宮部みゆきの『おそろし』、『あんじゅう』に続いて、『ばんば憑き』を読了。これで彼女の時代物は全部読み終えたかと思ったのも束の間、分厚い『おまえさん(上)(下)』(講談社文庫 2011年9月22日発行)が発売になり、早速、これに取りかかった途端、グレッグ・イーガンの『プランク・ダイヴ』(ハヤカワ文庫SF 2011年9月25日発行)が発売になり、即、これも購入。急に忙しくなりました。 『おまえさん』は、『ぼんくら』、『日暮らし』に続くシリーズ物。大分、登場人物も増え、お話も広がって来ますが、何とかハッピーエンド。 そして、早速、イーガンに取りかかったのですが、矢張りこれが大変な難物。やっとどうにか読み終えましたので、これに収録されている中短編7本の概要を簡単にご紹介させて頂きます(私の理解が間違っているものがあるかも知れませんが、お許しを)。 ・ 『クリスタルの夜』(2008) クリスタル・ベースの巨大コンピュータ中に作られた、バーチャル世界。そこに環境をいろいろと変え学習能力を高速化した仮想生物を育成する。やがて、その生物が人知を超えたとき・・・。 ・ 『エキストラ』(1990) ドナー用に作られた若い肉体を持つ幾つものクローン。ある日、実験の成功を機に自分の脳をこのクローンに移植したが……。 ・ 『暗黒整数』(2007) 抽象的な数学が、現実世界に影響を与えるという物語。あるとき、同じ空間を共有する平行宇宙との間に干渉が起こり、お互いを攻撃し合うという危機に直面するが……。 ・ 『グローリー』(2007) 遥か遠くの星。異星人の遺跡で発見されたタブレットには、未知の数学定理が超立方体で記載されてあった。 ・ 『ワンの絨毯』(1995) “人間宇宙論”の思考を否定するために、宇宙に知的生命を求めて出掛けるが、その先で発見されたのは広大な絨毯状の生物。果たして、これに知性はあるのか……。 ・ 『プランク・ダイヴ』(1998) 生きて帰れないことを承知で、自分の分身をブラックホールにダイヴさせるが……。 以下のURLで、コーネリアのブラックホールツアーをCGで見ることができます。 http://gregegan.customer.netspace.net.au/PLANCK/Tour/Tour.html ・ 『伝播』(2007) 月面上から発射されたナノマシンが、20光年彼方の惑星上でロボットを2体作成する。それに意識を送り込み、その惑星上に立つ男女二人。そこで、彼が取ろうとした行動は・・・。
この中短編集には、特に“ハードSF色の強いもの”が集められているそうですが、本当に難解なものばかりです。果たして、現代科学の全てを熟知していれば、これらの小説の内容は完全に理解できるものなのか、この本を読みながら何度も考えさせられました。 「大森望さんは『ディアスポラ』の解説で“わからないところはばんばん飛ばす”という読み方を勧めている」そうですが、一気に全部読み終えてしまうのであれば未だしも、毎日、少しずつ寝る前に読むのを習慣にしている私には、一旦途切れると、前に何が書いてあったのかわからなくなり、かなり遡って読み直さなければならず大変でした。 <<余談>> 先日発売された『日経サイエンス 12月号』の特集は『実在とは何か』。その中の『数学が世界を説明する理由』には、「数式は世の中の事象を表記できるだけでなく、マクスウェルの方程式のように、当時知られていないものまでも表現可能である」というようなことが書かれてあり、また、「そこでアインシュタインは考えた。『経験とは独立した思考の産物である数学が、物理的実在である対象と、これほどうまく合致しうるのはなぜなのか?』」の一文も載っています。 『暗黒整数』や『グローリー』などは、この辺と関連があるのかも知れません。 今月ご紹介するのも三作品なのですが、なんとすべてSF映画です(笑) 『猿の惑星 創世記』『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』『カウボーイ&エイリアン』 ■『猿の惑星 創世記』 野暮用でちょっと出遅れましたが、10月11日(火)には、、12:15からの『猿の惑星 創世記』を観に「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。 劇場はスクリーン04、座席数:196に対して入りは30人程度。
