Newsweek の『映画ザ・ベスト300』については以前も触れましたが、ざっと拾い読みの後、大分時間が掛りましたが、初めから通してジックリ全部読み直してみました。映画評論の他、ハリウッドの楽屋話、評論の難しさなど、いろいろな記事もあり、毎日、映画3本分ずつ読んでも100日掛かるといったことになります。 最近になって、このNewsweekに刺激を受けてか、キネマ旬報からはキネ旬ムックとして、『オールタイム・ベスト映画遺産200』と銘打って『外国映画篇』、『日本映画篇』の2冊が、また、暮らしの手帖からは『シネマの手帖 250本の名作ガイド』が発行されました。 この2社のものも本屋で立ち読みしてみましたが、いずれも写真は白黒(写真が、ないものもあり)、評論家もまちまち、しかも、ボリュームも多く、矢張り、同じ評論家、デービッド・アンセンが通しで簡潔な評論を、カラーの写真入りで載せているNewsweek の『映画ザ・ベスト 300』の方が好感が持てました。 特に、デービッド・アンセンが、『千と千尋の神隠し』や、『パプリカ』などを、高く評価していると、何となく、日本人としてホッとします。 一番最後に、デービッド・アンセンは「よい映画とはこうあるべきだという固定観念で、作品を評価するべきでもない。肝心なのは、表現したかったことが表現されているか、表現したかったものはそもそも価値があるのかという点だ。映画を見るとき、私は2つのことを同時に行う。一方では普通の映画ファンとして、泣いたり驚いたりする。こうした自然な反応を失ったら仕事を変えたほうがいい。だがもう一方で、映画がそうした感情を引き起こす過程を観察する。うまく感情を刺激しているか、陳腐な手法を使っていないか。」と書いています。
今月紹介するのは、以下の三作品。SF映画と呼べるのは『サロゲート』だけです。 『バッタ君 町に行く』『今度は愛妻家』『サロゲート』
■『バッタ君 町に行く』
年末から、年始に掛けて上映される、所謂“お正月映画”は、みんな年末に観てしまったので、年明けには1月末まで観るべき映画もなく、仕方なくwebで渋谷のマイナーな映画館の上映作品を調べてみました。 その結果、昨年12月19日から、渋谷シネマ・アンジェリカでは『バッタ君 町に行く』が上映されており、また、2月6日から3月12日まで、渋谷シアターイメージフォーラムでは“タルコフスキー映画祭”が持たれ、『ソラリス』や、『ストーカー』などが上映されることが分かりました。 という次第で、1月13日は寒風の中、渋谷シネマ・アンジェリカまで、12時からのアニメ、『バッタ君 町に行く』を観に行ってきました。(SFではありません) 座席数:100ばかりのところに、観客は12人。皆、若いマニアっぽい人ばかり。
物語: そこはニューヨーク、ブロードウェイの小さな空き地。虫たちは、その草むらに平和に暮らしていた。が、ある日、その空き地の柵が壊れたため、人が近道して通るようになり、また、子どもたちの遊び場にもなってしまい、虫たちの平和が乱される。 そんなとき、バッタのホピティが旅からその空き地にある蜂蜜屋の娘、ハニーのところへ帰ってくる。 虫たちは、ホピティをリーダーに、安住の地を求めて転々とするが見付からず、最後の土地には高層ビルが建ち始める。 一方、ホピティの恋人、ハニーに横恋慕する、かぶと虫の、ビートルは、手下の蠅と蚊を使って、この転々とする虫たちのリーダー、ホピティの 邪魔をして回る。 果たして、虫たちは安住の地を見付けることができるのであろうか、また、ホピティとハニーは無事結ばれるのであろうか。
この渋谷シネマ・アンジェリカでは、この手のマニア向けアニメを好んで上映するようで、去年のお正月にはジョージ・オーウェルの『動物農場』を、また、2006年にはお正月ではありませんでしたが『王と鳥』を観に行っています。 この『バッタ君 町に行く』が、フライシャー兄弟によって作られたのは1941年、あの「大東亜戦争」が勃発した年でした! 宮崎駿をして、「アニメーターをやるやつは見ておくべき」と言わしめたように、この映画の中には、その後のアニメに出てくるミュージカル、ギャグなどの要素、手法が全部盛り込まれており、勿論、画面は小さく、音も貧弱ですが、内容は、現在観ても全く見劣りしません。 ジブリの資料によると、フライシャー兄弟は1921年に“アウト・オブ・ジ・インクウェル・フィルム社(後の、フライシャー・スタジオ)”を設立、その後、1930年代にはディズニーと対抗して、アニメ作りに励んだとのこと(因みに、ディズニーのミッキーの原点である『蒸気船ウィリー』の公開は、1928年)。 私が小さい頃、新宿のニュース劇場でお馴染みだった『ベティ・ブープ』、『ポパイ』などが、彼らの作品であったことを今回知り、改めて驚きました。 (『スーパーマン』のアニメ映画も1941年以降、フライシャー兄弟によって製作されたようですが、戦争のためか、劇場では観た記憶はありません)
