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Author Interview

インタビュアー:[雀部]

『カラー図解でわかる ブラックホール宇宙』
> 福江純著
> ISBN-13: 978-4797351170
> ソフトバンク クリエイティブ株式会社
> 952円
> 2009.7.24発行

第1章 常識篇:ブラックホールの非常識
第2章 時空篇:光速現象とスターボウ
第3章 重力篇:光線の曲がりとブラックホール時空
第4章 黒洞篇:ブラックホールとワームホール
第5章 宇宙篇:ブラックホールシャドーとブラックホールジェット
第6章 未来編:ブラックホールエンジン

SF映画やSFアニメ、SF小説などにかならずといっていいほど登場するもっとも有名な天体現象、それがブラックホールである。しかしその研究が進むにつれ、一般的に漫然と想像されている“ブラックホールの常識”が、いまや常識でなくなってきている。そこで本書では、ブラックホールに関するさまざまな誤解を解き、正しい理解を普及していく。


『カラー図解 宇宙のしくみ』
> 福江純著
> ISBN-13: 978-4534044556
> 日本実業出版社
> 1600円
> 2008.10.20発行

第1章 真実の章
第2章 古代の章
第3章 日月の章
第4章 星辰の章
第5章 銀河の章
第6章 開闢の章
第7章 次元の章
第8章 起源の章
第9章 生命の章

◆ページをめくるだけで“楽しい”宇宙の本!
〈ゼロからのサイエンス〉シリーズの新たな柱となる「カラー図解」の第1弾です。
昨年、月探査に成功した「月周回衛星かぐや」や、日本が誇る「すばる望遠鏡」、
「太陽観測衛星ひので」などが撮影した写真をふんだんに掲載し、
パラパラとページをめくるだけで、恒星や惑星の美しさと雄大さを感じられる本です。
ページ構成は、〈ゼロからのサイエンス〉シリーズの基本である1項目2ページ、
わかりやすい文章で解説していく入門書です。


