昨年7月から「SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー」が、隔月で3冊続けて発売になりましたので、読んでみました。 ◎『宇宙開発SF傑作選 ワイオミング生まれの宇宙飛行士』中村 融編 表題の作品を含めて7編の短中編が収録。 『主任設計者』(アンディ・ダンカン)と『サターン時代』(ウイリアム・バートン)は、それぞれ、ロシアとアメリカの宇宙開発をテーマにした改変歴史物。実在の人物が現われるので、現実とフィクションの境界線が楽しめます。 一番のお気に入りは『月をぼくのポケットに』(ジェイムズ・ラヴグローヴ)。 小さいときから宇宙飛行士に憧れていた少年が、信じて持っていた月の石が偽物と分り、長じて宇宙飛行士になった後、その石を月に持って行ってやる、といった感動の物語。
◎『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』大森 望編 表題の作品を含めて13編の中短編が収録。 「時間SFと恋愛小説は相性がいい」といわれるように、全て楽しく読めました。 巻頭の『商人と錬金術師の門』(テッド・チャン)は、以前、SFMか何かで読み、記憶に新しかったのですが、もう一度読み直し、楽しみました。 表題作の『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』(F・M・バズビイ)は、お互いに愛し合いながら、擦れ違う時間内を彷徨う男女のお話。何となく、オードリー・ニッフェネガーの『きみがぼくを見つけた日(The Time Traveler's Wife)』を連想してしまいました。
◎『ポストヒューマンSF傑作選 スティ−ヴ・フィーヴァー』山岸 真編 表題の作品を含めて12編の中短編が収録されていますが、全て、私にとっては次元が高く、読み終えるのにかなり時間が掛かりました。
この3冊を読了後、格別読みたいSFもなく、やや禁断症状気味になっていたとき、タイミング良く発売されたのが『2011年版 SFが読みたい! 発表!ベストSF 2010』。即、購入、眺めてみました。 矢張り、上記アンソロジー3冊のうち、『時間SF傑作選』は第5位に、『宇宙開発SF傑作選』は第6位に入っていました、が・・・。 そこで早速、第1位にランクされた『異星人の郷 上』を購入、読み終えてから続けて『下』も購入し、読了しました(マイクル・フリンは初めてだったので、分けて購入した次第!)。 「14世紀、ドイツ南部の村に宇宙船が不時着。村人たちと宇宙人との交流が始まる」というお話。 着想も良く、楽しく読めましたが、歳のせいか、最近、読書のスピードが落ちた私には、いささか宗教の話や、ペストの描写が長すぎるように感じられました。 あらかじめ、中世ヨーロッパの歴史などの基礎知識があれば、もう少し楽に読めたのではないかとも思いますが、残念ながら私は学校で世界史を習ったことがありません。 聖書の文言を、ハイテクの異星人がまともに受け止めて誤解するあたりは、にやっとさせられます。 諸般の事情で予定が変ったため、今月紹介するのは以下の3作品です。 『塔の上のラプンツェル』『ガリバー旅行記』『少年マイロの火星冒険記3D』 ■『塔の上のラプンツェル』 4月1日は11:10からの ディズニー・アニメ『塔の上のラプンツェル』を観に「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました(3D、吹替え版のみ上映)。 本来ならば、この映画は先月中に観て、4月には先ず『世界侵略:ロサンゼルス決戦』を観る予定でしたが、東日本大震災による劇場内の設備点検休業や、計画停電、更に映画の内容によっては上映が延期されたものなどがあったりで、いろいろと予定が変りました。 1日は学校の休日と、映画館が正常に営業を始めたせいか、上映開始1時間前に映画館に着いたときにはロビーは満員、チケット売り場は長い行列で、ディスプレイの『塔の上のラプンツェル』のところには、チケット「残少」の表示が出ていました。何とか見易い席がひとつだけ空いていたのでそこを購入、早めの昼食を食べ20分前にまた映画館のロビーに戻ってきたときには既に「売切れ」になっていました。 劇場はスクリーン6、座席数:165。上映時には、確かに満席でした。お母さんに連れられた女の子が殆どで、一人で観に来たお爺さんは私だけのような気がします。 映画を観終わってロビーに出たらば、今観た次の回も、また、「売切れ」になっていました。
