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AKIのキネマまんぽ

時代は3D。でも、入りは20人(笑)

『PUSH 光と闇の能力者』
『Disney's クリスマス・キャロル(3D)』
『2012』

AKI

 11月14日に、渋谷の東京電力館まで科学ゼミナール『脳のデザイン 〜脳の地図を作る〜』(京都大学大学院理学研究科准教授 篠本 滋)を聴きに行ってきましたので、その概要をお伝えします。

 紀元前400年頃、プラトンは人間の精神活動は脳であると考えたが、その弟子、アリストテレスは心臓であると考えた。その後、長い間、アリストテレスの考え方は絶対との思想が続いたが、17世紀になってデカルトは、随意運動においては、脳の松果体が神との交信を行うものと考えた。
 更に、19世紀になり、ドイツ人医師、ガルが、脳は様々な機能の集まりであることを唱え、一時期、頭蓋骨の形状により、その人の性格を判断する骨相学が蔓延した。
 また、言語障害などで死んだ人間の脳を調べている中に、障害と脳の部位との関連が明白になり、続いて、脳の染色技術が進むに及んで、ドイツの神経学者ブロードマンは、脳は52の分野に分類されることを発表した。
 それから、100年経ったが、現在でもこの理論は正しく、殊に最近は、生きている脳をfMRIなどでテストできるようになってきたため、脳科学は爆発的な進歩を遂げた。
 脳の記憶作用については、海馬が重要な役割を持っているようであるが、現在は未だよく分っていない。
 つまり、人間の脳は、コンピューターのように、ひとつの中央演算装置を応用ソフトによって多様に使い分けているのではなく、各機能ごとに異なる専用マシンが配置されているのである。
 また、この専用マシン間のコミュニケーションも、これからの面白い研究課題である。

 11月10日、港北ニュータウンの大型書店(在庫:40万冊!)、河出書房新社・奇想コレクションの棚の前に立った途端、コニー・ウィリスの『最後のウィネベーゴ』(380ページ:1900円)が見付かってしまい、躊躇なく、ごく自然に購入、読了しました。
 内容は、『女王様でも』、『タイムアウト』、『スパイス・ポグロム』、そして表題の『最後のウィネベーゴ』の中編が四つ。
 『最後のウィネベーゴ』を除いて、後は彼女特有のコミカルSF。

・ 『女王様でも』: 女性作家でなければ書けないお話。
・ 『タイムアウト』: ちょっと不思議な、タイムトラベル。小説中に、私がオリジナルだと思ってときどき作っているカクテル(赤ワイン+ビール)が出て来、作中の人物は、これを“クロックストッパー”と呼んでいます。が、webで調べてみても分らず、どうやらコニー・ウィリスが勝手に自分で付けた名前のような気がします。
・ 『スパイス・ポグロム』: 変な異星人とのファースト・コンタクト。舞台はラグランジュ点に浮かぶ日本の宇宙基地、“ソニー”。異星人との通訳に当たるのは日本のチーム。落語を聞いているようで楽しめました。
 もしかすると、これを書くために彼女は、日本に来たことがことがあるのではないか、と思わせる内容です。
・ 『最後のウィネベーゴ』: ウィネベーゴとは、犬の名前かと思ったらば・・・。彼女の『白亜紀後期にて』を思い起こさせるような絶滅物語。
 『犬は勘定に入れません』では、猫が絶滅しますが・・・。

 次の、コニー・ウィリスの期待できそうな作品は、ヒューゴー賞受賞の『All Seated on the Ground(もろびと大地にすわりて)(2007)』でしょうか。
 これも、変な異星人とのファースト・コンタクトの物語です。

 今月紹介する映画は以下の3本です。12月は、『宇宙戦艦ヤマト』と『アバター』を期待しています。
『PUSH 光と闇の能力者』『Disney's クリスマス・キャロル(3D)』『2012』

■『PUSH 光と闇の能力者』

 11月9日は、久し振りに「丸の内ピカデリー3」まで、11:20分からの『PUSH 光と闇の能力者』を観に出かけました。上映3日目なのに、午前1回、夕方1回の、日に2回興行。座席数、540にお客は30人程度。かなりマイナーな映画のようです。

物語:
 第2次世界大戦後期、ナチは超能力者狩りをし、強力兵器に改造しようとと画策していた。この研究・実験の流れを汲んだ米国政府の影の組織、ディヴィジョンは現在も存続、超能力を持つニック少年の父親は、その組織に殺された。
 それから10年経った現在。
 成長し、念力(MOVE)が芽生えたニック(クリス・エヴァンス)は、ディヴィジョンの追跡から逃れ、香港に住み着いていたが、そこには、同じ、ディヴィジョンから逃れてきた他の超能力者たちもいた。その中の一人、未来予知能力(WATCH)を持つ少女、キャシー(ダゴタ・ファニング)は、超能力を持つ母親が、ディヴィジョンに捕らわれているので助けて欲しいとニックに頼みに来る。また、ディヴィジョンの実験病棟から脱走した、マインドコントロール(PUSH)の能力を持つキラ(カミーラ・ベル)も香港にいて、彼らは、他の超能力者と組んで、ディヴィジョンとの戦いが繰り広げられる。
 最後に笑うのはどちらか。