(原題)Mr. BUG GOES TO TOWN 1941/アメリカ/フライシャー・スタジオ製作 提供:スタジオジブリ他 製作:マックス・フライシャー 監督:デイブ・フライシャー 原案:デイブ・フライシャー、ダン・ゴードン、テッド・ピアース、イシドア・スパーバー 脚本:ダン・ゴードン、テッド・ピアース、イシドア・スパーバー他 2009/12/19公開 1時間18分
■『今度は愛妻家』
“今日は愛妻家”ということで、久し振りに女房と、1月19日、12:40からの『今度は愛妻家』を見に「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。 スクリーンは4、座席数:196に40人ばかりで、思った以上に愛妻家がいました。
物語: 著名な写真家、北見俊介(豊川悦司)と、妻、さくら(薬師丸ひろ子)は結婚歴10年の夫婦。倦怠期に入り、甘ったれな俊介は、さくらをないがしろにし、本業も怠け、仕舞いには「一人の方が気兼ねなく生きられていい」といいだす始末。そして、さくらに「もう一人で暮らせるね?」といわれ家出されてしまう。 いつもは、家出しても直ぐに帰ってくるのに、今度は「これが最後」といわれ、本当に帰って来ないので、俊介は、やや反省するが・・・。
物語は、ここまでで約半分程度(これから先は、重要なネタバレになるので、残念ながら書けません)。 最初は、ただ、駄目亭主の反省物語だと思っていましたが、これから先が急転直下、意外な方向に物語は展開していきます。 やや大げさですが、観ていて、ひょっとすると『惑星ソラリス(1972)』か、『シックス・センス(1999)』なのではないかと思ってしまいましたが、この映画はもっと軽く、しかも最後は泣かせるラブファンタジーに仕上がっています。 周りを固める、共演俳優陣もしっかりしていて、テンポよく物語は進行、好感が持てました。 私は、“隠れ薬師丸ファン”なので、彼女を観るだけでもと思って出掛けたのですが、結構楽しめ、女房が「こういったものもSFなの」といいだすほど凝った筋書きです。 映画の舞台は雑司ヶ谷、情緒ある鬼子母神様が何度か出てきます。 2002年に初演された舞台劇の映画化とのこと。
(英語のタイトル)A Good Hasband 2010/日本/配給:東映/「今度は愛妻家」製作委員会 監督:行定勲 製作:黒澤満、木下直哉 原作:中谷まゆみ 脚本:伊藤ちひろ 出演:豊川悦司、薬師丸ひろ子、水川あさみ、濱田岳、石橋蓮司 2010/01/16公開 2時間11分
◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。
SFではありませんが、『バレンタインデー』(2月12日公開:ジェシカ・アルバ、アン・ハサウェイ、シャリー・マックレーン、ジュリア・ロバーツなど)と、『噂のモーガン夫妻』(3月公開:ヒュー・グラント、サラ・ジェシカ・パーカーなど)が、ラブコメで面白そうです。
■『サロゲート』
1月26日は13:10からの『サロゲート』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。1時間半ほど前にチケット売り場に着きましたが、私の「お気に入り」の席は既になし。2nd.bestも駄目。結局、3rd.bestの席を取りました。昼食後、本屋で時間を潰してから劇場に入りましたが、何故か、私が取れなかった席に座っている人を、睨んでしまいました。(笑) 劇場はスクリーン11,座席数:116、入場は二十数名。
