1000年同じ姿を保ったまま黒髪と黒い瞳の美青年の話

doru

俺は新幹線のトイレから出て手を洗っていると、今の俺の顔に似た黒髪、黒瞳の美しい顔の少年が俺を見つめていた。

「おとうさん」少年は俺に向けて言った。こいつは俺の息子だ。こんな風にさせて可哀想なことしたなと俺は思った。

俺は本当は別次元の頭脳明晰、銀髪、凄まじいまでの美貌を持っている上に更にオプションがついて エルフ族最大呪術力まで持っているいわゆるなんでもできる万能のエリフ族、最大の王族の王子様だったんだ。


俺は20歳になったばかりの年に、無邪気に遊びに行きたくて、呪術をつかって、別の次元に行ってしまった。

そこについたら、俺は驚いたよ。俺のまわりには汚らしいものがいっぱいあったのだな。 見るものすべてが汚らしい。それに汚らしいものたちは俺を化け物を見るような目で見やがる。 俺は顔面蒼白、パニック状態だぜ。頭の中真っ白でいろんなところを逃げ回ったよ。すべてが汚らしい。 汚らしい。汚らしい。どこ行っても汚らしいものばかりなのだな。それでなんとか考えて呪法を使って元の次元に戻ろうとしたらできない。 何度やってもできない。どうも俺の持っている呪力のほとんどを使って、ここに来てしまったらしい。

それで俺はなんとか妥協策を考えた。少しの間だけこいつらの中に溶け込もうって、それで少しでもましな奴を探そうとした。 この次元では、箱の中で写真が動いていた。後できくとテレビというものらしい。 その中では黒髪、黒瞳の20歳前後の汚らしい男が写っていた。 あんまり趣味じゃないが、なんとか我慢して、俺自身をそいつとうり二つの顔に変貌させようとした。 それぐらいの呪力は残っていたらしい。一発で変貌できた。それが今の俺の顔だ。今で言うと俺は美青年というものらしい。

その後、腹が減ったので、汚らしいものの中に入った。 後で教えてもらったが屋台というものだったのだな。 宝石とか金目のものは一切持っていなかったが、なんとか持っている紙幣を数枚見せて、そいつらの餌を買おうとした。 ところが、屋台の爺ぃは俺の持っているものを見ながら馬鹿にした顔で「おにいちゃん玩具のお札を出したら駄目だよ」ってにっと笑いやがる。 そうだ俺の元の次元とここの次元は紙幣がまったく違ってやがったんだ。 俺はエルフ族、最大の王族の王子様から一文無しのおにいちゃんに超格下げになっちまったのだよ。

呪力を使って、何かそいつらの餌を出そうとしても出てこない。 どうやら別次元の移動と顔の変貌ですべての呪力を使い切ってしまったらしい。 それから丸一週間、そこらの水だけ飲んで、何も食べるものがなかった。 俺はふらふらでどこをどう歩いたかまったく覚えていない。 さ迷える生きたゾンビ状態だった。倒れてのたれ死んでもおかしくなかった。俺は気が遠くなり眠りについた。


俺は次に気がつくと汚らしい布の中で寝ていた。 汚らしい若い女が俺の顔をじっと見ていた。あ、俺を見て「気がついたのね」と笑いやがった。 それで俺は起き上がって女が得体の知れない汚らしいものを2種類出してきたので、こいつらの餌だと思って、 味もわからずがつがつ夢中になって食った。それでも腹はすいている。女はそれを見てもう一杯出した。それもがつがつ夢中で食った。 何度も食った。後で女が言うところによれば、俺は白ご飯を五杯、味噌汁を五杯食っては飲んでまた寝たらしい。 その後、一週間同じような状態が続いたらしい。俺はそこまで体力&呪力が落ちてのだろうね。


その後、なんとか体力は復活したが、まだ呪力は復活できてなかった。 それで俺は頼るところがないと言うと、汚らしい女は考えた風に少し首をかしげて「私のところにしばらく泊まりなさい」と言いやがった。 他に考えがなかったので、妥協することにした。 そのうち、汚らしい女は女のもっとも汚らしいものの中に俺のもっとも大事なものをはめやがったのだよ。 俺は聖なる液体を女の汚らしい場所に放出するしかなかった。つまり女は俺の童貞を奪ったということだ。 その女が後で言うには俺のことを童貞とは思わなかったらしい。 俺は物凄いテクニックの持ち主で翻弄されて狂いかかったと笑っていたよ。 その時俺は女の奴隷となって飼われることがきまった。つまり俺は女のヒモになってしまったということだ。 毎夜女の求めに応じて、俺は聖なる液体を女の中に放出するしかなかった。

後で女が言うところによれば、俺が生き倒れているのを見たとき、神様が赤い糸で結んでいるような運命的な出会いを感じたらしい。 それでほっとけなくて俺を自分の家に連れて行ったらしい。 女は可哀想に両親ともなくして一人暮らしだったから、誰か話し相手が欲しかったのもあったらしい。やがて女は俺の妻になった。


その後女は腹が少しふくらみをおびてきた。 つまり俺の聖なる液と女の中のものとがあわさって、胎児ができたらしい。 人間の女ってそんなに子供ができやすい身体になっているのか。 エルフ族の俺には理解できないことだし、それを聞いて慌てた。 女の腹からどんな赤子が出てくるかわからない。 俺は医者に無理言って妻の出産に立ち合わせてもらうことにした。 俺の読みは当たっていた。そこで女から出たものはエルフ族の特徴をほとんどそなえていた。 俺は誰にもばれないよう急いで変貌の呪力をかけた。 その頃はなんとか変貌の呪力ぐらいは使えるようになっていたからな。それでなんとか人間の赤子に見えるようになった。