物語: 場所はサンフランシスコ、ジェンシス製薬会社の研究所。 アルツハイマーの新薬“NLZ112”開発に専念している若き科学者、ウイルは、チンパンジーを使った実験で脳の活性化を証明、成果を上げる。が、その直後、その猿は凶暴化し射殺される。しかし、その猿は密かに子どもを生んでいたために荒れていたことが判明、ウイルは、その子猿を保護するため自宅に連れ帰り、“シーザー”と名を付け育てる。 また彼は、アルツハイマーの父親、チャールズにもその医薬品を注入、一時期、成果が得られたが、また元に。そして彼は、更に強力な“NLZ113”を開発する。 成長したシーザーは、母親から遺伝的に高度な知能を引き継いでいた。ある日、シーザーはチャールズを助けるため、隣人に暴力を振い、捕らえられ、霊長類保護施設に収容されてしまう。そこで虐待されたシーザーは、人類の愚かさに失望し立ち上がる。 やがてシーザーは収容されている猿たちのリーダーとなり、全員を解放、脱走を図る。 かくして、猿たちと人類の戦いが始まる。 一方、“NLZ113”は、猿には有効であるが、人類にとっては感染し、死をもたらす危険な代物であることが段々と分かってくる。 『猿の惑星』シリーズ、第6作目ですが、本作は第1作のプリクエール。 「何故、猿が高度の知能を得て、人類に取って代わったのか」の物語。 前半はやや冗長な感じもしますが、段々とテンションが上がってきます。 帰宅したらば、丁度、テレビで一番最初の『猿の惑星』が放映されており、最後の10分ばかりを観ることができました。この第一作に出てくる猿は全て俳優のメーキャップに頼っていましたが、今回の映画に出てくる猿は全てCGI+パフォーマンス・キャプチャー。何十匹となく出てくる猿が非常にリアルで、恐ろしく、夢でうなされそうです。 今回の映画の最後と、第1作の冒頭の間には未だちょっと空白があるような気がします。 エンドロール中に、意味深な1シーンが挿入されますが、もしかすると、プリクエールの「続」があるのかもしれません。 この映画を、父と子の物語だとか、人種差別問題だとかと評論している向きもありますが、余り難しく考えなくとも、楽しめる映画に仕上がっています。『創世記』とあるからには、ひょっとすると宗教的な意味合いもあるのでしょうか? 日本語字幕は、久しぶりの戸田奈津子さんでした。 最後に、過去の「『猿の惑星』シリーズ」を上げておきます。 『猿の惑星 Planet of the Apes』 (1968) 『続・猿の惑星 Beneath the Planet of the Apes』(1970) 『新・猿の惑星 Escape from the Planet of the Apes』(1971) 『猿の惑星・征服 Conquest of the Planet of the Apes』(1972) 『最後の猿の惑星 Battle for the Planet of the Apes』(1973) この他に、第1作のリメイク版としてティム・バートン監督による『猿の惑星Planet of the Apes』(2001)もあります。 原題:Rise of the Planet of the Apes 2011/アメリカ/20世紀フォックス配給 監督:ルパート・ワイアット 脚本・製作:リック・ジャッファ、アマンダ・シルヴァー 製作:ピーター・チャーニン、ディラン・クラーク 製作総指揮:トーマス・M・ハメル 出演者:ジェームズ・フランコ、フリーダ・ピント、ジョン・リスゴー、 ブライア ン・コックス、アンディ・サーキス、トム・フェルトン 2011年10月7日公開 1時間46分 ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。 ◇ 今回、初めて映画館で入手したチラシ(沢山ありました)。 ■『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』 20日には、寒いどんより天気の中、12:05からの『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』を観に、何時もの「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」に出掛けました。劇場は、座席数:491のスクリーン01。3DでULTIRA上映のため+500円になりました。未だ、上映一週間目なのに、入りは僅か7人! 物語: 時は現代。北極海の氷の中に埋もれた飛行物体が発見される。政府の調査員が外壁を穿ち中に入ってみると、氷の奥に星のマークが付いた“キャプテン・アメリカ”のシールド(盾)が見付かる。 ここで、お話は、1942年のアメリカへと遡る。 愛国心に溢れるスティーブ・ロジャーズは、ナチスと戦うために兵士になることを希望、何度も兵隊検査を受けるが虚弱な体格のためすべて不合格。 しかし、ある日、戦略科学予備軍に属するアースキン博士から「超人兵士」を作り出す血清の計画に誘われ、受諾、素晴らしい肉体を得ることに成功する。 が、その直後、この実験を阻止せんと画策する敵、ナチス側、ヒドラのスパイにより、博士は暗殺、装置は破壊される。超人となったロジャースはこのスパイを追跡、捕らえたことで一躍有名人となり、特殊なコスチュームを纏わされ“キャプテン・アメリカ”と国中からもてはやされるが、戦場には出して貰えない。 しかし、ある日、彼の親友が属する部隊が全員、ヒドラの捕虜になったことを知り、一人、敵基地に潜入、部隊の救出に成功する。 かくて、彼とヒドラとの戦いが始まる。そして、物語は一番最後で、冒頭の北極海のシーンと結びつく。 そして、ニューヨークのアパートに住む、新婚早々の二人を巻き込み、妖精対魔法使いの戦いが始まります。
全体としてストレート、真面目な作りで、終始、映画に没頭できました。 超人といっても“キャプテン・アメリカ”は、スーパーマンのような超能力者ではなく、普通の人間が持っている能力が強化された程度なのも好感が持てます。 監督自身、「オリンピックの金メダリストが、能力を30%高めたらばキャプテン・アメリカになれるだろう」と言っています。 新聞の評論に「痩せた青年が、CGで筋骨たくましい姿に変わるところは素晴らしい」と書かれていましたが、調べたところ、矢張りこれは逆で、ロジャース役のクリス・エヴァンス自身が筋骨隆々で、痩せた青年の方がCGであることが分かりました (痩せた小柄の青年の身体に、縮小したクリス・エヴァンスの顔を貼り付けた由)。 ロジャースの上官、フィリップス役で出演している、トミー・リー・ジョーンズ(『メン・イン・ブラック』の“K”役で出演)が、渋く好演しています。 その他、今回の3Dはあえて3Dカメラの使用を避け、広角の2Dカメラで撮影した映像を3D化したため、強度の立体感覚が避けられたようで、目に優しい3Dになっています。 エンドロール終了後、もう一シーンあり、映画『マイティ・ソー』(2011)の最後にもちょっと顔が出てきたアベンジャーのリーダー、ニック・フューリーが、“マイティ・ソー”と一緒に出てきます。そして、「『アベンジャーズ』2012年8月公開」のテロップが出て、映画は終了します。 全編を通して、1942年頃の懐かしき、よき時代の映像です。
原題:Captain America: The First Avenger 2011/アメリカ/パラマウント ピクチャーズ ジャパン配給 監督・製作総指揮:ジョー・ジョンストン 脚本:クリストファー・マルクス&スティーヴン・マクフィーリー 原作:ジョー・サイモン、ジャック・カービー 製作:ケヴィン・フィージ 製作総指揮:ルイス・デスポジート、ナイジェル・ゴステロー、アラン・ファイン、 スタン・リー、デヴィッド・メイゼル 2011/10/14公開 2時間4分 ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。 ■『カウボーイ&エイリアン』 25日は12:45からの『カウボーイ&エイリアン』を観に「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。 