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AKIのキネマまんぽ


SF映画は少ないですがマクラは長いです(笑) 
『動物農場』
『ザ・ムーン』

AKI

 遂に年を越してしまいましたが、ジャック・マクデヴィットのネビュラ賞受賞作品『探索者』(早川書房 海外SFノヴェルズ)を読み終えました。
 これは、ハードカバーの重たい本なので、ベッドの中で読むと腕が草臥れます。
 三分の二ぐらいのところから、whodunit的になり、更に、アクションまで加わって面白く読み終えることができました。
 前にも書きましたが、『プロバビリティ・ムーン』が三部作なので取りあえず読むのを敬遠、『時間封鎖』に取りかかったものの、これも三部作の一作目だと分かりガックリしていたところ、この『探索者』も、「訳者あとがき」によると、二人の主人公、アレックス&チェイス・シリーズの三作目で、一作目は『ハリダンの紋章』(ハヤカワ文庫)、二作目は未訳で『Polaris』だということが分りました。
 三作目が、ずば抜けて良かったので、“ネビュラ賞受賞”、ハードカバーで出版されたのでしょうか?
 この本と並行して、ジョージ・オーウェルの『動物農場』も読んでいました。

 1月29日に近くの大型書店で、「別冊宝島 SF・ファンタジー映画の世紀」というMOOK(?)を発見しました。
 殆ど毎日、本屋へ行っていますので、多分、前日の発売だったと思います。
 本の内容もさることながら、付録にDVDが2枚付いています。
 一枚は、『ジェニーの肖像』、もう一枚が何と『地球の静止する日』です。
 両方とも、DVDは持っているのですが、矢張り、購入してしまいました。
 本の値段は、税込み1575円です。
 ご関心がありましたらば、本屋で覗いてみてください。
 別に、宝島社から頼まれたわけではありませんが、ご紹介しておきます。(笑)

 5日に、渋谷のシネマ・アンジェリカへ『動物農場』を観に行きましたが、あそこの映画館は、劇場も切符売り場も地下。
 一間ぐらいの階段の入り口に、「11時45分より入場」との立て札が置いてありましたので、十数人のお客は、階段の上でアーチ状に入り口を囲んで立っていました。
 階段は、途中で直角に曲がっているので、下までは見えません。
 やがて、11時45分近くなって、下から、「シッ、シッ」という従業員の声が聞こえてきました。
 入場待ちのお客は何事が起こったのかと下をのぞき込んでいたらば、子猫が追われて階段を上がってきました。が、階段の上は人間がズラリ。
 恐れをなして、猫はまた下へ降りていき、従業員と追っかけっこ。
 そこで、我々も、二手に分かれて通路を作ってやったのですが、何と飛び出してきたのは、もう一匹の別の子猫。
 続いて、先の子猫も出てきました。表に出てきた子猫を見ていましたらば、我々の後ろには、ちゃんと母猫が待っていて、連れて逃げていきました。
 どこの世界でも、母親は大変ですね。

 最近、観客のマナーが低下しているせいか、映画上映前に「喫煙、お喋り、盗み撮り、携帯電話の使用」などの禁止のテロップがよく出ますが、先日、ある映画館で、これに加えて「前の座席の背に足をのせないで下さい」というのがあり驚きました。そんな人もいるのですね。(笑)

 今月も見るべき映画が少なかったのでマクラが長くなってしまいました(笑)
 今回ご紹介するのは『動物農場』、『ザ・ムーン』の二作品ですが、残念ながら、いずれも、SFとは言えない内容です。

■『動物農場』

 新年最初の映画としては余り相応しくありませんが、ジョージ・オーウェル原作の『動物農場』を、正月連休明けの5日、朝一番(12:00)で、渋谷のちょっと繁華街から外れたシネマ・アンジェリカまで観に行ってきました。この映画館は、嘗て、2006年8月にアニメ『王と鳥』を観に行ったところ。いつも、マニアックな問題作品を上映しています。例によって、入場者は20名ほど。何となく、“こんなマイナーな映画が分かる仲間たち”といった、連帯感が湧きました!(笑)

物語:
 「荘園農場」の主、ジョーンズに、いつも虐げられている家畜たちが、彼が夜更け酩酊して帰ってきた晩、豚の指導者によって結束、革命を起こす。家畜たちは、ジョーンズを追い出し、自分たちの「動物農場」を建設、生き甲斐を持って農場を運営していく。が、やがて、豚共が権力を握り、徐々にジョーンズ的になってゆく、という寓話。

 『1984』でご存知のジョージ・オーウェル原作『動物農場』の映画化。
 55年ほど前の映画ということなので、かなり草臥れた映像を予想していましたが、画面サイズこそ3:4の小さい画面でしたが、テクニカラーも美しく、最初からのめり込んで観ることができました。
 ところどころ、ディズニーを彷彿させるところもありますが、全体として映像も、音楽も美しく、よく纏まっていました(アニメは、ジョン・ハラスとジョイ・バチュラー)。
 これはある国の、ある革命を寓話化したものですが、必ずしも、どこの国ということではなく、いろいろの国が、過去、同じようなことを何度も繰り返してきています。
 殆どが、小説に添って映画化されていますが、最後の1シーンだけが、小説より一歩踏み込んでいました。
 映画の方が、誰にでも分かり易い結末だとは思いますが、余韻が無く、私には小説の方が良いように思われます。
 ここで、ジョージ・オーウェル論を打つつもりは全くありませんが、彼の『1984』、『動物農場』、そしてその他の小説も、ちょっと救いのないテーマが多く、私のような“ハッピー・エンド”大好き人間にはいささか重たすぎます。
 小説『動物農場』(角川文庫)の解説によると、この彼の“ペシミスト”的思考は、彼の生い立ちにかなり関係があるとか。