物語: 14年前、脳波でコントロールできるロボットが開発され、やがてそれらは軍事目的に利用された。その後、量産化が続き、一般人も購入可能となり、現在は98%の人々が、本人は家庭で脳波検出器を付けて横たわり、外にいる身代わりロボット=サロゲートをオペレートするようになっていた。このため、事故や、疫病、犯罪による人間の死亡率は激減し、理想的な社会が作られつつあった。 が、一方、アンチ・サロゲート派もいて、リーダーを中心に独立区を作り生活していた。 そんなある日、サロゲート開発者の御曹司のサロゲートが、何者かに不明な武器によって破壊され、それを自宅でオペレートしていた本人も、同時に脳が破壊され、殺されるという事件が発生する。 事件解明に乗り出すFBIベテラン捜査官、トム・グリアー(ブルース・ウィリス)のサロゲート。しかし、捜査の行き過ぎで、彼のサロゲートは破壊され、彼自身は停職処分にされるが、トムは単身、生身で問題解決に立ち向かう。 果たしてこの殺害者の黒幕は。そして、このサロゲートとオペレーターを破壊する武器の開発者は誰か。
『アバター』ではないですが、似て非なるサロゲート(いずれも若い、美男・美女)が何体も登場、更に、他人のサロゲートを乗っ取る者までいて、途中、ちょっとまごつきますが、暫く観ていると慣れてきます。 この映画は、「携帯、E−メール、そして・・・。だんだん、生身の人間同士のコンタクトが減っていく現代社会」に対する警鐘でもあるようです。 最後、傷つき、年老いた生身のトムが、やつれた生身の妻を抱きしめるシーンは泣かされます。 ブルース・ウィリスも、だんだん老境(?:1955年生まれ)に近づき、演技に深みが加わってきました。 久し振りのSF映画。上映時間も丁度良い1時間半。物語もかなり捻りがきいていて、期待値以上に楽しめました。サロゲート同士のアクションも見物です。
(原題)SURROGATES 2009/アメリカ/タッチストーン・ピクチャーズ提供 監督:ジョナサン・モストウ 脚本:ジョン・ブランカトー、マイケル・フェリス 原作:ロバート・ヴェンディティ、ブレット・ウェルデル 出演:ブルース・ウィリス、ラダ・ミッチェル、ロザムンド・パイク 字幕翻訳:戸田奈津子 2010/01/22公開 1時間29分
◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。
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『シャーロック ホームズ』(米) |
2010年 3月12日 |
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カンフーもでき、やたらとピストルをぶっ放す過激なホームズとワトソン君。 SFではありませんが、面白そうです。 |
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『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』 |
2010年 5月28日 |
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主人公が時間をさかのぼり、ペルシャのお姫様と大冒険。 人気ゲームの映画化、実写版。これもCG満載、草臥れそうなアクション映画。 |
◇ 今回、初めて映画館で入手したチラシ。
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『第9地区』(米) |
2010年 GW |
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南アに不時着した宇宙人は、“ディストリクト9”と呼ばれる特別居住区に収容されるが、そこで人類との戦いが始まる。人種差別問題がSF化された? チラシには、いかにも地球人的発想のUFOの写真と、「今年、世界を最も驚かせた映画 全米初登場No.1。本年度アカデミー賞作品賞最有力!」の大きな文字が印刷されています。 |
帰途、同じショッピングセンター内にある大型書店で、アーサー・C・クラーク+フレデリック・ポールの「“巨匠クラーク、最後の長篇”『最終定理』」(早川書房 海外SFノベルズ)を発見、即、購入して来ました。 “フェルマーの最終定理”が絡んでいるようですが、以前、サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』(新潮文庫)も面白く読み終えたので、これも読むのを楽しみにしています。 読みたい本が、大分溜まりました!
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