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Author Interview

インタビュアー:[雀部]&[浅野]&[笑夢猫]&[前田]

『藩医宮坂涼庵』
> 和田はつ子著/安里英晴カバーイラスト
> ISBN-13: 978-4094082388
> 小学館文庫
> 533円
> 2008.1.12発行
 東北の小藩である秋川藩の次席家老の娘であるゆみえは、若い頃城勤めをしていた。ゆみえの母親が御殿医の娘であったため、ゆみえにも医術の心得があり、生まれつき心臓の弱かった菊姫の世話をするため、お城の奥勤めをしていたのだ。その役をとかれた後、大庄屋の後添いとして嫁いだが、嫁して二年足らずで寡婦となっていた。
 体調のすぐれないゆみえのため、亡夫の嫡男助左右衛門が藩医宮坂涼庵を呼び診察を受けることとなった。その後、体調の回復したゆみえは、涼庵の頼みもあり、藩の跡継ぎ・松剛丸の診察に共に出かけるが、追い返されてしまう。その背後には藩を我がものにしようとする家老遠藤源右衛門の陰謀があった。
 飢饉の際に領民を一人でも多く助けるため、救荒植物の知識を普及させようとしている宮坂の志に共感したゆみえは、母譲りの医術を活かして協力するようになるが……。
 薬草や医学を取り上げながら、小藩の哀しい権力争いを描いた、著者初の時代小説。

『続・藩医宮坂涼庵』
> 和田はつ子著/安里英晴カバーイラスト
> ISBN-13: 978-4094082463
> 小学館文庫
> 552円
> 2008.2.11発行
 東西に長い秋川藩は山と海に恵まれているが、ゆみえの父である家老山村次郎助は、藩財政安定化のため、塩田を作ろうとしていた。その事業中に大勢の患者が出たため、ゆみえと涼庵は、菩薩浜に赴くこととなった。
 首席家老・遠藤源右衛門と家老山村次郎助グループの対立のなか、涼庵とゆみえも遠藤一味に対する抵抗を続けていた。そんな時に、妙薬を使って子供ばかりでなく大人も治してしまう加代様と呼ばれる女性が出現した。しかし、奉行の橘弥十郎をはじめ、薬を飲んだ者が次々と異状を呈していくのだ……。

『南天うさぎ』
> 和田はつ子著/安里英晴カバーイラスト
> ISBN-13: 978-4094080568
> 小学館文庫
> 571円
> 2005.11.1発行

《口中医桂助事件帖》第1巻

 虫歯で命を失うこともあった江戸時代、〈いしゃ・は・くち〉の看板を出す藤屋桂助は、大店の出ながら医学を志し、長崎で蘭方医学を学び江戸で開業していた。庶民たちに歯の大切さを説き、虫歯で悩む者たちを長崎仕込みの知識で次々治療していた。
 一方、かざり職人の鋼次は、歯が痛くて困り大道芸人の歯抜き屋にかかるのを躊躇っていた時に桂助と出会い、その技で痛み無く歯を抜いてもらった時からの付き合いであった。そして鋼次は、その手先の器用さから、江戸時代の歯ブラシ・房楊子作りを引き受けるようになっていた。また桂助の幼なじみで、町医者の息女で薬草の知識を持つ志保とは、ともに力を合わせる気心の知れた仲間同士であった。しかし、桂助のまわりでは謎の事件が次々と起こり、得体の知れない大きな流れに巻き込まれていく。大奥まで巻き込んで続発する事件の真相とは…。


『江戸菊美人』
> 和田はつ子著/安里英晴カバーイラスト
> ISBN-13: 978-4094086652
> 小学館文庫
> 552円
> 2011.11.13発行

《口中医桂助事件帖》第12巻

 志保が父親の殺害をきっかけに桂助の元に来なくなって、半年が経っていた。寂しくなった〈いしゃ・は・くち〉だが、歯の治療ばかりでなく、難事件の解決を依頼しに人々は訪れる。
 志保が鋼次の房楊子を湊屋松右衛門に届けていた経緯があり、松右衛門から志保宛に届いた文を桂助が読むことになった。そこには、どうして自分が惚れていたお菊がなぜ突然居なくなってしまい死体で見つかったのかを調べて欲しいとしたためてあった。お菊の親友であるお奈津から、米問屋の山形屋にお菊のつき合っている男がいたとの情報を得たが、その男佐吉から話を聞いた桂助は、純粋な思い故に招いた悲劇の真相に迫っていく。
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『噺まみれ 三楽亭仙朝』
> 和田はつ子著/村上豊装画・題字
> ISBN-13: 978-4093862240
> 小学館
> 1500円
> 2008.7.22発行
 ある春の日、当代きっての人気噺家の三楽亭仙朝は、集めた幽霊画を並べて見入っていた。怪談といえば夏が相場なのだが、仙朝ほど人気があると季節を問わず怪談を噺してくれと席亭からお声がかかるのだ。
 仙朝の師匠は、今は亡き二代目三楽亭遊仙だったが、一時期折り合いが悪く、仙朝は噺家を廃業したことさえあった。しかし、遊仙が病に臥せってからは、仙朝が月々の生活費の面倒を見ていて、遊仙が亡くなってからもそれは続いていた。その妻おりんも、元々病弱だったこともあり、これまた臥せったままになり、一人娘のお園が看病していた。
 素人衆の勉強会である“咄の会”での知り合いで武士の津川から師匠の幽霊が出るという噂を耳にした仙朝は……。

『雛の鮨』
> 和田はつ子著/安里英晴カバーイラスト
> ISBN-13: 978-4758432993
> ハルキ文庫
> 590円
> 2007.6.18発行

《料理人季蔵捕物控》第1巻

 日本橋にある料理屋「塩梅屋」の使用人で元武士の季蔵が、刀を持つ手を包丁に替えてから五年が過ぎた。料理人としての腕も上がってきたそんなある日、主人の長次郎が大川端に浮かんだ。奉行所は自殺ですまそうとするが、それに納得しない季蔵と長次郎の娘・おき玖は、下手人を上げる決意をする……。主人の秘密が明らかにされる表題作他、江戸の四季を舞台に季蔵がさまざまな事件に立ち向かう全四篇。粋でいなせで食欲をそそる捕物帖シリーズ、遂に登場。


『蓮美人』
> 和田はつ子著/安里英晴カバーイラスト
> ISBN-13: 978-4758437769
> ハルキ文庫
> 590円
> 2013.9.18発行

