5月27日はNHK放送技術研究所の一般公開見学に世田谷区の砧まで出掛けました。 去年は、忘れていて見逃したのですが、今年もスーパーハイビジョン、デジタルテレビの多機能化が中心で、一昨年と比較しても特に目新しいものもなく、ややマンネリな感じがしてきました(建物だけは、真新しい高層ビルが建ったのに・・・)。 展示項目は、以下のURLをご参照下さい。 http://www.nhk.or.jp/strl/open2010/tenji/index.html 折角、世田谷の砧まで出掛けたので、帰途、芦花公園に回り、先日来、気になっていた世田谷文学館で開催中の企画展『星新一展』を観てきました(4/29〜6/27)。 世田谷区は広く、NHKから環状8号線まで歩いた後、バスを2本乗り継ぎ、また徒歩と、結構、移動に時間が掛かりました(帰宅後、総歩数:12883歩)。 しかし、こちらは、期待以上に楽しめ、1時間ばかり眺めてきました。 http://www.setabun.or.jp/exhibition/hoshi/ 先ず玄関を入ると、最初に目に付くのが、ミュージアム・ショップの前の棚に平積みされた、星新一の著作の数々。端から、ページを捲ってみたくなります。 続いて、エレベーターで2階の企画展会場へ。 ここでは、彼が小学校3年生の時に書いた作文や、子どもの時遊んだ熊の縫いぐるみ、そして、根付や一齣マンガのコレクションなどが最初に展示されています。。 続いて、家族関係から、彼の生い立ち、更に、彼の構想メモと原稿の下書き、彼の本の表紙などを飾った、真鍋博、和田誠、後藤貴志などの原画も懐かしく楽しめました。 “ボッコちゃん”のいる、バーを模したコーナーもありました(勿論、お酒は飲めませんが・・・)。 全体を通して、一番、印象に残ったものは、思いついたときに書き込んだのでしょうか、手近の小さな紙切れ(大小様々、四角でないものもある!)に、米粒のような小さい文字でミッシリと書き込まれてる彼の構想メモ。これが、山盛り、展示されていました。 彼はSF作家としては大成功しましたが、常に心の隅には、父親の会社を潰してしまったことについてのコンプレックスを抱いていたことを知り、感慨無量でした。 1階の常設展会場にも、いろいろと面白いものがありました。 ひとつは、武藤政彦(ムットーニ)が考案した“機械仕掛けのからくり人形”。 40〜50cm四方の空間(箱)の中に、“からくり”を封じ込み、ひとつの物語を構成しているものです。全部で8作品展示されていましたが、全て、数分で完結ます。 海野十三原作の『月世界探検記』と称するものもありました。 http://www.muttoni.net/about/index.html また、「世田谷区に住んだ作家」の中に、「若林に住んだ日本SFの父」として、海野十三が紹介されており、『人造人間博士』、『火星魔』、『地球最後の冒険』、『三十年後の世界』などの本が、展示されていました。 入館料は、一般:700円、65歳以上:350円でした。 「星新一展」資料集は、1200円。 この博物館には豪華な和風の庭園があり、池には大きな鯉が何匹も泳いでいます。 受付嬢に聞いてみたところ、「(株)ウテナ」の会長の邸宅跡だそうで、因みに、会長さんは、現在、この庭に続く敷地内に老人ホームを建て、ご自身も入っておられるとか。 帰途、参考までに、ホームの玄関に回り、チラシを貰ってきました(6月オープン予定)。(笑) 私が中学、高校時代(60年以上前)、この近くの学校に通っていたので、この辺りに大きな工場が建っており、高い煙突に「ウテナ」と書いてあったのを思い出しました。 4月には、『運命のボタン』の他、次の2冊を読みました。 『量子コンピュータとは何か』(2009年12月15日発行)(ジョージ・ジョンソン著、水谷 淳訳。ハヤカワ文庫NF) 一見、極めて易しそうに書かれているのですが、今まで分らなかったことは矢張り依然として分らず。しかし、この分らない部分は、専門家にもよく分らないことなのだ、ということが分りました。 『ボートの三人男 犬は勘定に入れません』(ジェローム・K・ジェローム著、丸谷 才一訳。中公文庫) 1889年に書かれたこの『ボートの三人男』は、健康の回復を求めて、3人の男と1匹の犬が、2週間掛けてテムズ川をキングストンから、オックスフォードまで、ボートで遡る紀行風ユーモア小説。