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「何ていうタイトルだい?」
「魔法使いが主人公のお話なんだけど。あなたタイトル聞けばわかるの?」
「いや――さっぱり。生憎その手の趣味とは縁のない人生を生きてきたのでね」
「だと思った。とにかくその物語の舞台になる世界には海があるの。無数の大小さまざまな島を浮かべた美しい海がね」
「ふむ」
「だからその名前をいただくわ。この星が人間にとってそんな素晴らしい世界になるように――」
 ひとつ息をすいこむと彼女は宣言した。
「わたしカシル・セイジはなんじを惑星『多島海(アーキペラゴ)』と命名する!」
「なるほど。そいつは的を射た命名だな。いかにも学術用語っぽいし」
「おおげさね。単に星の名前よ」
「いや、そうでもないさ」
 ウィリアムは言った。
「きみは宇宙にジオデシック天体がこの星ひとつだけだと思うかい?」
「うん……?」
「もしこいつを造ったのが想像どおり長老機械たちなら――まず間違いなく他の星系でも同種のものが見つかるに違いないよ。地球型生命に最適な環境を創造することが彼らの目的なんだからね。つまり銀河にはおそらく無数の『アーキペラゴ型惑星』が存在するだろうってこと……」
「ふーん。そうかあ」はるか遠くを眺める眼差しでカシルは応えた。
 それから妻と夫はたがいに寄り添い、まるで闇に慣れた瞳孔が真夏の海の陽光に反応するかのように、彼らの前の観測窓をシャッターがゆっくり覆っていくのを見守った。



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