逆襲シリーズも4回目である。前回は5.1再生におけるセンタースピーカーの必要性について好き勝手を言わせていただいた。今回はそのセンタースピーカーの置き方についていろいろ考えてみたいと思う。
前回の繰り返しになるが、センタースピーカー不要派の論拠として、映像と音像の位置の不一致というものがある。画面の下ないし上にセンタースピーカーを置くと(置かざるを得ないのだが)台詞は画面外から聞こえてしまう。これは気持ちが悪いと。
ただ、その「気持ち悪さ」というのは感受性に個人差があるようで、雑誌の読者訪問例などを見ても、センター床べた置き(もう少し上にあげてほしいなあ、と)セッティングで平気な方もいらっしゃる。それに、これは私も実感していることだが、映画(物語)に没頭している時は、脳内で補正が働くのか、もしくは音の位置に対する注意力が弱まるのか、さほど気にならなくなる。
ただしこれは、センターを画面下端にくっつく位、ぎりぎりの位置にシフトすること、リスニングポイントに対して正面を向くよう、あおり角度を調整するなどの対策を施した結果であるのだが。画面下端ぎりぎりまで上げるという点では、スクリーンは4:3であるにしても、普段観る映画はほとんどビスタやシネスコなので、スクリーンの下端の黒帯の部分まではさらにかせぐことができる。
要は、センタースピーカーのセッティングは、画面中央とセンタースピーカー、リスニングポイント、この3点を結んだ角度(A)を極小化すること、左右フロントとセンタースピーカーを結んだ角度(B)を180度に近づけさせること、この2つのアプローチのバランスだと思う。
つまり、横一列に左中右と並べると、見てくれは良いし、水平パン移動も自然だろうが、音楽のみの2ch再生ではスピーカー位置が低いことが気になる>上げる>センターも一緒に上げる>スクリーンがさらに上に・・・という流れから、画面を長時間見上げ続けるという「お席は前の方になります」的セッティングで、疲れること甚だしい。特に我らが6畳間シアターにおいては。もし貴方が10畳・20畳の専用シアタールームをお持ちならば、我々が悩んでいるこの疑問など、とるに足りない些細な事柄になってしまうのがねたましい。画面と視聴ポイントの距離を十分にとることができ、そのため角度AもBも理想に近づけられるのだから。
いや、それ以上に、プロジェクターの投射距離を大きくとれるということは、サウンドスクリーン(細かい穴が一杯あいた音が素通しになるスクリーン)の導入も視野に入ってくる。サウンドスクリーンだと、スクリーン裏に、高さも大きさも自在のスピーカーを水平一直線に左中右と置けるので、それこそ理想の画像と音像の一致が実現してしまうのだ、簡単に。で、やはり広い部屋がいいなあ、で締めてしまうのはくやしい。なんといっても、このコラムは「6畳間シアターより愛をこめて」なのだから。
前述のセッティング方法を追い込むことで、不満を感じない程度まで映像と音像の位置を近づけさせることはできるし、現に私もその状態で落ちついている。
だが、実はさらに、ファントムで左右に分けるのでもなく、画像と音像の位置を一致させる方法がある(これを思いついた時はオレって天才!と思ったが、先月紹介した長岡先生の本にも記述があった:みんな考えること一緒ね)。
その方法とは:名付けてセンターサンドイッチ法。センタースピーカーを2本使い、画面の左右又は上下ではさみこむことで、画面中央に音像を作り出すのが狙い。この方法だと通常のファントム再生のようにセンター情報がこもることもなく、鮮度を保つことができる。
早速実験してみた。私の現使用スピーカーは、フロントLR、リアLRともにALRジョーダンのENTRY−S。同メーカーのセンタースピーカーをはずして、かわりにリア2本を直列でつなぐことにした。これで、音色の統一、フロントLRとのバランスについては整った上での実験となる。
1:左右サンドイッチ法
フロントLRの、内側外側、又は上に置くか下に置くか。セオリーとしては、水平方向に隣接して置くのが一番干渉しそう。第一、現状でもスクリーンの幅いっぱいで、スペース的に無理。よってコルクのキューブを4つづつ用意して、フロントLRの上に乗せることにした。
結果:方法が安易すぎたようだ。まず2ch再生にも悪影響がある。上に乗せてしまうと、ホールエコーが伸びきらない印象。AV再生では確かに台詞が画面上に定位はするが、フワフワとして迫力がなく、やはりコルクで仮置きではなく、しっかりした台が必要というセオリー通りの結果となった。もしあえて、この方法をこれ以上進めるとすれば、お互いに干渉しないように分離してスピーカーが上下に2つ置けるような2段スタンドを自作するか、スペースが許せばフロントの斜め後方あたりでベストポイントを探すということになるだろう。
2:上下サンドイッチ法
現在下側に既にセッティングされているセンタースピーカー。上にもう一本付け加えて、音像をシフトさせる、と考えてもらってもいい。この方法でネックとなるのは、上の方のスピーカーを壁に強固に取り付けられるかどうかだろう。実際は、左右法に比べフロントLRとの干渉がない分、はっきりとアドバンテージが出た。センターの実在感を損なうことなく、音像が上方にシフト。ただし、今回は実験なので、上の方のスピーカーはスクリーン上にポンと仮置きしただけ。「今地震がおきれば、下のアンプに激突、被害総額・・・・・」とヒヤヒヤしながらの試聴だった。本格的に導入するなら、専用の取り付けアングルなどを探すか自作する必要がある。
というわけで結論。上下サンドイッチ法は、上方スピーカーの大きさに限りがあるが、そのセッティングさえクリアできれば、6畳間シアターで試してみる価値は十分にあると思う。また、同じスピーカーを2本そろえなくても、例えば現センターはそのままに、よくあるPC用のパワードスピーカーを調達して、AVアンプのセンタープリアウトにつないでみる、というのはどうだろう。実験なのだからとりあえずクオリティは度外視しても、音像がシフトすることの確認ができると思う。
(おすすめDVD)
今月は皆さんDVDどころではなかったのでは?私もそう。そのうち、のほほんと暗闇で映像と戯れていた時間が宝石に思える、それほど悪い時代がやってくるのかもしれません・・・
というわけで、すいません、紹介できるほど観ていませんので一本だけでご勘弁を。
・モンティパイソン・アンドナウ(R2):なんといっても日本語吹き替え収録という快挙。エリックアイドル=広川太一郎のすっとぼけた味が甦る。初見はもう20年も前だったりなんかしたりして。画質音質とも年月を感じさせない鮮明さで良好。唯一惜しいのはパッケージ絵がボケボケ、中身に不安を抱かせるところか。
|