光文社から古典新訳文庫として、H.G.ウェルズの『盗まれた細菌/初めての飛行機』(南條竹則訳・解説)が2010年7月20日に発行され、読了しましたので概要をご報告します。 帯に、「名作『タイムマシン』を生み出したSF作家でありながら、著者ウェルズは飛び抜けたユーモア感覚の持ち主でもあった。文明批判から、最新技術、世紀末のデカダンスまで、“笑い”で包み込む傑作短編集!」と書かれているように、従来のウェルズとはちょっとひと味違った小説が盛り込まれています。 ・ 『盗まれた細菌』(1894) 人類皆殺しを企み、細菌学者から疫病の菌を盗み出した無政府主義者は、追っ手に捕まるとみるや、その細菌を自分で飲み干してしまうが・・・。 ・ 『奇妙な蘭の花が咲く』(1894) 投機目的の蘭コレクターの男が、死体の下から採集したと称する珍しい蘭の根茎を購入、栽培したものの・・・。 この小説は、高校生時代(?)に読み、インパクトを受け、記憶に残っています。 外国には、異常な蘭コレクターがいるようで、『蘭に魅せられた男』(早川書房)というノン・フィクションもあり、後に『アダプテーション』(2003)というタイトルで映画化もされました。 ・ 『ハリンゲイの誘惑』(1895) 自分が描き始めた肖像画から誘惑を受け、絵はだんだんとエスカレートしていくが・・・。 ・ 『ハマーポンド邸の夜盗』(1895) 画家になりすました男は、夜、ダイヤモンドを盗みにハマーポンド邸に侵入しようとするが、夜盗を追い払った恩人と勘違いされ・・・。 ・ 『紫の茸』(1896) 人生が嫌になった男が、近くの森の中を徘徊中、自殺しようと見付けた紫の茸を食べたのはよいが・・・。 ・ 『パイクラフトに関する真実』(1903) 超肥満のパイクラフトにせがまれ、曾お婆さん秘伝の痩せ薬を調合、飲ませたものの・・・。 ・ 『劇評家悲話』(1895) 遺言によって、生まれてから一度も演劇を観たことがない新聞社に勤める男が、上司の命令で“劇評家”にさせられ、毎日のように劇場に行かされた結果・・・。
・ 『失った遺産』(1897)
膨大な叔父の遺産を受け継ぐために小さいときから努力したが、叔父の遺言状は何処に・・・。
・ 『林檎』(1896) 列車の中で、不思議な男から、エデンの林檎だといって渡された果物は・・・。 ・ 『初めての飛行機』(1910) 新しもの好きな男が、操縦の仕方も分らないのに飛行機を購入。飛び立ったのはよいが・・・。 ・ 『小さな母、メルダーベルクに登る』(1910) 多くの登山家の警告を無視、年老いた母親を連れて案内人とアルプスに挑むお話。
年末まで、ちょっとSF的映画は種切れになりそうなのですが、今月紹介する映画は以下の4本です。 『ソルト』『ちょんまげぷりん』『ヒックとドラゴン』『ヤギと男と男と壁と』 ■『ソルト』 5月に観た映画『運命のボタン』。リチャード・マシスンの原作短編小説のタイトルは『Button、Button』。そして、この映画のアメリカでのタイトルは『The Box』。 そんなところに、先日、日本で『ボックス』という映画が上映され、紛らわしいことよな、と思っていましたが、これは“箱”でなく、感動的な、女子マネージャーも絡む高校ボクシング部のお話であることが判明しました。 そして、今回はアンジェリーナ・ジョリーの映画『ソルト』の上映間近、7月10日に、突如、日本映画『トルソ』が上映されました! さて、8月3日は上映4日目のこの『ソルト』(11:10)を観に、いつもの「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。 流石、夏休み。スクリーン9、座席数:99に対して、入りは50名ほど。
