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AKIのキネマまんぽ

今月もなんとか3本観ることが出来ました

『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 3』
『Dr.パルナサスの鏡』
『コララインとボタンの魔女』

AKI

◎『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』

 読みたい本が沢山あって大分遅くなりましたが、『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』(創元SF文庫:2009年10月16日発行)を、やっと読了しました。
 “タイムトラベルとロマンス”は相性が良いようで、このアンソロジーには、九つの時空を越えて育まれた男女の淡く切ない愛の物語が収録されています。
 いずれも、レトロ・ムードたっぷりな物語です。

「チャリティのことづて」(1967) ウィリアム・M・リー
 ある川の畔に、250年の歳月を隔て住む少年と少女。ある日、原因不明の発熱により、この二人の心が通い合うようになり、少女は少年の心を通して未来を読み、予言を語り始めたため、魔女裁判に掛けられることに。果たして少年は、この少女を救うことができるのか。

「むかしをいまに」(1956) デーモン・ナイト
 ビデオ巻き戻しの世界。それなりに纏まっています。

「台詞指導」(1965) ジャック・フィニイ
 いかにもジャック・フィニイらしい、1926年の良き時代のニューヨークが絡む、ロマンチックな作品。
 原題は「Double Take」。辞書を引くと「(始め気づかないでしばらくしてから)はっと驚く」と出ており、小説の内容からして、原題の方がピッタリ来るように思えます。

「かえりみれば」(1970) ウィルマー・H・シラス
 「今自分がやっていることを分った上で、過去に戻ってもう一度人生をやりなおせたら・・・」の願望が叶い、過去へ戻っては見たものの・・・。

「時のいたみ」(1968) バート・K・ファイラー
 体を鍛え、過去へ戻ったが、何のために戻ったのか分らずに日を過ごしているうちに・・・。

「時が新しかったころ」(1964) ロバート・F・ヤング
 22世紀から時代錯誤遺物(=オーパーツ!?)調査のため白亜紀後期にタイムトラベルしたカーペンターは、そこで、火星から悪人に誘拐されて地球に連れてこられた姉弟二人と遭遇。彼は二人を助け、自分も元の22世紀に戻ることができるのであろうか!? 楽しい、冒険SF。

「時の娘」(1953) チャールズ・L・ハーネス
 私の母は私、そして!? 同じ男性を三度愛した、複雑な、タイムパラドックス小説。

「出会いのとき巡りきて」(1936) C・L・ムーア
 世界を駆けめぐり、冒険に飽きたエリックは、博士の作ったタイムマシンを身に付け、時空の世界へ冒険に出るが、どの時間帯にトラベルしてもスモークブルーの瞳を持つ宿命の美女と巡り会う。因みにこの作家は女性とか。

「インキーに詫びる」(1966) ロバート・M・グリーン・ジュニア
 ニューヨークからオハイオの片田舎に、猛暑の中、昔の恋人を訪ねる男。現実と妄想で現代と過去が絡み合い、やっとの思いで彼女に巡り会ったとき、周りで、少年時代の、青年時代の、そして、老年時代の自分を見ることに・・・。

◎『最終定理』

 『最終定理』(アーサー・C・クラーク+フレデリック・ポール著 早川書房 2010年1月25日初版発行)、帯には「巨匠クラーク、最後の長篇」と書かれています。
 が、何故か、私の本棚には、同じく帯に「クラーク最後の作品」と書かれた『楽園の泉』(アーサー・C・クラーク著 早川書房 昭和55年12月31日初版発行=1980年)が並んでいます。
 『最終定理』の「訳者(小野田和子)あとがき」によると、クラーク自身も「これが最後の小説になる可能性が高いが、前にも同じことをいったな」と語っていた由。
 『最終定理』とは、勿論、フェルマーの最終定理のことで、この証明は1993年、プリンストン大学の数学者、アンドリュー・ワイルズによって最終的に証明されましたが、これは150ページに及ぶ大論文で、フェルマーの生前には無かった諸定理やコンピュータを使っての証明であり、とてもフェルマー自身が本の余白に記入した簡単なメモとはほど遠く、そのため、殆どの学者は、ワイルズのこの証明を納得していないようです。