《料理人季蔵捕物控》第21巻

 菊見、紅葉狩り……と、江戸にも本格的な秋がやってきた。日本橋の一膳飯屋「塩梅屋」の主・季蔵は、北町奉行・鳥谷椋十郎から南町と北町の新睦会の料理をつくるよう、命を受ける。そんな折、季蔵がいつも鰹節を仕入れていた海産物問屋「土佐屋」に盗人が入り、お内儀が殺された。季蔵も探索の手伝いをすることに……。南町奉行所・北町奉行所を巻き込み、過去からの怨念がどす黒い渦を巻く。


『青子の宝石事件簿』
> 和田はつ子著/岩本ゼロゴ装画
> ISBN-13: 978-4758437387
> ハルキ文庫
> 590円
> 2013.5.18発行
 青山骨董通りに静かに佇む「相田宝飾店」の跡とり娘・青子。彼女には、子どもの頃から「宝石」を見分ける天性の眼力が備わっていた……。ピンクダイヤモンド、パープルサファイヤ、パライバトルマリン、ブラックオパール等々。
 ジュエリー経営コンサルタントの小野瀬のすすめで、インターネットを使った宝石販売代行業が軌道に乗った矢先、相田宝飾店に、多額の借金があることがわかった……
 宝石を巡る深い謎や、周りで起きる様々な事件に、宝石細工人の祖父や小野瀬、幼なじみの新太とともに青子が挑む!  宝石の永遠の輝きが人々の心を癒す。

『猫始末』
> 和田はつ子著/蓬田やすひろ装画
> ISBN-13: 978-4062766098
> 講談社文庫
> 524円
> 2010.3.12発行

《お医者同心 中原龍之介》第1巻

 酒問屋井澤屋の若旦那松本光太郎は、父親の働きで北町奉行所の定町廻り同心に任じられて、朝から張り切っていた。しかし、泥棒を追いつめたときに不手際をしでかし、定中役の中原龍之介に助けられる。結婚したばかりの嫁おたえが、善かれと思って幼なじみの瓦版屋にそのこと書いてくれと頼むが、それがかえって仇となり、面白おかしく書かれたことから、光太郎は厠同心と呼ばれ馬鹿にされている定中役の中原龍之介の配下へと左遷される羽目に陥った。
 しかし、北町奉行所で閑職に就きながら、動物や人の心を診る「よろず医者」の顔も併せ持つ中原龍之介であったが、知る人ぞ知る剣の使い手でもあった。そんな時、米問屋の子どもが行方知れずになった事件を調べる二人だったが、店の桜木の下から人骨が見つかって……。


『金魚心』
> 和田はつ子著/蓬田やすひろ装画
> ISBN-13: 978-4062773782
> 講談社文庫
> 524円
> 2012.10.16発行

《お医者同心 中原龍之介》第7巻

 大火の後、閑職定中役同心の中原龍之介にも盗賊探しのお鉢が回る。火事で命を落とした纏持の長屋で、賊は金魚盥の赤い石を探していた。女たちの怪死が相次ぐ市中で、江戸払いになった男を迫った龍之介と光太郎は、金持ちどもの非道極まる集いに足を踏み入れる……。
 この巻で判明する、光太郎の母親もおたえと同じく草双紙が好きだとか、実は父幸右衛門の特技が料理だったりするのがちょっとした趣向になっていて面白いですね。まあだいたい、和田先生の時代小説は、美味いものを食べるシーンが必ず出てくるんですが(笑)


『ハーブオイルの本―くらしと気持ちをリフレッシュする』
> 和田はつ子著
> ISBN-13: 978-4540911224
> 農文協
> 1350円
> 1992.3.30発行
 ハーブオイルを通じて自然の恵みをもっとたくさん、生活や身体にとり入れてみませんか。ハーブオイルはハーブの香りと効用がぎっしり詰まった精油です。魔法のしずくをあやつる究極のハーブホビー。

『育てる食べるフレッシュハーブ12か月』
> 和田はつ子著/マツモトヨーコ装画
> ISBN-13: 978-4758431583
> グルメ文庫
> 780円
> 2005.2.18発行
 フレッシュハーブを使うと、あなたの料理と食生活もワンランクアップ!―「チキンのタイム焼き」「トマトとバジルのスパゲッティ」「ハーブサラダ」…など簡単にできるハーブ料理50とベランダで誰にでもできる育て方の基礎知識&月ごとのアドバイスを、小説家でもある著者が、懇切丁寧に教えてくれます。おしゃれで美味しいフレッシュハーブのある暮らしをあなたもしてみませんか。
※関連書『池波正太郎の江戸料理を食べる』 『池波正太郎・鬼平料理帳』 『歯と顔の文化人類学』 『歯科の歴史おもしろ読本』

