ときどき「読み終えるのが勿体ない」という小説に巡り合うことがあります。 が、逆に、「早く読み終えたい」と思った小説が、今回やっと読了したジェイムズ・P・ホーガンの『プロテウス・オペレーション』。 一度読みかけて途中で挫折、何ヶ月か経って再びチャレンジしたのですが矢張り大変でした。面白いのでどんどん先へ読み進みたいのですが、時間と場所が錯綜しており、前後関係を考えながら読んでいるとサッパリ先へ進みません。 しかし、読み終えてみると、やっぱり凄い小説だったのだなーと感心しました。 タイムトラベルで、世界制覇を狙うナチスを叩き潰そうという歴史改変ものですが、いわゆる、古典タイムトラベル(パラドックスがある)では無く、「神様がサイコロを振らない」マルチバース的なタイムトラベルになっているので、話は矛盾無く進行して行きます。 しかし、歴史改変小説の場合、本当の歴史を知っていないと面白味は半減します。その点で私はかなり損をしているような気がしました。 取りあえず、この本を読み終え、次は何か軽いものをとSFMの新刊紹介などを探してみましたがこれといったものも見付からず、たまたま本屋の棚をみていましたらば、フレドリック・ブラウンの短編集『天使と宇宙船』(創元SF文庫:2005年6月10日第40版)が目に留まりました。 が、ひょっとすると我が家にもあるのではと、取り敢えず買わずに帰宅。本棚を探したらば、果たせるかな、茶色に変色した『天使と宇宙船』(創元推理文庫:1965年3月26日初版、1973年8月10日20版)を発見。しかし、本を開いてびっくり!なんと、活字がもの凄く小さいのです。 それでも、一晩に幾つかずつ読み、楽しく読了しました。こういう、脳を使わなくても読めるSFは、ベッドに入ってから読むのには最適です。読んでいて、所々、筋を思い出したものもありました。 一番最後、やや長めの『ウァヴェリ地球を征服す』は、地球外の電磁波生物“ウァヴェリ”が地球に住み着き、あらゆる電気を吸収し尽くした結果、地球上に電気が無くなり、昔ながらの、のんびりと穏やかな日常が戻ってくる、といったお話で、現在、“原発”、“節電”、“エコ”などと騒いでいる人たちにも読ませてあげたいSFです。 今月の紹介映画は、以下の三本です。 『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』『カーズ 2』『ツリー・オブ・ライフ』 ■『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』 「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」では、公開後一週間が過ぎて、予想通り昼間の最適時間帯を『ハリポタ』が『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』に明け渡したので、やっと、6日、土曜日、11:20からの3D、字幕版を観に行くことが出来ました。 劇場は、座席数:348のスクリーン02。土曜日なのに、入りは50人程度。
物語: 時は1961年。はるか昔、惑星、サイバトロンでの戦いで、秘密兵器を積み脱出したもののディセプティコンのミサイルによって破壊された宇宙船が月面の裏側に墜落する。それを探知したNASA。かくて、ケネディ大統領の指示の下、1969年7月20日、極秘ミッションを携えたアポロ11号が月面に着陸する。そして、乗組員はそこで大破した未知の宇宙船を発見する。 過去、二度にわたり正義のオートボットと共に悪のディセプティコンと戦って来たサムは、現在、学校を卒業、ワシントンDCで新しいガールフレンド、カーリーの下宿に同居しながら職探しに励んでいる。 一方、アフリカに身を隠し、再起を図っていたディセプティコンの残党は新たな勢力を加えて出現、シカゴを中心に、再び、オートボットと地球を賭けた戦いが始まる。 またしても、この戦いに巻き込まれる、サムとカーリー。 果たして、月で発見された宇宙船が積んでいた秘密兵器とは何だったのか? そして、地球は再び人類の手に戻ってくるのか・・・。 ご存じ『トランスファーマー』三部作の第三作目、最終回。 お話はいろいろと複雑に絡み合ってはいるものの、戦闘場面は相変わらずで、シカゴの上空に浮かぶエイリアンの宇宙船も『スカイライン』に出てくる代物とそっくり。 それに、上映時間、2時間34分はいささか長く感じられました。 また、トランスフォーマー同士のビヘイビアーが、駆け引きあり、裏切りありで、余りにも人間的なのはちょっと不自然に感じられました。 本年12月9日公開の『リアル・スティ−ル』(これも製作はスピルバーグ!)も、シチュエーションは違いますが、ロボット同士の戦いが売り物のようです。 