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BookReview

レビュアー:[雀部]&[栄村]

『砂漠の惑星』
> スタニスワフ・レム著/飯田規和訳/中原脩カバー
> ISBN 4-15-010273-2
> ハヤカワ文庫SF
> 320円
> 1977.12.15発行
 6年前に消息をたった宇宙巡洋艦コンドル号探索のため〈砂漠の惑星〉に降りたった無敵号が発見したものは、異星の地に傾いでそそりたつその船体だった。生存者の姿は見あたらない。船内が混乱を極めているにもかかわらず、不思議なことに攻撃を受けた形跡はなく、さまざまな防衛手段は手つかずのまま残されていた。果てしなく続く風紋、死と荒廃の風の吹き抜けていく奇怪な〈都市〉、偵察機を襲う〈黒雲〉、そして金属の〈植物〉――探険隊はテクノロジーを駆使して異星を探査したが……。

先々月号からの続き
雀部 >  『ソラリス』『エデン』とくれば、次は『砂漠の惑星』
 あのマイクロマシンが形成する黒雲、クライトンの『プレイ―獲物―』を読んだとき、真っ先に思い出しました。
栄村 >  『エデン』や『ソラリス』は、異星の生命体との接触をテーマにしていましたが、この『砂漠の惑星』で地球人が遭遇したのは無数の小型機械から成る「黒い雲」のような集合体。しかも、それも生みだした異星人たちは大昔に滅びている。主のいないまま、機械だけが数百万年の時の中で惑星の環境に適応し、独自の進化を遂げた果てに出てきたのは、ふだんは太陽エネルギーを吸収しながら砂漠に散在しているものの、何かの異常を察知すると、黒い雷雲のような群体となり、全体が一個の巨大な電子脳と電磁場兵器をそなえた戦闘兵器と化す。もとより、地球人の望むコンタクトは最初から不可能ですね。
雀部 >  というか、最初からコンタクトが取れない(難しい)異生命体を描くのが目的ですもんね(笑)
栄村 >  小説の中で、生物学者のラウダが「一般に、われわれが知っている機械は、すべて、それ自身のために奉仕するものではなくて、他の誰かのために奉仕するものです」と語っている部分がありましたが、この中に出てくるのは、自らの生存を何にもまして優先する機械であり、われわれの身のまわりにある“工業製品”としてのロボットとはまったく異なっている。造りだした者たちの手をはなれて数百万年も存在し、しかも状況に応じて自らの形を変化させ“進化”している凄い存在ですね。それにくらべると“黒雲”と惑星の地表を炎の地獄に変えるほどの激しい戦いを繰り広げるロボット戦車キュクロプスも、人間がたてたプログラムを呑み込んで動いている――そういう意味ではわれわれが日常使っているパソコンや電卓と基本的にはおなじ系列の道具のように思えてくる。キュクロプスと黒雲との激しい戦闘の後、損傷した地球のヒューマノイド・タイプのロボットを描いた場面がありましたが、あのときロボットは、電子脳に損傷を負い、障害物を越えようとおなじ行動をくり返しますが、いかにもプログラム・エラーを起こしているという感じでしたね。
雀部 >  あそこは、上手いなぁと。1964年に書かれた本とは思えません。
栄村 >  ところで、この小説に出てくる“黒雲”ですが、20年近く後の1983年に書かれた作品で、ふたたびこのアイデアを展開したものがあるんですよ。『砂漠の惑星』では、琴座星人の造りだした機械同士の生存競争から、黒雲が生まれたという設定だけど、これでは近未来、軍拡競争とバイオテクノロジーの発達の中から、おなじようなものが出てくるという設定で……。
雀部 >  そりゃ、ますます『プレイ―獲物―』ですね(笑)