雀部> 和田先生、初めまして。夫婦揃って和田先生のファンで、私は岡山で開業歯科医をやっております。あと、ゲストインタビュアーとして、和田先生のファンである浅野さんと図書館司書の笑夢猫さんと山形で歯科医をされている前田さんが参加されます。
 以前浅野さんが、高田郁先生、和田はつ子先生、宇江佐真理先生など、女流作家の時代小説を読み始められた頃に、《口中医桂助事件帖》シリーズを紹介して頂いたのがきっかけで、私も和田先生の時代小説を読み始めたという経緯があります。
 最近の読書事情はいかがなのでしょうか。
浅野> 当初、『藩医宮坂涼庵』『口中医桂助事件帖』『料理人季蔵捕物控』『鶴亀屋繁盛記』のシリーズを並行して読み始めましたが、その後、いつからか『料理人季蔵捕物控』シリーズだけになってしまいました。
 先日、『料理人季蔵捕物控』の第21冊目、『蓮美人』を読みはじめたばかりですが、『蓮美人』の頭の所に、“月の雫”が出ているのを発見しました。
  甲府に親戚があり、昔は、時々、このお菓子が届きました。
  果たして、季蔵さんの時代から“月の雫”があったのかと思い調べたところ、既に、江戸 末期からあったようで、その後、明治の初めに甲府の風月堂が製造販売し、現在に至ってい るようです。
  それにしても、最近は食べてないな~。(笑)
  その他、SF小説も何冊か……。
雀部> 《料理人季蔵捕物控》は必ず美味しそうな料理が出てくるんで、一番一般受けしそうですね。うちのカミさんの愛読書です。
 『蓮美人』は、南町奉行所・北町奉行所を巻き込んだ大がかりな話でした。まあ《口中医桂助事件帖》シリーズには、一橋慶喜が登場しますけど(笑)
浅野> 私は食いしん坊なので、いつも季蔵さんの作るお料理を食べてみたいなあ、と思いながら読んでいます(笑)
雀部> 私も私も。特に最近は洋食より和食の方が。
浅野> 初めまして、浅野と申します。
 昭和一桁に東京は下谷区で生まれました。
 子供時代は、SFと講談社の『少年講談』などを読み、SFとチャンバラ映画を観て育ちました。
 今でも、読書と映画鑑賞は欠かせません。
 宜しくお願い申し上げます。
和田> はじめまして。和田はつ子です。このペンネームは発田和子という本名をひっくり返したもので、杜撰だと皆さんに言われるし、ロマンティックな素敵なイメージではないのですが、年齢を経て、時代小説も書き進んできて、ふさわしい侘びた趣きのある名になりました。
雀部> え、そうだっんですか。確かに時代小説を書くに相応しい雰囲気があります。
和田> 読書は司馬遼太郎さんの『翔ぶが如く』をもう何年もかけて読んでいます。司馬さんのファンで読むのは2回目です。いずれ明治という時代にスポットが当たった時、是非とも小説に書きたいものがあるので、その下調べも兼ねて読んでいるのです。
 料理は好きな方ですが、食べ歩きは意外にしません。
 ネットとかのレシピや人に聞いた作り方を実際にやってみるのです。
 長生きしてたくさん小説を書きたいと思っているので、身体に気をつけていて、いつしか、好きな食べ物が、和食、洋食の境なく、身体にいい食べ物になりました。
 この年齢ですがこれといった持病はなく、薬も特には飲んでいません。
 一番好きな食べ物は玄米――地味です。
 一番好きな本はディケンズの『二都物語』――筋金入りのロマンティストです。
 一番好きな映画は『羊たちの沈黙』――やや古びた感はありますが、これなくしてサイコホラーは語れません。サイコホラーはわたしのホームグラウンドです。
 気にいっているSFは『人類の子供たち』P.D ジェイムズ著です。
 ホラーとSFの共通点はともに恐怖や驚愕の中に強烈な社会批判、風刺が込められている点だと想います。
雀部> 和田先生、お元気そうでファンにとっては何よりです。特に常用薬もないとのこと、うらやましいです。うちのカミさんなんか、5種類くらい飲んでます(笑)
 サイコホラーがお好きなんですね、しかもSFも読まれたことがあるとは(驚)
 スティーブン・キング氏なんかもお好きなのでしょうか。
和田> SFはもっぱら映画やドラマで――。
 《Xファイル》はまだ日本のビデオ店にない頃に、新聞にアメリカで大人気と書いてあるのを見て、代理店に電話し、できたての字幕版をいただいて、観ていました。“アイス”という、主人公2人が雪の中の研究所に閉じ込められて、次々に人が狂い死にしていくのを見て、小学生だった次女まで面白がったので、これは大受けするだろうと思いました。この間、WOWOWで放送されていた『トーチウッド 人類不滅の日』というのは人が死ななくなる設定なのですが、意外な面白さでした。
 小説はどちらかというと、もう少し理屈の少ないD・R・クーンツやジョン・ソールなんかの方が好きなんです。
 でも、映画のスティーブン・キングは最高だと思います
 特に好きなのは『キャリー』ではなくて、『ゴールデンボーイ』わりに渋い好みですかね――笑い――
雀部> それは先見の明がおありですね>《Xファイル》
 岡山SFファンクラブのかつての仲間で、今は海外ドラマの紹介・解説などをこなしている医師がいますが、彼も放映前の《Xファイル》を絶賛していたのを思い出しました。
 それと、私もキング氏原作の映画はだいたい好きです(笑) つい先日スカパーでやっていた『ミスト』は、後味が悪いのでカミさんは見なければ良かったと言ってますが(汗)
 ジェイムズ女史の『人類の子供たち』は、映画『トゥモロー・ワールド』の原作ですよね。前半、オールディス氏の『グレイベアド』(子供が生まれなくなった世界という設定が似てます)と同じくかなり陰々滅々とした世界が描かれますが、後半は一転してダイナミックさが出てくるのでちょっと驚きました。イギリスの作家さんは、割と救いのない世界を描くのが好きなのかなという印象があって(笑)
和田> 若い頃はアメリカの映画やドラマが大好きで、イギリスものは画面からして暗く気が滅入りましたが、今はわりにしっくりきています。
 ちなみに先ほどの『トーチウッド 人類不滅の日』はイギリスとアメリカの合同制作で、従来のイギリス映画よりは明るいのですが、アメリカものほどわかりやすくないし、救いはあまりありません。
雀部> え~っと、今でも脳天気なアメリカ映画が好きです(笑)
 時代小説で料理というと、池波正太郎氏のものが有名ですね。佐藤隆介編の『池波正太郎 鬼平料理帳』やエッセイ『江戸の味を食べたくなって』等々。『池波正太郎の江戸料理を食べる』という実際に池波氏の小説に登場する料理をこしらえて、写真入りで紹介した本を持っていますが、《料理人季蔵捕物控》シリーズに登場する料理も、どなたかつくって本にしてくれないかなぁ。
和田> 一度、神楽坂の料理屋さんが「料理通信」という雑誌に作ってとりあげてくれました。
雀部> そうだったんですか。それは見たかったですね。というか食べたかった(涎)
浅野> 『料理人季蔵捕物控』に登場する人物は皆さん個性があり、すっかりお馴染みになりました。各巻の最後で活躍する季蔵の懲悪も痛快です。
 また、今後の、季蔵と瑠璃、おき玖の関係も気になるところ……。どうなるんでしょうね。
和田> 三角関係なので季蔵をどちらかとめでたしにすると、残った方が悲しい思いをするので、なかなかこの三人の男女の先は決められずにいます。
 作者としては、三人とも幸せになってほしいです。
雀部> 読者としても幸せになって欲しいです。
浅野> 『嘉永・慶応 江戸切絵図』で調べてみますと、“塩梅屋”がある木原店は、ちょっと昔の日本橋白木屋、現在のコレド日本橋左側の路地に当たるのですね。
 初め、“塩梅屋”は、淋しいところに一軒ぽつんとあるのかと思っていましたが、江戸時代の木原店は今でいう飲食店街で、いろいろな食べ物屋が沢山並んでいた事も分かりました。
 また、東京駅八重洲北口の先には“北町奉行跡”の石碑が建っています。昔、その近くのビルで毎月業界関連の会議がありましたので、この石碑は毎月眺めていました。
 この両者の距離関係を考えますと、北町奉行所の田端宗太郎と岡っ引きの松次が、年中ぶらりと“塩梅屋”を尋ねて来るのも頷けます。
和田> “塩梅屋”の隣りはツバメが巣を作る煮売り屋で、木原店はたしかに繁華街です。読者の皆様が各々、ご自分たちが贔屓にしている居酒屋をイメージして、江戸時代にタイムスリップして、季蔵の疑似体験をしてみるのも一興かと思います。
雀部> ううむ、大衆居酒屋にしか行ったことがない私(汗;)