SFではありませんが、そのサブタイトル、『犬は勘定に入れません』が示すように、コニー・ウィリスのタイムものSF、『犬は勘定に入れません』(ハヤカワ文庫)が、この『ボートの三人男』を下敷きにして書かれたという話でしたので、以前から読んでみたいと思っていました。が、残念なことに、この本は絶版中(初版発行は1976年7月10日)。しかし、今回、中央公論新社から、2010年3月25日付で改版発行されたのを期に、購入、読むことができました。 読んでみて、コニー・ウィリスは、小説の文体や形式も『ボートの三人男』に似せて書いていることが分かり、矢張り、一般の欧米人のように(?)、ジェローム・K・ジェロームの方を先に読んでから、コニー・ウィリスを読んでいたらば、もっと、“くすぐり”などがよく分かり、楽しめたのではないかと思いました。 今月紹介するのは、以下の3作品です。 『9 9番目の奇妙な人形』『運命のボタン』『TRICK 霊能力者バトルロイヤル』 ■『9 9番目の奇妙な人形』 昨、8日は11:50からの『9 9番目の奇妙な人形』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。この春、ミュージカルの『NINE』から始まり、『第9地区』と続き、今回の『9 9番目の奇妙な人形』まで、3本の“九”を観たことになります。 スクリーンは3、座席数は120。初日、第1回目なのに、入りは僅か10人。
物語: 背中に“9”の番号が付いた麻袋製人形が、実験室で目覚めたとき、既に地球は廃墟と化し、動植物は完全に抹消されていた。外に出て、廃墟を彷徨う中に、同じような人形“2”に出会うが、彼は突然現われたメカの怪獣に連れ去られてしまう。やがて、“1”から“8”までの個性豊かな人形たちにも巡り会い、話を聞く中に、人類の科学が万能のメカを生み、それが兵器化され、やがてメカが人類に反抗、人類がメカに滅ぼされたことを知る。 現在は、メカも人類も滅び、やや小康状態を保っていたのだが、“9”が“2”を助けに、メカの本拠地に乗り込み、メカを甦らせてしまっため、再び、メカと人形たちの戦争が始まってしまう。 消極的な人形のリーダー“1”と、積極的な“9”との間に軋轢はあるものの、“9”は自分たちを作った博士が、人間の心を自分たちに宿してくれていたことを知り、仲間と共に強力なメカに立ち向かう。 この映画は、アカデミー賞短編部門候補だった僅か11分の短編映画『9』をティム・バートン監督が観、「これまでの人生で観た映像の中で、最高の11分だった」と感激、その新人監督、シェーン・アッカーを起用して長篇に膨らませたものだとか。 また、キネマ旬報 5月下旬号の「キネマ旬報が選ぶ今号の1本」にも『9 9番目の奇妙な人形』が選ばれており、2ページに渡って解説がなされていますが、こんなに難しく考えなくてはいけない映画なのか、と思って観たらば、矢張り難しい映画でした。(笑) オープニングで、誰かが布を切り、針と糸で人形を縫うシーンがクローズアップで映し出されますが、『コララインとボタンの魔女』のオープニングを思い出しました。 また、メカと人間の闘いというと、どうしても『ターミネーター』を連想してしまいます。 最後の方で、闘いが一段落したとき、人形たちが昔のSPレコードで、映画『オズの魔法使い』の主題歌、『OVER THE RAINBOW』(歌:ジュディ・ガーランド)を聞くシーンが印象的です(少女、ドロシーと 旅を共にする、ブリキ人形、かかし、ライオンと、この9体の人形たちとの間には、共通の概念が有るとのことなのですが、なかなか難しい!)。 最後、闘いに生き残った4体の人形が、「よく分らないけど、・・・この世界は僕らが守る」と言ったところでこの映画は終了します。 (原題)9 2009/アメリカ/ギャガ GAGA配給 監督・原案:シェーン・アッカー 脚本:パメラ・ペトラー 製作:ジム・レムリー、ティム・バートン、ティムール・ベクマンベトフ 2010/05/08公開 1時間20分 ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。 ■『運命のボタン』 先ず、5月8日から公開の映画『運命のボタン』に合わせて、リチャード・マシスンの短編集『運命のボタン』(2010年3月25日発行 ハヤカワ文庫)が発売されたので、早速購入、読んでみました。 「運命のボタン」(Button,Button)1970 このボタンを押せば5万ドル。ただし見知らぬ誰かが死ぬ。あなたなら押しますか? 同名映画の原作。僅か20ページの短編が、どうやって映画になるのでしょうか。 映画では、5万ドルが100万ドルに。主演はキャメロン・ディアス。 「針」(Needle in the Heart)1969 映画『プリンセスと魔法のキス』にも出てくる、“ヴードゥー人形”が小道具として出てきます。正に藁人形と釘の世界! 「魔女戦線」(Witch War)1951 超能力の少女のたちが、気楽に敵軍をやっつけるお話。 「わらが匂う」(Wet Straw)1953 妻を殺した男が報いる、怖いお話。 「チャンネル・ゼロ」(Through Channels)1951 テレビのチャンネルは、むやみやたらに回さないように。 映画『ポルターガイスト』(1982)の原点? 「戸口に立つ少女」(Little Girl Knocking on My Door)2004:本邦初訳 毎日のように、戸口に立つ白い服の少女に、娘が・・・。 余りにも暗い話なので、発表が遅れたとか。 「ショック・ウェーヴ」(Shock Wave)1963 機械にも魂が・・・。 「帰還」(Return)1951 「夕食までには帰ってくる」と妻に告げ、500年後の未来へ旅立ったが・・・。 本書の中で唯一、本格的なSF。 「死の部屋のなかで」(Dying Room Only)1953 ドライブ旅行の途中で、ふと立ち寄った汚い食堂のトイレで夫がいなくなる。 「子犬」(The Puppy)2004:本邦初訳 子どもが飼いたがった子犬は、何度捨てても戻ってくる不死身の犬だった。 「四角い墓場」(Steel)1956 読んでいて、ひょっとしてと思って調べたらば、矢張り、映画『Real Steel(原題)』(米:2010/06撮影開始。製作:スピルバーグとゼメキス)の原作のよう。 映画は2011年クリスマス公開。 「声なき叫び」(Mute)1962 読心能力がある少年に、言葉で話させようとした結果は・・・。 「二万フィートの悪夢」(Nightmare at 20,000 Feet)1961 知っている話だな、と思ったらば、昔、オムニバス映画『トワイライトゾーン 超次元の体験』(1983)の第4話で観ていたことが分りました。 飛行機のエンジンに取り付いた、怪物が怖かった。
次いで、いよいよ5月17日に朝9時45分からの『運命のボタン』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。スクリーン11、座席数:116に観客は二十数名。流石、月曜日、レディスデイのせいか、男性は私を含めて4人のみ。 でも、映画を観るのに、こんなに朝早く、家を出なければならないのは苦痛です(もう既に、1日、3回興行になっていました)。
物語: 時は1976年、場所はヴァージニア州のある街。朝、5時45分にチャイムが鳴り、妻のノーラ(キャメロン・ディアス)が玄関に出てみると、ドアの外に30センチ四方ぐらいのボール箱が置かれていて、中にはボタンの付いた木の箱と、「今夕、5時にスチュアードという男がこの箱の説明に伺う」とのメッセージが入っていた。ボタンにはガラスのカバーが被っており、鍵が掛けられていた。 夕方になると件の男が現われ、「このボタンを押すと、何処かで知らない誰かが死ぬが、あなたは100万ドルを手にする。この件は、誰にも話してはならない」といってアタッシュケースの中の札束を見せ、会ってくれたお礼にと、その中の100ドル紙幣1枚とガラスカバーを開ける鍵を渡して帰っていく。 夫婦で、散々迷った挙句、遂にノーラがボタンを押してしまう。 丁度その時刻に、同じ街の、知らないところの、知らない女性がピストルで射殺され、その夫は行方不明になる。 ご存知、リチャード・マシスンの短編『運命のボタン』(ハヤカワ文庫、原題:“Button,Button”)の映画化。原作は、文庫本で僅か20ページばかり。どうやってこの短編が長編映画になるのか、興味津々で観に行った次第。 