蛇足: 小説『動物農場』は1944年、ジョージ・オーウェルが41歳の時の作品。しかしその内容が、過激なソビエト批判に繋がったため、出版は難航した模様。

(原題)ANIMAL FARM
1954/イギリス/ハラス&バチュラー・カートゥーン・フィルムズ
配給:三鷹の森ジブリ美術館
監督:ジョン・ハラス、ジョイ・バチュラー
脚本:ジョン・ハラス、ジョイ・バチュラー、フィリップ・スタップ、ロサー・ウォルフ
原作:ジョージ・オーウェル
2008/12/20公開 1時間14分

■『ザ・ムーン』

 1月20日は大寒。前日と打って変わって、寒い曇り空でしたが、予定通り、「TOHOシネマズ六本木ヒルズ」まで、12:20分からの『ザ・ムーン』を観に行ってきました。マイナーな映画のせいか、上映館が限られていたので、六本木のシネコンまで出掛けた次第。スクリーン3:シート数148席に、お客は50人ばかり。平日なのに予想以上の入りでした。

映画:
 1961年4月12日、ソ連はガガーリンを乗せた有人軌道飛行に成功。このニュースにショックを受けたアメリカは、同年5月5日、シェパードを乗せた有人弾道飛行を成功させた。
 が、遅れを取ったアメリカは、1961年5月25日、「わが国は、60年代が終わるまでに、人類を月へ送り、無事に地球へ帰還させる」というケネディ大統領の大目標を国民に発表する。
 この映画は、その大任を委ねられた人たちが、努力を重ね、米国の威信のため、アポロ11号をいかにして月に送り込んだかの壮大なドキュメンタリー・ストーリーである。

 映画は、実際に飛んだ宇宙飛行士の回顧談と共に展開されて行きます。画面には宇宙飛行士の名前と経歴がテロップで入りますが、映画を観る前に、これらを覚えておけば、もっとスムーズに物語の中に入っていけたと思います。
 どの飛行士も、私と同世代の1930年代初頭に生まれた人たちで、当時、飛行機の『ライト・スタッフ』を目指していた若者が、ある日突然、宇宙飛行士に抜擢されたわけです。
 従って、殆どの人が現在80歳前後。今、記録映画を撮っておかなければ・・・、といった感じがしました。(笑)
 この映画を観ていると、月面着陸には成功したものの、かなり無理があり、危険だったことが分ります。
 一番最後に、「月面活動は嘘だ」という一部世論に対して、宇宙飛行士が、ひとりずつコメントを述べるシーンがあり、これがなかなかユーモアに富んでいました。
 決して面白いという映画ではありませんが、月面に着陸する瞬間の映像は手に汗を握りますし、ロケットの打ち上げシーンも迫力がありました。
 余談ですが、1969年7月、アポロ11号の成功直後アメリカに出張した際、AA(アメリカン・エアーラインズ)に乗ると、この交信記録を録音したレコード盤が貰えるというので、わざわざこれに乗ったことがあります!

 この映画は、「2007年第30回サンダンス映画祭ワールド・フィルム部門 観客賞」の他、「2008年第22回アーサー・C・クラーク賞 最優秀映画賞受賞」などなど多くの賞を受賞しています。

(原題)IN THE SHADOW OF THE MOON
2007/イギリス/DOXプロダクションズ製作/パッション・ピクチャーズ共同製作
提供:ロン・ハワード
監督:デイヴィッド・シントン
プロデューサー:ダンカン・コップ
登場する宇宙飛行士たち:
 バズ・オルドリン大佐、博士、アメリカ空軍(引退)アポロ11号着陸船パイロット
 アラン・ビーン船長、アメリカ海軍(引退)    アポロ12号着陸船パイロット
 ジーン・サーナン船長、アメリカ海軍(引退)   アポロ17号船長 アポロ10号着陸船パイロット     
 マイク・コリンズ准将、アメリカ空軍(引退)   アポロ11号司令船パイロット
 チャーリー・デューク准将、アメリカ空軍(引退) アポロ16号着陸船パイロット
 ジム・ラヴェル船長、アメリカ海軍(引退)    アポロ13号船長 アポロ8号司令船パイロット     
 エドガー・ミッチェル船長、博士、アメリカ海軍(引退)アポロ14号着陸船パイロット
 ハリソン・シュミット博士            アポロ17号着陸船パイロット
 デイヴ・スコット大佐、アメリカ空軍(引退)   アポロ15号船長 アポロ9号司令船パイロット     
 ジョン・ヤング船長、アメリカ海軍(引退)    アポロ16号船長 アポロ10号司令船パイロット     
2009/01/16公開 1時間40分


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