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SF読者のための量子力学入門

古典量子力学 Classic Quantum Mechanics
6. シュレーディンガー方程式 Shroedinger's Equation

白田英雄

量子力学を学ぼうとするとどうしても数式と縁が切れません。
しかし、このコラムは原則として数式を使わないで量子力学を説明しようという企画ですので、その主旨にのっとって説明をしていきたいと思います。
その上での注意です。上にも述べましたように、量子力学は本質的に数式を用いないと理解ができないものなのですが、それを数式なしで説明しようとするために、どうしても説明が天下り的になってしまうところがあると思います。そこは、そんなものか、と納得してもらうか、もしくはのぞましいのは簡単な入門書みたいので数式をちゃんと追うことです。そのことは念頭に置いておいて下さい。
のっけからこんな書き出しになってしまったのは、なにせ、量子力学の基本方程式であるシュレーディンガー方程式が今回のテーマだからだったりします。
方程式を式を使わないで説明する、というわけですからちょっとわかりにくいかもしれませんね。
さて、前回までで出てきた電子や光のことをちょっと整理しておきましょう。

    • 波の性質と同時に粒子としての性質を持つ
    • 黒体から放射されるエネルギーはとびとびの値を持つ
  • 電子
    • 粒子の性質と同時に波としての性質を持つ
    • 原子核のまわりをまわる電子の角運動量(もしくはエネルギー)はとびとびの値を持つ

共通していえることは波と粒子の両方の性質を持っていて、なおかつとびとびのエネルギーを持つもの、ということになります。まぁ、粒子の性質を持っているなら、粒子1個のエネルギー、2個のエネルギーというぐあいに数えられますから、とびとびの値になるのはうなずけると思います。肝は波と粒子の性質を持っているということで、このような「もの」のことを量子といい、量子を扱う力学を量子力学というわけです。ここでようやっと量子力学という名前が登場しました。
さて、とりあえずマックスウェルの方程式から波動の方程式を作ることができる光のことは置いておいて、電子を物理的に定量的に扱う方法を考えてみましょう。
古典的には電子は粒子ですからニュートンの運動方程式に従うはずです。ニュートンの運動方程式というのは、物体に与えられた力が物体の質量と加速度の積で表されるというものです。加速度は速度を微分したもので、速度は位置を微分したものなので、ニュートンの運動方程式は位置についての2階の微分方程式と言います。
文系の方はいきなり微分などと出てきてとまどわれてるかもしれませんが、微分は要は変化の割合のことだと思って下さい。

実際に電子の運動方程式を立てるときには、このニュートンの運動方程式のままでは都合が悪いので、他の形式を使うことになります。解析力学という分野ではニュートンの運動方程式のかわりにラグランジュの運動方程式とかハミルトンの正準方程式などと呼ばれているものが使われます。結局はニュートンの運動方程式と同じことを表してるのですが、もっと自由が効くかたちとなっているのが特徴です。このうち、ハミルトンの正準方程式には、運動エネルギーとポテンシャル・エネルギーの和(つまり全エネルギーですね)の形であらわされるハミルトニアンというものが出てきます。ポテンシャル・エネルギーというのは重力や電磁力のように中心に向かうような力の場の中で、どれだけの高さにいるか、ということを表すエネルギーです。位置エネルギーみたいなものですね。これだと、原子の中の電子みたいに原子核からの電場に拘束されている状態を表すのに都合よさそうです。
全エネルギーがハミルトニアンだよ、という式で、全エネルギーを時間の微分に、ハミルトニアンの中の運動量を空間の微分に形式的に置きかえて、その両辺と関数を掛けあわせてやります。(実際は虚数単位とかプランク定数を掛けてやる必要がありますが。) 位置がポテンシャル・エネルギーの式にあったならそのままにしておきます。(ここでいう関数というのはこの段階では具体的な形がない「なにか」なんだと思ってください。)
はい、シュレーディンガー方程式のできあがりです。

これは関数の値を求める方程式ではなくて、関数の式そのものを求める方程式になっています。
シュレーディンガー方程式を作るときに掛けた関数(厳密にはこの関数を微分するような形にしたわけですが)がどのような形になっているかを解いてその形を調べると量子力学的な電子の性質がわかります。この関数は波の性質を持っているので波動関数と言います。
まぁ、シュレーディンガー方程式を導くのには、実際にはド・ブロイ波の条件などを満たす波動の方程式を求めていったら、ハミルトニアンから上のような変換をしてやった形になっていたということなのですが……。
ただ、この運動量を空間の微分に置き換えるという操作で簡単に古典力学と量子力学の対応がつくので、この操作のことを量子化と呼んでいたりします。
波動関数は以下のような性質を持ってます。

  • 波の重ね合せができる。
  • エネルギー、運動量、振動数などの量が含まれていない。

次回からこのシュレーディンガー方程式や波動関数についてもっと説明してみましょう。

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