物語: 今から2年前、CIAのイブリン・ソルトはスパイ容疑で北朝鮮に逮捕され、拷問を受けていた。が、捕虜交換により、再びアメリカへ戻ることができ、CIAへ復職する。 そんなある日、元ロシアの特務機関にいたオルロフと名乗る男がCIAへ現われ、「アメリカ副大統領の葬儀のために渡米するロシア大統領の命を狙うロシアのスパイが、アメリカに潜入している。そのスパイの名はイブリン・ソルトである」、と告げる。 北朝鮮拘留中に洗脳され、二重スパイになったのかも知れないと、CIAは彼女を捕えようとするが、小さいときからスパイの訓練を受けていたソルトは、CIAの警備網を切り抜け、逃亡に成功する。 そして、副大統領の葬儀の日、ソルトはシークレット・サービスやCIAの厳重な警護の裏をまんまと掻い潜り、教会の演壇で弔辞を読み上げているロシア大統領を暗殺、更に、その場からの脱出にも成功する、が・・・。 この事件を切っ掛けに、アメリカ−ロシア間の情勢は急激に緊迫していく。 果たして、ソルトとは何者で、その目的はなんなのか。 この映画は、「嘗てソ連にはスパイ養成所があり、生まれたばかりの赤子の時から、アメリカ的な環境の中で育てられ、その中から優秀なものだけがアメリカに潜入、何十年もの間、秘密指令が来るのを現地で待機させられる」、という話を前提に作られています。 そして、このソルトもその一人。 折しも、公開直前に“アメリカでロシアのスパイが10人ほど逮捕された”というニュースがあり、映画の前宣伝になったのではと勘繰りました。 物語は上述の所までで映画のほぼ半分。そろそろ、終りかなと思ったところから核心に迫って行きます。 汚れ役から、魅力たっぷりな所まで、存分にアンジーを堪能することができます。
彼女は、女性版ジェームズ・ボンドを演じたかったといっていますが、ショーン・コネリーも吃驚のアクションを見せてくれます。
最後は、また、逃亡に成功、続編が期待できそうです(終わっても、未だ、完全に納得できないところが残っています)。 シリアスな映画なのに、取り巻きから対ロシア攻撃の原爆ミサイル発射ボタンを押せと迫られ、呆然となる、おバカなアメリカ大統領が出てきます。本当に切羽詰まったときには、こんなことが起こるのかも知れません。 (原題)SALT 2010/アメリカ/コロンビア映画、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント配給 監督:フィリップ・ノイス 脚本:カート・ウィマー 製作:ロレンツォ・ディボナヴェンチュラ、サニル・パーカシュ 出演:アンジェリーナ・ジョリー、リーヴ・シュレイバー、キウェテル・イジョフォー、ダニエル・オルブリフスキー、アンドレ・ブラウアー 2010/07/31公開 1時間40分 ■『ちょんまげぷりん』 観てきました、『ちょんまげぷりん』。近場では、ここ、“恵比寿ガーデンシネマ”でしか上映されてない模様。 8月9日は、上映開始、11:45の50分ほど前に現着したのに、既に、この回の切符の入場番号は「040」。 上映は、座席数:232のシネマ1で、中央の席はほぼ満席。 殆どが若い女性ばかりで、後は子どもが少々。高齢者は見当たらず! 物語: コンピュータのソフト会社に勤めるシングルマザーのひろ子は、仕事と育児、家事を一手に、てんてこ舞い。 ある朝、息子の友也を幼稚園に連れて行く途上、木島安兵衛と名乗る、ちょんまげ姿のお侍と出合う。 何となく、分らない侭にアパートに連れ帰り、面倒をみてやっている中に、安兵衛は恩返しにと家事と友也の面倒を見始める。が、やがてケーキ作りに興味を持ち始め、どんどんと腕を上げ、見事、「お父さんのケーキコンテスト」で優勝、自由が丘のケーキ店にスカウトされる。 これぞ天職とばかりに、ケーキ作りにのめり込む安兵衛。だが、このため、ひろ子、友也との微妙な関係にひびが入り始める。 そんな、ある日……。
荒木源著の同名小説の映画化。 主演はジャニーズの錦戸亮。若い女性たちが集まるのも当然か!(私は、帰宅後、「錦戸亮」をwebで調べて納得)。 このところ、むやみに難しい映画ばかり見続けた私の脳に優しい映画でした。子どもたちもげらげら笑いながら観ていました。 最後は、それなりに納得ができる、ハッピーエンド。 “タイムもの”SFといっても、S分は『時かけ』程度ですが、180年の年代差によるカルチャー・ギャップが楽しめます。キネマ旬報の評論家、4人の評価も高め。 ひろ子のアパートがあるところが巣鴨、江戸時代に安兵衛の屋敷があったところが麻布、と私がよく出掛けるところが舞台。 こういった映画を見に来るお客さんは、映画が終わっても席を立たず、エンドロールの最後まで座っているので感心しました。 