 和田先生は、『時そば』などを読ませて頂くと、落語にも造詣が深いように感じているのですが、お好きな落語家はいらっしゃいますか。昔は岡山にも、「三丁目劇場」という吉本の漫才落語がかかる常設小屋があったんですけど……
和田> やはり三遊亭圓朝でしょうか。
 実は密かに研究をして圓朝をモデルにした小説に『噺まみれ三楽亭仙朝』(小学館)があります。
浅野> 申し訳ございませんが、このご本は存じませんでした。
 是非、読ませて頂きたいと思っておりますが、5年程前のご本のようなので・・・。
 毎年、夏の暑い盛り、8月11日の圓朝忌を中心とした日曜日に谷中の全生庵で開かれる『圓朝まつり』に、何年か前、一度出掛け、圓朝が集めた幽霊画を楽しんで(?)来ました。
 はい、私は熱烈な落語ファンなのです。
 幼少の頃、夕方、祖母に地元の上野『鈴本』に連れて行かれ、祖母の膝で寝ていた記憶があります。当時は、全席、枡席でした。
 その後、小学生時代(戦争中)にも、折に触れて名人会などに出掛けたりしていました。
 定年後は、やっと自由になり、『新宿末廣亭』の席が替わる度に出掛けたりして、楽しんでおりましたが、段々、噺家のジェネレーションが変わり、私より、かなり若い噺家から、吉原の郭話を聞くと白けてしまい、最近は出掛けなくなりました。(笑)
雀部> 『噺まみれ三楽亭仙朝』の冒頭、仙朝が集めた“幽霊画”並べて見ているシーンが出てきますし、「四谷怪談」を噺す場面も出てきますね。
和田> 仙朝のモデルの圓朝は幽霊だけではなく、何人もの登場人物の人格を巧みに演じ分けられたそうです。映像のない時代だったので、聴衆は想像の翼を思い切り広げて堪能したものと思われます。静かで神秘的でまさに陰影礼賛の時代が天才圓朝を生んだのでしょうか?
雀部> 聞いてみたかったですねぇ>圓朝師匠の高座
 今回は、図書館司書で、様々なジャンルの本がお好きな笑夢猫さんにも参加して頂きました。笑夢猫さんよろしくお願いします。
 笑夢猫さんも、和田先生のご著作がお好きだとか?
笑夢猫> 女性の時代小説家で一番読まれてるのは和田さんなんですよ。次は諸田さん。
雀部> 諸田さんて、日経で連載されている諸田玲子先生かな。他には存じ上げません。不勉強ですみません(汗)
笑夢猫> そそ…諸田玲子さんです。
 和田さんに一度お尋ねしたかったのは、ハーブのこと。ハーブに関する著作物もたくさんありますよね。
 やはり、ご自身で、育てて、色々なさってるのですか?
浅野> 私もそこのところをお聞きしたかったです。ひところ、数十種類のハーブを育てておりました。
 現在は、雑草化したものが庭に十種類程生えているだけですが、それなりに、いつも楽しませて呉れています。
和田> ハーブ歴三十年近くです。ハーブで癒される話を一つ。冬場といっても早春のまだまだ寒くて、東京も雪がちらつくこともある頃、オナガの夫婦がわが家のベランダにしばしば下り立ちます。
 何を物色しているかというと、冬中、常緑で花と実をつけ続けているローズマリー。ローズマリーは特有な香りが樟脳に似ているので、虫もよりつかないのですが、オナガの夫婦はこれをお腹いっぱい食べて飛び立って行きます。
 様子が可愛いので、もっと来てほしいのですが、本格的な春になって、虫が這い出てくると、ふっつりと来なくなります。
 よほど餌のない時にしか来ないというわけでした。
 来る理由はわかっているのに、やはり、毎年、待たれます。
 ハーブの利用法―料理、アロマテラピーについては、『育てる食べる フレッシュハーブ12か月』『ハーブオイルの本』―共に農文協―を御参照ください。
雀部> ローズマリーって、猫またぎ(鳥またぎ?)の実だったとは(笑)
浅野> 医学関係のシリーズに薬草のことが良く出てきますが、これらの蘊蓄はこれらハーブのご研究にも関連があるのではないかと拝察致しております。
和田> ハーブソサエティという学会に入れていただいて、毎月送られてくる学会誌から学ぶことが多いです。
 子どもの頃から植物好きだったので、薬草に限らず、草木のことはすーっと頭によく入るのです。
 銀行とか、お金とかのこと、世間常識とかはなぜか、覚えが悪いのですが―笑い―
雀部> ハーブ歴30年とは凄いですね。『育てる食べる フレッシュハーブ12か月』の半分近くは、ハーブを使った料理のレシピでどれも美味しそうで困ります(笑)
 この中で、素人が作っても美味しく一般向けな料理はどれでしょうか?
和田> タイムチキンです。
 骨付きのチキンに塩、こしょうをして、フライパンで焦げ目がつきかけたら、白ワインを加えて、しばらく煮て取り出し、粉チーズをふりかけ、あとタイムの枝を添え、オーブンに入れて仕上げます。タイムでなしにローズマリーでも大丈夫。
 それからこれから美味しくなるサンマのグラタンもいいですよ。
 三枚におろして、塩、こしょうしたサンマを適当な大きさに切ってグラタン皿に並べ、イタリアンパセリでもタイムでもあまりこれと気にせずに、庭のハーブをみじん切りにしてパン粉、粉チーズと合わせたもので被い、オリーブオイルをたらーり、後はオーブンにお任せです。
 タイムチキン同様、焦げ目がついてきたらできあがり。
雀部> “チキンのタイム焼き”は『育てる食べる フレッシュハーブ12か月』の"152,153P"、“サンマのグラタン”は、"184,185P"に載ってます。どちらも美味しそうですね。
 うちでも待合室と診察室にアロマオイルを導入してるんですが、ハープはいいですね。
 一応無い頭を絞って「トップノート」 「ミドルノート」「ベースノート」の3種類を使うようにしています。好きな香りとしては“イランイラン”と“ティートリー”かなあ。
和田> 歯医者さんにアロマが香っているのは最高だと思います。
 夏場はレモンユーカリもいいですよ。
 アロマは季節によって、人がよいと感じる香りが違うようです。
浅野> レモンユーカリ、爽やかなレモンの香りがして、良いですね。
 昔、10センチぐらいの苗を購入。植木鉢で育てていましたらば、どんどん伸び始め、現在は3メートルぐらい。手に負えなくなりました。
 植木鉢に3メートルの木。想像してみて下さい。(笑)
雀部> うちの植木鉢の木も、何本か天井につかえてしまっています。25年モノです(笑)
和田> 素晴らしいです。うちはマンションなのでひょろひょろで――3、4年で枯らしてしまいました。是非是非、お風呂に入れて楽しんでください。オイルも芳香ですが、もう少し癖の強い匂いです。
雀部> ハーブと言えば、《お医者同心中原龍之介》シリーズの定中役の龍之介もハーブというか薬草全般に詳しいですよね。まあお医者同心なんだから当たり前なんですが。
 現代の警察ものにあてはめると、この閑職のベテラン刑事とやる気十分の若手刑事のコンビというのは、ハズレのない黄金キャラですね。私の脳内では、渡瀬恒彦さんと速水もこみち君で再生されました(笑)
 それと、なにげに『金魚心』では芋好きワンコというだけではなく、ちょっと役立つところも見せ良い味だしている杉之介。この二人と一匹のコンビ、一番好きかも。特に杉之介ファンの読者、多いのでは?(笑)
和田> 杉之介からこのシリーズを思いついたほど、作者のわたしが大のファンなのです。
雀部> えっ、なんと。そういえば、《口中医桂助事件帖》シリーズにも寒梅くんが出てきますね。和田先生はイヌ好きでもあられましたか。
 さて、口中医(今の歯科医の前身)が主人公である《口中医桂助事件帖》の魅力の一つに、桂助と鋼次のコンビの妙があると思うのですが、和田先生のあとがきにモデルがあると書いてあったので、俄然興味が湧きました。
 そのモデルとなられた市村先生、須田先生よろしくお願いします。
 最初にモデルの話を聞かれたときにはどう感じられたのでしょうか。
市村> 10年近く以前のことでハッキリした記憶がないのですが、和田先生は『藩医宮坂涼庵』というお医者さんの本を出されました。その後、歯科医の話を書きたいので話が聞きたいとのことで、須田先生と3人でお会いして我々が歯科医になった経緯、歯科治療への考え方、さまざまな症例の話など、簡単にお話ししただけです。故・榊原先生(当時、愛知学院大学名誉教授・本作品の歯科監修)を紹介したり、資料的な本もお貸ししましたが、先生のお気遣いでモデルにされただけで、桂助とは似ても似つかぬ存在です。私が桂助モデルなどおこがましく、そう言われると背中がむずむずします。
須田> 本が出来るまでは何も知らされていませんでした。本が出来上がり、発売日前に和田先生に本を見せて頂いたのですが、その際に「桂助は市村先生、そして鋼次は須田先生をモデルとして書きました」と言われ、びっくりしたと同時に嬉しかったですね。「えー!いいね、いいね!」などと答えていました。
