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六畳間シアターより愛をこめて

AVアンプの逆襲

ゾンビ

以下はstereo誌2000年10月号のAudioQ&Aから拾ってきたもの。
Q:AVアンプを購入予定のものですが、2チャンネルのプリ・メインアンプとステレオ再生能力を比べた場合、一体どの程度のものなのでしょうか。
A:結論から申し上げますと、音質は2チャンネルアンプよりかなり劣ります。ピュアオーディオのプリ・メインアンプより少し大きな筐体に、数100Wという出力を受け持たせるのです。当然、各チャンネル間の干渉も増えますし、また、ボリュームやスイッチ等は半導体スイッチが多用され、多機能の場合はさらに、このような半導体スイッチが増えてしまい、しっかりとした音の芯があまりありません。現在の中身と価格からすると、良いパーツを採用することは極めて難しいと言えます。

AV関連のMLや掲示板で、同様の質問(AVアンプで音の良いものを教えてください)というようなQに対して、「AVアンプなんてしょせん・・・・」というピュアオーディオベテランさんのレスで話題が一気に冷え込む、てな例を私も何度か目にしている。

「AVアンプは音楽を真剣に聴くには適さないのか」「2チャンネルアンプに比較してそれ程劣るものなのか」というのが今回のテーマである。

だいたい、ピュア=純粋と自ら名乗ること、これって実は恥ずかしいことではないかな?ピュア派とAV派を言葉で対比してみると、
純粋vs不純
求道的vs享楽的
高価vs安物
フランス料理vsジャンクフード
クラシック・ジャズvsロック・Jポップ
このような構図の左側に自らをあてはめ、右側を蔑み悦に入るという、高慢で型にはまった閉鎖的態度に思えてしまう。昨今のAVを除くオーディオ業界の元気の無さもこのような敷居の高さが一因ではないだろうか。

ピュア派としては、大昔の4チャンネルの反省からか、いまだに「後ろから音が聞こえる」ことに拒否反応があるようだ(一方でDVDオーディオなどと、マルチチャンネルへの未練が見え隠れしたりするが)。だが、近年の映画を観るのに、サラウンド再生するかしないかで面白さは全く異なってくる。そもそも画面外の音像移動を演出の一つとして表現している作品はその狙いを再現するのにサラウンドは不可欠なのだ。

よって、映画を観るためにのみAVアンプを買うなら全く問題なく大満足だが、一方でCDで音楽も本格的に楽しみたいという人は「AVアンプ買って大丈夫だろうか」という不安を抱えたまま(冒頭のような意見を見聞きするとなおさら)ショップを訪れることになる。

AVアンプ攻撃派の論点は以下の2点に整理できる。
1:コスト面 同価格でかけるコストは2ch vs 5ch以上では1chあたりは当然2chの方が高い。よって2chアンプの方が音が良い。
2:信号干渉 AVアンプは映像信号のスイッチ、デジタル信号のデコードなど、音声へ混入するノイズの要素が多い。よってそれらが無い分2chアンプの方が音が良い。

なるほど、理屈である。しかし理屈で説得されて理解はできても納得はできないのが人間というもの。理屈による解説は、生身の人間の体験が見えてこないものだ。たまたまこだわりの店員からこのような論法で、AVアンプを買いに来たのに2chアンプをすすめられ買っちゃったりすると、後々悔いが残る。自分の中で納得できていないし、AVへの魅力を捨てきれていないから。それに当初2chで始め、その後サラウンドの為にプロセッサーや追加チャンネル用パワーアンプを足していくと、ケーブルの接点は増えるし、機材増→縦に積むことによるセッティングの悪影響と、どんどんピュアじゃなくなってしまう。

