今月紹介する映画は、『監督・ばんざい!』と『プレステージ』。 しかし、今月もSF映画は無かったので、未来に期待を込めて〈Coming Soooon.〉をお送りします。
例によって、独断と偏見で純粋ホラーは割愛、個人的興味のある映画はSFでなくとも上げてあります。 現在上映中(?)のものも含みます。 ☆は、今回新しく登場、もしくは追加・変更がなされた情報です。 (なお、文中のリンクは、ttaniさんが調べてくださいました)
■『監督・ばんざい!』
5月7日は、浅草の観音様お参りの帰途、渋谷で13:45分からの北野 武監督、ウルトラ・バラエティ・ムービー『監督・ばんざい!』を観てきました。 予想に反して、入りは約300席の劇場に50人程度。
映画: 北野 武に似せた“張りぼて人形”が、CTスキャンに掛かっているところから映画は始まる。場所は、どこかの人間ドック。内視鏡検査などを終え、最後の問診で先生は“張りぼて”に、「この次は本人がおいで下さい」という。 突然、シーンが変わって、やくざの抗争。ビートたけしが、ピストルをぶっ放す。が、このシーンは数分で終了。北野 武は「もう、ギャング映画は二度と撮らない」と宣言する。 それなら何をと悩んだ末、『定年』と題する小津安二郎張りの映画を撮る。主演はビートたけし。その妻が松坂慶子。定年最後の日、会社の帰りに行きつけの小料理屋でいっぱいやり帰宅。家でお茶を飲む。しかし、この映画も北野 武は「単に酒とお茶を飲むだけで、30分以上かかってしまうようなかったるい映画に客が入るわけがない」と10分程度で中断。 続いて恋愛ものの『追憶の扉』、『失明の画家と教え子』、『運転手の恋』、更に昭和30年代の子供たちをテーマにした『コールタールの力道山』、そして『座頭市』再びとばかりに時代劇『青い鴉 忍PART2』、更にホラーの『能楽堂』、だが、ホラーは怖くすればするほど滑稽になり、結局、総ての映画は挫折。 そこで最後、日本のCG技術は最高だ、とばかりにSF映画『約束の日』に挑戦する。 果たして、どんなSF映画が誕生するのであろうか・・・。 映画の一番最後は、北野 武本人が、脳のCTスキャンの結果を先生から聴いているシーンで終了する。
北野 武、13本目の映画。 細かく書かなくては、この映画の本当の面白味は分からないし、かといって細かく書くとネタばれになるし、といったところです。 北野 武自身の実験的映画、または、自虐映画といっても良いかと思います。 多分、観る人によって、好き嫌いが分かれるでしょう。 総ての映画が劇中劇的に構成されており、監督としての北野 武、俳優としてのビートたけし、そして、ときどき本人の身代わりとなる“張りぼて”君が出てきます。 人間ドック、私は先月末に受けてきたばかり。先生の挙動が生々しく、愉快でした。 北野 武は、この劇中劇のSF映画も「ハリウッド映画のように、最後にヒーローが出てきて・・・というようにはしたくない」と語っております。
2007・日・東京テアトル/オフィス北野配給 監督・脚本・編集:北野 武 製作:バンダイビジュアル、TOKYO FM、電通、テレビ朝日 出演:ビートたけし、江守 徹、岸本 加世子、鈴木 杏、吉行 和子、宝田 明、藤田 弓子、内田 有紀、木村 佳乃、松坂 慶子 2007/06/02公開 1時間44分
蛇足:全体がコメディ映画です。この劇中劇のSF映画も、余り期待しないで下さい。
■『プレステージ』
昨15日は渋東シネタワーまで11時からの『プレステージ』を観に行ってきました。 渋谷一の大劇場(794席)ですが、入りは4〜50人。大々的な宣伝の割には閑散としていました。
物語: 舞台は19世紀末のロンドン。 二人のマジシャン、アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベール)が師匠のところで修行していた頃、ボーデンが結んだアンジャーの妻の手の紐がほどけなかったために、彼女は水中脱出に失敗、死亡する。このことを恨みに思ったアンジャーは、ことあるごとにライバルのボーデンを妨害し始める。ボーデンへの恨みと敵愾心はだんだんとエスカレートし、遂にボーデン抹殺のトリックは成功したかに思えたが・・・。
映画はイントロの後、アンジャー殺害の容疑でボーデンが裁判にかけられ、有罪の判決を下されるところから始まり、その後は現実と回顧のシーンが時系列に殆ど関係なく流れて行きます。 出てくる人物はマジシャン、ある時は変装もしており、途中までは頭が混乱することもしばしばでしたが、後半ではだんだん整理され、何が起こっているのかがはっきりしてきました。最後の最後は一番最初のイントロのシーンで終了。(でも、未だ分からないところが何カ所もあります!)なかなかスマートに纏まっている映画です。 途中、物質転送機(瞬間移動装置)の発明依頼のために、アンジャーはコロラドの山中までテスラ(デヴィッド・ボウイ)を訪ねていくシーンがあります。果たして、この転送機は完成するのでしょうか? アンジャーの助手役として、このところお馴染みのスカーレット・ヨハンソンが出演しています。 イントロと一番最後には“一流マジックは、3つのパートからなる。1.プレッジ(確認)。2.ターン(展開)。3.プレステージ(偉業)”の説明が出てきます。 映画そのものも、この流れで作られた由。
(原題) THE PRESTIGE 2006/アメリカ/ギャガ・コミュニケーションズ提供・配給 監督:脚本:クリストファー・ノーラン 脚本:ジョナサン・ノーラン 出演:ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、スカーレット・ヨハンソン、デヴィッド・ボウイ 2007/06/09公開 2時間10分
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