『ディアスポラ』(グレッグ・イーガン著、早川文庫:SF 1531、2005年9月30日発行) を、即、発売と同時に購入、読み始めたのですが、何が書かれているのか分からず挫折。 しかし、最近発売になった『プランク・ダイヴ』(グレッグ・イーガン著、早川文庫:SF1826、2011年9月25日発行)を読んでから何となく自信が付き、再チャレンジ。 どうにか、目標の2011年12月31日の深夜に読み終えました。 難関は、124ページまでの第一部。それを過ぎると、何とか付いていけました。 それにしても、宇宙、数学、化学、等々の最新の理論が満載。それも、あるところまでは真実であり、あるところから先はイーガンのフィクション。 「解説」の大森 望さんがいわれたように、「わからないところはばんばん飛ばす」のはこの本を読み通すためのコツではありますが、ジャンプしては勿体ない。意味は分からなくても、せめて字面だけも全部読む必要があります。一度目には分からなくても、遡って読み直すと分かってくるのが不思議です。イーガンは数学の博士号を持っているそうなので、いくら足掻いても、100%理解することは不可能なのでしょう。(笑) 時は三十世紀。殆どの人類は肉体を捨て、人格と記憶をソフトウエア化して、コンピュータ内の仮想都市“ポリス”で生活している。 2975年5月15日、ソフトウエアから孤児として誕生した主人公“ヤチマ”が、4953年4月3日(?)までの間、“トカゲ座”のガンマ線バーストから地球の生命体を救おうと奮闘したり、また、この予想外に早く発生したガンマ線バーストの原因を探求するため、より高度な知的生命体との接触を求めて全宇宙、全次元を股に掛けて冒険したりする波瀾万丈の物語です。 彼を取り巻く、同じくソフトウエアから誕生した他の者たちとの人間(?)関係も巧妙に描かれています(ソフトウエア同士の愛の描写も・・・!)。 何しろ、“ヤチマ”は、永遠の命と、1000のコピー(クローン)を全宇宙に“ディアスポラ”(離散・移住)するほどですから、物語は永遠に続くものと思われます。 この本の読了寸前に、前から気にしていた『都市と都市』(チャイナ・ミエヴィル著、早川文庫:SF1835、2011年12月25日発行)が発売され、購入しましたので、余計『ディアスポラ』読了に、拍車が掛かりました。 読まれた方もおられると思いますが、2012年1月9日、朝日新聞朝刊に『記録は永遠の生命か』という記事が載りました。(以下要約) 「マイクロソフトのベル・ゴードン主席研究員は、“ライフログ”の研究を始め、首から提げた自動的に20秒ごとにシャッターが下りるデジカメで、あらゆるものを記録し始めた。彼の話によると、人生の全体験を記録するのに必要な記憶容量は1〜10テラバイト程度で、『自分の死後、記録を元に作ったデジタルな分身と子孫が対話するようなことも、技術的には可能になりつつある』とのこと。 また、『ライフログ』の著者、美崎薫さんは、2000年から昨年にかけて、天井や壁、床下にハードディスクを埋め込み、家中にカメラを設置した『記憶する住宅』に住んだ。が『封印したい記憶が生の状態で迫ってきた時に、人間は耐えられるだろうか。・・・“忘れる”ための機能が重要になってくる』」 今月ご紹介する映画は以下の3本です。
『宇宙人ポール』『聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―』『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』
■『宇宙人ポール』
1月5日は寒い中、渋谷「シネクイント」まで、12:40からの『宇宙人ポール』を観に行ってきました。この「シネクイント」は「パルコ3」の8階にある滅多に行かない小さな映画館ですが、過去、『キング・コング』の雌版、『クイーン・コング』(1976)や、シガーニー・ウィーヴァーが主演した『ギャラクシー・クエスト』(1999)など、SFマニアが喜ぶ映画を上映してくれる有り難い映画館です。入りは、30名程度。
この映画は、東京都内では現在、4館しか上映されていないようです。
物語: 時は1947年、場所は、ワイオミングの草原に建つ一軒家。夜、ドアの隙間から差し込む怪光。しきりに表に出たがる犬のために、少女はドアを開けてやる。光に向かって駆けていく愛犬に、少女は戻ってこいと呼びかける、「ポール!」。 一転して、シーンは60年後。場所は、サンディエゴ。あこがれの“コミコン”見物のために初めてアメリカへやってきたSFオタクの英国人男性、グレアムとクライヴの二人は、ホテルのボーイに「新婚旅行ですか?」とからかわれたりする。 一夜明けて、二人はもう一つの夢であったアメリカ西部のUFOスポット巡りのために、大きなキャンピングカーをレンタルし、サンディエゴを出発する。 夜道、エリア51を通過したところで、猛スピードの車が、彼らの車を追い抜き、その先でクラッシュする。