 時代は近未来(?:ただし、スリランカには未だクラークが有名人として住んでいます)、少年時代からフェルマーの最終定理の証明に関心を寄せていたスリランカの青年、ランジットが、この最終定理を簡潔に証明、一躍、有名人になり、その後、理想の女性と結婚、二児をもうけ、といった十数年(あるいは、数千年)に渡る波瀾万丈の物語です。

 宇宙人や冒険(海賊船も出てくる!)なども盛り込まれた、古き良き時代のSF小説調で、読み終えるのが惜しいようなお話ですが、何故か、フェルマーの定理を含めて、物語中に起こったいろいろなハプニングが、結末に必然的に結びついて来ないのが、ちょっと物足りない感じがします。
 クラークが、“スリランカ”(『スリランカから世界を眺めて』)、“宇宙エレベータ”(『楽園の泉』)、“ソーラーセイル・レース”(『太陽からの風』)の題を出し、ポールが“宇宙人”や“数論”(フェルマーの最終定理や、いろいろの数学ゲーム)をこれに盛り込み、二人で仲良く楽しんで書き上げた“SF三題噺”のようなものです。

 フレデリック・ポールは、若いころ、かなり数学に没頭していたようで、この本の中でもいろいろな数学ゲームが紹介されています。
 その中のひとつに、「二倍と、二分の一の仕方さえ知っていれば、どんな多い桁の掛け算でも、足し算でできる」というものがあります。(紙面の関係で、詳細は省略します)
 丁度タイミングよく、この本と並行して読んでいた『こんなところにも数学が!』(秋山仁著 扶桑社文庫2009年12月30日初版発行)の中にもこの計算方法が「ロシアの農夫の掛け算」として紹介されており、何故そうなるのかの証明もされています。

◎『新しい高温超電導物質 〜鉄ニクタイドの発見と現状〜』

 2月13日、土曜日は、朝から粉雪が降っていましたが、10時頃には雨に変わったので、渋谷の東京電力館まで科学ゼミナール『新しい高温超電導物質 〜鉄ニクタイドの発見と現状〜』(東京工業大学フロンティア研究センター教授 細野秀雄)を聞きに行ってきました。

 鉄ニクタイドの発見者、ご本人からでなくては聞かれないような面白い話が、どんどん出てきました。結晶構造や、グラフなど次々にスクリーンに投射され、とても全てはノートはできませんでしたが、理解できた範囲内でアウトラインを記述しておきます。

講演内容:
 今年は超電導発見100周年。
 現在、銅酸化物系では130Kほどのものが見付かっている。
 しかし、最近、新しい鉄ニクタイド系のものが発見され、これらは55〜57Kぐらいまでいっている。
 ひと頃、BCSの壁ということがいわれ、超電導には限界があるとされていたが、結果的にそれは無かった。(注:1)
 MgB2は、試薬であるが、これは、なんの加工もせず、買ってきたままのものでも超電導になる。
 そんなわけで、30K以下でよければ超電導物質になるものは、ゴマンとある。
 私の本業は「三大建築材料(ガラス、セメント、鉄)」であり、これらの研究過程で新超電導物質を発見した。
 セメントでも、加工の仕方で電気が流れ、超電導物質になる。
 今まで、鉄は電子のスピンが揃ってしまうので超電導物質には最悪な材料だといわれていたが、これも加工次第で超電導物質になる。
 鉄は、普段は四面体の結晶(正方晶)であるが、加圧(20万気圧)すると六方晶になり、磁力を持たなくなり、そのまま超電導物質になる。
 また、鉄は薄膜状にすると、スピンが揃わなくなるので、薄膜(層状)にする実験も進んでいる。
 この薄膜を、水蒸気に触れさせると、より超電導になることも発見された。
 今や、超電導は青銅器時代から、鉄器時代になろうとしている。

 今回の、鉄ニクタイドは、LaFeAsOが母相(ペアレント)になっている。
 そして、この応用として、Feの代わりに遷移金属(約30種)、Asのところは約5種、それに各種希土類を組み合わせると、全部で鉄系の超電導物質の組み合わせは600種類ほどになる。
 最近、中国がこの鉄ニクタイドに目を付け、所謂、人海戦術で順列組み合わせを始め、新しい成果が出ている。
 そんなわけで、現在、超電導物質は中国と日本が鍵を握っているといわれているが、最近はインドの進出がはげしい。