栄村 >  『プレイ―獲物―』は遺伝子操作、コンピューター・プログラミング、ナノテクノロジーを統合してつくりだされた軍事用の微小マイクロマシンが、暴走する話ですね。遺伝子操作をした大腸菌をつかってパーツとなる分子を作らせるという……。紹介する「逆進化」という短編は1983年に書かれていたから、クライトンは、レムのアイデアを今のテクノロジーで解釈したのかもしれません。「逆進化」は『ワン・ヒューマン・ミニット』(英語版1983年刊)という短編集に収録されています。これは2105年に刊行された「21世紀の兵器システム;逆進化」の概要について書かれたもので、100年後の未来に刊行されるはずの本(?)の紹介です。まあ、架空の本の紹介ということで「完全なる真空」や「虚数」に近い作品ですな。書かれたのは、まだ米ソ冷戦が続いていた時代。故人となった学者が、どういう経路かわからないけれど、20世紀から21世紀にわたる兵器開発の歴史書を手に入れていた。レム本人がそれを見て書いたという、法螺と真実が入りまじった手の込んだ設定にしてる(笑)。なにしろ晩年、人類の未来についてたずねられるや、はっきりと人間は核戦争の方向に向かっています、でも、いつ最終戦争が起こるかなんてわかりゃしません、もし知ってりゃ、今ごろ、カギのかけられたアメリカ大統領の金庫の中でイスに坐らされています、と答えていた人ですから(笑)。「逆進化」も、こういう国家機密級の真実を自分だけが知っていると身が危ないので、SFの中に混ぜて、世界中にばらまいた方が、身の安全になると考えたから書いたという話で……(笑)。
雀部 >  ばらまかれた秘密は、もはや秘密ではないという(爆)
 『虎よ!虎よ!』のラストで効果的に使われた手法ですね。
 栄村さんに教えて頂いた、レム氏のホームページの各国版の表紙が載っているページに「ワン・ヒューマン・ミニット」の表紙イメージも載ってますね。
栄村 >  この本の中で、レムは21世紀における軍隊の変質――核兵器からマイクロマシンタイプの兵器である「シンセクト(人工昆虫)」(非常に小さく捕らえにくい兵器で、通常兵器はまったく役に立たない)の出現、そして人間の軍隊が、この非生命体であるシンセクトにとって代わるまでの道筋を書いてる。おもしろいのが、いまの軍事産業が、なぜ「シンセクト」を生みだす必要にかられたかという過程でね。弾道弾に関する彼の考え方は2006年の今になっても、なかなか核心をついてる。
 核の均衡の中で生きていた大国が、陸、海、空、そして宇宙空間まで全地球的な防衛システムを構築するんだけど、システムの巨大化が無数のサブシステムを生みだし、あまりにも複雑になったおかげで、故障が頻発しはじめる。さらに、兵器のテクノロジーが進み、作戦の実行スピードが速まれば速まるほど「偶然」という要素が大きくなってくる。たとえば、マッハ20といわれる大陸間弾道弾の迎撃に、なにかが災いしてナノ・セコンド単位のわずかな遅れが生じただけで戦争の勝敗が決まってしまう。
雀部 >  故障の確立が百万分の一だとしても、故障を起こす可能性のある機器が百万個あると、どこか故障しているしていることになるという(笑) もちろん、確率ですから、100%になるわけじゃないけど。
栄村 >  ここのところを読んでいる時、ちょうど北朝鮮のミサイル実験があった。レムは、複雑で最も速く、最も優れた兵器システムほど、“偶然という要素”が大きくなり、戦(いくさ)の神のように運命を左右する”と、この作品の中で語っているが、真面目な話、なんだか彼が想定した状況の真っ直中に、いま自分たちがいるような気がして仕方なかった。ある意味では、状況は彼がこの作品を書いていた1983年頃の冷戦時代に逆戻りしているのかもしれない。
