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Interview

Cover 『真夏のホーリーナイト』
よろず電脳調査局ページ11
東野司著
片倉真二画
ISBN4-19-905023-X
C0193

インタビューア:[雀部]

徳間デュアル文庫 790円 2000/11/30刊
粗筋:
 かえでのために小さな妖精ロボットを作り、天国に召されたゆきたろう。それから八ヶ月、かえではまだ覚えていた。
 公共施設管理プログラムをハッキングした中学生二人が見た龍の正体とは。
 動くはずのない自動販売機の失踪事件。公共施設のネット異常。これらの不思議な事件を結ぶものは一体何か・・・
 電脳トラブルの解決を仕事とした民間企業『ページ11』の大空藤丸は、コンビニの前に設置されていたはずの自動販売機が忽然と姿を消した事件を調査していた。その自販機の通信ログに残された謎の言葉「聖夜に・・・」の意味するものは何なのか?不思議な事件を結ぶ糸が指し示す悲しい事実とは一体・・・
感想:
 む〜ん、待ちかねました(^o^)/
 《ミルキ〜ピア》ファンお待ちかねの東野司さんの新作です。主人公は、秀人君ではないものの、よく似たキャラ(笑)の藤丸君。しっかりものの女社長も配して期待度大です。
 舞台は《ミルキ〜ピア》シリーズと同じ世界。ただし、年代的にはちょっと後の設定みたいです。さあ、皆さん。お楽しみはこれからですよ〜!



[雀部]  今月の著者インタビューは、昨年の11月21日に、『真夏のホーリーナイト』を出された東野司先生です。
 東野先生、よろしくお願いします。
[東野]  あ、こちらこそ、よろしくお願いします。
[雀部]  《ミルキ〜ピア》シリーズが終わって(『成層圏スタジアム』'92年、SFマガジン臨時増刊号'95/1『史上最大のメリークリスマス』)、出された本は、『ムーンライトシンドローム』と『電脳祈祷師美帆』『電脳祈祷師 邪電幻悩』だけなのでしょうか?
[東野]  ええっと、そうですね。小説の書き下ろしだとそうなりますねえ。
 95年以前は、ジャストシステムの『踊るコンピュータ』を書いていますが、95年以降になると、あとは、ジャストシステムから『恋人はインタフェース』と『ワープロと通信のパソコン術』ですね。『恋人〜』はMOAIの連載をまとめたものだし、『ワープロ〜』のほうは書き下ろしですが、コンピュータ入門書になりますから。
 あ、書き下ろしなら、『SFバカ本』に3本書いてますけれど、あれは短編ですしねえ。
[雀部] 『ワープロと通信のパソコン術』持ってます〜。同時期に出た岬兄悟先生の『男のパソコン入門』も買いましたが(^_^ゞポリポリ(どちらもジャストシステム刊)
 やはり短編だけではもの足りませんね。
 ちょっと少ないように思われるんですが、またテクニカルライターのお仕事もされていたのでしょうか?