 最近の、超電導物質の進歩は、以前の1年が、ひと月の速さになっている。
 従って、論文もリアルタイムで発表しなければならず、とても専門機関の論文審査を待っていられない状況にあり、現在は、論文ができると直ぐに専門の掲示板“cond-mat”にアップし、そこで取り敢えず、優先権を主張するようになってきた。(注:2)
 が、急ぐ余り、いい加減な内容で、文章(英語)も稚拙であると、周囲から馬鹿にされるので慎重を要する。
 このように、掲示板方式は、物理学会関連では認められているが、化学学会関連では考え方が遅れているせいか禁止されている。
 最近、「ネイチャー」も、掲示板方式を認め始めた。
 超電導は、温度だけでなく、大きな上部臨界磁場も必要で、いろいろと工夫されている。
 超電導の発見は、緻密な研究と、偶然が鍵だといわれている。(注:3)

(注)
 (1)http://msl-www.kek.jp/topics/index_10.html 参照
 (2)講演中、講師が「コンドマット」といっていましたが、帰宅後、webで調べたところ、“cond-mat”のことのようでした。
 (3)1月の電力館科学ゼミナール『新しい金属』を聞きに行った時、講師:竹内伸、前理科大学学長は、新金属の発見は“serendipity”(最近、流行り始めた単語です。何年か前に映画の題名にもなりました)だといっていました。
 なお、“serendipity”については、アーサー・C・クラークの『スリランカから世界を眺めて』に、第1話として、この語源である『セレンディップの三人の王子様』の面白いお話が載っています。

 今月もなんとか3本観ることが出来ました。
『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 3』『Dr.パルナサスの鏡』『コララインとボタンの魔女』

■『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 3』

 2月3日は寒い立春でしたが、ショッピングセンター「ららぽーと横浜」内の「TOHOシネマズ」まで、13:45分からのアニメ『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 3』を観に行ってきました。
 スクリーンは10、座席数:105に、約30人程度。若い人ばかりでした。
 マイナーな映画のためか、一部の限られた映画館でしか上映されず、横浜線、鴨居駅ローカルの「ららぽーと横浜」まで出掛けた次第。距離的には、我が家から、そんなに遠くはないのですが、地下鉄からバスに乗り継いだりと交通の便が悪く、結局、到着まで1時間半ほど掛かってしまいました。

物語:
 平和のために世界征服(統一)を企む“鷹の爪”の団員、吉田は休暇で郷里、島根県へ帰ろうとしたが、空港で「島根県なんって聞いたことがない」といわれ、地図を調べたところ、日本から島根県が消滅していた。
 自分たちの研究室を訪れた鷹の爪団の総統と吉田は、室内が荒らされ、天才マッドサイエンティスト、レオナルド博士(何故か外見は、ぬいぐるみの熊)がいなくなっているのを発見。博士は郷里に戻ったと聞いて、二人は博士を捜しに彼の郷里、テキサスへ向うが、既に博士は兵器メーカーの若き社長、サドルストーンの依頼で新兵器開発のため、太平洋の孤島に連れ去られ、そこで仕事をさせられていた。
 一方、ここワシントンでは、オババ大統領(148歳の老婆)が、核兵器、武力放棄を訴え、各地から兵力を撤退させ始める。力のバランスが崩れたため、各国はこのときとばかりに、侵略を開始する。
 やがて、博士の開発した最終兵器「博士の動く城」(高さ、1km)が完成、サドルストーンと博士は、これに乗ってワシントンのホワイトハウスに向う。
 果たして、オババ大統領の行動と、「博士の動く城」の真の目的は何か。
 そして、鷹の爪団は世界平和のために、悪の陰謀を打ち砕くことができるのであろうか。
 そしてまた、島根県は何処へ行ってしまったのか!?