雀部 >  今月の著者インタビューは、7月14日にソフトバンククリエイティヴ社から『カラー図解でわかる ブラックホール宇宙』を出された 福江純先生です。福江先生、前回の『シネマ天文楽入門―宇宙SF映画を愉しむ―』以来、二年弱経っているんですね。今回もよろしくお願いします。
福江 >  お久しぶりです。
 えっ”、もうそんなに経ちましたか?
 最近、一年があっと言う間に過ぎていくようで、ちょっと悲しいです。
 もっと人生楽しみたいのに(笑)。
雀部 >  全くです(爆)
 他にも同じソフトバンク社の『カラー図解でわかる光と色のしくみ』や日本実業出版社の『カラー図解宇宙のしくみ ゼロからのサイエンス』をだされていらっしゃいますね。出版社をまたぐカラー図解シリーズですが、これは出版社サイドの要望なのでしょうか(笑)
福江 >  はい、企画自体は1、2年前に出るのですが、今回はたまたまカラー図解の企画が重なりました。
 宇宙関係では最近はカラー画像が多いのも理由だと思いますが、著者としてはとても有難いことでした。
雀部 >  本来は見えないブラックホールを視覚的にとらえることが出来るところは、読者側からすれば分かりやすくて面白かったのですが、著者にとってありがたいというのはどういったところでしょうか。
福江 >  いや、そりゃ、カラーの方が美麗ですし、売れそうでしょう(笑)。
 また、もちろん、今回のように視覚的に表現したい場合には、やはりカラー表現ができるのが圧倒的にいいですよね。
 また最近は自分自身のブラックホール活動現象の研究でも、ブラックホール周辺の高温ガスがどのような光り方(色合い)をしているか、見た目の特徴を調べているので、それらの成果も紹介することができました。
雀部 >  ということは、もしブラックホールに近づいて観察することが出来れば、掲載された写真のように見えるはずなのでしょうか?
福江 >  はいっ! 見えます、といいたいところですが(笑)。
 実際にはかなり眩しいんじゃないかなと思います。
 たとえばフィルタをかければ太陽の写真は撮れますが、実際に肉眼で見ようとしたら眩しすぎますよね。そういう意味ではフィルタをかけた写真的な意味合いが強いでしょう。
雀部 >  後書きで「どうしてもRGBフルカラー表現がしたくて、初めてVB2008でプログラミングした」と書かれてますが、反対にご苦労されたところはどこでしょうか。
福江 >  そうですね、全ページをフルカラーで作ってもらえたので、天体画像の紹介などのパートはカラー画像はいくらでもあるんですが、理論的な説明のパートでカラー画像を探したり作成するのが大変でしたね。
 せっかくのカラーなので白黒になるのはもったいなくて(ビンボー根性です;笑)。
 また、研究の計算では少し古いBASIC言語でプログラムを組むことが多いんですが、古いBASICは16色しか表現できないので、256色フルカラー表現ができるVisual BASICを使いました。ちょっとくせがあるので、慣れるまで時間がかかったのと、プログラミング自体、いろいろなケースで組んだので、論文数本書けるぐらいの労力を使ったかも。
 それはそれで久しぶりのプログラミング三昧で楽しかったんですが、でも、これらのVB2008の計算をしたのは、一年ぐらい前なので、たぶん、もう忘れています(悲)。
雀部 >  それは残念です(笑)
 第1章6項は、「ブラックホールはなんでも吸い込むのか――胃袋は無限だが喉元は有限」として、たとえ瞬時に蒸発しない小さいブラックホールが出来たとしてもその入り口は有限なので、吸い込みきれない物質は吹き飛ばしてしまう」と書かれてます。
 ディヴッド・ブリン氏は、著書の『ガイア』でマイクロブラックホールが、地球内部で振動してアリの巣のような穴を穿つ様――その結果地球が知性を獲得する――を描写してますが、これはもっと派手な結末になりそうですね(笑)
福江 >  はい、マイクロブラックホールが地球内部で動き回ると、たしかにアリの巣のような穴は空くでしょうが、同時に、ジェットやエネルギー放射もしながら動き回るので、穴はかなりグサグサになるでしょうね。
 『ガイア』はずいぶん前に読んだけど、最後は、地球が知性を獲得する結果でしたっけ。
 知性を獲得する前に、地球がボロボロに崩れちゃうかもしれないですね(笑)。
雀部 >  知性を獲得したのはいいけど、性悪だったりして(爆)
 太陽の10倍の質量を持つ通常のブラックホールは、半径が30kmだそうですが、この大きさは質量によって変わるんですよね。例えば、全宇宙の質量を持つ巨大ブラックホールだと、超々重力崩壊が起こって大きさがプランク長以下になって、検出不能になるとかいうのはないんですか?(笑)
福江 >  いま言われたように、ブラックホールの大きさは質量によって変わります。
 具体的には、質量に単純に比例します。
 だから太陽の10倍の質量のブラックホールが半径30kmを知っていれば、太陽の100倍だと半径300km、1億倍だと3億kmとなり、全宇宙の質量と同じブラックホールだと、だいたい宇宙の半径ぐらいになります。
 宇宙そのものが時空的には閉じているので、そういう意味では、ブラックホール的なもんなのかもしれないですねぇ。
雀部 >  それは嶺重先生もおっしゃってました(←宇宙がブラックホールなのかも)
 昨日(11/25)たまたまTVをつけたら、教育テレビの地学でブラックホールをやっていました。話題としては
 1,白色矮星
 2,超新星爆発←太陽の10倍以上の質量を持った恒星
 3,中性子星とブラックホール