[東野]  ほんとに少ないですねえ(笑)。自分でもそう思います。
 いえ、連載はけっこう書いていたつもりなんですけれどねえ。95年までにはアスキーのアップリンクに『ひそやかな死角』っていうミステリ風電子小説を連載してましたし、95年以降も『ナンバーズ』とか『モノマガジン』とか『DoBook』なんかの月刊誌に、ショートショートやコラムを連載してたりもしてたんですけれどねえ。これらが本にまとまっていないからなあ(笑)。
 あ、SFマガジンの「東京電脳マップ」もそうだ(笑)。
[雀部]  『ひそやかな死角』は、途中まではまとめてCDになっているんですけど、最終話を含んだ完成した形でのCDは、無いですよね。まあ、CD-Rに焼けば良いのでしょうが。
 『ナンバーズ』『モノマガジン』『DoBook』の連載はチェックしてません(泣)
 はやく、店晒し状態が解消されるとうれしいです。
[東野]  もちろん、テクニカルライティングもしてましたが、まあ、この期間に、ちょっと体調壊して、入院して手術やリハビリなんかもして、しばらく机に向かえなかった時期がありましたから、それが大きいかな。
[雀部]  ありゃ、体調を壊されていたのですか。それは大変でしたね。まあ東野司先生のことだからリハビリにも何らかの楽しみを見いだされて頑張られていたことと思います。(美少女が一緒だったとか、あるに違いない:-)
 で、話は変わるのですが、前から疑問に思っていたことで《ミルキ〜ピア》シリーズ最終話である『史上最大のメリークリスマス』は、なぜ文庫ではなく、SFマガジンの臨時増刊号で出たのでしょうか。差し支えなければお教え下さい。
[東野]  うーんと、単純にいえば、当時のSFマガジンの編集長が「やろう!」といったということなんですが(笑)。
 文庫が終わったときに、実は、ぼくの中では別の終わり方も考えていたんですよ。
まあ、それが『史上最大〜』の終わり方だったんですが。文庫の終わり方は、「ちょっと一休み」みたいな形で、実はそれはいつか復活するときには復活しやすいという感じで、そのへんも狙って、ああいう『成層圏スタジアム』のような終わり方をしたんですが、ぼくの中に『ミルキーピア』はきっちりと決着をつけて終わりたいなあということも、また一方にありまして、それがずっと胸の内にあったわけです。
 で、なんかのパーティーで当時のSFマガジンの編集長に会ったときに、「実はミルキーピアはこんな終わり方もあったんだよ」って、『霧のエトランゼ』や『史上最大〜』の話をしたんですね。そしたら、編集長がその場で「それ、マガジンでやりましょう!」ということになって、雑誌での復活になったわけです……。たぶん、文庫では復活しても、新シリーズになるならともかく、2話ですぐに終わってしまうような話は企画的にも難しかったんじゃないでしょうか。
 それで『霧のエトランゼ』がSFマガジン誌上での短期集中連載になって、すぐに『史上最大〜』が増刊号に決まったと、そんな感じですね。
[雀部]  う〜ん、ファンとしてはもっともっと《ミルキ〜ピア》を続けて欲しかったんですけど、二冊余分に読めたということで、良しとしないといけないですね(滂沱)
 以前、東野先生は都市伝説を調べられていたと記憶しているのですが、その調査結果は、一部《電脳祈祷師シリーズ》に結実しているのではないかと思っていますがどうなのでしょう?
 それと、今回の『真夏のホーリーナイト』にも都市伝説の調査は、活かされているのでしょうか。
[東野]  わあ、よく覚えてられますねえ。こりゃ、いい加減なこと口走れないなあ(笑)。
 ええっと、電脳祈祷師に関しては、まさにそうです。
 ていうかあ(笑)、電脳祈祷師を書くために、都市伝説をいろいろと調べていたわけです。青山霊園にも写真撮りに行きましたねえ。機器の誤作動の話やメールやネットに関する噂話なんかを中心に集めました。そのへんを物語に挿入することで、人々の電気への漠たる不安をより身近なものにしようと思ったわけで……。それに関する新聞記事もたくさんスクラップしましたねえ。そうそう、電脳祈祷師の1巻目の『邪雷顕現』のなかに脳に磁石があることがカリフォルニアのカーシュビンク博士によって突き止められたとありますが、あれも新聞報道されたものなんです。ちょっと追跡記事を期待していたのですが、どうなったのかなあ。知っている方がいらっしゃれば、教えてください。
