7月12日に、渋谷の東急デパート東横店の名店街を歩いていましたらば、「アインシュタイン」の文字が目に飛び込んできました。よく見たらば、佃煮屋さん。 細切昆布の佃煮の前に、札が立てかけられていて、それには「アインシュタインが来日したとき、玉木屋の細切昆布が気に入り、滞在先の帝国ホテルに取り寄せました」と書いてありました。 アインシュタインに肖ろうと思い、50gr買ってきてしまいました。 アインシュタインの来日は、86年前の1922年だったのですね。
今月ご紹介するのは、以下の五作です。 『庭から昇ったロケット雲』『西の魔女が死んだ』『崖の上のポニョ』『ドラゴン・キングダム』『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』
■『庭から昇ったロケット雲』
7月8日は、大雨の合間を縫って、日比谷シャンテシネまで、朝一(11:15)の『庭から昇ったロケット雲』を観に行ってきました。 5日に封切られたばかりなのに、約200の客席に座っていたのは、20人ばかり。
物語: 父親の死後、跡を継ぐため空軍からテキサスの農場に帰ってきたチャーリー・ファーマーは、子供の時からの夢を実現するため、10年掛けて自分の手で宇宙ロケットを作り上げる。この父親をバックアップする妻と子供たち3人。 しかし、財政はショートするし、FBIには睨まれるしで焦ったチャーリーは、早朝、妻に書き置きを残しロケットに搭乗、発射させてしまう。が、ロケットは転倒、瀕死の重傷を負う。 諦め掛けるチャーリーを励ます家族。丁度そんなとき、妻の父親が死亡、莫大な財産も手に入り、ロケットの再建に拍車が掛かる。 果たして、2度目の打ち上げは、成功するのか。
『庭から・・・・』といっても、地平線の彼方まで自分の土地。日本人の“庭”の感覚ではとても想像もできないような広大な平野に建つ納屋から、ロケットは打ち上げられるのです。 再建の時は、『ロッキー』の映画を観ているように、あれよあれよと言う間にロケットが出来上がっていきます。 本当に個人でロケットが作れるのか、と野暮なことは考えずに観ていれば楽しい映画です。子供の時の夢を、大人になっても続けて実行できる人は幸せだし、どんな窮地にあっても、それを常に支えて呉れる家族がいる、というのも素晴らしいこと。正にアメリカンドリームの一つです。 ちっとも宣伝されていなかったのに、空軍時代の同僚、マスターソン大佐役としてブルース・ウィリスがカメオ出演しています。彼は、公の立場でチャーリーの計画を引き留めに来るのですが、打ち上げに成功したとき、NASAのコントロールセンターでニヤッと笑うところは好演です。 1960年代のアメリカでは、本当に乗れるクラシック・カーや飛行機のキットが通信販売で売られていました(N.Y.EXPOなどで商品が展示されていた)。今のアメリカなら、そのうち本当に人が乗れる、宇宙ロケットのキットも発売されるのでは・・・。
(原題)THE ASTRONAUT FARMER 2007/アメリカ/デスペラード提供・配給 監督:マイケル・ポーリッシュ 脚本:マーク・ポーリッシュ、マイケル・ポーリッシュ(双子の監督) 出演:ビリー・ボブ・ソーントン、ヴァージニア・マドセン、ブルース・ダーン、ティム・ブレイク・ネルソン、マックス・シェリオット 2008/07/05公開 1時間44分
蛇足:妻の父親役になった、ブルース・ダーンは、SFの名作『サイレント・ランニング(1972)』に出演していたとか。1936年生まれ。私より若い!
◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。
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『僕らのミライへ逆回転』(米) |
2008年 秋 |
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体に磁気を帯びたレンタル・ビデオ店の店員が、テープの中身を駄目にしてしまい、勝手に自分たちで名作をリメイクするというコメディ。ジャック・ブラックが店員に! リメイクされる映画の中には、『ゴースト・バスターズ』、『ロボコップ』、『2001年宇宙の旅』、『キングコング』、『メン・イン・ブラック』なども含まれている由。 |
■『西の魔女が死んだ』
7月15日は女房のお相手で、最近、港北ニュータウンにできたショッピング・センター「ノースポート」内のワーナー・マイカル・シネマズまで、日本映画『西の魔女が死んだ』を観に行ってきました。このシネマ・コンプレックスはスクリーン数12,この映画はスクリーン10で上映されましたが、座席数99に対して入りは四分の一ほど。
物語: 学校に行けなくなった中学生の“まい”は、初夏の一月ほどを、森の中に暮らす大好きな英国人のおばあちゃん「西の魔女」に預けられ、魔女修行を受ける。規則正しい生活、何でも食べる、家事の手伝い、そして、一番肝腎なことは、喜びも、希望も、幸せも、何でも自分で決めること。 やがて、父親の転勤が決まり、“まい”は自分で転校先を決め、森から遠い新しい街に引っ越していく。 それから2年。おばあちゃんが死んだとの訃報が入り、“まい”は母親と急いで森に駆けつけるが、そこで“まい”は、最後に魔女と約束した“秘密のメッセージ”を発見する。
梨木香歩の100万部を超える大ロングセラー小説『西の魔女が死んだ』(もともとは、児童書のようでしたが)の映画化。 SFではありませんし、勿論、おばあちゃんは、本物の魔女でもありません。優しく、厳しいおばあちゃんと、孫娘のお話です。 舞台は、山梨県清里。正にターシャ・テューダーの世界を彷彿させるような光景で、いろいろなハーブを眺めているだけでも楽しめます。 英国人のおばあちゃん役、サチ・パーカーは、名女優、シャーリー・マックレーンの娘で、日本映画には初出演だそうです。(映画の中では、英語の教師として日本に来た彼女が、日本人の物理の教師と結婚したことになっています)
2008/日本/ 製作:アスミック・エース エンタテインメント 監督:長崎俊一 原作:梨木香歩「西の魔女が死んだ」 新潮文庫 脚本:矢沢由美、長崎俊一 出演:サチ・パーカー、高橋真悠、りょう、大森南朋、高橋克実、木村祐一 2008/06/21公開 1時間55分
■『崖の上のポニョ』
全国的に梅雨明け宣言がなされた、7月19日、猛暑の中を渋東シネタワー4Fまで、朝2番(11:25)の『崖の上のポニョ』を観に行ってきました。 昨日は公開初日、しかも、夏休みの初日。途中で、立食いそばを食べ、10時50分に映画館に着いたときには、小さい子供を含めて、既に70〜80人が並んでいました。その後、どんどん人数は増えましたが、流石、座席数:794の大劇場、上映開始時でも、70%ぐらいの入りでした。
物語: 崖の上の一軒家に住む5歳になる宗介は、普段はお母さんのリサと二人暮らし。お父さんの耕一は船長さんでいつも留守。 ある日、宗介は崖の下の海岸で、ジャムの瓶に頭を突っ込んでもがいている、赤い魚の子を助け、ポニョと名付けて飼い始める。 ポニョは宗介を、宗介はポニョをお互いに好きになるが、かつて人間であったポニョの父親、フジモトによって、再び、海に連れ戻されてしまう。 人間になって、もう一度、宗介に会いたいと願うポニョは、妹たちの力を借り、父親の魔法を盗み出し、大きな津波に乗り宗介の住む崖を目指す。 しかし、膨れあがった海は、崖の宗介の家だけを残し、陸地を全部海中に沈めてしまう。 魔法で人間になったポニョは、再び、宗介と巡り会えるが・・・。
4年振りの宮崎駿ワールドです。上に書いたところまでで、物語は全体のほぼ半分。 宮崎駿監督は、『人魚姫』をモチーフとし、舞台を日本、そして、キリスト教色を払拭し、幼い子供たちの愛と責任、海と生命、そして冒険を描きたかった由。 後半、ポニョの母親、母なる海、グランマンマーレも現われ、ポニョや人々に愛を授けます。 映画の中には、海を汚染する人間たちの公害問題、魔法の一つとしてのDNA操作、月を引き寄せたために起こる海面の盛り上がり、などなどいろいろと難しいシーンも盛り込まれていて、例によって、あのシーンでは何を監督が訴えたかったのだろうかと、考えさせられるところがあります(監督は「5歳の子供にも分ってもらえる、シンプルな筋運び」と言っていますが・・・)。 海とその生物を魔法で操作する、という件は、丁度、読み終わった『深海のYrr』を連想しました。