 今まで、全く関心がなかった『鷹の爪』でしたが、最近になって巷の各所に出没、気になってきたところへの、映画の公開。といっても、今回は、もう3本目とのこと。
 映画は全く期待せず、勉強のため(?)に観に出かけたのですが、あれよあれよと言う間に終了、楽しめました。
 各所に筋とは余り関係のない人物や、コマーシャル(プロダクトプレイスメントというのだそうですが、SUBARUなど十数本もの・・・!)なども挿入されており、更に、重要な部分では、映画を観ながら眠ってしまっている人まで起こしてくれる、という凝りよう。
 「博士の動く城」が活躍するシーンは、『BALLAD 名もなき恋のうた』などで、一躍ブレークした山崎貴監督を中心とした「白組」がCGを担当したそうです(が、そのため、予算の大半はここで消費してしまったとか)。この素晴らしいCG映像と、手抜きの映像との落差も、笑いの種にしています。
 また、主題歌は、昨年、突然有名になった、スーザン・ボイルが歌っているというのも、セールスポイント。
 「まだまだ、書きたいことは沢山ありますが、この辺で終了致します」といった、映画でした。

2010/日本/配給:DLE、配給協力:東宝
制作スタジオ:蛙男商会/DLE
監督、脚本、キャラクターデザイン、録音、Flush、編集、声の出演:FROGMAN
友情監督:山崎貴
出演(アニメと声):川村ゆきえ、FROGMAN、相沢舞、板東英二、もう中学生
主題歌:スーザン・ボイル(夢やぶれて「I Dream A Dream」)
特別協力:島根県
2010/01/16公開 1時間44分

■『Dr.パルナサスの鏡』

 この映画は、2月20日(土曜日)からは夜の興行だけになるので、19日は寒い中、頑張って「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで、12:25からの 『Dr.パルナサスの鏡』を観に行ってきました(既に、この日は、もう一日2回興行になっていました)。
 スクリーンは9で座席数:99の一番小さいところ。果たして観客はどれほどいるかと心配しましたが、なんと27人もいて驚きました。

物語:
 時は2007年、場所はロンドン。
 夜の裏町。浮浪者がごろごろしているところへ、数頭の馬に曳かれた大きな舞台が現われる。早速、舞台が組み立てられる。看板には“THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS”と書かれており、直ちに興行が始まる。
舞台には老人のDr.パルナサス、その一人娘、ヴァレンティナ、彼女に想いを寄せる若い男、アントン、そして、よく知恵が回る、こびとのパーシーの4人だけ。
 そして、舞台の中央には銀紙の鏡が一枚。お客がこの鏡を潜ると、自分の思考が反映されたDr.パルナサスの瞑想の世界“イマジナリウム”に入れるというのが、この見せ物。
 一人の少年が、お金を払わずに飛び込むと、そこは広々としたお菓子の世界。
 誰もお金を払って入る者もなく、また馬で舞台を移動中、ヴァレンティナは首をくくられ、橋桁からぶら下げられた青年を発見、これを助ける。
 この青年、トニーは、自分が誰かの記憶も喪失していたが、機転が利き、舞台は盛り上がり、大いに繁盛、大金が入る。だんだんと、トニーを愛し始める、ヴァレンティナ。
 が、実は、このトニーは、ギャングが絡んだ児童福祉慈善事業の金をくすね、殺されかかった詐欺師であり、彼が生きていることを知ったギャングは、再び彼を追って現われる。鏡の世界に逃げ込むトニー、その後を追ってギャングの一団も鏡の世界に入り込む。
 果たして、このドタバタと、アントンの恋の結末は・・・。

 Dr.パルナサスは、現在1000歳で不老不死の高僧。そして、彼と悪魔とは、過去、いろいろの契約があり、その一つとして、ヴァレンティナの16歳の誕生日に、彼女を悪魔に差し出さねばならなかった。彼女の誕生日まで、後、残すところ数日。と、なかなか話は手が込んでいます。
 見どころは、この映画を撮影中、トニー役のヒース・レジャーが急死、一旦は映画の製作を断念するところまで至ったそうですが、彼の後を引き継ごうと、三人の名優、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルらが友情出演し、殆ど脚本を変えずに、一人三役でなく、三人一役をこなし、無事撮影を完了した、という点でしょう。因みに、この三人は出演料をヒース・レジャーの娘さんに贈ったそうです。
 また、ヴァレンティナ役の、リリー・コールは、プラダ、シャネル、エルメスの広告にも登場するスーパーモデル。現在、ケンブリッジ大学に通う美貌と知性を持つ、21歳の女子大生とのこと。
 映画のエンディングはなかなか凝っており、エンドロールが終わり、館内が真っ暗になっても、もうひと趣向があります。館内が再び明るくなるまで、席を離れないようにして下さい。
 テリー・ギリアム監督のSF作品は、『未来世紀ブラジル』(1985)、『12モンキーズ』(1996:ブルース・ウィリス、ブラッド・ピットなどの豪華キャスト)なども観ていますが、いずれも、ちょっと変わった複雑な映画でした。

