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六畳間シアターより愛をこめて

再度PCでDVD再生にチャレンジ:バカPC構築編

ゾンビ

鹿島茂著「衝動買い日記」というエッセイを興味深く読んだ。
著者は大学教授なのだが、腹筋マシーン(¥3900)などのダイエット・アヤしげグッズに始まって、ご趣味であられる希少本(パリで75万)、ワイン、腕時計などなどを衝動買いしまくり(多分原稿料より購入額の方が上回っているだろう)、その使用感から文化論や人生の真理にまで展開させる手腕で、なかなか読ませる。中でも封書用ペーパーナイフ(¥3200)についての一編は、フランス留学時、母国からの便りを待ちかねているルームメイトの様子が甘いノスタルジーとともに語られ、とても印象的だった。「人は待ちかねている手紙ほど乱暴に封を切る。その破り方で期待のほどがわかる」

私は、といえば衝動買いというのはあまりしない。

書籍は雑誌以外は殆ど買わない。上記の本だって「衝動買い」せずに図書館で借りてきた。読みたい本は図書館に予約すれば市が代わりに税金で購入し保管もしてくれる。同意される方も多いと思うのだが、本というのは自分で買うと「後で読もう」と「つん読」状態となり(私の場合はむしろDVDの方がこの状態になっている)、コストとスペースを二重にムダ食いする。図書館で借りれば、期限内に返さねばと、ちゃんと読むし、そこまでの根気がなければ返却してしまえばよいし。

CDやDVDの類については、酔っ払っていない限りにおいては、店で見かけたら即レジ直行ということがなくなった。
一旦、ヤフオクに出ていないかチェックして、そこでの出品価格+振込手数料(支払先銀行がどこか、も重要)+送料+入手までの期間+落札可能性 > 店頭価格(量販店割引価格マイナスそこでつくポイント)+自分の今すぐ欲しい度 ならば、まあ店で買ってもいいかな、と。

とまあ、こんな人間が増えるからいろんなモノが売れずに、世の中不景気にもなりますわな。そういう意味でも、IT(があるからこその)不況というのは存在する。インターネットがなければ、ヤフオクがなければ、みんな新品を国内店に行って買うよね。PCに向かう時間を他の余暇に使いたくなるし。

さて、突然の衝動買いはしないのだが、一度「何々が欲しい」とか「何々を試してみたい」という欲求、衝動が心に巣食うと、それしか見えなくなってしまうのが私の困った性格だ。
その衝動を解消するには、欲しいものを買ったり実際試してみたりするしかないわけで。それもある種「衝動買い」と言えるのかも。今夏のiPodがまさしくそれにあたり、次に秋にはPCでのDVD再生というobsession下にある、ということで前号からの続きとなる。

今やPCでのDVD再生なんて、別に高スペックでもなんでもない。前号お読みの方から「四の五の言わずにDELLの安いやつでも買えばいいじゃん」てな声が聞こえてきそうだが、私はオーディオもホームシアターも、PCもDIY派なのだ。ただしその前にカッコ付きで「電気知識がほとんど無い」という語句が伴うのだが。
第一、元々完成品が買えるぐらいの決断力と家人への交渉力がないから、こんなちまちましたDIYを考えるわけで。出来合いを買って「DVD観られました、キレイです、ハイ終わり。」じゃコラムのネタにもならないしな(笑)。

そう、ネックはPCのケースだった。
PCでDVDを観たい→CPUをもっと速いのにする→それを載せるマザーボードを買い換える→電源がAT仕様という旧式→ケースごと交換する必要あり→デカいケースの新調は家庭内争議のタネだ→ケース交換できない→(中略)→PCでDVDが観られない→しかし「羊沈」だけでもなんとか→(中略)→・・・・という無限ループにハマっていたのである。

しかし、何度かそのループを繰り返す内、天啓というかご託宣というか、ただ単なるアホな考えというか、が閃いた。

「ケースは無くともPCは動く」

そう、そもそもPCにおけるケースの役目とは、
1.電力をパーツに供給する電源
2.スイッチやアクセスLEDなどのインジケーター
3.各パーツを固定
4.箱で囲むことでPCの動作音軽減
の4つくらいなものではないか。

1は電源だけで入手できる。
2もスイッチだけ、LEDだけで入手可能。
3は自分で考えよう。
4は、箱で囲む→内部温度上昇→強力ファンが必要→安物ファンはそれ自体うるさい、というように、静寂性と冷却はそもそも相反するものなのだ。それなら、パーツ剥き出しだったらそれ程冷やさなくてもいいかも→うるさくないかも、という理屈も通るのでは。