2010/日本/製作・配給:ジェイ・ストーム/協力:ジャニーズ事務所 脚本・監督:中村義洋 原作:荒木源『ちょんまげぷりん』(小学館文庫) 出演:錦戸亮、ともさかりえ、鈴木福、佐藤仁美、今野浩喜、怱那汐里、堀部圭亮、中村有志、井上順 2010/07/31公開 1時間48分 8月17日、本屋で文庫本『ちょんまげぷりん 1,2』(小学館文庫)の裏表紙に書かれている粗筋を読んできました。 今回、映画になった部分は『ちょんまげぷりん 1』の内容と正に一致しており、『ちょんまげぷりん 2』は、『1』の8年後という設定で、14歳になった友也が、今度は江戸時代にタイムスリップ、安兵衛を探すことになっています。 キネ旬“REVIEW”の評論家の一人が、「映画 『ちょんまげぷりん』の最後で、安兵衛が江戸時代に戻ったシーンは蛇足で必要なかった」というようなことを書いていましたが、もし、『ちょんまげぷりん 2』ができるのであれば、このシーンは必要不可欠なものではないかと思われます。 果たして……。 ■『ヒックとドラゴン』 ここへ来て、年末の『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(2010/12/01)と『トロン LEGACY』(2010/12/17)の公開まで、SF的映画はちょっと種切れになりました。 しかし、siteで探すと、以下のような映画もありますが、怪しげで出かける気にはなりません。 ・ 『無知との遭遇』 ロケに出向いた村は、全村民が宇宙人。やがて、巨大UFOが現われ、宇宙戦争に巻き込まれていく。
・ 『宇宙で一番ワガママな星』
時は2020年。カップ麺の懸賞で“宇宙旅行”に当選した5人を待っていたのは・・・。 (いずれも、渋谷ヨシモト∞ホール他で上映) さて、そんなわけで、8月18日は、いつものように「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで、13:10からの『ヒックとドラゴン』(3D、吹替え版)を観に出掛けました。上映10日目ほどなのに、上映はもう1日3回のみ。座席数:348の“スクリーン2”の入場者は60〜70名で、流石、夏休み、半分以上はお子様でした。
物語: バイキングの住むバーク島は、夜になると無数のドラゴンの襲撃を受け、その炎で家は焼かれ、また家畜や食料が攫われる。そのため島民は、常にドラゴンと戦っていた。 バイキングのカシラの一人息子、ヒックは、バイキングに似ず、虚弱で引っ込み思案、いつも、発明に耽っていた。ある夜、彼は自分が発明した武器で、伝説の巨大ドラゴン、ナイト・フューリーを打ち落とすことに成功したが、誰も信用しない。仕方なく彼は一人で、落ちたドラゴンを捜しに森の中に入っていく。やがて、縄に絡み、傷ついたドラゴンを発見したヒックは、殺そうとするができず、縄を切り助ける。 やがて、ヒックとドラゴンとの間に友情が芽生えてくる。 そして、ヒックが、ナイト・フューリーから教わった、ドラゴン島の巣の秘密とは。 2002年、アカデミー賞長編アニメ賞にノミネートされた『リロ&スティッチ』でコンビを組んだサンダースとデュボアが、再び組んで作り上げた映画。 ただ単なる、ヒックとドラゴンの友情物語かと思いましたが、後半、バイキングとドラゴンたちの共通の敵が現われるといった筋書きで、物語は大きく盛り上がります。 そして、最後は、“バイキングとドラゴンたちは末永く仲良く暮らしましたとさ”のハッピーエンド。ヒックは憧れの美しい少女とも結ばれます。
ヒックが、“トゥース”と名付けた、このドラゴンの背中に乗って空を飛ぶ3Dのシーンは美しいし、また、考えられる限りの、あらゆる種類のドラゴンが出てくるのも楽しめます。
映画を観た後で知ったのですが、この映画は、クレシッダ・コーウェルという作家が書いた、シリーズの絵本(全8巻:日本では6巻まで出版済み:小峰書店)が原作だそうです。 (原題)How to Train Your Dragon 2010/アメリカ/ドリームワークス アニメーションSKG提供、パラマウント ピクチャーズ ジャパン配給 監督・脚本:クリス・サンダース、ディーン・デュボア 製作:ボニー・アーノルド 原作:クレシッダ・コーウェル 日本語版声の出演:田谷隼、田中正彦、岩崎ひろし、寿美菜子 2010/08/07公開 1時間38分 ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。