雀部 >  歴史は繰り返すというやつですね。
 困ったことですが、人間のそういう情動面は、たぶん全然進歩してませんね。
 まあ、偶然という要素とは関係ないことなのですが……
栄村 >  話が逸れるけど、あの実験では新型スカッド、ノドンB、テポドン2が発射された。調べてみると、従来の中距離弾道ミサイルのノドンは全長16メートル、発射され高度250キロ以上に達してから、最終速度で一秒間に1.9キロほどのスピードを出して日本に到達する。実際には、ミサイル本体は切りはなされ、弾頭部分だけが目標に到達するわけだけど、ノドンの場合、発射されてから日本までの到達時間は6〜7分くらいらしい。98年に三陸沖に着弾したテポドン1では、発射後、放物線を描いて最高高度300キロまで達したのち、秒速4キロ(マッハ12弱)で、大気圏に再突入、これが射程6000キロで全長32メートルのテポドン2になると、秒速5キロ――音速の15倍ぐらいで飛んでくる。
 弾道ミサイル防衛では、弾道弾を二段階にわたって迎撃するけど、まずはイージス艦から発射されるRIM-161スタンダードSM-3(最終速度は秒速4〜4.5キロといわれている)で迎撃し、すりぬけた場合にはパトリオットミサイルの能力向上型PAC-3(迎撃高度10〜15キロ、射程距離は15〜45キロ、最高速度・秒速1.7キロ(音速の5倍と発表されている))を発射して破壊することになる。
 テレビの報道を見てるとSM-3やPAC-3を配備したら100%迎撃可能のような印象を受けるが、これだけ物凄い速度で飛んでくるものを、確実に打ち落とせるかどうかは、まだわからない。
雀部 >  いや、それはほとんど無理ですって(爆)
 ミサイル同士って、点と点の出逢いによる撃墜ですから。
 と言ってたら、迎撃ミサイルが成功したというニュースが。まあ、こういうのは迎撃しやすいように打ち上げるのが定石だからあまり信用できないな(笑)
栄村 >  日本に飛んでくるのは、射程1300キロくらいのノドンが想定されているらしい。高度250キロの空間を、ロケットから切りはなされ、秒速1.9キロもの速度で飛んでくる弾頭部分――しかも、大きさは2メートルか、そこららしい――を迎撃するのは、ライフル銃から発射された弾丸を、弾丸ではじくような神業だね。できるのはゴルゴ13くらいか(笑)。イージス艦から発射されるRIM-161スタンダードSM-3も、ブースターのついたミサイル本体は6.5メートルの大きさだけど、途中で大部分が切りはなされてしまう。実際、ミサイルに体当たりするのは、リープと呼ばれる軽量大気圏外迎撃体で23センチくらいのものらしいが、その程度の大きさでも、秒速4〜4.5キロほどの高速を出している。テポドンとの相対速度を考えると、命中時には相当な破壊力を出す。SM−3の正確な最大有効射程距離は、製造元のレイセオン社のページを見ても出ていないんだけれど、数百キロ先から高度250キロ以上の空間を1秒間に1.9キロも移動する2〜3メートルの物体に、たった23センチの撃墜体を正確に命中させようというのだから凄い。テポドン2なんかになると、これが秒速5キロ、マッハ15くらいだから、0.001秒遅れただけで、目標は5メートルも動き、迎撃に失敗する。こりゃ、もうほんとうにレムの書いているとおり、ナノ・セコンドの世界の戦いで、“偶然の要素”というのが大きくなるね。