救助に赴く二人。しかし、そこで遭遇したのは宇宙人!彼は“ポール”と名乗り、「私は60年前、宇宙船の事故で墜落、基地に囚われ、そこで人類のために、いろいろな提案をしてきたが、ここへ来て、遂に軍は私の解剖を決めたので、逃げ出してきた。迎えの宇宙船が来ることになっているので、その地点まで車で連れて行って欲しい」と二人に哀願する。 かくして、“ポール”を乗せた珍道中が始まる。それを追う、これまた不思議な人々。 果たして、グレアムとクライヴはポールを無事目的地まで連れて行き、迎えの宇宙船に乗せてやることができるのだろうか・・・。 息もつかせぬ連続のアクションと、ジョーク(でも、半分は下ネタ!?PG−12指定)。 それに、各所に現れる、過去のSF映画のパロディ。 英米のカルチャー・ギャップや、アメリカでは通じない英語がいくつも出てきたり、キリスト教原理主義への“おちょくり”など、正に大人向きの内容。 最後の所で、一番最初のワイオミングのシーンと話が結びつき、ほろりとさせられます。 この主演の二人は、映画『タンタンの冒険』で、刑事、デュポン&デュボン役を好演したニック・フロストとサイモン・ペグで、英国では有名なコンビだそうです。また、この『宇宙人ポール』の脚本も、この二人で考えて書いたとか、気が合うわけです。 私の左前の席に、アメリカ人(?)男性二人が座りましたが、日本人が笑わないところでも良く笑っていました。映画を観ながら、この二人はひょっとしてと、余計な心配も・・・。
シガーニー・ウィーヴァーがカメオ出演。最初のうちは声だけでしたが(何故か声だけで直ぐ彼女だと分かりました)、一番最後に華麗に出現。しかし、それも、はかなく・・・。
また、スピルバーグも、パターソン基地のポールとSF映画(『E.T.』?)のシナリオを電話で相談しているシーンで、声だけの出演をしています。 web siteによると、某旅行会社が“『宇宙人ポール』7日間公式ツアー”を実施している模様。 この映画は、英国ではもう1年ほど前に公開されていて、好評だった由。 上映時間:1時間44分は丁度良い長さで、期待値以上の映画でした。
蛇足ですが、「キネマ旬報 1月上旬号」での三人の評論家の評価は、なんと★★★★★ ★★★★ ★★★★ と、抜群!!!
原題:PAUL 2011/米・英/ユニバーサル映画 監督:グレッグ・モットーラ 脚本:サイモン・ペグ、ニック・フロスト 製作:ニラ・パーク、ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー 製作総指揮:ライザ・チェイシン、デブラ・ヘイワード、ナターシャ・ワートン、ロバート・グラフ
出演:サイモン・ペグ、ニック・フロスト、セス・ローゲン、ジェイソン・ベイトマン、シガーニー・ウィーヴァー
2011年12月23日公開 上映時間 1時間44分 (因みに、この映画は、『2011 キネマ旬報ベスト10』<読者投票>で26位と大健闘) ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。
★ | 『テルマエ・ロマエ』(日) | 2012年 4月28日 |
| 同名コミックの映画化。実写版。渋谷「シネクイント」で上映。 古代ローマ帝国の設計技師、ルシウス(阿部寛)が現代日本の銭湯にタイムスリップ。 http://thermae-romae.jp/ |
■『聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―』 1月13日は、12:15からの『聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―』を観に、いつもの「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。座席数:180に観客は17人。矢張り、殆どが高齢者。 物語: 時は1939年。「日独伊三国同盟に加盟すると、アメリカを敵に回すことになる」と、常々、山本五十六など海軍側は加盟に反対し続けてきた。しかし、ドイツが破竹の勢いでヨーロッパを席巻するに及び、官民ともに加盟賛成派が激増、遂に山本五十六もそれを了承するが、やがて、予想通りアメリカと開戦せざるを得ない状況に追い込まれる。 しかし、開戦しても、ある時点で講和を結びたい彼は、初戦で有利に駒を進めようと真珠湾攻撃を画策するが、手違いで、宣戦布告前に攻撃は開始されてしまう。 その後、次から次へと、人間関係も絡んで、ボタンの掛け違いが続発、戦況は急激に悪化していく。 やがて、東京が米軍に爆撃され軍部にも焦りが見えてくる。
