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無数の電動ファンが微かな音をたてて空気を吸引している。ユニットはさしわたし約一メートル、ひとつひとつが六角形をしたそれが九個――ウィリアムの手でハニカム状に組みあわされ無重力環境での『プラットホーム』になっていた。吸引力はたいしたことはないが横たわった人間の身体やサンドイッチや飲み物の容器を固定しておくぐらいのことはできる。床面の格子は磁気にも反応するから専用のサンダルを履けばその上を歩き回ることも可能だ。この岩塊とランデブーすると決まったときに食堂の『負圧テーブル』を参考に急遽思いついた即席のアイデアだったが、船載の万能工作機械は彼が描いたラフスケッチを実際にきちんと動く製品にしてくれた。
このいわば『ピクニックマット』のうえでふたりの子供たちはひなたぼっこをかねて遊んでいる。初めて体験する陽光と風がよほど心地よいのだろう、歓喜に満ちた甲高い笑い声をBGMにウィリアム自身はタープの日陰に退散してデッキチェアに寝そべっていた。ちょうどうまい具合にクレーターの縁が風よけになってほどよいそよ風が肌をわたっていく。目を開けばゆっくり動く綿雲が――水球や苔むした岩とともに――浮かび、深い青色の底には微かに遠い外殻の網目模様が見える。人跡未踏の異世界を探検しているはずなのに、いまはすべてがなんとものどかで安らいでいるように感じられた。
……すにっぷ!
……すなっぷ!
……すたーらむ!
……はいどろじぇんらむ!
……りぐ!
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