★ | 『シュレック・フォーエバー』(米) | 2010年12月18日 |
| 第4作目。これにて最終章。今回は3D! かなり長い、“日本向けバージョン”の予告編がありました。 有名人(?)になったシュレックが、再び、怖がられる怪物に戻りたがるお話? http://www.shrek-forever.jp/ |
◇ 今回、初めて映画館で入手したチラシ。 ■『ヤギと男と男と壁と』 8月26日は、前からちょっと気になっていた『ヤギと男と男と壁と』を観に、久し振りに渋谷道玄坂にあるテアトル系の映画館「シネセゾン渋谷」へ行ってきました。 ちょっとご無沙汰の間に、このビルの地下1階から2階まで「ユニクロ」が入っていたり、また、6階にシネゼゾンと一緒に入っていた映画館「渋谷ピカデリー」が廃館、何やら得体の知れぬライブシアター(?)に変わってしまっていたりしていました。 12:40からの回の入りは、座席数:219に40名ばかり。 マイナーな映画の割には予想以上に入っていました(PG12指定)。
物語: 気の向かないままに、1980年代に存在したといわれる“超能力部隊”の取材をさせられていた冴えない地方紙の記者、ボブ・ウィルトン(ユアン・マクレガー)は、離婚の痛手を紛らわすためにイラクの前線へ取材に出掛ける。 イラク国境直前のホテルに宿泊中、セールスマンと称する一人のアメリカ人に出合うが、いろいろと話している中に、彼が嘗て取材中に聞き知った超能力部隊のナンバー2、リン・キャシディ(ジョージ・クルーニー)であることが判明、同行を願い彼とイラク前線に向うことになる。 斯くして、ボブは、道中、リンの怪奇な超能力を体験しながら旅を続ける。 そして最後、彼が辿り着いた最前線の超能力部隊とは・・・。 「嘘のような真実」だそうですが、何とも不思議な映画です。 キネ旬、REVIEWの4人の評論家の☆は、3、4、2、3とかなり好意的。 映画は、ボブのナレーションに、リンを中心とした回想シーンがフラッシュバックで挿入されながら進行していきます。 確かに、ひと頃、その方面の雑誌(MU?)などには、アメリカ軍による、「基地と原子力潜水艦との間のテレパシー通信実験」の話題がときどき載っていました。 超能力といってもSF映画ではないし、かといってシリアスな映画でも無し、矢張り、コメディ調風刺娯楽映画といったところでしょうか。 『オーシャンズ11』(2001)のジョージ・クルーニーや、『スター・ウォーズ』新3部作(1999〜)のオビ=ワン・ケノービ役で頑張ったユアン・マクレガーなどの有名な俳優が、それぞれ、それなりにその役になりきって楽しんでいる感じの映画です。 この映画は、ベストセラー・ノンフィクション『実録・アメリカ超能力部隊』を元に製作された由。 映画の原題は、『THE MEN WHO STARE AT GOATS』。リンが念力で、羊を睨み殺したことから、付けられたタイトルのようです。 ボブはリンと旅を共にしていく中に、彼の影響で、だんだんと自分自身にも超能力があるのではないかと思い始めます。 そして最後の1シーンは見逃せません。矢張り、この映画は、コメディです! (原題)THE MEN WHO STARE AT GOATS 2009/アメリカ・イギリス/日活 配給・宣伝 監督 : グラント・ヘスロヴ 脚本:ピーター・ストローハン 制作:ポール・リスター、ジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロヴ 原作:ジョン・ロンスン著『実録・アメリカ超能力部隊』(文春文庫) 出演:ジョージ・クルーニー、ジェフ・ブリッジス、ユアン・マクレガー、ケヴィン・スペイシー 2010/08/14公開 1時間34分
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