 それと、『真夏のホーリーナイト』に関しては、直接的には活用していませんね。
 基本的な世界観が『電脳祈祷師』とはまったくちがいますし。でも、『ホーリーナイト』の登場人物である浦島かえでの中に、その影響がちがった形で出てくるかもしれませんね。
[雀部]  題名のことなんですけど『真夏のホーリーナイト』って、真夏の聖夜ですよね。というと、《ミルキ〜ピア》ファンなら誰でも、鳴琳作の傑作アイドルソフト"聖哉"を連想するのですが、関係ないですか。
[東野] ないです(笑)。
 『史上最大〜』でああいう終わり方をして、ミルキーピアそのものの続編はないと、聞かれるたびに答えていたのですが、でも、ぼくの中にはあの世界がもっと進んだ世界での話はいつか書かなくてはいけないなあと思っていたんです。
 その中で出てきたのが、「ページ11」だったわけなんです。だから、つながることは予想していたんですが、直接、"聖哉"=聖夜というふうには発想しなかったですねえ。
 でも、これもあとから気がついたんだけれど、ミルキーピアは『史上最大のメリークリスマス』で終わっていて、ページ11が『真夏のホーリーナイト』で始まったでしょう。クリスマスつながり(笑)。だから、聖哉の件も、ほんとに無意識の中までまったく考えていなかったかと言われれば、実は意識していたのかもしれませんねえ。
[雀部]  ほんとだ。確かにクリスマス繋がりですね(^o^)/
 ちょっとファンの方からの質問もさせて下さい。
「ミルキ−ピアが終わって寂しかったのですが、思いがけず、秀人と鳴琳に再会出来て、うれしかったです。一つだけ疑問があるんですけど夏鳴琳ということは、ドクと結婚しなかったんでしょうかねぇ。」
ということなんですが、どうなんでしょう?
[東野]  うーん。どうなんでしょうねえ。作者としてもそれが知りたい(笑)。なんてね。
 まあ、そのへんはおいおい出てくるかもしれません。
 でも、今の時流から考えれば、結婚したら女性が姓を変えなくてはいけないってことは、たぶん「ページ11」の世界ではないでしょうね。姓を変えていたとしても、仕事上の通称として旧姓を使っているかもしれないし、何より、今のような結婚制度があの時代にもあるかどうかもわかりませんしね。
 まあ、そのへんもふくめて、鳴琳に関しては、お楽しみと言うことで……。
[雀部] 続編に期待ということですね(^o^)/
 もう一つ
「自分は、鳴琳&ドクがどーなったかより、秀人&麻矢さん&奈美さんがどーなったか、ってことの方が気になります(^^;
 ミルキーピア開始当初の秀人であれば、どっちにもふられて未だ独身、ってことになりそうだけど、終盤になって成長した秀人であれば、どっちかとくっついても不思議ないし。
#まぁ、あの成長した秀人だから、麻矢さん&奈美さんの二人に惚れられたんでしょうけど。」
 これは、私も気になります(^_^ゞポリポリ
[東野]  えーっと、これもお楽しみにしてほしいですね。鳴琳に関しても、秀人氏に関しても、ぼくの中には、彼らが結婚しているかいないか、結婚しているなら誰としているかということなど、もうきちんと決まっているんですが、でも、話の中でそのへんが
出てくる可能性もあるので、ここではパスということで。
 でも、せっかくですから、ちょっと言うとすれば、秀人氏は、あの感じからも、ずっと独身でいるとは考えにくいのではないでしょうかね。たぶん、みなさんの予想が当たっていると思いますよ。
[雀部]  う〜ん、私の予想では奈美さんかなヽ(^o^;)丿
 電脳空間で龍のイメージが出てきますよね。「史上最大のメリークリスマス」でも『真夏のホーリーナイト』でも、その龍は、負のイメージを持っていると読みましたが、東野司先生にとって、龍とはどういう生き物(ではないか^^;)なのでしょうか?