よし、とりあえずケース無しで組もう。
とはいうものの、マザボを平置きにして、その周りにドライブ類を並べてつなげれば、一応動くことは動くのだが、えらく面積を取るので立体的にそれらパーツを配置する必要はある。
立体的=階層的、つまりマザボとドライブと電源を縦型オーディオラックの形状に収められたらよいのだ。
よし、方針は決まった。
ここで赴くべきはDIY店ではない。木材なり金属フレームを組むよりも早く安価に仕上げてしまいたい。出来合いのハコで何層にも積み上がり、適度にケーブル等が出入りする穴なり隙間が開いているもの・・・100円ショップにうってつけのものがあった。

オフィスで書類を処理・未処理に分けて積み重ねるA4判書類トレイ。

A4判書類トレイ

1ケ100円、5段積み重ねても500円。持ち帰ってマザボを載せてみると、まるでオーダーメイドしたかのようにぴったりハマったのだ。

ぴったりハマったマザボ

前後するが、この時点で既にATX電源、CPU(セレロン1.7G:夢に見たギガCPUだ)、メモリ、マザボと主な構成部品はヤフオクやアキバで調達してあった。
このようにして、組んだ、というか重ねてできたバカPCがこの写真だ。

バカPC

ご覧のようにまさしくベアボーン、殆どエピソード1のC3PO状態といえよう。天板としてそのトレイを一枚裏返しにして、その上に電源とフロッピーをのせてある。

その使用感はというと、まず、予想通り、いや予想以上に動作音がうるさい。特に電源のファン音。投資額をケチって電源を静音仕様にしなかったのが悔やまれる。
唯一の利点はケーブルのつなぎ替えが簡単にできることぐらいか。
隙間だらけなのでホチキスの芯やクリップなどがいつ飛び込んでショート起こすか、と思うと長時間のダウンロードやエンコードで離席するのも心配だ。USBや音声ケーブルを直接抜き挿しする時もおっかなびっくりである。うっかり触って自分が感電するかもしれない。

そう、PCケースには5つ目の、パーツを守るという役目があったのである。

というわけで、電源交換とCPUファンレス化でさらに静かには出来るとは思うのだが、データをトバしたり火事を起こしたりしてはシャレにならない。結局、バカ状態で稼動したのはほんの2〜3週間。最後には静音仕様のケースを新たに購入して、普通に組んでしまった。「以前のケースに余ったパーツを組み合わせたら、一つPCが出来た。これを処分して新しいケースを買う」という口実(嘘ではない)で家人承認のもとである。はじめからこういう戦略でいけばよかったのだ。

そして、極めつけのオチがある。なんだかんだでDVDドライブも手持ちが3つになってしまい、2つは新調した方にリージョン1と2のそれぞれ専用に用いることとして、残りの一つは処分予定のボロスペック(セレロン466)のCD−ROM読み用として装着した。試しにそれでDVDを再生してみたらなんとコマ落ち無しで観られるのである。当初はダメだったのに。秘訣は、自作派なら常識なのだろうけど、IDEコントローラーの該当プロパティを「DMA」に設定するだけだったのだ。

その設定さえすれば、当初の欲求(PCのDVD再生)は満たされていたわけだ、2ヶ月かけてマシンをひとつ組んでしまわなくても。

冒頭に紹介した「衝動買い日記」の中で、ノートパソコン購入の章はこのような言葉で結ばれている。

「パソコンは暇な男のオモチャである。パソコンで手間が省ける分、思考する力も落ちる。学問の未来がここにないことだけは確かだ。」

(おすすめDVD)
さて、そうやって苦労してやっと観ることのできたPAL盤「羊たちの沈黙」。もともと持っているリージョン1盤(これもコレクターズエディションだが)ともマスタリングが違うので比較の意味はあまりないが、確かにPAL盤の方が画質はいい。画素の粒子が一段と細かくなったかのようだ。レクターとクラリスの最初の対面シーンを繰り返し観た。クラリスの肌の美しさは際立つし、対比してレクターの顔に刻まれた皺の一本一本。

このディスク以外でも、PCからプロジェクターに出した画像と、専用プレイヤーからのそれとを比較すると、前者はディスクの情報を「素」のまま出し、後者はノイズリダクションに始まる様々な画作りがされているように感じる。だから前者はノイズがのり易く場合によっては「汚い」と感じることもあるが、一方で「ディスクにはまだこんなに情報が入っていたのか」と驚くことも。HTPC(ホームシアターPC)にだけは手を出すまいとかつては思っていたが、今そのふかーい世界の片鱗を垣間見たような気持ちである。

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