 埼玉県立春日部女子高等学校教諭の鈴木文二先生がナビゲータで、テレビだからビジュアルで色々見せてくれるのでつい遅くまで見てしまいました(25:45まで)
 こういう番組で、ブラックホールに興味を持った高校生が、次に読む教材として『カラー図解でわかる ブラックホール宇宙』は好適なのではないかと思いました。
福江 >  おお、それは素晴らしい! 是非、オススメです(笑)。
 うちの大学に来れば、相対論やブラックホールの特別講義もします。
 いや、実際、今年の3回生には何人か熱心な学生がいて、単位にならないのに講義をしてくれと言われて、夏休みや秋学期に、降着円盤とか相対論の講義をしました。
雀部 >  天文ファンの学生さんですね(笑)
 テレビの話が続くんですが、次の番組(25:45~)も地学で「太陽系と宇宙の起源」ということで、国立天文台の縣秀彦先生がナビゲータでした。
 地球から月軌道~太陽系から銀河とだんだん範囲が広がっていくのをビジュアルで見るのは面白いですね。ふと、石原先生の《光世紀世界》を思い出したりしました。
 まだ、《光世紀世界》の範囲ではブラックホールや中性子星は見つかってない(怪しいところも無い)のですか?
福江 >  ほぉ、縣(あがた)ちゃん、そんなことやってんですか。
 いまちょうど世界天文年グランドフィナーレという大きなイベントを一緒に準備世話しているんですが。
雀部 >  世界天文年2009グランドフィナーレですね。
 おっともうすぐじゃないですか(12月5,6日)
 至急告知コーナーに入れておきます。
福江 >  それはともかく、光世紀世界はたしか半径50光年の範囲でしたね。
 中性子星はあまりよく知らないですが、見つかっているブラックホールでは、一番近いのが、おそらく A0620-003 で4000光年ぐらいです。
 しかし、単独で未発見のブラックホールは多めに見積もると天の川銀河で1億個ぐらいあるという推定もあります。
 もしそうなら、光世紀世界の中に数個から10個ぐらいはあってもおかしくないです。
 まぁ、あっても、数十光年先だから、あまり心配する必要はないです。
雀部 >  ブラックホールって、そんなに多いかも知れないんですか(汗;)
 第1章3項で「ブラックホールは恒星の数の1/100ほどもあるし、銀河系の通常物質(バリオン物質)の一翼を担っている」と書かれてますが、ブラックホールからは出てこられないんで、反物質で出来たブラックホールがこの宇宙にあってもおかしくはないですよね?
福江 >  はい、反物質も質量をもっているので、反物質が集まってブラックホールになってしまうことは可能ですが、いったんブラックホールになってしまえば、もとが物質か反物質かは関係なくなります。
 質量と電荷とスピンという性質しか残らないので、たとえば、電荷が物質の電荷だったのか、反物質の電荷だったのかは、もはや穴の中。。。
雀部 >  穴の中が非因果領域であろうとなかろうと関係ないと。
 質量と電荷とスピンの三つしか残らないので、福江先生命名の「おばQ定理」になるわけですね(笑)
 では、「おばQ定理」と11項の「表面積はブラックホールのエントロピー」との関係はどうなるのでしょうか。太陽質量のブラックホールが持つ情報量は、およそ10^60ビットとなるそうですが、毛が三本しか無い割には多くありませんか(笑)
福江 >  おっと、するどいところを突いてこられました。
 実はぼくも十分にわかっているわけではないんですが、(有名かどうかはともかく;笑)「おばQ定理」は古典論、情報量は量子論での話になるでしょう。
 あるいは、マクロな性質とミクロな性質と思ってもいいかもしれません。たとえば、風船に閉じ込めた空気を考えたとき、マクロな性質としては、空気の質量・体積・窒素と酸素の割合など、3つ4つ程度の量が残ります。
 一方、ミクロにみると、窒素分子や酸素分子の個数は10の何十乗もあり、それらのもつ情報量も10の何十乗もあるでしょう。(気体分子自体は古典論の範囲ですが)
 ブラックホールのもつ情報量も、空間を量子論的に捉えたときに出てくるものなので、なんかたくさんになるんでしょうね。
雀部 >  量子論的な情報量なんですね。実はよく分かってないのですけど、まっ良いか(爆)
 第2章の7項「ミンコフスキーダイアグラム」で光円錐以外の部分は非因果領域と考えて良いのですよね。
福江 >  そうです。現在時点からは因果関係をもてない領域です。
雀部 >  とすると、光速に近い速度で回転するブラックホールの回りでは、時空も引きずられるので、この非因果領域に関係してくるのですか。
福江 >  そうですそうです。
 平らな時空でのミンコフスキーダイアグラムでは、光円錐は頂角90度の砂時計のような形状の円錐体になります。
 しかしブラックホール周辺の曲がった時空では、光線が曲がるために、光円錐の形状も傾いてしまい、砂時計をブラックホールの方向に傾けたようなモンになります。。。言葉では説明しにくいですね(笑)。
 ま、とにかく、光円錐以外の非因果領域は違う形状になっていきますね。
雀部 >  『10月1日では遅すぎる』のように様々な時代がパッチワーク状に現われたりするのでしょうか?(笑)
福江 >  いや、そこはちょっと飛躍が(笑)。
 そういえば、アーサー・C・クラークがスティーヴン・バクスターと書いた最後の作品(『時の眼』他三部作)が、『10月1日では遅すぎる』を現代版にした感じでしたね。…めちゃマニアック?
雀部 >  SFファンは必読でしょう(笑)
 一作目の『時の眼』がまさにパッチワーク状態の地球が舞台でしたよね。三作目は、まだ未訳でしたっけ。