また、今回、新バージョンの『世界戦略:ロサンゼルス決戦』(公開:2011/09/17)の予告編が上映されましたが、これにも、また同じようなシーンが沢山出てきます。 今回、新鮮だったのは映画初体験のセクシーなカーリー役、ロージー・ハンティントン=ホワイトリー。ランジェリー関連の現役モデルとかで、露出過剰には慣れているとか。(前作までのヒロイン役は、スピルバーグ監督との間で何か問題があったようで降板された由) 今回の撮影には、ジェームズ・キャメロン監督の勧めで、マイケル・ベイ監督は『アバター』(2009)で使った3Dカメラを使用した由。映像の3D効果は素晴らしかったのですが、奥が深い映像と、かなり手前に映し出される日本語の字幕との間に遠近の差があり、観るのと読むのとの眼の切り替えが大変でした(笑)。 (原題)Transformers: Dark of the Moon 2011/アメリカ/パラマウント ピクチャーズ ジャパン配給 監督:マイケル・ベイ 脚本:アーレン・クルーガー 製作:ドン・マーフィ&トム・デサント、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、イアン・ブライス 製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、マイケル・ベイ、ブライアン・ゴールドナー、マーク・ヴァーラディアン 出演:シャイア・ラブーフ、ジョシュ・デュアメル、ジョン・タトゥーロ、タイリース・ギブソン、ロージー・ハンティントン=ホワイトリー 2011/07/29公開 2時間34分 ■『カーズ 2』 8月11日は35℃を超える猛残暑の中、決死の覚悟で「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで12:30からの『カーズ 2』(3D・吹替版)を観に出掛けました。が、到着したショッピングセンター内は快適で、帰るのが嫌になりました。 劇場はスクリーン1、座席数:491に対し、入りは60人ほど。半分以上はお子様でした。3D(300円)、大スクリーン:ULTIRA(200円)と、いつもより+500円の出費。 物語: 4度のピストン・カップで優勝、ホームタウンのラジエーター・スプリングスで休養中の真っ赤な車体のライトニング・マックィーンは、イタリアのF1レーサー、フランチェスコ・ベルヌーイに挑発され、ワールドグランプリへの出場を決める。今回は、親友のおんぼろレッカー車、メーターも世界旅行のお供をすることになった。 まず最初が日本(東京)。続いて、イタリア(架空の港町、ポルト・コルサ)、フランス(パリ)、イギリス(ロンドン)と舞台は変わっていくが、知らず知らずのうちに彼らはガソリンに代わる新クリーン燃料“アリノール”に関わる巨大な陰謀に巻き込まれていく。 マックィーンはちょっとした誤解からメーターと仲違いをし、更に、悪の組織から自分の命を狙われる羽目に陥る。 一方、お人好しなメーターは、イギリスから派遣されたエイジェントから、アメリカのスパイ仲間と間違われ、いつの間にか大活躍。最後、(車の)エリザベス女王から、ナイトの称号を授与される。
今回は、ただ、レースの展開を楽しむだけで無く、国際的な陰謀と、それにまつわる『007』もどきのエイジェントなども絡み、サスペンス映画に仕上がっています。
日本の風景は正に外人好みの「フジヤマ、ゲイシャ」的ですが、最初のレースの舞台となる都内の繁華街は、看板のネオンサインの文字を読んでいるだけでも楽しめます。
歌舞伎座の表には「連日公演 二十六日初日」の垂れ幕が下がっていますし、車同士のお相撲も出てきます。また、超ハイテクな“ウオッシュレット”もユーモアたっぷりに紹介されています! 夜の街中を走る車に反射するネオンの光を正確に描写するため、新しいソフトを開発したそうですが、見事でした。 石油産業を巡る、スパイ・アクション映画の筋書きは巧妙に作られていますが、お子様にはちょっと難しいのでは、と心配しましたが、分からなくても十分に楽しめる映画です。 いつも、ピクサーの映画では、本編が始まる前に短いアニメ映画が上映されます。 今回は『トイ・ストーリー 3』の後日談として、『ハワイアン・バケーション』が上映されました。家族がハワイへ出掛けた留守のトイたちのほのぼのとした物語です。 まず映画の冒頭、「ピクサー25周年記念」のテロップが出ます。私が、ピクサーに嵌まり始めたのは『モンスターズ・インク』(2001)からで、『レミーのおいしいレストラン』(2007:ネズミが努力して、シェフになるお話!)以外は、全部観ています。 これらの中で、SFで、映像も美しく、最後は泣ける『ウォーリー』(2008)がベストだと思います。
