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六畳間シアターより愛をこめて

12月8日の妄想

ゾンビ

去る12月8日、ある女性が病院を退院した。一週間前に女児を無事出産し、産後の経過も順調なので、と、ここまではまあその女性がどちらかと言えば高齢者出産だったということを除けばごく普通の話。しかしながら、その女性の旦那さんのご実家というのが、それはもう大変な方で、普通出産といえば自宅近所か、本人の実家近くの産院(うちの次男の時がそうだった)をセレクトするのだけれど、旦那ご実家おかかえの病院がなんと自宅敷地内にあるので、そちらで出産された。で、8日に退院、旦那ご実家から車で帰宅というわけであるが、NHKはそのルートを地図付きで解説、まるで、さあ見に来いと煽っているかのよう。
しかし、この日が土曜日でよかった、と内心ホッとされている方が実は多いのでは。平日だと見物人の混雑、警備、渋滞、通行不可、その影響で「仕事にならない」ということは容易に想像できる。
旦那ご実家に話を転じると、東京のまんまん中に居を構えておられ、当然一般市民はその広大な敷地内を行き来できないので、結果、東京都の交通網は道路も鉄道もそれをとりまくようにドーナツ状に発展してきたわけだ。
JR山手線。A−B地点を最短で結ぶのは直線だということは小学生でもわかる。それをわざわざ、A−B間距離を直径とした円弧をぐるっとなぞらなければいけない不便さを、毎日東京生活者は経験しているのである。
つまり、ある一家の住居の存在が、東京ひいては日本全体の生産性における大きなマイナス要因となっている、と、勇気を以てここで言ってしまおう。
首都機能を移転させる、させるならどこ、というような議論が出たり引っ込んだりしているが、そんなことをすれば、移転した官公庁との行き来に忙殺され、一般企業の生産性はさらに低下するのは明らかだろう、完璧な電子政府が実現しない限りは。それに、その膨大な移転コストを負担するのは全て国民である。
それに対して、ある一家が今のお住まいを変わられるだけで(京都にはかつてのご先祖様のお住まいがちゃんと保存されているのだし)その効果は絶大なのだ。都内移動時間短縮による労働生産性の向上。都心に有効活用できる土地が大幅に増加。

ではその東京ど真ん中に出来たスペース、貴方なら何に使いたいですか。当マガジンの読者ならではの名案が出てきます?

JR新東京駅:まあ、順当でしょうか。
駐車場:地上げ屋か・・・・
ホストコンピューター:やや古いSFのイメージですね。これまでのセキュリティが生かせる。堀に囲まれているしね。
ユニクロ:なんじゃそりゃ。
私の意見としては、TDLに対抗して日本国家挙げてのテーマパークを造るというのはどうだろう。いつまでも米国産ネズミにライセンス料払うこともないでしょう。パークの名前はTPL(トーキョウプリンスランド)で決まり。入場ゲートでは何故か記帳だ。一番人気のアトラクションは「日本誕生」。最新3DCGによる日本の成り立ち。クライマックスはヤマタノオロチとの戦いだ。
2月11日はスペシャルアニバーサリーデイ。皆で建国を祝おう。教育勅語を暗唱できれば入場料ただでええよ。そうだ、昆虫館も作っちゃおう。貴女の頭の上にも幸運の蝶々がとまるかも!3時にはお約束、オープンカーでパレードだ。まあご本人はさすがにお出にならないから、この際カブリもんでよしとする。そして、その名も”天nTown”も作る。そこに行けばいつでも会えて一緒にハイチーズ。イナバの白ウサギなんかもメインキャラにええかも。オフィシャルCDはGLAYとYOSHIKIに頼まなきゃな・・・などと妄想に耽っていると、うちの前の道路、RIGHTWINGの方々、お車からの音楽が賑やかなことといったら。寒中ご苦労さまでございます。
私「今日は元気がいいなあ」
妻「退院したからじゃないの」
違う違う!この非国民!12月8日はトラトラトラや!真珠湾攻撃の日やがな。というわけで、長いマクラでございました。やっとDVDにつながりましたです 。

<パールハーバー>
2枚組。私は夏の公開時に敢えて劇場で観ないでいた。長過ぎる。中盤の日本軍の攻撃シーンはものすごいらしいが、ここは繰り返し観たくなるだろうし、それにたどりつくまでに80分、攻撃が終わってから50分。陳腐なラブストーリーに通しで付き合う時間を作るのは大変だ。それから主演女優。オヤジの顔がチラチラして我々70年代ハードロック世代はその気(どの気だ)にならないのだな。
聞くところによると、さらに長いバージョンが米国では発売されるそうで。今回観た感じでは中途半端に描かれている、戦艦アリゾナに閉じ込められた人々の救出や上官アレック・ボールドウィンの活躍など、そのあたりが加えられるのだろうか。
確かに真珠湾攻撃のシーンはすさまじいぞ。まさに大画面、大音響、サラウンド必須であります。音の前後移動が積極的で、攻撃開始の時、ゼロ戦が一機ずつ真右、斜め右後方、斜め左後方、真左とあらわれる。地上を機銃掃射するところでの弾着音、爆発音、飛び去るゼロ戦の聞き分け、とサラウンド再生するとしないでは全然違ってくる。
一方、日本側の描写は相変わらずの間抜けぶりで笑わせてくれる。極秘の作戦会議をあんな原っぱでやるか普通。近くで子供が凧揚げしてるし。
あれだけ長い時間があるのだから、日本側にも市民なり軍人を配して、米側と交互に等身大の人物像を描いた方がドラマ的には充実すると思うのだけれど、この映画にそのような意図は全くなさそう。結局、そもそも戦争に対してアトラクション的なアプローチしか考えてなかったわけです、この映画は。DVDで、中盤のドンパチのみを刹那的に楽しむ、そんな映画なのです。