 2SM−3のシーカーには熱源探知装置がつけられていて、実験の時には、弾頭に命中せず、ブースターであるミサイルの方に命中したこともあったらしい。しかも、こういう弾道弾というのは、単弾頭方式と複弾頭方式というのがある。テポドンもノドンも単弾頭方式といわれているけれど、技術的にもう1ランク上の複弾頭方式がとられた場合、先端のカバーが外れると同時に、複数の弾頭がとんでくる。もちろん、相手の方も、迎撃されることを想定して弾頭の中にダミーを潜ませているから、レーダーにはいくつもの影が映る。このダミー、実はバルーン(風船)だが、迎撃ミサイルの熱源探知装置の目を眩ませるために熱源までついている。迎撃ミサイルを発射したとしても、内蔵されている熱源探知装置では、どれが弾頭か見当がつかない。ちょうど似たような状況が、16年前の湾岸戦争の時にあってね。イラクから打ちこまれてきたアルフセイン(スカッド・ミサイルB型)が、空中分解を起こした。このときはレーダーに複数の影がうつり、数発もの弾頭が一度に分散して撃ち込まれてきたのと勘違いしたアメリカ軍は、パトリオット・ミサイルを連射したらしい。
雀部 >  それは宜しいんじゃないですか。沢山兵器を使うことになって(笑)
栄村 >  いずれにせよ、弾道ミサイルを破壊する絶好のタイミングは、ロケットミサイルのエンジンがまだ燃焼し、弾頭が切りはなされる前のブースト段階まで。弾頭が切りはなされてからは、ただでも難しい弾道ミサイルの迎撃は、さらに難しくなる。弾道ミサイルの破壊を確実なものにしようと思ったら、イージス艦をミサイル基地に出来るだけ近づけなければならない。そうすると今度は、対艦ミサイルの餌食になる危険性が出てくる。
雀部 >  だから、近代戦は手詰まり。
 宇宙での戦闘はもっと手詰まりだけど(爆)
栄村 >  地上配備の能力向上型のパトリオットミサイルPAC−3だが、まったくのゴール・キーパー的な存在でね。PAC−3ミサイルが迎撃できる範囲というのは限定されており、迎撃高度は15キロ、最大射程距離はネット上で発表されているもので15〜45キロぐらいのものらしい。
 湾岸戦争当時に使われたパトリオットミサイルは、スカッド短距離弾道ミサイルの手前で爆発し、その破片で相手を破壊する方法をとっていたが、これがあまり効果がなく、実際の迎撃率は1?4くらいしかなかったらしい。そこで弾頭部分が直接体当たりする方式にかわったんだけど、迎撃可能エリアを弾道弾が通過する時間は、弾道ミサイルの種類にもよるけれど、6秒から15秒くらいか、とにかく対処できる時間はほんのわずかしかない。
雀部 >  それに、気象条件にも左右されるかもしれない……。コリオリの力も考慮に入れないと。あ、これは、ゴルゴ13ネタか(笑)
 レムが言っているように、コンピューターシステムに問題が出てくるということも考えられなくない。迎撃ミサイルが弾道ミサイルを探知するシステムは、いったいどうなっているんでしょう?
 ミサイルを地上からある程度誘導したらミサイルに搭載したコンピュータでいけるのかな?
栄村 >  地上迎撃用のPAC−3の場合、弾道ミサイルを探知、追跡している地上配備型のフェーズド・アレイレーダーが、発射された迎撃ミサイルをある部分まで誘導する。そして、目標に接近した時点で迎撃ミサイルがレーダー波を弾道ミサイルに向けて照射し、地上の管制装置に情報を送って、自身の位置と弾道弾の位置を正確に割り出させる。管制装置はその情報を迎撃ミサイルに送りかえして誘導していく。つまり迎撃ミサイルは、自分の照射したレーダー反射波と、地上の射撃管制コンピューターが算出した情報を、照らし合わせながら目標に向かってとんでいく。まあ、弾道弾の秒速1.9〜5キロという飛翔速度から考えると、迎撃システムのコンピューターの演算処理速度というのは、恐るべき速度だね。
雀部 >  現代の技術で、それだけ迎撃が困難なら、冷戦時にはどうやってICBM(大陸間弾道弾)に対処してたんでしょうね?