今まで、真珠湾攻撃を巡る、いろいろな解説本が発売されてきましたが、この映画はその一つとして、反戦派の山本五十六が、何故、開戦の火蓋を切らねばならなかったのか、という点に絞られており、真珠湾攻撃そのものよりも、山本五十六を取り巻く社会的背景や人間関係に重点が置かれています。 役所広司演ずるところの山本五十六が、上司として、父親として、かなり格好良く、リーダーのお手本のように描かれています。 また、彼の最後も、昔、聞かされていた通りでしたし、襲撃してくる敵機の型名まで覚えていたのには我ながら驚きました。 1月は、『宇宙人ポール』の後、観るべきSF映画もなく、ご贔屓の役所広司と阿部寛、それに、70年ぶりに“真珠湾攻撃”でも観てみようか、といった軽い気持ちで出掛けましたが、正に映画全編が私の生涯と重なり、熱中して観てしまいました。 余談: 今から70年ほど前、戦意高揚とばかりに、小学校(当時は国民学校)の全員が真珠湾攻撃の映画『ハワイ・マレー沖海戦』(1942年12月3日公開)を観に、映画館へ連れて行かれた記憶があります。 勿論、白黒映画で、大河内伝次郎、藤田進、原節子など懐かしい俳優が熱演、そして特撮は、なんと円谷英二。「真珠湾沖の海は、後楽園球場に大きな水槽を作って撮影したが、夏場だったのでトンボが飛んできて困った」というような彼の話を読んだことがあります。 今回の映画は、ミニチュアモデル+CGで、リアル感充分でした。
2012/日本/東映配給 監督:成島出 脚本:長谷川康夫、飯田健三郎 製作:小滝祥平 原作:『聯合艦隊司令長官 山本五十六』半藤一利著(文藝春秋) 監修:半藤 一利 出演:役所広司、坂東三津五郎、柄本明、柳葉敏郎、吉田栄作、阿部寛、中村育二
2011年12月23日 上映時間140分
■『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』 1月27日は寒くとも上天気。11:55からの『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』を観に、いつもの「ワーナー・マイカル・シネマズ 港北ニュータウン」まで出掛けました。観客は20人程で予想以上。 物語: モザンビークのミッションで“ちょんぼ”をしでかし、英国諜報部MI7をクビにされたジョニーは、傷心を癒やすためチベットの僧院で精神修養とカンフーの習得に励んでいる。 その僧院を卒業する丁度そのとき、ジョニーに帰国とMI7復帰要請が本国から届く。 新しいミッションは、今回の英中首脳会談に出席する中国首相暗殺計画の情報を入手したので、それを阻止し、犯人を捕まえること。 かくて、ジョニーの活躍が始まる。舞台は、チベットからロンドン、香港、スイスへと移り変わる。 犯人は3人。やがて、自分にまで嫌疑が降り掛かって来る。 ジョニーは、この苦境を切り抜け、中国首相を守ることができるのか・・・。
『ジョニー・イングリッシュ』(2003)に続く二作目。 今月は3本目に、特に観るべき映画がなかったのと、キネマ旬報の評価が ★★★ ★★★★ ★★だったので出掛けてみた次第。 昨年末から上映されている『ミッション・インポッシブル』と、今年の末に上映予定の『007』に挟まれたスパイ映画。上映のタイミングもよかったと思います。 過去の『007』などのパロディも“天こ盛り”で、予告編から期待していた内容より、遥かに楽しめました。各所で、チベットの僧院での修行の成果が現れ、笑わせます(初めは醒めた目で観ていましたが、後半、気がついたらば大笑いしていました)。 『007』並に披露される“スパイ・グッズ”も、なかなか凝ったものばかり。 今回のヒロイン役、行動心理学者、ケイトが使う「表情から思考を読み取る装置」は、現在の技術をもってすれば実現可能なのではないかと思わせるばかり。 1月は、図らずも『宇宙人ポール』に続いて、イギリスのコメディ映画を2本観てしまいました。 原題:Johnny English Reborn 2011/イギリス/東宝東和配給 監督:オリヴァー・パーカー 製作:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、クリス・クラーク 製作総指揮:デブラ・ヘイワード、ライザ・チェイシン、ウィリアム・デイヴィス 原案:ウィリアム・デイヴィス 脚本:ハーミッシュ・マッコール 出演:ローワン・アトキンソン、ジリアン・アンダーソン、ドミニク・ウェスト、ロザムンド・パイク、ダニエル・カルーヤ、ティム・マッキナリー、リチャード・シフ 2012年1月21日公開 1時間41分 ◇ 今回、初めて映画館で観た予告編。 ◇ 今回、初めて映画館で入手したチラシ。 ◇ その他、旧作3D版のチラシ。 余談: 1月30日にwebでSF映画を探していましたらば、下記siteで“インド版ロボットSFミュージカル映画”『ロボット』を発見しました。 なんだか分かりませんが、楽しそうな映画です。 5月12日から、渋谷TOEIで上映される模様。 インドのミュージカルは、『踊るマハラジャ』(1995)などで、一目置かれているようですが・・・。 http://robot-movie.com/ |