 第4章20項、シュバルツシルト時空の「ペンローズ図」のⅡとⅣは事象の地平線の内部の領域を表していますが、これも非因果領域ですよね。入ったら出てこられないので、非因果領域であろうと因果領域であろうと、とりあえず現世には関係ないのですが(笑)
福江 >  はい、とりあえず現世に関係ないので、科学者も見えないふりしています。
雀部 >  不勉強で第4章21,22項のクルスカル図は初めて見たんですが、やっとブラックホールとホワイトホール、ワームホールの違いが分かった気がします(汗;)
 それと、24項の「ワープアウトは球面」からを読んで、実はワームホールは漏斗状ではないということにも気が付きました(汗;;)
福江 >  そうなんです。ワームホールは漏斗状じゃないんですよね。
 ワームホールを2次元の曲がった漏斗状の曲面で表現した図が、いわゆる“ブラックホールの常識”になっていまして、そのような“常識”を覆すのが本書の目的なので、それだけでもわかっていただけたら、本書を読んでいただいた価値は十分にあるかと思います(笑)。
雀部 >  良かった(笑)
 23項の「ペンローズ図で時空をつなげる――時空連結」も面白かったです。このアイデアを使ったSFってありましたっけ。
福江 >  ペンローズ図というか荷電ブラックホールや自転ブラックホールを使って、時空を連結していくSFは記憶にないです。
 しかし、超高密度物質でできた自転円筒(ティプラーマシンと呼ばれます)を使ってカー時空のような折り畳まれた時空を作り、それで時空を連結していくSFはあります。
 ポール・アンダースンの『アーヴァタール』という、かなり壮大なSFですが、いまは入手が難しいかも。
雀部 >  ほとんど忘却してますが、読んでます。ティプラーマシン、名前には記憶が(爆)
 この多重時空図は、ペンローズ図を時間軸方向に連結していったものですが、これを空間を入れて三次元で表すと、空間座標はi(虚数)になるんでしょうか。
福江 >  あはは、か、考えたことないですが、ええと、いま考えますと。ペンローズ図の縦軸・横軸は、実は時間軸・空間軸ではなくて、時間座標と空間座標を足したり引いたりした座標になっています。
 だもんで、ペンローズ図を縦に繋いだものが、必ずしも時間軸方向に連結したというわけではなく、時間・空間合わせた時空方向に連結したものになっているのかな。
 ペンローズ図の水平方向は空間的無限遠に対応するので、連結ができないんじゃないかと思います。すみません、ここらへん、ぼくも大学の講義に毛が生えたぐらいしかしらないので。
雀部 >  あ、そういう複雑な座標なんですか。すみません、専門外のことをお聞きして。
 福江純/小西啓之/吉本直弘/廣木義久/松本桂の先生方共著の『天と地の理をさぐる 地球学と宇宙学』は、大学一般教養向けのテキストということで、読者層がはっきりしてますよね。まあ、大学生といってもピンキリでしょうが、一般書の『カラー図解でわかる ブラックホール宇宙』と比べて、書き方の違いなどはあるのでしょうか。
福江 >  『天と地の理をさぐる 地球学と宇宙学』の方は、テキストといっても、理系というより、むしろ文系の学生を念頭に置いているので、『カラー図解でわかる ブラックホール宇宙』と比べて、内容的な難しさという点では、それほど大差ないでしょう。
 どちらも式などはほとんど出てきません。
 ただ、テキストの方は、それなりにいちおうマジメに(笑)書いていますが、『カラー図解でわかる ブラックホール宇宙』の方は、アニメの画像なども入れながら、楽しく書かせてもらっています。
雀部 >  楽しんで書かれているのは分かりますね(笑)
 同じくフルカラーの日本実業出版社刊『『カラー図解 宇宙のしくみ』なんですが、ちょっと見には初心者向けなのですが、内容はけっこう高度だと思いました。この本は読者層は想定されたのでしょうか?
福江 >  はい、『ブラックホール宇宙』と同様、高校生以上一般向けを想定しています。
 とはいっても、やはり宇宙に興味がある人ということになるでしょうが。
雀部 >  12章の「しばらく前から宇宙膨張は再加速されている」では、宇宙に存在するダークエネルギーがその原因だと書かれてます。宇宙の開闢の時の対象性の破れによって現在の宇宙が形成されたとされてますが、このどこかへ行っちゃった反物質が、ダークエネルギーの大元ということは無いでしょうか??
福江 >  あはは、聞かないでください。
 まぁ、ぼくも宇宙論の専門家ではなくて、大学や大学院時代に基礎を勉強した程度でしたが、単純に一般の方と同様に興味はあって、この何年か、最近の教科書や論文などで、自分なりに勉強してきました。
 その結果が、『カラー図解 宇宙のしくみ』やその他の本に反映されたわけですが。
 最近の話題を勉強して、一つだけはっきりわかったのは、ダークエネルギーの正体については、だれも何も知らないということでした。専門家も知りませんので、まぁ、安心して構いません(笑)。
雀部 >  安心しました(笑)


[福江純]
1956年、山口県宇部市生まれ。78年、京都大学理学部卒業。83年、同大学大学院(宇宙物理学専攻)を修了。大阪教育大学助 手、助教授を経て、大阪教育大学天文学研究室教授。理学博士。専門は理論宇宙物理学。天文学者としてだけではなく熱心なSF、アニ メファンとしても有名で、SFアニメやSF小説のアイデアを天文学の立場から考察した著書も多数ある。
[雀部]
熟年天文マニア。へたれなので屋外の天体観測は苦手です(汗;)




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