和田> 現実と虚構の皮膜を書くのが作家の仕事、小説なのですが、やはり、一番大事なのは現実から受ける感動なのです。
 物静かで学究タイプの市村先生はノーブルな印象で―外見も中身も―とても素敵な方ですし、須田先生は少年漫画に出てくる熱血主人公みたいなところがおありになるようにお見受けしました。
 わたしが子供の頃は歯医者さん、町の名士、何かねえ――というダーティーなイメージの人もいなくはなかったので、お二人に会ったときは目から鱗、闇を歩いていて、突然視界が開け、きらきらと輝く清流に出あったような感動でした。
 もちろん、一患者として――わたしだけではなく家族全員がお二人に治療を受けています――、お二人の技術の確かさ、歯科医赤ひげここにありといった、歯科医としてのゆるぎない信念に感服しています。
 こんなに確固たるモデルがあって書いた小説は、これが最初で最後かもしれません。その意味でも「口中医桂助事件帖」は思い出深い小説です。
雀部> 最初にモデルありきですか、なるほど。
市村> 和田先生が言われるような人間ではありません。だいぶ買いかぶりがあるのではないでしょうか、ごく普通の一般開業医です。
 いかに多くの歯を保存してバランスの取れた咬合を与え、高いQOLを維持して生活をしていただくために日々努力をすることは、他の多くの先生方と変わりありません。桂助は先生(和田)の歯科医療とその歴史的背景への深く広範囲に及ぶ調査研究の結果導きだされた理想の歯科医師像と理解しています。
 医療という点からはある意味奉仕の精神がなくてはならないと思いますが、現行の歯科保健医療体制では困難な面が多くあると思います。
 新しい知識も吸収しないと救えるものも救えません。勉強会に出席したり本を買うためにはある程度の収入も必要です。
 歯科医療に携わっている先生方は、いつも保険診療との狭間で悩んでおります。
雀部> 実際に本が刊行され、読まれた後のご感想はいかがでしょうか。
市村> 物語は江戸末期の事件ですが、歯科の話にだいぶ無理な点もありますが、歯ブラシの大切なこと、虫歯や歯周病が全身へ影響することなど、患者さんへの啓蒙にもつながりありがたく利用させて頂いています。歯科医師が色々な方に本を勧めると、市村先生が書いたのですか?と言われますが、トンデモないと弁解するだけでなんともはばったく感じます。私にもこんな才能があったらいいのですが___
須田> 江戸時代の歯医者が主人公の話ということですが、私も昔の歯医者がどうであったのか全くといって良いほど知らなかったので逆に興味深くまた教えられることも多く、面白く読ませてもらっていました。私は以前、市村先生が院長を務める池袋歯科診療所で歯科技工士をしていて、その後歯科医師になり今に至るということで鋼次が飾り職人で房楊枝(江戸時代の歯ブラシのようなもの)を作っているところが大変気に入っている所です。
和田> 歯科医になられていた市村先生は歯科技工士だった須田先生の能力とやる気を見込んで、歯科医になるよう勧められたという話は、思い出すたびに胸が熱くなります。そして、お二人の信頼関係が今もなお続いていることもまさに奇跡です。市村先生のお人柄と須田先生の純な心ゆえでしょうか。
 つまり、桂助と鋼次の師弟愛のような兄弟愛のような人間関係について、これが小説の中だけのことではなく、実際にある素晴らしい話だと思うと、世の中は捨てたものではないと思えて、わたしの人生上の大きな救いにもなっています。
市村> 私の方が須田先生には大変助けられています。若い気力のある人間が身近にいてくれることは、自身への刺激ともなり重要なことと思います。
 現在も研修医の受け入れ施設として研修医の希望があれば年に数人受け入れています。
 卒後すぐに勤務した診療所での診療はその後の臨床に多くの影響を与えると思います。
雀部> 研修医を受け入れてられるんですか。それは何かと大変でしょう。ご尽力ありがとうございます。
 市村先生と須田先生は、《口中医桂助事件帖》について、回りの方から何か言われたことがおありでしょうか。
市村> 患者さんに勧めただけでなく多くの知り合いの先生方に『口中医桂助事件帖・南天うさぎ』を送りました。その後、興味を持って購読して頂いている先生方も多いようです。前々回の横浜で行われた歯科医学会総会(5年前になるのでしょうか)で和田先生に講演頂きました。私が座長を務めさせていただきました。WBCの星野仙一監督と同時刻の講演時間で、こちらの来場者数が少ないのでは…と心配していたのですが、大盛況でした。
雀部> 大盛況だったんですね。
 『第21回 日本歯科医学会総会』での講演内容は雑誌『歯界展望 特別号 めざせ!健・口・美』(2009年6月1日号)に掲載され、私はそれを読ませて頂きました。
須田> 鋼次の目線で、桂助の人となりや物語の重要な部分が語られていたりするので「先生は準主役だね」などと言われていました。
和田> 静の桂助と動の鋼次は正反対のキャラ。鋼次なくして、桂助の良さは際立たないので、結果、桂助、鋼次の二人主役になってしまいました。
 来年1月に刊行予定の「桂助」シリーズの新刊では、新たな桂助と鋼次をお届けできると思います。
 お二人とは本当に貴重な出会いをさせていただいたと感謝しております。
市村> シリーズ新刊が刊行されるとのこと、先生の発想の素晴らしさ楽しみにしております。
雀部> 市村先生と須田先生、突然のインタビュー依頼にお応え頂きありがとうございました。
 私も患者さんにきらきらと輝く清流のように思われる歯科医を目指そうと思います。
 《口中医桂助事件帖》を読ませて頂き、日本の歯学史についてほとんど知らないことに驚きました。あわててその手の本を探したのですが、専門書は高いし(大学の図書館に行けばあるのですが)で、現在手に入りやすいのは『歯と顔の文化人類学』『歯科の歴史おもしろ読本』あたりです。
 では、お待ちかねの山形の前田先生、どうぞ~(笑)
前田> 和田先生の著書では、江戸時代の歯科医を「口中医」と表現しています。一方東京学芸大の大石学先生の著書(大江戸まるわかり事典)では、歯科医のことを「奥口科」と表現しています。ということは、江戸時代には個々の歯科医がそれぞれに「歯科」のことを標榜し、決まった「標榜名」が無いとも考えられますが、その辺の実際は如何でしょうか?
和田> 口中医や奥口科というのは、富裕層や身分の高い人たちのために存在していて、庶民は大道芸人の居合抜きで歯を抜いていたので、現代の歯医者さんに匹敵する存在は実はなかったのではないかと思いまして、あえて、小説では口中医イコール、歯医者さんにしたのです。
前田> なるほど、そうだったのですか。ありがとうございます。
 現代物でも時代物でも、小説には多くの登場人物がでてきますが、そういった登場人物の「名前」はどういった観点からつけられるのでしょうか?
 たとえば、素人は知らない小説家向けの『時代や地域毎の名字一覧』とかあるのでしょうか。あったら面白いなあ。また具体的には、この「桂助」というのはどこから思いつかれた名前でしょうか?
(名字と地名に興味があります、HPは→http://folklore.office-maeta.jp/060828.htm)
和田> 職業にあった付け方が多いですね。キャラから推してつけることもあります。
 らしいということが、キーワードです。
雀部> いかにもそれらしい名前ということですね。
 物語の展開上、当時はまだ知られてなかった医学技術が必要とされた場合、和田先生は、どうされますか。そういう時、SFでは科学的に見える屁理屈をつければOKということになっているのですが(笑)
和田> 実は先になりますが、桂助シリーズにもSF展開を考えています。
 どうか、お楽しみに。
雀部> え~っ、本当ですか(驚)
 江戸時代というと、UFO(宙船)が出てくるエピソードかなぁ(笑)
和田> キーワードは現代の歯医者さんです。
 これ以上はネタばれになるので――笑い――
雀部>  まさか『Jin―仁―』的な展開とか(笑) 
 『噺まみれ三楽亭仙朝』で、落語家の仙朝が噺を創るに際して入念な取材をするとありましたが、《口中医桂助事件帖》シリーズを書かれるにあたって、各種資料や取材は当然として、歯科医院の受付で待っている患者さんの会話に耳をそばだてるような事はおありだったのでしょうか。
和田> 残念ながら今は予約制なので患者同士が顔を合わせることも、話をすることも滅多にありません。