 siteで予告編を観ていても、何となく女性版『ウルヴァリン』のような気がしていましたが、矢張り、その点は否めません。
 もともと、マイナーな映画だとは思っていましたが、超能力者の一人、キャシー役がダゴタ・ファニングであったので、何となく観に行く気になった次第。
 彼女を観るのは、トム・クルーズと共演した『宇宙戦争(2005)』以来。その後、幾つかの映画では、ちょっと大人びた役をやっていましたが、今回は、再び13歳のややひねくれた少女役(彼女は1994年生まれとか)。
 この映画には、余りにも多種の超能力者が現われ、やや消化不良気味でした。
 因みに上げてみると、上記の他、BLEED:音声による物質破壊、SHIFT:物体を別のものに作り替える、SNIFF:嗅覚でそのものの過去を特定、STITCH:触れることで傷を治す、SHADOW:超能力者から物体をシールドする、WIPE:人の記憶を特定の期間消去する、などなど、その場その場で、都合のいい超能力者が幾つも現われます。

(原題)PUSH 
2009/アメリカ/プレシディオ配給
監督:ポール・マクギガン
脚本:デヴィッド・ボーラ
出演:クリス・エヴァンス、ダゴタ・ファニング、カミーラ・ベル、ジャイモン・フンスー、ミンナ・ウェン
2009/11/07公開 1時間51分

◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。

『ラブリーボーン』(米)2010年 1月29日
  14歳で殺害された少女が、天国から地上に残された家族や友人たちを見守り続け、この世と天国をさまよう姿を描いたスピリチュアル・ファンタジー。
 アリス・シーボルドのベストセラー小説の映画化。
 製作総指揮は、スティーブン・スピルバーグ。

◇ 今回初めて手に入れたチラシ。

『スパイアニマル Gフォース』(米)2010年 3月20日
  特殊訓練されたモルモットたちが専用のスパイグッズを駆使しながら、米国政府の最高機密ミッションに挑む。ディズニーの実写と3DCGアニメ。

■『Disney's クリスマス・キャロル(3D)』

 11月20日は、12:00からの『Disney's クリスマス・キャロル(3D)』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。
 劇場はスクリーン2、座席数:348、入りは20人程度。予想より多いなー(?)と思いましたらば、毎月20日は「誰でも、映画が1000円!」の日でした。
 この映画館はシネコンですが、特殊なスクリーンを必要とする“real 3D”方式を採用しているため、3Dを上映する場合には、人数に合わせて劇場の大きさを変更することができないようです。

物語:
 今日はクリスマスだというのに、守銭奴のスクルージは何の施しもせず、みんなと祝うことも拒絶していた。その晩、家に帰り、一人淋しく食事をし、ベッドへ入ると、彼の過去、現在、未来を見せようという3人のクリスマスの精霊が順に現われ、スクルージを彼が未だ純粋だった頃の少年、青年の時代、そして現在、最後は彼の死後の世界へと連れて行く。
 翌朝目覚めたスクルージはすっかり改心し、人を愛し、慈善を施し、クリスマスを祝う心優しい老人になっていた。

 何となく、ディケンズの『クリスマス・キャロル』は知っていましたが、この映画を観るに当り、予備知識として、村岡花子さん訳の『クリスマス・カロル』(昭和27年11月5日 発行、平成21年7月25日 105刷)を買ってきて、読んでみました。
 (この映画のせいか、現在『クリスマス・キャロル』の翻訳本は、数種類ほど店頭に並んでいますが、資料によると、現在までに翻訳出版された『クリスマス・キャロル』は60を超えるとか)
 3人の精霊が、スクルージに次々と見せる、過去、現在、未来の迫力ある3D映像が、長く過激なので、三分の二ほど観たところで帰りたくなりましたが、我慢して観ていたらば、最後、彼の改心のシーンで救われ、よい気持ちで映画を見終えることができました。
 今まで、何度も『クリスマス・キャロル』は映画化されたようですが、今回はパフォーマンス・キャプチャーが採用されたため、精霊たちがよりリアルに表現された由。
 ジム・キャリー・ファンとして、この映画は字幕版で見たかったのですが、残念ながら、昼間は全部吹替え、字幕は夜にしかやらないようなので、諦めました。
 この映画の中で、芸達者なジム・キャリーは、現在のスクルージ役以外に、少年時代、17歳の、そして、27歳の時の4つの年齢のスクルージを演ずるほか、監督、ロバート・ゼメキスのたっての要望で、過去、現在、未来をスクルージに見せる3人のクリスマスの精霊役もパフォーマンス・キャプチャーを使ってこなしています。つまり、監督は、精霊イコール、スクルージ自身の潜在意識であることを表現したかったようです。