その赤子は生まれてまもなく俺と妻が育てることになった。 俺は最初何をやったらいいのか戸惑っていたら、なんとかできるようになった。 それがなんと楽しくなってきたのだな。赤子が大きくなると楽しくて楽しくてたまらなくなってきたのだな。 後でそれが子育てというものだとわかった。

それと同時にこの次元を見る目が変わっていった。 俺は変わったのじゃない。赤子を愛することで、赤子自身が呪力を使わずに俺の次元を見る目を汚らしいものから素晴らしいものに変えていったのだった。


赤子はすくすくと大きくなり、今は10歳の黒髪、黒目の美しい少年になった。 変貌の呪いを使わなかったら銀髪、凄まじいまでの美貌を持っているエルフ族の俺に似ていると思う。 事実こいつはすべての全教科最高の評価を受けている。頭は俺に似たのだろうと思った。

「おとうさん、ネズミ王国楽しみだね」と息子は言った。俺は寂しく「ああ、そうだね」と笑いかけた。

実はな、これ最後の家族サービスで俺が計画したんだ。 俺エルフ族だろ。エルフ族は20歳から普通に成長して、 そのままほとんど成長が止まって後1000年ぐらい「しか」生きられないのだ。 俺の姿は20歳から変わっていない。妻は何かおかしいと思っているらしい。俺はここから去らないといけないのだ。

そして俺は最大の王族の王子様だろ。王位を継がないといけない使命まで持っている。もう次元への移動もできるだけの呪力も数年前に戻っている。

でも、戻らなかった。こいつが10歳になって俺の言うことがわかる年まで待っていたんだ。 それにこいつ、呪法が使える年齢になっている。 ねずみ王国に帰ってから、俺のことや呪法の使い方、特にこの次元の人間に悟られないように注意することを 一番先に言おうと決めている。ただ呪法はただ一つを除いて徹底的に教え込むつもりだ。 俺がこいつに考えている未来の計画まで打ちあけるつもりなんだ。 こいつはその話を聞いてかなり動揺するだろうが、俺もそろそろ限界だし、 こいつも理解できる年齢になっているし頭もいいからたぶん大丈夫と踏んだんだ。


未来の計画はできるかわからないが、やってみようと思っている。 こいつもエルフ族の血を引いているだろ。たぶん20歳ぐらいで成長がとまるははずだ。 この次元でいい女捕まえて、夫婦にさせて、子供は一人限定で子育ての楽しさを教えさせてやりたいと思っている。 一人以上増えたら俺の計画が頓挫してしまう。それでこいつの子が生まれたら俺がやってきて、またこいつの子に変貌の呪いを変える。 こいつにも変貌の呪いぐらいの呪力を持てると思うがわざと教えない。 実のところ、こいつにも会いたいし、孫にも会いたいのさ。俺の妻にはあえないのは少し残念だな。 それに妻やこいつに俺がいなくなる償いをしようかと思っている。 俺は王族の王子様だよ。妻と息子が一生働かなくても遊べるだけの貴重なものをこの次元で選んで持ってこれるし、 こいつが30歳になったら俺みたいに家族サービスさせて、出ていかないといけないことを教える。 それに呪力も寿命も俺の半分しかないから、次元を移動する呪法も使えない。 だからこの次元限定で放浪の旅をしないといけない。そのためには一生遊べるだけのものも持ってこないといけない。

それに孫が成長して子供を産んだら俺がまたやってきて、変貌の呪いをかける。 そして俺はしばらく次元を超える呪力はなくなるから復活できるまで目の前の息子と一緒にこの次元で放浪の旅にでる。 そして永遠に、子孫たちには同じことをさせる。 次第に俺の血は薄くなり、おそらく五代目以降は、この次元の普通の子供と同じ姿で生まれてくると思う。 そうしたら、俺の役目は終りを迎える。


それと俺もう一つ悪いことをしている。 俺実は妻に内緒で浮気をしているのだ。転生の女神と夢の中であれをやったことがあるんだ。 そのときは俺は精神的なものになって姿形はエルフ族のままなんだ。 つまり、銀髪、凄まじいまでの美貌を持っている上に、あっちも俺は物凄いテクニックの持ち主だとわかったから、 その力を全力で使って、転生の女神を翻弄したあげく狂わす寸前まで追いつめた。 転生の女神に命じて、強制的にこの次元の俺の直系の子孫をみな男にさせた。 彼らが死を迎えたら、転生の女神が一時的に魂を保存し、 俺の子孫の男たちをランダムにエルフ族の王族の俺の息子や娘にしてチート転生させることになった。 ただその度に転生の女神はあれをやらないと駄目だからとごねたのだから、仕方がない、やるよ。

そのチート転生の一つで妻の美しい魂をもち美貌のエルフ族の別の王族になった娘を俺の后に選ぼうと思っている。 長寿のエルフ族同士だからなかなか子供はできないけど、俺の聖なる液体を后の一番美しい場所に毎夜送りこむよ。 そしたら50年か100年に一度ぐらい、まぐれで体内で受胎する。 そのとき転生の女神が俺の子孫の一時的に保存しておいた魂をすかさず、胎児の形になる前に放り込む。 今の俺の妻は理解できないだろうからこの計画は内緒にしておくよ。

まあ、これは俺が生きている限り今考えたことを続けるつもりなんだけどね。

<

「あ、おとうさん、次の駅で降りることになるよ」エルフ族の最大の王族の王子の壮大な1000年計画を知らないまま、 黒髪、黒瞳の10歳の美少年は、黒髪、黒瞳の20歳から同じ姿のままでいる美青年の俺に無邪気に笑いながら声をかけた。

美青年と美青年の妻は美少年の声を聞いて旅行かばんを手に持って、座席から席を立ち、新幹線に出入り口に向かっていった。