 ただし、池袋歯科や大泉診療所では、桂助シリーズを置いていただいているので、桂助を話題になさる患者さんたちがおられるそうです。
浅野> 和田先生は『第21回 日本歯科医学会総会』でのご講演の中で、「江戸期の歯科治療の根治療法は抜歯しかなかった」とお話しになっておられますが、現在でも、麻酔技術やレントゲン診断など技術的には進歩したとはいえ、矢張り、最後は結局“抜歯”という事になるように感じております。将来、何か抜歯しなくても済むような方法が発見されるでしょうか?
雀部> 私は、なんとか抜かなくてすむようになると思ってます。まあ、とりあえず抜歯して、iPS細胞から作った歯胚を埋め込む方法とどちらが先に出来るか分かりませんが。
和田> これは答えになっていないかもしれませんが、近頃の若い人たちは虫歯知らず、抜歯知らずの人が意外に多いのには驚かされます。わたしが子供の頃は、歯科検診で虫歯10本なんて子はざらでしたのに――
雀部> 三十数年前、岡山に帰ってきて、地元の小学校の学校歯科医を引き受けた時には、まだ虫歯の多い子供が沢山いました。今は本当に少ないです。一番は親御さんが虫歯に罹患しないように気を付けているのと、少子化で親御さんが一人の子供にかける時間が増えたのも虫歯が減った要因の一つでしょう。
浅野> 「抜歯は大道芸の一つとして行われていた」そうですが、確かに、私の子供の頃には怪しげな“気合術”を披露している大道芸人が盛り場にいましたし(最後は、本を買わされました!)、また“がまの油売り”の口上の中にも『手前のこのがまの油をば、ぐっと丸めて歯の空ろに詰めて、静かに口をむすんでいる時には、熱いよだれが、タラリ・タラリと出ると共に、歯の痛みはピタリと止まる』とあるように、これは歯の痛みにも効いたようです……。(笑)
和田> 九十代半ばで亡くなられた東京歯大の榊原先生は歯学史の権威でした。
 市村先生のご紹介で訪問させていただいた時、駅まで迎えにきてくださった榊原先生が公園の前に立ち止まって、“昔はここにも大道芸人がいて歯抜きをしていたものですよ”とおっしゃったのを覚えています。
浅野> また、「桃の枝を供えると虫歯にならない」というお話が出てきますが、これは何か“曰く因縁”があるのでしょうか?
 当時、「『歯が痛いときには、梨を川に捨てると治る』という迷信があった」ということを、以前、何かで読んだことがありますが、これは梨の芯が歯に悪いので(歯を溶かす?)梨を捨てさせたという解説が付いていました……。
和田> これはわたしの解釈ですが、桃の枝ではなく実のことではないかと思います。ただ、当時桃の実は高額でしたので、代わりに枝ということになったのではと―― 桃の実―枝が代わり―を供えると虫がそっちへとりつくので虫歯にならないという意味ではないでしょうか?
 この時期から甘いものは虫歯に原因になるということぐらいはわかっていたと思われます。
浅野> いろいろと興味深いお話を有り難うございます。
 よく、“80-20”と云われますが、私の歯磨きは定年後に開眼。
 昨年、無事“80-26”をクリアーしました。
 矢張り現時点では、ひたすら頑張って歯を磨くより仕様がないようですね。(笑)
和田> あと、身体の他の部分、特に消化器を悪くすると、口内炎など口中に出るような気がします。
雀部> 確かにその通りです>口内炎
浅野> “よくある質問”かと思われますが、幾つものシリーズを並行して書かれる場合、各々のシリーズ全体の大筋は予め決めておられるのでしょうか?
和田> 売れ行きが好調なものは長くなるので、特には決めません。
浅野>  このところ、『料理人季蔵捕物控』シリーズは、三ヶ月毎の18日に必ず本屋さんの店頭に並んでいます。今月は9月の14日に手に入れることが出来ました。
 これから読むので楽しみにしております。
和田> 担当編集者の言葉を借りれば、“今まで読んだことのない、斬新な奉行所もの的季蔵全開”とのことです。どうかお楽しみに。
雀部> う~ん、楽しみです。季蔵と龍之介が合わさったような展開なのかなぁ……
 『藩医 宮坂涼庵』は、和田先生の時代小説処女作ですが、その後の時代小説の萌芽がうかがうことができるし、『続・藩医 宮坂涼庵』と共に、“すまじきものは宮仕え”の格言が身にしみると同時に、東北の小藩の悲哀が見事に書かれていました。それにしてもあのラストは切ないですね。奥州には滅びの美学があったとも言われてますが、それにしても……
 あとがきで、取材を通じて江戸時代の医師建部清庵の存在を知ったことが、時代小説を書くに至った契機となったと書かれていますが、『続・藩医 宮坂涼庵』のラストは、最初から決められていたのでしょうか。
和田> 正直に申し上げますと決めていませんでした。
 赤旗日曜版から連載のお仕事を頂いた時、ホラーでは駄目そうなのでやむなく、びくびくと時代小説にしたわけで――。
 何とかなったのは、わたしが司馬遼太郎さんや柴田錬三郎さん、海音寺潮五郎さん、山本周五郎さんなんかをそこそこ読んでいた、時代小説世代だったからかもしれません。
雀部> そうすると連載するうちにあのラストが結実したのですね。
 変な質問かもしれませんが、和田先生の時代小説の男性主人公は、許嫁や細君と死に別れ(または悲恋)ていて、しかも新たな恋には慎重(不器用?)という特徴があるように感じています。これは、物語の構成上の要請からくるものなのでしょうか、それとも江戸時代では普通のことだったのでしょうか。
 《お医者同心 中原龍之介》の脇役光太郎には、恋女房がいるんですけどね。
和田> これも正直に言いますと、わたしは恋愛小説が苦手で、この年齢になってちょいちょいわかってきた気がするので――四十年以上遅い?――、目標は“時雨の記”みたいなものを書くことなんです。
雀部> そうなんですか。確かにあの本は、若い女性にはなかなか書けない愛情の現し方が素敵ですね。そういうことでしたら、和田先生の恋愛小説にも期待大ですね。
 さきほど、来年出る《口中医桂助事件帖》では、新たな桂助と鋼次に会えるとのお話だったので楽しみです。特に、志保ちゃんが、父親の死後桂助との関係が断絶しているのが気になって気になって。どうかよろしくお願いします(笑)
和田> 来年1月刊の桂助から少し動きが出てきます。
 手始めは鋼次の珍しく相思相愛の恋です。
雀部>  鋼次さん、相思相愛ですか。でも悲恋に終わりそうで怖いです(笑)
笑夢猫> 時代小説のお話が続いていますが、今年5月に角川春樹事務所から、久々に時代小説でない「青子の宝石事件簿」が出版されましたが、ミステリーのお話を少し。
 パワーストーンだとか、宝石に纏わる謎って、かなり神秘的で惹かれるのですよね。
 私、宝石にはあまり詳しくはないのですが、それぞれの宝石のイメージがうまくとらえられていて、楽しく読めました。
 全体から、江戸人情ものの風情を感じたのは、和田さん=時代小説の先入観のせいかもしれません。
 和田さんは、がんばり屋の女性を描くのがお上手だなぁ…とも感じました。
和田> えっ? 青子って頑張ってるんでしょうか?
 間抜けな世間知らずみたいに思っていましたが――
 わかりました。
 世の中にはこれほども頑張らずに生きていけちゃう女性って沢山いるんですね。
 自分に照らし合わせるとちょっと悔しいです。
笑夢猫> 以前から、ミステリーをお書きになっておられますよね。
 主人公が面白い。心理分析官だったり、文化人類学者だったり、法医学鑑定人だったり…。ニンフォマニアとか、パラノイアとか、そういうものを扱っていたり…。
 和田さんの時代物を読み続けている方に、前出の青子をすすめたら、意外だと言われたし、読後も、時代物と似てるようで似てなくて、でも、新しい和田さんを知った気がすると、おっしゃっていただきました。
 こういったものも、是非、書き続けていただけたらと。
 継続中の時代小説シリーズで大変だとは思いますが。
 個人的にお付き合いのある時代小説作家さんから、窺い知るのですが、書き始める前の取材、資料集め、資料を読む…この作業が大変なんだろうなぁといつも感じております。
 ミステリーも同じだとは思いますが。
 個人的には、和田さんのホラーテイストの強いミステリーがもっと読みたいんですがねぇ……。
和田> 青子の2作目は来年早々に出ます。
雀部> それは楽しみにお待ち致します。
一同> 各シリーズの続刊、また新しい分野への挑戦、心待ちにしております。
 今回はお忙しいところ、インタビューに応じて頂きたいへんありがとうございました。
和田>