劇場は先週、『キャプテン・アメリカ』を観たスクリーン01。従って、ULTIRA上映なので、また+200円。入りは、僅か十数人。 『キャプテン・アメリカ』は、もう既に小さい劇場に変わり、朝と夜の計、1日、3回の上映になっていました。 物語: 時は南北戦争終結8年後の1873年。 灼熱の西部の荒野。倒れていた一人の男が立ち上がる。男は記憶を喪失しており、何故か左腕には金属製の腕輪が嵌められていた。 やがて、町に辿り着き、酒場で酒を飲んでいると、保安官が現れ、お前はお尋ね者のジェイク・ロネガンだと言われ逮捕されてしまう。保安官が、正にロネガンを馬車で移送しようとしていたそのとき、空から未知の飛行物体が襲来、町の住民は拉致され、家は炎に包まれる。が、ロネガンが腕輪を飛行物体に向けると、強力な光線が発射され、それは撃墜される。 一方、嘗て、ロネガンに金貨を強奪された恨みを持つ町のボス、ダラーハイドは、ロネガンを締め上げようとしていたが、この新たな敵の前に手を組み、カウボーイたちと共にエイリアンたちが飛び去った荒野の果てを目指して出発する。 途中、この捜索隊に加わるネイティヴ・アメリカンたち。 果たして、彼らはエイリアンの基地を発見し、拉致された町の人々を無事助け出す事ができるのであろうか。 また、エイリアンの地球侵略の目的は何か。そして、ロネガンの腕輪は……。
グラフィック・ノベルの原作があるようですが、スピルバーグ(製作総指揮)やロン・ハワード(プロデューサー)、ジョン・ファヴロー(監督)たちが、高価なダニエル・クレイグやハリソン・フォードを使って、よく、こんな馬鹿げたタイトルの映画を真面目に作ったものだと感心しました。しかし、残念ながら、大変面白かったと言わざるを得ません! 西部劇の常道をよく弁えており、罪人なのに釈放されたロネガンが、再び平和を取り戻した町を後に、また一人淋しく馬に乗り荒野に旅立っていく最後は、どうしても『シェーン!カムバック!』と叫びたくなりました(『シェーン』1953)。 それにしても、『エイリアン』(1979)以降(?)、エイリアンの形状が画一化しているような気がします。そろそろ、新種のエイリアンが現れても良いのでは・・・。 先日の『猿の惑星』に続いて、今回も字幕翻訳は戸田奈津子さん。彼女の翻訳は、会話の長さと、字幕を読む長さのタイミングが良く揃っていて、なんだか全部英語が分かってしまったような気持ちにさせられます。最近、彼女は、ご自身、お気に入りの作品しか手掛けないような気がします。 余談ですが、この映画の向こうを張って作られたのでしょうか、日本の戦国時代を舞台にした日活映画『エイリアンvsニンジャ』が7月末から上映されました(マイナーなためか上映館が限られ、今ひとつ話題性に欠けました)。この映画がアメリカでリメイクされるという噂もあります。 原題:Cowboys & Aliens 2011/アメリカ/パラマウント ピクチャーズ ジャパン 監督・製作総指揮:ジョン・ファヴロー 脚本/製作:ロベルト・オーチー、アレックス・カーツマン 脚本: デイモン・リンデロフ 脚本/スクリーン・ストーリー:マーク・ファーガス、ホーク・オストビー スクリーン・ストーリー:スティーヴ・オーデカーク 原作/製作:スコット・ミッチェル・ローゼンバーグ 製作:ブライアン・グレイザー、ロン・ハワード 製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、デニス・L・スチュワート、ボビー・ コーエン、ランディ・グリーンバーグ、ライアン・カヴァナー 出演:ダニエル・クレイグ、ハリソン・フォード、オリヴィア・ワイルド、サム・ ロックウェル、アダム・ビーチ、ポール・ダノ、ノア・リンガー 2011/10/22公開 1時間58分 ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。
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