栄村 >  50年代中頃から対弾道迎撃ミサイルの研究が、アメリカで始まったんだけれど、当時は音速の20倍もの速度で降下してくる弾頭にミサイルを命中させて撃墜する技術なんてなかった。それで迎撃ミサイルの弾頭部には、10キロトンから5メガトンの核弾頭が搭載されていたんだ。10キロトンといえば12.5キロトンが広島に落とされた原爆だから、相当な破壊力だね。これが5メガトンとなると500倍か。ナイキ・スパルタンとかナイキ・スプリントといわれるミサイルがそれに該当する(ちなみにナイキというのはギリシャ神話の勝利の女神の名前。この頃は神懸った名前が多かった。“勝利の女神・スパルタ人”とか、“勝利の女神・全力疾走”“ナイキ・ゼウス”なんていう神々しい名前の迎撃ミサイルもあった)。凄まじい速度でとんでくる大陸間弾道弾を阻止するには、強い放射線を浴びせて、ミサイルの機能を内部から破壊する以外手段はなかった。おそらく、今のミサイル防衛で、完全に防ぎきれないとなると、より確実な核搭載型の迎撃ミサイルを使うしかないだろう……。原子炉など攻撃されて破壊されたらチェルノブイリ級の惨事が起こるし、放射線を含んだ灰が落ちた土地は数百年にわたって人間が住めなくなる。さすがに、このことについては非核三原則にふれて、ハチの巣をつついたような大騒ぎなるので誰も言わなかったけれど。
雀部 >  そりゃ、いかにもアメリカらしい発想ですね(爆)
 いまだに、劣化ウラン弾による放射線障害についても認めてないし。
栄村 >  レムは、「逆進化」の中で、「加速するスピードが、活動中に予想できない偶然の要素をもたらした。電光石火の速さのシステムが電光石火の速さのミスを起こし、数分の一秒が、その地域――大都市、産業の複合センター、大艦隊の運命を決める時、軍の確信を達成することは不可能だった」と書いているが、まさにその通りだね。
雀部 >  なんかレム氏は、現代戦の手詰まり状態を予見してますね。
栄村 >  レムは、このほかにも近未来において兵器開発が陥った袋小路について描いているんだが、その中に怒濤のような技術革新に産業構造自体が追いつかなくなったことと、新兵器の価格の高騰をあげていた。技術革新については次から次へと新しい兵器のブルー・プリントが出されるもののペースが速すぎて、生産体制が追いつかない。新しいコントロールシステム、目標設定システム、カモフラージュ、メンテナンス、そういったものを備えた通常兵器は、次から次へとおこる技術革新の中、戦場に投入される前に時代遅れになってしまう。さらに、皮肉なことに新しいものが前のものよりはるかに高価であるばかりでなく、その多くがすぐにロスとなって廃棄される。こうした矛盾を解消するためには、10年先ではなく4分の1世紀先を見据えて兵器を開発するしかないのだけど、これは今という時代の視野を超えて、新しい発見や発明を予見することであり、まったく不可能なことでしかない。さらに、兵器価格の高騰については、飛行機の発達の歴史とそのコストを例に挙げて説明していた。第一次世界大戦時の飛行機の価格は、カンバス地と木、ピアノ線、機関銃とランディング・ギアくらいで作られていたから、ほぼ高級自動車なみだったものの、それが第二次大戦になると自動車30台分くらいの価格になり、現代のステルス・タイプの対レーダー用爆撃機になると一機数十億ドルにもなる。おかげで新型機の調達が思うようにいかなくなってしまう。海軍の艦艇となると状況はもっとシリアスで、莫大な費用と時間をかけて建造された空母など、防空網をくぐる新型ミサイルの一撃で沈められるような状況になる。
雀部 >  軍需産業と武器商人たちにとっては、美味しい状態だろうな。
栄村 >  実際の話、ステルス・タイプのB−2爆撃機で一機20億ドル、2300億円くらいか。最新戦闘機F−22・ラプターになると調達価格は一機あたり200億円ぐらいになる。弾道ミサイル防衛のSM−3――この6月にアメリカ議会が日本への売却を承認したんだが――ミサイル本体や運用面、いろんなものをひっくるめると4億5800万ドル、530億円になるらしい。
雀部 >  やっぱり(笑)
 昔は、戦争状態は技術革新をもたらすと言われたもんですが……
栄村 >  こうしたコスト高騰の中で、マイクロ・チップに変わる遺伝子工学の技術を用いた新しい製品が登場する。
雀部 >  おお、ついに出ましたか。それは何でしょう?


[雀部]
SFファンには、ある意味『ソラリス』よりお薦めかも知れないのが、『砂漠の惑星』です。今回は、未訳の短篇の紹介ということで、もっぱら聞き役な私。あ〜、もすこし英語力があったなら(汗)
[栄村]
レムの30年来のファン。「砂漠の惑星」を読んだのが、SFに本格的に身を入れるきっかけとなりました。彼が亡くなる前に一度、ポーランドを訪れたかったのですが……。
生前、レムが言っていたように、インターネットで世界中から情報が入ってきて便利になる反面、駆けめぐる膨大な情報のために、ますます世の中は複雑化し全体像が掴みにくくなっているような気がします。彼のような広い知識と視野をもつSF作家は、これからますます生まれにくい状況になっているのかもしれませんね。

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