このアニメは全くCGに頼らず、全部手書きで仕上げたとか。久し振りに、ホット癒される2D画面で、特に、あの躍動する海と波の描写は抜群です。 エンドクレジットの後に、画面いっぱいにひらがなで「おしまい」と出たのを、前の方の女の子が大きな声で「おしまい」と読み上げたので、場内に和やかな雰囲気が流れました。
蛇足:「人間を辞め、海の住人となった」という謎の人物“フジモト”。プログラムの“この映画には、不思議がいっぱい”によると「フジモトは、ジュール・ヴェルヌのSF小説『海底二万リーグ』(1869年)に登場する潜水艦、ノーチラス号の唯一のアジア人。少年だったフジモトはグランマンマーレと出会い、恋に落ちた。それから100年、フジモトは半分人間、半分海の男として生きてきた。(フジモトの)サンゴ塔は、フジモトの理想を体現した海洋牧場。海水を浄化し、生命を増殖する場所。」とのこと。ジュール・ヴェルヌが絡んでいたとは知りませんでした。
2008/日本/ 製作:スタジオジブリ・日本テレビ・電通、外4社 配給:東宝 原作、脚本、監督:宮崎駿 声の出演:リサ:山口智子、耕一:長嶋一茂、グランマンマーレ:天海祐希、フジモト:所ジョージ、ポニョ:奈良柚莉愛、宗介:土井洋輝 2008/07/19公開 1時間41分
■『ドラゴン・キングダム』
7月29日は『ドラゴン・キングダム』(朝二番・11:45)を観に、ワーナー・マイカル・シネマズ港北ニュータウンまで出かけました。私にとっては期待値の高い映画なのですが、何故か渋谷では上映されておらず、マイナーなシネコンに出かけた次第。 流石、夏休み。切符売り場前の広いロビーは、鬼ごっこや隠れんぼをする子供たちで、さながら小学校の体育館。 しかし、上映4日目なのに、この映画の観客は116の座席に30人ばかり。
物語: ボストン南部に住む、カンフー・オタクの少年、ジェイソンは、いつもいじめられっ子。今日も中華街の質屋で、カンフーのビデオを探していると、奥の部屋で、この店の先々代の頃からこの部屋に置きっぱなしにされているという如意棒を発見する。店の老主人は、「この如意棒は、本来の持ち主に返さなければいけない」と彼に告げる。丁度その時、ちんぴらギャングが強盗に入り、老主人はピストルで撃たれる。 ジェイソンはこの如意棒を持って逃げるが、屋上に追いつめられ、如意棒を持ったまま屋根から落ちる。 そして、気が付いたところは、古代中国の農家の寝室。 そこへ、五行山に住む邪悪なジェイド将軍の兵士たちが襲ってくる。如意棒を持って逃げるジェイソン。しかし、彼は数人の兵士に捕まってしまう。その時、一人の酔っぱらい、ルー・ヤン(ジャッキー・チェン)が馬で通りかかり、酔拳で彼を助ける。ルーはジェイソンに「この如意棒は今から500年前、孫悟空が五行山で不老不死のジェイド将軍と戦い、騙されて石に変えられたときに失ったものだ」と告げる。二人は石にされた孫悟空に、この如意棒を返すため五行山に向って旅に出るが、途中、白馬に乗った謎の少林拳の達人、サイレント・モンク(ジェット・リー)に如意棒を奪われてしまう。しかし、この男も如意棒を本来の持ち主に返すべく、如意棒探しに半生を費やしていたことが分かり、旅を共にする。 やがて、ルーとサイレント・モンクは、ジェイソンを伝説の中でいわれている「邪悪なジェイド将軍を滅ぼすための“導かれし者”」であることを認めるが、彼は全くの弱虫。直ちに、このカンフーの達人二人は、ジェイソンにカンフーを仕込み始める。 果たして、彼らは不老不死のジェイド将軍を倒し、石に変えられた孫悟空に如意棒を返し、孫悟空を再び蘇らすことができるのだろうか。 そして、ジェイソンは、その後、また、現代のボストンに帰ってこられるのであろうか。
バター臭い『インディ・ジョーンズ』と比べ、お馴染みの孫悟空が主題。東洋の血が流れている私には、むしろこの映画の方が面白かったように思います。 それに、ジャッキー・チェンとジェット・リーという、カンフーの達人二人の夢の共演、いろいろなカンフーの技が堪能できます(酔拳、蛇拳、虎爪拳、鶴拳、蟷螂拳、柳葉拳、猿拳、潭腿拳など・・・)。 映画の最後で、ボストンの質屋の老主人と、酔拳の達人、ルーは、ジャッキー・チェンの二役、また、謎の男、サイレント・モンクと、孫悟空は、ジェット・リーの二役ということが判明、映画の中で心に引っかかっていた幾つかの疑問が解けました。 この主役3人に加え、両親をジェイド将軍に殺され、復讐を誓う娘、ゴールデン・スパロウも登場。ジェイソンとの淡い恋などが絡み、男だけの世界に色を添えています。 刻々と変わる中国の景色も、綺麗でした。 最後の最後まで、いろいろありで、目が離せない映画です。
蛇足:こんなに空いているのに、入場前にプログラムを買おうと思ったらば、何故か「好評につき、プログラムは売り切れました」とのこと。帰りに、もう一度、聞いたらば「丁度、今、入荷しました」ということで手に入りました。??
