先月に引き続き、「第65回世界SF大会 Nippon2007」特別レビュー続編です。 さすが、老舗のSFマガジン、先月号(7月号)と今月号(8月号)で候補作を訳載。今月は、他に長編部門候補作のレビュウ、映像部門、アーティスト部門、ファンジン、ファンライター他とジョン・W・キャンベル新人賞の概説です。 なお、投票については、期限は7月31日必着。投票用紙に記入された"各候補作"および"該当作なし(No Award)"に1位から順位を付ける。総ての候補作に順位を付ける必要はない。分からない項目については棄権(順位を付けない)が推奨されてます。
SFマガジン2007年8月号「ワールドコン特集 II」
■ノヴェレット部門 |
今月号に掲載された三作品は、その舞台がバンコク、インド、カンボジアと東南アジアを舞台としています。流行りなのかしら。ダン・シモンズの短篇集『愛死』とかリチャード・コールダーの一連の作品にも共通するデカダンで雑多でパワフルな感じです。 これを最初に感じたのは、映画『ブレードランナー』かも。そう、人がやたら多くてゴミゴミしていて暗いけどどこかエネルギッシュな…… |
「イエローカードマン」 パオロ・バチガルピ |
化石燃料が枯渇し、代替燃料を産み出すバイオ企業が支配する世界が舞台のディストピアSF。主人公は、落ちぶれた元エリートビジネスマンの老人ですが、本当の主人公は、舞台となる未来のバンコクの描写でしょうね。 |
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「ポル・ポトの美しい娘」 ジェフ・ライマン |
元カンボジアの独裁者で虐殺を行ったとされるポル・ポトの娘セットが主人公のファンタジー。セットの成長と贖罪がテーマかな。『夢の終わりに…』の作者らしい、ある意味必然とも思えるラストが好きなんだけど…… |
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「ジンの花嫁」 イアン・マクドナルド |
複数の国家に分割された未来のインド。人々は、AIをアドバイザーとするため携帯端末や内耳装着型の端末を使っていた。トップダンサーであるエシャは、ある日交渉人AIであるラオからコンタクトを受け、彼のため踊ってみせる。やがて二人は愛し合うようになるのだが……『火星夜想曲』の作者が送る大人のメルヘン。 |
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■ショート・ストーリー部門 |
「パーティで女の子に話しかけるには」 ニール・ゲイマン |
女の子に興味はあっても話をすることが出来ない高校生のイーンは、親友に無理やりパーティに連れて行かれる。しかし、そのパーティの女の子はどこか変わっていて…… C・L・ムーア女史が、もし『モンスター・ドライヴイン』を書いたら…… |
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「あなたの空の彼方の家」 ベンジャミン・ローゼンバウム |
より高次の存在である〈巡礼〉の訪問を待つマサイアスは、自らも作り上げた世界を収めたライブラリを見ていて、幼い女の子が悲嘆にくれるのを見つけ、手をさしのべようとしたが…… |
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■長編部門 |
SFマガジン8月号の概説が一番詳しいようです。 Webでも、概説を紹介しているサイトがありました。 「marginalia」 http://www.obscurecities.com/marginalia/ Sunday, June 10, 2007の記事です。 今だと、左上の「Blindsight for Hugo!」をクリックすると見られます。 一押しの『Blindsight』の主人公は、少年時代にテンカンの治療のために脳半球を分断したキートン。人間的な感情を無くした代わりに、他者の反応を客観的に観察して瞬時の状況判断が出来る「統合者」の能力を身につける。彼が、異星人とのファーストコンタクトのためのチームに招聘される。他のメンバーは、体中を各種計測のために機械化した生物学者、多言語分析のため四重人格化された言語学者、部下を見殺しにしながらも交渉を成し遂げた平和主義の戦闘家。 SFマガジンでは、21世紀のレムの後継者、イーガンやチャンのライバルと大絶賛してます。う〜ん、早く読みたいぞ(笑) |
[雀部] |
ここ二十年、ワールドコンはもとより、SFのコンベンションとはご無沙汰 してます。 もし、「第65回世界SF大会 Nippon2007」の会場で見かけたら、気軽に声を掛けてやって下さいまし。 |
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