<virtual trip モーターパラグライダー空撮 沖縄八重山諸島>
モーターグライダーで西表島・竹富島上空を飛び、鳥の視点で撮りました、というただそれだけの潔い内容。水着のおねえちゃんや海中のサンゴなどのいかにもな挿入シーンもなく、ただ延々と空撮が続く。このあたりの割り切りというか、徹底ぶりが逆に壮快である。店頭デモで活躍しそうな高画質。ハイビジョン収録との記述はないが、モーターグライダーに積める機材程度でここまでのクオリティとは、LD時代の環境ビデオ(死語?)に比べると進んだものだと感心しきり。モーターグライダーゆえ、低空、低速飛行が中心で、たしかにこれは鳥の視点。BGMは沖縄民謡のテイストを盛り込んだ単調なものなので、お好きな音楽と一緒に組み合わせてどうぞ。
ところで、映像と音楽、別々のものを組み合わせるということ。プログレとSF映画がよくハマル、というのがあって、例えば「ブレードランナー」冒頭とピンクフロイドの「炎」一曲目の組み合わせ。ピラミッド群を飛ぶスピナー。荘厳なシンセというのはヴァンゲリスのオリジナルとよく似ているけれど、マイナー調のメロディーでむしろこちらの方がレプリカントの悲哀を表現しているのでは、と思ってしまう。うまくタイミングが合えば、タイレル社の面接部屋に入ったところでギターが鳴り始める。なかなかかっこいいです。
同じくフロイド、「おせっかい」からB面全てを使った大作「エコーズ」。「2001年宇宙の旅」の最終章と相性バッチリ。というのも、最近出た「キューブリック白書」(フィルムアート社)によると、ピンクフロイド自身が映画に感銘を受けて作ったのがこの曲とのこと。私はまだ実際に試していないけど、タイミング的には例のトリップシーンが、曲の後半かなりアヴァンギャルドというか、サウンドドラマ風に展開する部分と合うように思われる。皆さんもやってみてはいかが。

<Lara Croft: Tomb Raider>
こちらの主演女優も、実父(ジョン・ボイド)の顔が脳裏にチラチラはするけど、彼女の場合はセックスアピール度が圧倒的で、十分その気(どの気だ)にさせてくれる。我が家では、新着ソフトは私が一度一人で観て(検閲)、性・暴力描写がキツくないものを週末子供と一緒に、というパターンなのだが(この映画も子供が早くみせて、とのリクエストあり)、レイティングはPG13ではあるけれども、アンジョリ嬢のあの胸に9才の長男が「その気」覚醒してしまうのでは、と内心躊躇していたりして。
ゲームの映画化というと、「あーまたやっちゃった」てな作品が多いのだけれど、今回はアンジョリ嬢をキャスティングした時点で、既に勝ちは決まったようなものだし、アイテムをゲットしてラスボスと対決、というアクションゲームのパターンをおさえた上で、ツカミ、中盤、終盤と多彩なステージは飽きさせない。

<John Carpebter's Ghosts of Mars>
きょうび、自分の名前をタイトルに冠することのできる人は、彼くらいのものではないだろうか。「火星の幽霊」というタイトルだけじゃ、いかにも安そうで、クリックすらされないけど、名前が付いてファンの検索フィルターに引っ掛かりカートへGO。
でも、安い映画には変わりありませんでした(笑)。カーペンターはたいてい付き合っているけど、中でも一番情けない作品に仕上がっています(涙)。火星の遺跡を掘り起こしたら、火星人の幽霊(赤い煙なのだな、これが)が沢山出てきて、人間にとり憑いてしまう。憑かれた人間はゾンビ化し火星への侵略者である地球人を狩る。ゾンビ軍団に囲まれた警官、囚人達の脱出劇と、「ザ・フォッグ」プラス「要塞警察」を火星を舞台にしてみました、という映画なのだけれど、これ「火星もの」と名乗ったら先達に叱られまっせ。
気圧も気温も酸素も天候も地球そのもの。ゾンビ人間も別に手足が8本に変貌するわけではなく、遠目には単なるホームレス集団。対する人間の武器も普通の銃だし。ゾンビ軍団、動きがヌルくてすぐやられるからちっとも怖くない。
結局、SFを感じさせてくれる something else が全然練られていないことが致命傷。
でもそんなことはお構い無しに、カーペンター爺がおそらく一番やりたかったこと。サプルメントに入っていた、BGM収録のメイキングを観て納得。作曲カーペンターなのに、「ハロウィン」のようないつもの打ち込み系じゃなく、ヘビメタなのだ。演奏はアンスラックス&スペシャルゲスト:スティーヴ・ヴァイという、まあ、知っている人はほうと感心するかも。爺は、本編のメイキングでは「アンタの映画でしょうが!」と突っ込みたくなる程仏頂面(というか妙に目が据わっていてコワい)なのに、レコーディングスタジオでは上座に陣取り終始ご機嫌でした。

<追伸>
11月号「1日だけ!はい、エンド」でレポートした、堀切日出晴氏の輸入DVDデモ@インターナショナルオーディオショウに関して、ご本人から当マガジンアンケート回答をいただきました。うれしいやら気恥ずかしいやら・・・私も励みになります。

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