物語: 昔々のお話。人を若返らせ、怪我や病気を治す魔法の髪を持って生まれたプリンセス“ラプンツェル”は、この魔法を我がものにようとした魔女に攫われ、山奥の塔のてっぺんに閉じこめられる。友達はカメレオンの“パスカル”だけ。 そして、18年の歳月が流れ、“ラプンツェル”は立派な娘に成長する。 “ラプンツェル”は、毎年、自分の誕生日になると、はるか彼方の夜空に上っていく数多くの灯りの群を窓から眺め、あの灯りが何なのか近くへ行って確かめたいという夢を持っていた。 ある日、お城からティアラを盗み出した三人組の大泥棒の一人“フリン”が仲間割れし、お城の兵士と仲間に追われて森の中に逃げ込んでくる。やがて“フリン”は森の奥で、この秘密の塔を発見、塔をよじ登り、窓から中に入る。そこで“ラプンツェル”に会った“フリン”は、彼女から、ある取引を条件に、森を抜け出し、明日の誕生日の晩に上がる、あの不思議な灯りを見に連れて行って欲しいと頼まれる。 果たしてこの二人の行く末には何が待っているのか。 1937年の『白雪姫』から数えて、ディズニーの長編アニメ50作目だとか。今、リスト“50作の歩み”で勘定してみたところ、何と私は、このうちの三十数本を観たことになります。 笑えるシーンと、ホロリとさせられるシーンの組み合わせが絶妙で、加えて、ミュージカル仕立て。上等なディズニー・アニメ映画に仕上がっています。 全体は、CGで描かれていますが、映像のディズニー・トーンは守られており、特に、一本一本が綺麗に描写されている“ラプンツェル”の髪の毛が、自然の流れに乗って動くシーンは目を見張ります。 このアニメの物語は、グリム童話の『髪長姫』をベースにして作られたとか。 流石に、もう、白馬に跨った王子様は出てきませんが、最後はハッピーエンド。安心して観ていられます。 (原題)Tangled 2010/アメリカ/ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン配給 監督:ネイサン・グレノ、バイロン・ハワード 製作:ロイ・コンリー 製作総指揮:ジョン・ラセター、グレン・キーン 脚本:ダン・フォーゲルマン 音楽:アラン・メンケン 声優:中川 翔子、畠中 洋、剣 幸 2011/03/12公開 1時間41分 余談: この劇場のロビーには、 「東北地方太平洋沖地震を配慮して、 『ヒア アフター』は3月14日で上映終了。 『ザ・ライト』、『唐山大地震』、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』、『サンクタム』、『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199 ヒーロー大決戦』は公開延期。公開日未定。 『映画 プリキュアオールスターズDX3』は一部映像カットで上映」 と書かれた紙が張り出されていました。 今回観た『塔の上のラプンツェル』にも、小さなダムが決壊、流されたラプンツェルとフリンが、洞窟の中に閉じこめられてしまうシーンがありましたが、今まで余り気に留めていなかっただけで、このようなシーンはどの映画にも良く出てきていたようです。 ■『ガリバー旅行記』 4月15日は、11:55からの『ガリバー旅行記』(吹替え版のみ上映)を観に、半月振りに「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。 この映画は大画面(URTIRA)+3Dで上映されるため、通常映画より500円も高く、そのせいか、初日なのに、スクリーン01、座席数:491に対して入りは僅か二十数名! 物語: 時は現代、場所はニューヨークのタイムズ・スクエア。とある新聞社でメール係をしている内気なガリバーは、5年の間、思い続けて来た旅行担当編集記者、ダーシーに、心の内を打ち明けられないままでいる。そんなある日、行きがかり上、彼女からバーミューダ・トライアングルの旅行取材を引き受けてしまう。 バーミューダから一人、ボートで出掛けるガリバー。ボートの甲板でうたた寝をしていた彼は、海上にそそり立つ時空の荒波に巻き込まれ、気が付いたときは小人国、リリパットの海岸に縄で括り付けられていた。 果たして彼は、リリパットで英雄となれるのであろうか。 そして、ダーシーとの恋の結末は?