 2013年―今年です―、11月幻冬舎から「大江戸ドクター」がハードカバーで刊行されます。
 これは昨年夏から今年の夏まで赤旗日曜版に連載されていたものを大きく加筆修正したもので、自信作です。
 文庫書き下ろしにはない醍醐味が感じられるはずです。
 冒頭は歯科麻酔のシーンからですので、是非是非お読みいただければと思っています。
 こちらこそ皆様のお声を聞けてうれしかったです。ありがとうございました。

 最後にお別れしがたく感じている皆様へ、とっておきのヘルシーマフィンの作り方を教えさせていただきます。
 ただ今これに嵌っていますので。
 これはバターと卵を使わず、湯洗いのなたね油―コレステロールゼロ―とビート―砂糖のように身体を冷やさない―を使用するのでとてもヘルシーです。

材料:マフィン型6個分――マフィン型はスーパーにはないことも。アマゾンとか、ネットで売られています
A薄力粉 100グラム
アーモンドパウダ――これもネット販売あり 25グラム
ベーキングパウダー 小さじ1
重曹 小さじ2分の1

B豆乳100グラム 
レモン果汁 20グラム
なたね油――湯洗いのものなのでいわゆるサラダ油ではありません。オーサワの湯洗いなたね油はネットで購入できます。湯洗いでないと匂いが――
ビート―またの名てんさい糖、砂糖大根 20グラム――このあたりもネット購入が便利です
リモーネ――イタリアのレモンリキュール 20グラム――これもやはりネットですね