さて、上記の理屈に私も理屈で反論すると(笑)、コスト面については、いわゆる量産効果、需要と供給という視点が全く欠けている。どんどん売れるAVアンプのパーツ調達コストと、めったに売れない2chアンプのそれでは、後者が不利なのは明らか。単にチャンネル数との反比例ではないはず。それに、いつまでもカタログ定位置の2chアンプと半年サイクルで新製品が出るAVアンプ、メーカーはどちらに開発の主体をシフトさせるだろうか。また、5ch、6chを同時に鳴らすにはそれだけ出力に余裕が必要で、2ch再生にはそれがプラスに働くのではないだろうか。信号干渉という点については、映像機器はAVアンプを介さずに接続すればいいし、また、CDはデジタル入力してCD本体のDAコンバータをスキップすることで、鮮度的にはプラスに働くという利点も考えられる。

理屈はともかく、結局実際の「聴こえ」はどうなのか。アキバの店でゆっくり試聴できるところなんてほとんどないし、自宅のセッティングや部屋の条件ともあまりに違い過ぎている。一番いいのは、自分と同様の部屋条件で既に楽しんでいる友人宅で聴かせてもらう、というのが説得力があるのだろうけど(ホームシアターというのはまだまだ同好の士が身近には少ないもの)。
前述のstereo誌、2001年2月号では「AVアンプvsプリ・メインアンプ それぞれの実力」という特集があった。まさに我々が待っていた企画ではありませんか。
¥39800対決:デンオンから同じ値段でAVとプリメインが出ており、その比較。「AVはさぞかし音質はひどいだろうと考えていた。ところが歯切れがよく明快で中・高音の切れ味がいい。プリメインは音楽を聞かせる音質というものは豊か。低音の量感は断然有利。(しかし)高域の鮮明性はAVがむしろ優れている。低音の締まりを好むとAVではないか。」けっこういい勝負をしている。
¥120000のケンウッドのAVアンプについては「ステレオのプリメインアンプ並の解像度、帯域の広がり、音質の透明性を備えていて驚いた。ここまでくるとAVアンプをステレオ再生に使うというのも充分うなずける。」ほめてますねえ。デンオンのベストセラープリメイン¥100000との比較でも「余裕感のようなファクターがケンウッドではもう一歩及ばない。しかし、高音の繊細な分解力はケンウッドの方が冴えて切れ味のよさもある。この比較では、僕は圧倒的な差があるとは思えなかった。」
どうですか、執筆者が異なるとはいえ、数カ月前のネガティブなスタンス、同じ雑誌とは思えませんね(笑)。それだけ景気はAVアンプ頼みというメーカー事情なのかも。

そろそろ「そしたらお前はどうやねん?」という声が聞こえてきそう。私の場合、2chアンプ(¥100000)→AV中級機(¥75000)→現AVやや上級機(¥130000)という変遷を経て得た結論。「ピュアオーディオの醍醐味がセッティングの追い込み、ケーブル類の交換等により再生音の変化を楽しみ、向上を図るものであるならば、AVアンプでも同じアプローチを試す価値・甲斐は充分にある」
どうでしょう、AVアンプ買ってもええかな、と思いはじめました?

おすすめDVD:Dante's Peak & Daylight

リージョンやdtsの話題をする時、避けては通れないソフト(本来なら一回目に紹介すればよかったですね)。一部ではよく知られた事実なのだが、この2枚及びLiar,LiarとWater Worldの米国dts版はリージョンフリーでなおかつ日本語字幕も入っているのだ。
日本版はドルビーデジタルのみで3800円、米国版は20数ドル、送料足せば同額くらい。まだまだdtsのソフトは少なくて高い日本版、AVアンプ買ったはいいけどdtsのパワーを実感するには最適の2枚である。また、海外通販の手始めとしてもいいかもしれない。
画質は暗い場面が多くややノイジー(特にDaylight)、明細度もきめがやや荒い感じもするが、それは他の高画質なものと比較しての話。気にするほどではない。一方、音の方は大迫力。リアチャンネルからも盛大に重低音が鳴る。Dante's Peak後半の住民集会。このシーンあたりから本格的に火山が噴火を始め、たたみかけるように終盤へ突入なのだが、地震の初期振動からそれに続く建物のゆれやきしみ、自分の部屋が揺れているかのような錯覚を覚えるほど。dtsの威力を感じることができ、まずはおすすめである。

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