(原題)THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS
2009/イギリス・カナダ/ショウゲート配給
監督:テリー・ギリアム
脚本:テリー・ギリアム、チャールズ・マッケオン
制作:ウィリアム・ヴィンズ、エイミー・ギリアム、サミュエル・ハディダ、テリー・ギリアム
製作総指揮:ディヴ・ヴァロウ、ヴィクター・ハディダ
出演:ヒース・レジャー、クリストファー・プラマー、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル、リリー・コール、アンドリュー・ガーフィールド
2010/01/23公開 2時間04分

■『コララインとボタンの魔女』

 2月23日は暖かかったので、なんとか今月3本目の映画『ィ』(ストップモーションアニメ、3D、吹替え版)を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました(SFではありません)。上映は11:20より。スクリーン6、座席数:187。未だ、公開5日目なのに、入りは20人程度。

物語:
 郊外の古いアパート(築150年!)に両親と引っ越してきた少女、コラライン(11歳)は、多忙な両親にかまって貰えず、淋しく不満な毎日を送っていた。
 ある日、大家さんのお婆さんと二人で暮らす少年、ワイビーが、コララインにそっくりな人形を自分の家で見付けたといって彼女に届けてくれるが、その人形の目は何故かボタン。でも、コララインは「小さな私」といって、そのお人形を大切にし、ベッドの脇に置いて眠る。
 ある日、コララインは、この家の一室に小さなドアを発見、開けてみるがその後ろは煉瓦の壁。
 夜、コララインは、このドアの向こうに、似て非なるもうひとつの同じような家があり、その家には目がボタンの「もうひとりのお母さんと、お父さん」がいて、コララインを温かく迎えてくれる夢を見る。毎晩、夢でそこに出掛け楽しむ中に、現実の世界でも、そのドアを通ってもうひとつの我が家へ行けるようになる。
 しかし、やがて、コララインはもうひとりのお母さんが、実は、ボタンの魔女で、自分の目もボタンに替えられ、命を食べられてしまうということを知る。
 果たして、コララインは、既に、ボタンの魔女に囚われ、命を食べられてしまった子供たちの魂を助け、更に、魔女をやっつけ、現実の世界に戻ってくることができるのであろうか。危殆に瀕したコララインを助けるのは、現実の世界で巡り会った一匹の黒い野良猫とワイビー。

 流石に『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)の監督:ヘンリー・セリックの作品。ちょっと怖いところもありますが、なんといっても出てくるのはお人形、子どもも大人も楽しめるように出来上がっています(冒頭、ボタンの目が付いたコララインの人形が作られるシーンはちょっと不気味!)。
 原作には出てこない男の子、ワイビーがひょうきんなので救われます。
 (ワイビー=Wybie=Why be、洒落のようです)。
 この映画は、「3Dで撮られた初めてのストップモーションアニメ」だそうで、因みに、コララインの人形は28体作られ、また、表情を動かすために、207,336通りのリプレースメント用の顔が作られたそうです。
 今回、この映画館での上映は、3D、音声吹替版のみ。折角、コララインの声が、ダコタ・ファニングだったのに残念でした。
 ニール・ゲイマン著の同名の原作が角川文庫から出版されました。

(原題)Coraline
2009/アメリカ/ギャガ GAGA配給
監督・脚本・製作・プロダクションデザイン:ヘンリー・セリック
原作:ニール・ゲイマン
製作:ビル・メカニック、クレア・ジェニングス、メアリー・サンデル
コンセプトアーティスト:上杉忠弘
声の出演:榮倉奈々、劇団ひとり、戸田恵子、山路和弘
2010/02/19公開 1時間40分


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