作り方
①ボールにAの材料を入れて―すべて粉状だが―、ぐるぐると泡立て器でよく混ぜる。ふるいでふるう必要がないのがらくちん。
②玉ねぎ等の微塵切りに便利なスピードカッターを用意する。ここにBをすべて入れて連続ボタンを押してよく混ぜる。
③①に②を加えて、泡立て器で素早くよく混ぜる。
④マフィン型に専用のペーパー ―これはネット購入必須、100枚以上あって500円しないのでストックしておくべし―を敷き、大さじスプーンで、③のタネを分け入れる。
⑤180度に温めておいたオーブンで10分、160度に下げて15分焼いて出来上がり。
⑥型からはシートのふちを摘んで熱いうちに外す。

*簡単朝ごはんに、小腹の空いた時に、何となくのティータイムに最適。
手間は一緒なので沢山焼いて冷凍しておくと便利!!
ラズベリーやブルーベリーの生や冷凍、レーズンを入れても美味しいかも!!

雀部>  冒頭が歯科麻酔のシーンとは、たいへん楽しみです。>『大江戸ドクター』 
 それと最後に美味しそうなマフィンのレシピありがとうございます。
  パナソニックのホームベーカリーで、時々パンは焼くのですが、マフィンは敷居が高いなあ、カミさんに作ってもらおう(笑)


[和田はつ子]
東京都生まれ。日本女子大学大学院卒。出版社勤務の後、テレビドラマ「お入学」の原作『よい子できる子に明日はない』、『ママに捧げる殺人』などで注目される。『心理分析官』『十戒』「多重人格殺人」『密通』『かくし念仏』『木乃伊仏』『死神』などミステリー、ホラーの著作が多数ある。近年は「口中医桂助事件帖」「やさぐれ三匹事件帖」「鶴亀屋繁盛記」「余々姫夢見帖」「お医者同心 中原龍之介」「料理人季蔵捕物控」シリーズなど時代小説を精力的に執筆している。また、近刊に『青子の宝石事件簿』がある。小説の他に、ハーブ関連書として『ハーブオイルの本』『育てる食べるフレッシュハーブ12か月』などもある。
「和田はつ子公式WEBサイト」
[浅野]

昭和一桁に東京は下谷区で生まれました。そんなわけで、今でも月に一度は浅草の観音様へお参りに出掛けております。
子供時代は、SFと講談社の『少年講談』などを読み、SFとチャンバラ映画を観て育ちました。
今でも、読書と映画鑑賞は欠かせません。
「AKIのキネマまんぽ」

[笑夢猫]

図書館司書

[市村賢二]

1943年 東京都生まれ
1968年 東京歯科大学卒業 池袋歯科診療所勤務
    日本歯内療法学会元会長
    日本矯正歯科学会 指導医認定医
    日本接着歯科学会認定医
    日本顎咬合学会認定指導医
    東京矯正歯科学会会員
    日本口蓋裂学会会員

[須田光昭]

1955年 東京都生まれ
1977年 日本大学歯学部付属歯科技工専門学校卒業
     池袋歯科に技工士として勤務
1989年 明海大学歯学部卒業歯科医師資格取得
1993年 池袋歯科・大泉診療所 院長就任現在に至る。

[前田]
・ 前田 嘉一(まえた よしかず)
・ 山形市 前田歯科医院院長
・ 生年 昭和30年(1955年)
・ ホームページ:  http://maeta-dc.com/
[雀部]
岡山の片田舎の開業歯科医。念願だった和田はつ子先生にインタビューさせて頂くことが出来て大感激です。《口中医桂助事件帖》シリーズの新刊は、SF的な展開もあるとのこと、なんとも楽しみなことであります。



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