ガリバーが敵の艦隊を拿捕するところまでは、ほぼ、原本の筋書に沿って物語は進んで行きますが、後半は全く新しい方向に話は展開されます。
『トランスフォーマー』張りのロボットも出てきますし、『キングコング』へのオマージュもあります(そういえば、『キング・コング』(2005)にも、ジャック・ブラックは探検隊に同行するカメラマン役として出演していました)。
また、映画の中には、『スター・ウォーズ』、『タイタニック』、『アバター』など、20世紀フォックスの映画の話題も出てきます。 更に、今回は、ガリバーが島流しにされる「呪いの島」として、大人国もちょっと出てくるというサービス振り。 私は映画『愛しのローズマリー』(2001)以来のジャック・ブラック・ファンですが、この『ガリバー旅行記』でも、彼の持ち味を120%楽しませてくれました。 宮殿の火事を、体内の水分で消火するという、ジャック・ブラック流の下ネタも出てきますが、これは原本通りの筋書きということなので、早速、調べてみた結果、本当に出ていました(『ガリヴァー旅行記』岩波文庫:1990年5月15日発行 第18刷の第一篇、第五章の最後の方に出てきます)。 今回は、余震に怯えながらも気分転換にと、決死の覚悟で映画を観に行きましたが、矢張り、映画の中で高波に飲み込まれるシーンや、建物が揺れるシーンが出てくると、折角忘れて映画を楽しんでいても、途端に現実世界に引き戻されてしまいました。 (原題)Gulliver's Travels 2010/アメリカ/ 20世紀フォックス配給 監督:ロブ・レターマン 製作:ジョン・デイヴィス、グレゴリー・グッドマン 脚本:ジョー・スティルマン & ニコラス・ストーラー 製作総指揮:ジャック・ブラック、ベンジャミン・クーリー 原作:ジョナサン・スウィフト 出演:ジャック・ブラック、ジェイソン・シーゲル、エミリー・ブラント、アマンダ・ピート、ビリー・コノリー、クリス・オダウド、T・J・ミラー、ジェームズ・コーデン、キャサリン・テイト 2011/04/15公開 1時間25分 ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。 ■『少年マイロの火星冒険記3D』
公開初日、土曜日の23日は荒れ模様のお天気だったので、1日遅らせて24日の日曜日に、いつもの「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで、11:40からの『少年マイロの火星冒険記3D』(吹替版)を観に行きました(やっと、これで、今月は3本の映画を観ることができました)。
前宣伝の割には、上映は一日3回、それに劇場はスクリーン6、座席数:165のやや小さめのところ。ロビーの混雑振りからすると、さぞ込んでいるかと思いきや、お客は僅か12人! 物語: 嫌いなブロッコリーを食べ残してママに叱られたマイロは、「ママなんかいない方がずっといい」と言ってベッドに潜り込むが、自責の念に駆られ、母親の部屋に謝りに行く。 が、その時、既に、ママは火星人に拉致され、ロケットは正に地上から発進するところであった。辛うじてそのロケットに潜り込んだマイロ。ロケットは空間をワープして瞬く間に火星に着く。 隠れていたマイロは火星人に発見され監禁されるが、地球生まれ、火星育ちのグリブルと名乗る怪しげな男に助け出され、彼と共にママの救出に向う。 果たして、マイロはお母さんを助け出し、無事地球に戻ってこられるのか。 そして、グリブルとは一体何者で、何故、火星にいるのか?
映画は、NASAの火星探査機が荒涼とした火星の表面で「生命の痕跡を発見しました」と報告するシーンからスタート。その後、シーンは地下に高度の技術を持つ火星人居住区に変わりますが、この最初のシーンは、最後のオチの伏線になっています。 前半はドタバタ調が続き、大人にはちょっとくどい感じがしますが、三分の二ぐらいのところから話は軌道に乗り、面白くなってきます。 火星には、どこかの国を思い起こさせるような厳しい体制が敷かれています。 何故、「ママが火星にさらわれた!!」のかは、『少年マイロの火星冒険記』というタイトルからは分りませんが、原題は『MARS NEEDS MOMS』。火星が立派なママたちを必要としていたからなのです。 ひと頃に比べ、パフォーマンス・キャプチャーの出来栄えもかなり自然になってきました。 最後に、例によって長い長いエンドロールが流れますが、その画面、左隅の空間で、この映画のパフォーマンス・キャプチャー撮影過程が映像で紹介されます。これは技術的にも大変興味深く、楽しめました。 (原題)MARS NEEDS MOMS 2011/アメリカ/ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン配給 監督:サイモン・ウェルズ 製作:ロバート・ゼメキス、ジャック・ラプケ、スティーヴ・スターキー、スティーヴン・ボイド、 脚本:サイモン・ウェルズ、ウェンディ・ウェルズ 原作:バークリー・ブレスト 声の出演:濱田龍臣、設楽統(バナナマン)、本田貴子、間宮康弘、藤村歩、京田尚子 2011/04/23公開 1時間28分 蛇足: 1) 別に“D-BOX”に座ったわけでもないのに、映画の途中で座席が揺れました。帰宅後、netで調べたらば、12時25分に茨城県南部を震源地とする地震がありました。 2) ロビーで騒いでいた沢山のよい子たちは何処へ行ったのかと思ったらば、もう連休体制なのか、『ドラえもん』、『仮面ライダー』、『名探偵コナン』、『クレヨンしんちゃん』、『きかんしゃトーマス』、『プリキュア』などの、お子様向けの映画が目白押しに同時上映されていました。 3) 前にも書いたことがあるかと思いますが、監督のサイモン・ウェルズはH・G・ウェルズの曾孫だとか。 ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。
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