[東野] 娘ですね。辰年だから……なんてね(笑)。
 まあ、マジな話、あまりはっきりとそのへんを考えたことはないんですよ。なんか、自然に出てくるという感じで、でも、それだけに龍というものが自分の無意識の中に潜んでいるのではないかとは思いますね。なんでしょうねえ。
 うーん、でも、ぼくの中では、負のイメージというよりは、変革のイメージですね、龍は。いい悪いに関係なく、とにかく現状を変えるきっかけになる……そんな感じなんだろうなあ。
 なんて言ってるけれど、うーん、ようはキングギドラが好きだってってことかも(笑)。
[雀部]  変革のイメージですか。それはイメージ的に格好良いですね(どこかで使おう^^;)
 今回の作品では、ネット潜りも出てきますが、もっと一般的な技術としてMVSなるソフトも出てきますね。このソフトを走らせるのに、だいたいどれくらいのマシンパワーを想定してらっしゃるのでしょうか?(笑)
[東野]  もう、そのへんの細かい設定はやめました(笑)。
 というのは、ミルキーピアの初期にはかなり細かく予想して、スペックまで書いてたんですよね。CPUが354khzだとか。当時としては、相当がんばった値で、かなり遠い未来を予想したはずだったんですが、それが……(苦笑)。ほんとに、すっっっごいスピードでマシンが進化したから、今となっては、バカみたいな値になってますよね。だから、今度はあまりマシンパワーみたいなものは考えないことにしています。そんなソフトが走るようなマシンということで(笑)。
 でも、まあ、マシンが今のようなアーキテクチャで動いているかどうかもわかりませんし、ソフトウェアだって、もっとコンパクトな構造になっている可能性もあります。ぼくとしては、「ページ11」は、マシンパワーよりも、そんなアーキテクチャが変化し、進化している世界だと考えています。
[雀部]  あと、この時代の特筆すべき技術革新事項があれば教えて下さい。
[東野]  一つ特出したものがあるという世界ではありませんね、ページ11の世界は。
 起こっているのは、社会的インフラでの技術革新ですから。一言で言えば「きれいな世界」(笑)。読んでいただければわかるように、エネルギー問題や廃棄物問題が解決されている世界です。とくにネットを支える電力関係では、ソーラーパネルのエネルギー効率が飛躍的によくなっている世界で、小さなところでは服なんかにもパネルが仕込まれていて、自給自足的に電力供給が行なわれているという感じですね。
[雀部]  "ページ11シリーズ"の今後の執筆予定をお教え下さいませ。
[東野]  2001年の前半には、続編が出る予定です。出たら、よろしくお願いします。
[雀部]   最後に。《電脳祈祷師シリーズ》は、まだ続けられるのでしょうね?
 岡山の本屋でも平積みにしてありましたから、売れ行きは心配してないのですが。
 "ページ11"と比べると、明と暗、すごく対照的で、どちらも続けて欲しいです。
[東野]  祈祷師の方は、まだちょっとペンディング状態です。もうちょっとお待ちくださいというところです。
[雀部]  今回は、年末のお忙しい時期に、インタビューをお受けいただき、ありがとうごさいました。
 東野司先生の来年のご活躍をお祈りいたします。
[東野]  読者の方に、うまく伝わればうれしいかぎりです。新年号、たのしみに見せていただきます。
[雀部]  では、この辺で。
 来年は"ページ11"の続編を、乞うご期待!!
[東野司]
1957年愛媛県生まれ。
横浜国立大学大学院中退。
テクニカルライターを経て、1986年<SFマガジン>にて「赤い涙」でデビュー。
SFマガジンを中心に、コンピュータSFなどを発表。
主な著書に『ミルキ〜ピア物語』シリーズ『電脳セッション』『恋人はインターフェイス』『電脳祈祷師−邪雷幻悩』などがある。
《ミルキ〜ピア》ファンクラブホームページは http://www.sasabe.com/SF/THONO/
[雀部]
48歳、歯科医、SF者、ハードSF研所員、東野司オンラインファンクラブ《ミルキ〜ピア》管理人

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