(原題)DISNEY'S A CHRISTMAS CAROL
2009/アメリカ/ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ提供
製作・監督・脚本:ロバート・ゼメキス
原作:チャールズ・ディケンズ
出演:ジム・キャリー(7役)、ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、ボブ・ホスキンス
2009/11/14公開 1時間36分

◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。

『アバター』の3D版予告編2009年12月18日

◇ 今回、初めて映画館で入手したチラシ。

『サロゲート』(米) 2010年 1月22日
   身代わりロボット“サロゲート”が人間の代行をする理想的な未来社会。
 そこで殺人が・・・!ブルース・ウィリス主演
『Dr.パルナサスの鏡』(米) 2010年 1月
   不老不死を得た、人間の想像力を操る博士が・・・。

蛇足:
 訳者の村岡花子さん(1893−1968)は、私が子どもの頃、ラジオで「こどもニュース」のオバサンをしており、お馴染みでした。
 アルコールを嗜む私が、村岡花子さんの翻訳の中で、ひとつ気になったのは、最後、スクルージが改心した後、みんなと飲んでクリスマスを祝うお酒、「薬味入り葡萄酒」。
 いろいろ探して、やっと手に入れた原書(イラスト入りハード・カバー)には、“・・・,over a Christmas bowl of smoking bishop,・・・”と書かれており、注として“A smoking bishop is a Christmas punch made up warmed red wine, oranges, sugar, and spices.”となっていました。この“spices”は、丁子などのようです。

 この映画を観て帰宅したらば、“unicef”から「寄付のお願い」の手紙が届いていました。余りにもタイミングがよいので、久し振りに、今回は一口乗ることにしました。(笑)

■『2012』

 11月26日は10:40からの『2012』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。終了は、13:35。この時間帯の映画を観ると、昼食の時間が狂います(拘束、2時間55分は長すぎます)。劇場は、このシネコンで一番大きいスクリーン1(座席数:538)。しかし、入りは20人足らず。

物語:
 物語は2009年よりスタート。惑星直列を機に太陽の活動が上昇し、地球内部が高温化しているのをインドの地質学者が発見する。この報告は、アメリカ大統領にまで届き、地球に異変が起きていることを知る。大統領は、この件を世界各国の首脳に伝えるが、各国とも国民には知らせない。
 これらの国の首脳は、極秘裏に資金を提供、共同でチベット奥地のダムに避難用の特殊大型船の建造を開始する。
 2010年、2011年とアメリカ各地で地割れや、大型地震などの異常現象が発生するに及んで、大統領は国民に異常事態を宣言する。
 各国の、VIPや金持ちは、こぞってチベットへ向うが、その船に乗れるのは僅か。
 この事態を、早めに察知したジャクソンは、妻と子ども二人を連れ、チャータした双発機でロサンゼルスを脱出するが、それと同時にロサンゼルスは海中に没する。
 艱難辛苦の果て、一家はチベットに着くが、高額で購入したグリーン切符がなければ船に乗せて貰えないことを知る。
 果たして、人類の未来は。また、ジャクソン一家はどうなるのか?

 流石、『インデペンデンス・デイ』、『デイ・アフター・トゥモロー』などを手掛けたローランド・エメリッヒ監督の作品、はらはらさせるところの壺はしっかり押さえています。
 取り敢えず、科学的な現象をひとつずつ捉えて、地球の異常現象を理由づけている点は、好感が持てました。
 が、2時間38分という長い映画。最後のところはもう少し端折ってもよかったのではないでしょうか。『ポセイドン・アドベンチャー(1972)』もどきのシーンが、二カ所もあります。
ロサンゼルスが海に飲み込まれていくシーンなどは、CGと分っていてもかなり迫力があり楽しめましたが、その殆どが、既に映画館で観た予告編のシーンだったのが残念でした。また、日本という名前も何回か出てきますが、日本はほんの僅かの間に沈没してしまったようです。
避難してから何日(?)か経って異変が収まり、船に載った人たちが甲板の扉を開けて海面を眺めるシーンは、お馴染みの“ノアの方舟”のシーンでした。
 空に虹が掛っていなかったのが、せめてもの救いです。(笑)
 それにしても、あれだけの大異変(アメリカは南極になる!)なのに、そんなに簡単に治まってしまうものなのでしょうか?
 父親に反目していた息子(名前は何故か“ノア”)が、父親と協力、共に難関を切り抜けることにより和解するというシチュエーションは、『ボルケーノ(1997)』以来、気にしている、所謂、父子物語。
 ディザスター・ムービーと父子物語は相性が良いようです。

(原題)2012
2009/アメリカ/コロンビア映画、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給
監督/脚本/製作総指揮:ローランド・エメリッヒ
製作/脚本/音楽:ハラルド・クローサー
出演:ジョン・キューザック、キウェテル・イジョフォー、アマンダ・ピート、オリバー・プラット
2009/11/20公開 2時間38分


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