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SF読者のための相対論入門

補遺1・“トリッキー”なパラドックス解題

白田英雄

インサープライズから見た状況のミンコフスキー図は下のようになります。

Qは爆発した瞬間のバトルの基地で、そこから衝撃が光速でひろがっている様子が緑のラインです。

x-t軸はインサープライズ号の座標で、x'-t'軸はインサープライズから見たカリンゴンの偵察艇にとっての座標です。

原点においてカリンゴンの偵察艇とインサープライズはともに衝撃波と出会っています。つまり、緑のラインと交差しています。

Pはインサープライズが衝撃波と出会った瞬間におけるクラックス星系になります。原点とQの距離の3倍のところにPがあります。

インサープライズから見てクラックス星系は静止しているので、クラックス星系はt軸と並行なラインにそって存在してます。そのラインと衝撃波が交差する点Kで、衝撃波がクラックス星系に到達することになります。その時刻はインサープライズにとってはt1になります。これは原点よりも上にありますので、未来の出来事になります。よって、インサープライズはクラックス星系が壊滅する前に超光速移動によって到達することができます。

(超光速移動する、ということは、この図ではx軸に並行な線に沿って移動するということです。)

さて、ここで問題があります。

インサープライズから見たカリンゴン偵察艇にとって、これらの事象はどう見えるのでしょうか。

カリンゴンにとって、Kと同時なラインはx'と並行な線になります。すると、時刻はt1'ということになりますが、これは原点より下にありますから、過去のできごとになります。

つまり、衝撃波が到達した時点において、クラックス星系はすでに壊滅したあとであるので、インサープライズはまにあわないことになってしまいます。

これがパラドクスになっている点です。

このようなできごとの前後関係がひっくりかえってしまうような現象が超光速を認めると発生してしまうのです。これはSFを考える上で回避不能と言われている現象なのです。

相対論では互いの立場を変えても同じことが言えます。カリンゴンを主体にしてミンコフスキー図を描き直してみましょう。

記号や線の色は先程の図と同じにしてあります。

QやPはインサープライズと同じく、カリンゴン艇からは光速の1/2で左側に移動していきます。お互いの距離は、QやPから出ているラインとx軸が交差してる点となります。x軸上で比率は先ほどとおなじになっています。

カリンゴンにとってKはx'軸に平行なライン上の点t1'なので過去の出来事なのですが、インサープライズにとってはx軸に平行なライン上の点t1なので未来のことになるのです。

いや、相対論って本当に不思議ですね。

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