結果は、予想通り、この短編の原作部分は映画の始めの方で終了し、その後は、NASAの火星探査や、アーサー・C・クラークの「高度に発達した科学技術は、魔法と区別がつかない」の名言なども出てくるSF味と、サスペンス味が加わったお話に展開して行きます(矢張り、マシスン調の、一寸、不気味なシーンも出てきます)。 原作では、最後まで、誰が、なんの目的で、この箱を持ってきたのかが不明のままで終わってしまいますが、この映画では、だんだんとSF的に、明白になっていきます。そんな訳で、この映画を見る前に原作を読んでおいても全く支障(ネタバレ)にはならず、むしろ、後半の謎解きの興味が増すのではないかと思われます。 最後は、もう一押しして、ハッピーエンドにして欲しかったところですが、これはこのままでも充分期待値以上に楽しめました。 この映画には、サルトルの『出口なし』が引き合いに出されていますが、残念ながら難しく、理解困難でした。 主演のキャメロン・ディアスは、今までラブコメ映画への出演が多く、何となく二枚目半的なキャラクターでしたが、今回は、かなりシリアスな演技を見せてくれます。 (原題)THE BOX 2009/アメリカ/博報堂DYメディアパートナーズ、ショーゲイト提供 監督・製作・脚本:リチャード・ケリー 原作:リチャード・マシスン 出演:キャメロン・ディアス、ジェームズ・マースデン、フランク・ランジェラ 2010/05/08公開 1時間55分 ◇ 今回、初めて映画館で手に入れたチラシ。 ■『TRICK 霊能力者バトルロイヤル』 5月25日は12:35からの『TRICK 霊能力者バトルロイヤル』を観に、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。劇場は一番大きい座席数:534のスクリーン01で、上映は1日、5回。上映10分前に入場したらば、観客は私一人。悪い予感がしましたが、暗くなってから、若い二人連れが一組入ってくれたので助かりました。
物語: 過疎の僻地にある万練(マンネリ)村は、古来、霊能力者が村を治めていたが、ここへ来て、その老婆が死んだため、広くその後継霊能力者を募集することになった。 定められた日に集まった、いずれも胡散臭そうな超能力者は6人。 村長から「お互で霊能力を競い合い、最後に残った者がこの村を治める」との発言があり、かくて村人の前で、自称、霊能力者6人によるバトルロイヤルが繰り広げられる。 が、事前に、霊能力を信じない村の若い男が、インチキ霊能力を暴くので有名な日本科学技術大学の天才物理学者、上田教授(阿部寛)を東京に訪ね、今回の集まりのトリックを見破って欲しいと依頼、彼をその会場に連れてきていた。 その怪しげな霊能力者の中には、その村の財宝を目当てに参加した、上田の親しい知人、自称美人女性マジッシャン、山田(仲間由紀恵)も参加していた。この二人は気まずい思いをしながらも、彼らのインチキを見破るために結託することに合意する。 二人で、彼らのインチキ霊能力を看破している中に、だんだんと自分たちの身にも危険が迫って来る。 果たして、二人は生き残ることができるのであろうか テレビの人気シリーズ番組の映画化“第3弾”ですが、私はテレビを観ないので、全く映画だけでのファンです。 毎度お馴染みの二人が、お馴染みのスタイルで事件を解決していくお話で、ただただ観ているだけで『水戸黄門』と同様、安心して楽しめる映画です。 霊能力は、かの有名なコナン・ドイルが嵌ったり、また、アーサー・C・クラークも『超常現象の謎を解く(上・下)』を著したりと、いろいろと話題の多いジャンルです。 「キネマ旬報」での4人の評論家によるこの映画の評価は、☆☆が二人、☆が二人と最低ですが、初めからこういう映画なのだと思って観に行けば、期待値通りに楽しめます。 特に、「寄席」好きの私には、堪えられない映画です。 2010/日本/「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」製作委員会/テレビ朝日・東宝株式会社製作 監督:堤幸彦 製作:上松道夫、島谷能成 脚本:蒔田光治 出演:仲間由紀恵、阿部寛、生瀬勝久、野際陽子、松平健、佐藤健 2010/05/08公開 1時間59分
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