(原題)THE FORBIDDEN KINGDOM/中国語題:功夫之王 2008/アメリカ/ジェネオン エンタテインメント、松竹、メ〜テレ提供/松竹配給 監督:ロブ・ミンコフ 脚本:ジョン・フスコ 出演:ジャッキー・チェン、ジェット・リー、マイケル・アンガラーノ、リュウ・イーフェイ、リー・ビンビン、コリン・チョウ 2008/07/26公開 1時間45分
■『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』
7月31日は赤坂見附で用事を済ませた後、銀座に回り、開店5分前の11時25分に四丁目の鰻屋「竹葉亭」へ行ってみました。ら、なんと二十数人の行列。過去にこんなことはなかったのに・・・。それでも何とか席に着き、うな丼を食べ、予定通り、銀座シネパトス1(地下鉄日比谷線が通ると座席が振動する地下劇場)で、12:30からの『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』を観ることができました。もう一時間待てば、地下通路向いの銀座シネパトス2では、13:30からの『ST3(スターシップ・トゥルーパーズ3)』が始まるのですが、待つのも大変ですし、予告編を何度も観ている中に、『ST3』は、余り夏向きではないような感じがしてきたので敬遠しました。
物語: 洞爺湖では、いましもG8サミットが始まろうとしており、8カ国の首脳が円卓を囲んでいた。日本の首脳は何故か阿部前総理(劇中では伊部総理)。このサミットの取材に来ていた、東京スポーツの男女二人の記者は、取材の合間に洞爺湖周辺を歩いていたが道に迷う。聞こえてくるお囃子に惹かれてたどり着いた先は小さな神社。祀られているのは“タケ魔神”。 丁度その時、火の玉が札幌市街に落下、その中からギララが出現。札幌市内を破壊し尽くしたギララは、洞爺湖へ向う。各国首脳の危険を心配した日本は、首脳たちを安全に本国へ送還しようと申し出るが、首脳たちは我々が力を合わせて怪獣を倒そうと決議、サミットは急遽「G8宇宙怪獣対策作戦本部」に変更され、各国順番にご自慢の兵器でギララに立ち向かうことになる。先ずは日本からスタートするが・・・。 果たして、各国の秘密兵器で、ギララをやっつけることができるのだろうか。 そして、最後にギララを倒すのは・・・。
期待通りのローテク怪獣映画。阿部前総理、小泉元総理、それに、金正日のそっくりさんなども出演、暑気払いには最適、楽しめました。 首脳たちが、危機に直面して本音で各国の悪口を言い合ったり、また、秘密兵器といって各国が持ち出してきたものは、超ハイテクか、国際条約で禁止されている兵器ばかり。 最後、小泉総理が現われ、「君たちでは駄目だ、核爆弾を使おう」と言い出したため各国首脳は驚くが、実はこの小泉首相は・・・・。 “タケ魔神”になったビートたけしも大奮戦、加えて、先頃(2008年6月10日)亡くなった水野晴郎も特別出演しています。 監督の河崎実は、映画『日本以外全部沈没』(2006年9月)の監督、面白くないわけがありません。
蛇足:東宝には「ゴジラ」、大映には「ガメラ」、日活には「ガッパ」と各映画会社にはそれぞれ独自の怪獣がおり、「ギララ」は松竹の怪獣ですが、映画は『宇宙大怪獣ギララ』(1967)の一本だけ。そのギララが、41年振りに復活したわけです。 尚、タイトルの『危機一発』は辞書に出ていませんが、『危機一髪』の誤りではありません。
2008/日本/ 製作:鈴木忍、河崎実、叶井俊太郎、ギララ2008製作委員会 配給・宣伝:株式会社トルネード・フィルム 監督:河崎実 脚本:右田昌万、河崎実 出演:加藤夏希、加藤和樹、福本ヒデ、松下アキラ、渡部又兵衛、ビートたけし、水野晴郎 2008/07/26公開 1時間38分
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