夜行性の動物が歩き回る時間になったのかもしれない。ちょっと用心がたらなかったな!」
「だめだわ、機体がもちそうもない!」
 画面のひどい揺れは収まらない。探査機の頑丈な傾斜機能素材がめりめり音をたてて軋んでいた。

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