原題:CARS 2 2011/アメリカ/ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン配給 監督:ジョン・ラセター 共同監督:ブラッド・ルイス 製作:デニース・リーム 原案:ジョン・ラセター、ブラッド・ルイス、ダン・フォーゲルマン 脚本:ベン・クイーン 声の出演:山口智充、土田大、大塚芳忠、朴王+■美(王偏に路)、戸田恵子 2011/07/30公開 1時間53分 <蛇足> この映画の“挿入歌”として、日本女性3人組テクノポップユニット“パフューム”が『ポリリズム』を歌っています。 ■『ツリー・オブ・ライフ』 8月18日は今年最高の暑さの中、「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで12:50からの『ツリー・オブ・ライフ』を観に出掛けました。 8月の3本目として、他に観るべきものが無かったということと、「第64回カンヌ映画祭パルムドール(最高賞)受賞作品」などと巷で騒がれていることとで観に行った次第。上映は、スクリーン05:座席数:174に入りは40人ほど。何故かオバサンが目立ちました。 物語: 敬虔なクリスチャンで、慈悲深く子どもを可愛がる母親と、男は強くなければ成功しないと常に厳しく鍛える父親に育てられた3人兄弟の長男、ジャックは父親の期待通りに人生に成功する。 が、何となく心むなしく、ある日、人間とは、家族の絆とは何だったのかと回想、この扉の中で子どもの頃の家族たちと巡り会い、癒やされていく。
粗筋は以上のようですが、映画では複雑、且つ抽象的に描かれているので、観る人によってかなり解釈も変わってくるかと思われます。 先ず、最初から「ヨブ記38章」の一節や、「生き方にはふたつある−、世俗に生きるか−、神に委ねるか、どちらか選ばなくては」などと頻繁に「神」や「主」という単語が出てき、ちょっとたじろぎました。 これは、一種の父子愛情物語とも受け取れますが、富と名声を勝ち得ようと努力しているのにサッパリうだつが上がらず、いつも苛立っている父親が、そのフラストレーションの捌け口を3人の男の子や、さらには奥さんに向けているようにも受け取れました。 その後、自分が勤めている会社が倒産、しょんぼりし、子どもと妻に謝り、家庭に平和が訪れます。が、ちょっと中途半端で、残念ながら感動にまでは至りませんでした。 ひょっとすると、これは宗教映画で、キリスト教国の人たちの切り口で観たらば、彼らは私が感じない感銘を受けるのではないか、とも考えました。 この映画は、「理解することよりも、体感することを求められる」との評論もありました。 途中、創世記から生命誕生までの美しいSF的映像が20分ほど挿入されます。 原題:The Tree of Life 2011/アメリカ/フォックス・サーチライト・ピクチャーズ AND リヴァー・ロード・エンターテインメント提供 脚本・監督:テレンス・マリック 製作:サラ・グリーン、ビル・ポーラッド、ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、グラント・ヒル 出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステイン 2011/08/12公開 2時間18分 ◇ 今回、初めて映画館で手に入れたチラシ。 別冊歴史読本『やっぱり宮部みゆきの怪談が大好き!』に刺激されて、“本所七不思議”「置いてけ堀」のカッパ像に会いたくなり、8月23日は浅草の観音様お参りの後、錦糸町まで足を伸ばしました。 昼食に寄った江戸時代からの老舗うなぎ屋『やっこ』の前のバス停「浅草一丁目」から、「東京→夢の下町」バスが錦糸町駅に向けて通っていることが分かり利用しました。 また、過日、web上で偶然、錦糸町駅ローカルにある人形焼屋「山田家」を発見しました。このお店の人形焼は宮部みゆきの好物だそうで、ここの包装紙に描かれている“本所七不思議”の絵(宮尾しげを画)からヒントを得て『本所深川ふしぎ草紙』を書き、吉川英治文学新人賞を受賞したとのことでした。 そんなわけで、先ずはそのお店に寄り、人形焼を購入(10個入りで630円)、そこのオバサンとちょっと宮部みゆき談義をし(直ぐ近くにお住まいの由)、最後に“カッパ像”の場所を教わり、再出発しました。
その像は、大きな通りを挟んで反対側、ビルの谷間の「錦糸堀公園」の一角にありました。
カッパ像の目線の先は高層ビル、その先は錦糸町駅、そしてその先には・・・・。
「カッパ像」、「目線の先」の写真を添付します。
こんなに賑やかになっては、とても妖怪が出るチャンスはなさそうです。
結局、『ばんば憑き』の後、続けて『おそろし』、『あんじゅう』と読了。
これで、宮部みゆきの時代物は全部読んだことになります!(笑)
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